小説 吉野様

子供の領分
大地×陽一様!

『一夜の太陽』


茅野家末弟・茅野大地。

見かけ、怖い。

中身、怖い。

向かうところ敵なしかと思われた彼にも怖いものはあった。

その敵は不幸にもすぐ側に。

茅野家長兄・茅野陽一。

見かけ、最上級。

中身、最強…否、最恐。

両親不在の今、一家の財力さえもその手中に治めた陽一にこそ
敵はない。

今でも過去でも陽一は大地にとって忌まわしい存在だった。

茅野家次兄・茅野広海。

彼を溺愛過ぎる陽一を疎ましく思った。

広海が陽一ばかりを頼っていくのが面白くなかった。

言ってしまえば、大地も広海がお気に入りということなのだが。

それを認識しているのは陽一だけで、大地は未だ認めていない。

そんな茅野家に何とも不穏な夜がやってきた。

両親ばかりか広海も不在という、最悪の夜。


大地は部活が終わると、いつも通り真っ直ぐ家路を辿るがその足はいつもより重かった。

疲れのせいではない。

広海が一泊二日の研修旅行のため、今夜は家に陽一と二人だけだ。

それが大地の気持ちも足取りも重くしていた。

それでも両足を交互に動かしていればいつかは自宅に着いてしまうもので。

大地は溜息を吐きながらインターホンを押した。

しばらくすると内側からドアが開いて、いかにも機嫌が悪そうな陽一が現れた。

「だから、どうしてお前は鍵を持って出ないんだ」

「面倒くせぇんだよ…何度も聞くな」

それだけ言って、大地は陽一の横を通り抜けて自室へ着替えにいく。

陽一は短い溜息をついてから、夕飯の準備をするためにキッチンに入っていった。


「…何か、今日、手抜きじゃねぇ?」

「気のせいだろう」

食卓を見つめながら問う大地に対し、陽一は冷静に返して箸を動かす。

広海が居ないからか、と推測して大地はまた苛立つ。

が、部活後の空腹感には勝てず、とりあえず黙々と食事を続けた。

その静かすぎる食事が終わり、陽一が後片付けをしている後ろで大地が食後のお茶を飲みながら声をかけた。

「陽一、てめぇ、広海がいないからってインスタントラーメンはねぇだろっ、インスタントラーメンはっ」

「完食しておいて文句言うな。それに卵やら野菜やらも入っていただろうが。だいたい俺が作ればインスタントでも旨いんだよ」

「屁理屈言ってんじゃねぇよっ、俺相手にはインスタントでいいとでも思っ…」

「不味かったのか?」

不意に陽一がぐるりと振り向いて大地を見据える。大地が口を閉ざしたのは陽一の眼光が鋭かったせいではなく、

特にラーメンが不味かったわけではなかったからだ。

ただ、大地は何となく面白くなかったのだ。

広海と自分との扱いの差が。

「…そういうことじゃなくてだなっ、何だっててめぇはそうやって人の揚げ足取って話しやがるんだよっ?」

大地は立ち上がって、陽一を思い切り睨み付ける。陽一はその目を冷めた目で受け流した。

「揚げ足なんざぶら下げてる方が悪い。あいにく、まともに料理したり、ガキと論争するテンションじゃないんだ。

 俺は風呂行くからそこどけ、大地」

「っ…この…っっ」

大地はどうにもならない苛立たしさから勢いで思わず左手で陽一の胸ぐらを掴んだ。

殴られるのかと思った陽一の意識は大地の右手に集中した。

が、大地は何故かその時、以前に陽一が嫌がらせにキスしてきたことを思い出し、無意識の内に左手をそのまま引き寄せ、

陽一に噛みつくようなキスをした。

陽一はさほど動揺した様子もなく、ただ綺麗な顔を少しだけ歪めた。

むしろ動揺したのは大地の方で。

どうにか頭が真っ白にならない内に陽一から離れ、強がった目で陽一を睨んだ。

「ざ、ざまぁみろ…っ」

「…ざまぁみろ?ざまぁないのはお前だろう?大地。何だ?それは」

揺るがない、陽一の冷めた目は大地の下半身を指し、大地の欲情を示す。

「…っっ」

