フレグランステイル
アドル×ナデュー
小説 吉野様
『この罪を抱いて飛んてゆけ』






夢を見た。


遠い昔の夢を。


あれはまだ俺達が共に光溢れるフラヒスに居た頃。





晴れ渡る青空の下、大きな木の上で眠っているナデューを見つけた。

「おい、ナデュー!仕事中だろう!?何してる!?」

返事はなく、俺は仕方なく木を登り、彼に近づいてから声をかけようと思った。

だが、彼の顔が見えるようになるとそのあどけなさに言葉を失ってしまった。

強い魂を宿す瞳が閉ざされている。その寝顔を俺は綺麗だと思ってしまったんだ。

「…何、見惚れてやがる?」

俺の心を見透かすみたいに彼はそう言ってからゆっくり目を開けるといつもの不敵な笑みを浮かべて。

俺はカッとなって身を乗り出した。

「馬鹿なことを言うな!仕事中に昼寝などしてるヤツに惚れるか!」

「へぇ、じゃあ、俺が仕事してる姿に惚れたのかよ?」

「だ、誰が…っっ」

「それなら仕事すんのも悪くねぇな」

「…え…」

迂闊にも俺が動揺するとナデューは肩を揺らして笑い出した。

「あっはははははっ!動揺してんじゃねぇよっ!冗談だ、冗談!ホント、お前は冗談が通じねぇよなぁ!」

「ッナデュ…」

俺が何か言い返そうとした時、木の下からソリュードの声が聞こえた。

「おーい、二人とも。そろそろ仕事に戻ってくれないかなぁ?」

「ソ、ソリュード、いや、俺はだな…っ」

「おー、悪いな、ソリュード。アドルは俺がいねぇと仕事も出来ないみたいでよ」

「ナデュー!!」

「ほら、俺も行ってやるから行くぞ」

「ナ…」

ナデューはひょいっと木から飛び降りて、ソリュードの肩に抱きつくようにしてふわりと舞い降りるとソリュードもナデューをしっかり抱き留めた。

「サーンキュ」

「どういたしまして。痩せたかい?ナデュー」

「ああ?あー…まぁ、俺ぁ動き回ってることが多いからなぁ」

「ちゃんと食えよ」

「食ってるっての。あ、じゃあ、とりあえず飯食いにいかねぇか?」

「仕事終わったらね。…アドルもいい加減降りてきてくれないか?」

何故か呆然と二人のやり取りを見続けていた俺を不意にソリュードが見上げてきた。

ナデューも俺を見上げて、さっきみたいな不敵な笑みを見せる。

「妬いてんのか?」

「っお前…!!」

「冗談だぁっての!!先行ってるぜ!」

「早く来てくれよ、アドル」

そう言って二人は去っていった。

俺は頭を抱えた。

ナデューの言葉や仕草はどこまでも俺を乱す。

冗談だ、と言われたことが妙に哀しい。

ナデューの腰にまわされたソリュードの手を見て、胸が痛んだ。

妬いてんのか、と問われた時に否定の言葉が出てこなかった。

それが何故なのか。

俺は考えたくなかった。

いや、考えなくても分かっていた。そして、分からない振りをしていたんだ。








「何で…こんな時にこんな夢を…っ」

あいつは出ていった。白い翼を捨てて、闇の世界へ。シフィーヌ様が連れていってしまった。

今になって俺は自覚する。自分は彼が好きなのだと、そう気付いた。その痛みに涙が零れる。

どこまでも鮮やかな君。

大声で笑う君を窘めながら本当は何よりも誰よりも眩しく思っていた。

痛い、胸が痛いんだ、ナデュー。

お前が出ていったのはついこないだだというのにお前に会いたくて仕方がない。

やっと気付いたんだ。やっと認めることが出来たんだ。

お前が居なくなってからというのも間抜けな話だが。

だが、居なくなってしまったのだから仕方がない。


会いに行こう。俺がお前に会いに行こう。










俺は闇の世界アンヌンへ初めて舞い降りた。

恐れや怒りの気持ちはなく、ただ、お前に会いたい、その一心で。

それが通じたのか否か、俺がアンヌンに着くとナデューが眼前に現れた。

「ナデュー!」

「馬鹿か、てめぇは!?何、こんな所に来てやがる!?あからさまな気配で…っ!」

ナデューの怒鳴り声。それさえも愛おしい。

「ナデュー…」