「俺は風呂行くからお前は部屋かトイレででも抜いてろ」

大地が硬直していることを良いことに陽一は大地の頭をポンッと軽く叩くと大地の横を通り過ぎて風呂場に向かった。

大地はしばらく固まったままだった。


あのまま固まっていればよかったのに。

浴室にいる陽一がそんなことを思ったのは脱衣所のドアが開いた音がしたから。

陽一はシャワーを止めて、ガラス戸一枚隔てて感じる気配に目を移した。

「…大地?お前、それ以上は入るなよ…?」

返事はなく、ただ、陽一の希望は叶わず、浴室のドアはゆっくりと開かれた。

現れた大地の顔は何とも形容しがたいものだった。

飢えた狼のようで、救いを求める子犬のようで。

今にも襲いかかってきそうな男のようで、今にも泣き出しそう
な少年のようで。

陽一は苦笑を浮かべて短く息を吐くと濡れた髪をかき上げた。

「…はいはい、お兄チャンが悪かったよ、青少年。最後まで付き合ってやるよ…今回だけだからな」

そう言うと、今度は陽一の方から大地の頭を引き寄せてゆっくりとキスをした。

陽一の舌が大地の舌に触れた途端、大地はスイッチが入ったかのように陽一を壊しそうなほどに抱きしめた。

「い、たいって…ああ、もう…服、濡れたって俺のせいじゃないからな」

この言葉は今の大地に届いているのか否か。

届いてないな、と陽一が判断したのは再び噛みつくようなキスをされてから。

それから、食い尽くしたいみたいなキス。

武骨な手が不器用に陽一の身体を這い回り、大地の熱は早急に成長していった。

陽一が僅かに漏らす声や艶を増す表情は大地を過剰なほど刺激していた。

「陽一…っも…だめだ…っ」

「は…あ、ま、待っ…大地っ、せめてボディーソープでもつけてからにしろ…っ」

「ああ…っ?今更…俺が汚いとでも言う気か?」

「そうじゃなくて…絶対、俺が痛い…」

「あ…ああ…」

リアルな理由に大地は少し正気を取り戻しつつも、もう止めることなど出来るわけもなく、ボディーソープを

手にとって自身に塗り付けた。それが更なる刺激となったようで、大地は再び熱にうかされたように陽一を抱いた。

「ああ…限界だぜ、も…」

「だ、いち…?まさか…おい、指からにしとけよ…?」

「限界だって…」

「っな、だ…っ」

大地はヒョイッと陽一の片足を抱え上げるとそのまま腰を進めて、陽一の中に自分の熱を埋め込んでいった。

陽一の痛みは声にはならず、見開いた瞳からは涙が零れ、震える手で大地の背中に爪痕を残した。

「い…っっか、は…っあ、あああっっっ」

陽一の中から赤い血が流れていくのを見て、大地は一気に正気を取り戻した。

そして、耐えるように自分にしがみついている陽一に動揺した。

とにかく陽一の中から自身を引き出そうとしたが、既に陽一が無意識の内に捕らえてしまっていて、それも容易ではない。

そうやって動くことで陽一が更に悲痛そうに声を上げるので大地は動けなくなった。

「よ…陽一…どうすれば…いい?」

「…もう…とっととイけ…」

「動く、ぞ?」

「ああ…」

陽一が覚悟したように目を閉じると、大地はゆっくりと腰を動かした。

陽一の悲痛そうな声は徐々に艶めかしい声へと変わった。その声と一緒に漏れる息さえも密着した大地の身体を刺激する。

大地の動きも徐々に激しくなり、陽一の中で頂点に達しようとしていた。

「ん…っはぁ…あぁ…」

「っ…よ…いち…っわりぃ…もう、だめだ…」

陽一がその言葉に反応する前に大地は陽一の中で欲望を吐き出して、果てた。

陽一は一度、大地の身体に強くしがみついたかと思うと大地が果てた頃にはその手はずるりと大地の身体を離れた。

手だけではなく身体中の力を無くし、意識もなくした陽一を大地は慌てて抱きなおした。

「陽一!?おい!よ……陽一?」

陽一の身体が異常に熱いことに大地が気付いたのは全てが終わってからだった。


「っの馬鹿が!何が料理するテンションじゃないだ!?具合が悪いなら悪いで、そう言いやがれ!!」

陽一は自分のベッドの上で目を覚ました途端、そんな怒鳴り声を聞くこととなった。

裸の身体の上には二枚の掛け布団。額には冷たいタオル。机の上には水といくつかの薬。

寝起きにしては瞬時に状況を把握した陽一はゆっくり上体を起こした。

「…怒鳴るな、頭に響く…流石にパジャマを着せるとこまではしなかったか」

「少しくらい響かせてろ。ここまでしてやっただけ有り難く思えっ」

「誰のせいだと思ってるんだ。何もなければ本当にテンション程度で済んだのに」

パジャマを着ながら陽一がそう言うと大地は何とも言えない顔で押し黙った。

陽一はその顔を見上げて、再び苦笑した。

「別に無理矢理抱かれたわけじゃないんだから、お前がそんな顔するな。それより今、何時…っ2時っ?

 お前、今までずっと起きてたのか?学校いつも通りだろうが」

「そんなことどうでもいい。放って寝られなかっただけだ」

ぶっきらぼうにそう言い放つ大地に陽一は思わず笑みを漏らした。

「全く…うちの弟はどっちも可愛くて参るな」

「何で、ここに広海が出てくんだよ」

「…お前、ソレ、誰に妬いてるんだ?俺に?広海に?」

陽一の言葉に大地は静かに動揺していた。

広海を溺愛する陽一が嫌だった。広海が陽一に頼っていくのが嫌だった。

広海への執着かと思われたそれは陽一への執着でもあったのだ。

自分のことも見て欲しいという、無意識の想い。

この想いにも陽一だけが気付いた。

「…この布団、お前のか?」

「あ?あ、ああ…」

「じゃあ、今夜はここで一緒に寝るか」

「はあっ?」

「早くしろ、俺は眠いし寒いんだ」

言いながら陽一は布団の中に戻り、その身を壁際に寄せて大地の方を見た。

「陽一…」

「…今夜だけだからな」

「分かってるよ」

大地は短く答えると、電気を消して陽一の隣りに身を滑り込ませ、そっと陽一の身体を抱き寄せた。

「…陽一、移して治そうとしてねぇだろうな?」

「馬鹿は風邪を引かないそうだからな。残念だが無理だろ、そりゃ」

「てめぇ…っ」

「言っておくが起きる時は俺を起こさないように起きろよ?俺は明日二講目からなんだからな」

「休まねぇのかよ?」

「提出するレポートがあるからな。それが終わったら帰るさ。何だ?心配か?」

「そ、そんなんじゃねぇよ、馬鹿野郎っ」

「はいはい。もう寝ろ、お前こそ明日、辛いぞ」

そう言って陽一が目を閉じたので大地も目を閉じてみたが、一向に意識が遠のく気配はない。

陽一が眠りに落ちるのを見送りながら大地は小声で呟いた。

「…眠れるわけねぇだろうが…」


翌日、大地は一睡もしていない上に微熱持ちのどうしようもなく怠い身体を引きずって登校した。

それを自室の窓から密かに見届けた陽一は二度寝に入る前に机の上のメモに気付いた。

お世辞にも綺麗とは言い難い字で『おかゆあるから食え』とだけ書かれたメモ。

陽一は小さく笑うと、今日の夕飯は大地の好物を作ってやろうと考えてから再び眠りについた。


「………あ、大地の好物って漬け物だったか」



END





ぎゃああああっ(≧∇≦)///
理想の女王様受け!!陽一さま受けをありがとうございます〜!!
ずっと読みたいと思っていたのです〜(T◇T)///
Kは原作はCD化する大分前に読んだんですが、その時は広海が受けだと素直に思ったんですよ…
でもCDで関さんの陽一様を聞いてから、陽一様が受けだ!と心底感じてしまいました//
大地×陽一さまだし
武藤×陽一さまだしv
ファンクラブ&取り巻き&ポチ達×陽一さま…だと!!
吉野さんの陽一さまの殺し文句ばかりでまたもや萌え殺されました(〃T∇T〃)//
ハアハア…陽一さま…


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