「…ったく、こんなとこ、クレイドルなんかに見つかったら何言われるやら…こっち来い」

ナデューは俺の腕を掴んで洞窟らしきところに俺を引っ張っていく。

ある程度、奥まで入るとナデューは俺の腕を離して俺に向き直った。

「っとに馬鹿だよなぁあ、お前は…こんな所まで説教でもしに来たのかよ?」

「説教じゃない、説得だっ」

「戻らねぇよ」

ナデューは短くそう言いきると俺を真っ直ぐ見据える。

その瞳に宿る意志の強さは相変わらず。

俺が何をどう言っても彼が戻ることはないだろうと悟る。

「ナデュー…」

「…もう帰れ。ここはお前がいるところじゃない」

「お前がいるのに…俺はお前の側に居ちゃいけないというのか…?」

「馬鹿なことを言うなよ、アドル。お前、フラヒスを捨てれんのか?堕天使になれんのか?」

「それは…」

「似合わねぇことしてんじゃねぇよ。優等生殿が」

ナデューが俺の頭を軽く小突く。俺はその手を取って、一瞬で覚悟を決める。

「あ?」

「ナデュー…最後だ。一つ、俺の言うことを聞いてくれないか」

「?何だよ?」

「十秒、目を閉じていろ」


何か言おうとしたナデューの唇を自分のそれで塞いだ。

掴んでいたナデューの手が強ばる。閉じろと言った目は閉じるどころか驚きで見開かれているかも知れない。

出来る限りナデューを感じたくて舌を絡め取る。ナデューの手を掴む右手に力を込め、左手で細い腰を抱き寄せた。

カウントダウンをしながら。

きっちりカウント十秒後、俺はゆっくりナデューから離れた。

彼は短く息を漏らすと親指で口元を拭った。

「は…意外だったな、お前がこうくるとは」

「俺もだ。…さよならだ、ナデュー。もう、きっと会わない」

「多分、な」

甘い低音。まるで誘惑だ。

最後だと言ったのに全くお前と来たら。

俺は苦笑いを返してから彼に背を向けて歩き出した。

その後ろでナデューが静かな声で語った。



「なぁ、アドル。俺はお前のこと、嫌いじゃあなかったぜ…?」




俺は一瞬だけ足を止めたが再び歩き出した。

振り向けば何かが変わったのだろうか。

振り向いてしまえば何もかも変わってしまっただろう。

俺の罪はナデューを愛したことではなく、この愛に罪悪感を感じてしまうこと。

誰にも言えないんだ。お前にさえも。

罰が下っても仕方がないし、構わない。

だから、この罪だけ。

どうか俺の胸をいつまでも焦がし続けてくれ。

俺の中からお前が消えないように。








END
















ナデュー受け小説vありがとうございます(≧∇≦)//
吉野さまの解説↓
『フレグラのCDを聞く機会に恵まれたり、ゲームもリプレイしてみたりしてる内に
どうやら公式にナデュー(関さん)に惚れてる男を発見しまして(爆)。
アドル(千葉進歩さん)という天使さんなんですけどね。ナデューが天界(フラヒス)に
居た頃にかなり意識しまくりで。アンジェリークで言うと
ジュリアスとランディを足して2で割ったような・・・(難)。
若いジュリアスみたいなカンジでしょうか。破天荒なナデューと対立しながらも惹かれていく〜、ような。
新城加賀のような・・・(やっぱり表現できてない>汗)。
それとソリュードという天使さんが和彦さんなのでとりあえず絡ませてみました(笑>個人趣味)。
そんな・・・お話です(汗)。すいません。』
フレグラは声優さんが豪華なんですよね!!WIN用なので、Macなウチでは体験できないゲームですが
CDは聞いてみたいです(≧□≦)//見たことないキャラとかでも、吉野さんの小説は
いつも関さんキャラの持ってる魅力がたっぷり表現されてるので、それだけで大満足でもあります//
自分のことには無頓着なのに、自分に想いを向ける者に、強烈に光る何かを与えてしまうような(〃∇〃)
あう、上手く表現できないんですけど、そういうトコにもメロメロなのでv






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