金色のガッシュベル
清麿×アポロ

小説 吉野様


『あの空への扉』






清麿は迷っていた。

今、目の前にある扉。この向こうにアポロはいる。

明日はきっと一つの決戦。

自分は彼に甘えてしまいやしないか、弱音を吐いてはしまわないか。

会いたい。話がしたい。声が聞きたい。触れたい。

この想いは自分の弱さ故だとしたら。

色々なことを考えてしまって清麿はアポロの部屋のドアをなかなかノックできずにいた。

「あぁ、もうっ、駄目だ駄目だ駄目だ!!何をしてるんだ!俺は…っっ」

どうしても踏ん切りがつかず、とうとう部屋に背を向けた清麿の後ろで内側から扉が開く音がした。

「行ってしまうのかい?清麿」

「アポロ…!」

清麿が振り向くとそこにはスーツのジャケットだけを脱いだアポロが微笑んで立っていてくれた。

「ずぅっと気配はしてるのになかなか入ってこないからどうしたのかと思ったよ。どうしたんだい?」

「い、いや…特に用事があるわけじゃないんだが…」

「うん。僕も用事を聞いてるんじゃないんだ。どうして入ってきてくれなかったのか、気になってね」

「あ…」

「とりあえず…中で話そう?清麿」

そう言って、アポロは清麿に手を差し出し、清麿はそっとそれを掴んだ。


『バタンッ』


扉が閉まる、そんな音が妙に清麿の心を乱していた。

二人きりになった空間。

アポロのネクタイを緩める仕草を誤解しそうになる。

アンティークチェアーではなく、ベッドに座るアポロが誘っているのではないかと誤解したくなる。

清麿は扉の近くで立ち尽くしたまま、アポロの姿を目だけで追い続けた。

「疲れてるんだろう?座れよ、清麿」

「あ、ああ…えーと、どこに?」

「この部屋の中なら好きな所に」

アポロはそう言って柔らかく笑う。それは癒されるような綺麗な笑顔。

清麿は自然とアポロの方に足を進め、アポロの隣りに腰を下ろした。

その清麿をアポロも目だけで追い続けて、清麿が隣りに座ると目を合わせて笑みを深めた。

「それでいいんだ、清麿。どうして僕に会うことに迷う?」

「…これ以上、アポロの負担になるのが怖かったんだ…俺は…アポロの前で弱い、ただのガキになるのが怖い…っ」

「そう?僕は君の弱さも子供らしさも僕にだけは見せてほしい。負担になんかならないよ。僕はこれでも一応大人なのだし」

「分かってる!だから…怖かったんだ、アポロに寄りかかりそうで…」

「寄りかかっていい。甘えて良いんだ、清麿。いつも頑張ってる君だ。僕の側でくらい頑張らなくたっていいんだ」

「…抱きしめても…いいか?」

「うん、いいよ」

清麿は力の限りアポロの身体を抱きしめ、アポロは清麿の背に手を回し、されるがままになっていた。

そのアポロが不意に小さな笑みを零した。

「?」

「ふふ…いや、そんなに頑張って抱きしめなくてもいいのに。私は消えやしないよ?」

「…俺が…消えるかもしれないだろ」

「清麿?」

「明日、戦う相手はきっと未だかつて無い強敵だ…本当は…怖くて不安で仕方ないんだ…っ俺が崩れるわけにはいかないのに!」

「…そうだね。でも、君は一人ではないんだ。仲間がいる。君を助けてくれるよ。大丈夫、皆を信じて」

「皆を信じてないわけじゃないんだが…」

「うん、分かってるよ、清麿。僕は皆が羨ましい。僕はもう君を戦いの中で助けてあげることは出来ない…」

「そんなことない!色々協力してくれてるじゃないか!!それに俺はアポロが側にいてくれるだけで…っ」

少し身体を離してアポロに目を合わせた清麿はそう叫んでから顔を染めていった。

アポロは笑って、清麿の肩を抱いたまま一緒にベッドへ倒れ込んだ。

「うわ!?」

「僕の存在は君を助けてる?」

「あ、当たり前だっ」

「嬉しいな。じゃあ、大丈夫。勝って…僕を抱きに帰っておいで?」

「ッア、アポロォッ?」

どんどん顔を赤くしてゆく清麿と向き合ってアポロはただ、嬉しそうに笑っていた。

「今夜はこのままここで一緒に寝ようか」

「え…っ」

「僕の側で怖い夢なんか見せやしないからさ」

「いや、あの、アポロ?俺にも理性はあるが多分、我慢強い方じゃないと思うんだが…」

「あははは、だめだよ。ゆっくり眠ってほしいんだから。やっぱり一人で寝るかい?」

「っ〜〜〜ご一緒させて頂きますっ」

「うん、よろしい。それにしても、本当に清麿が女の子連れて来るとはなぁ…」

「…もしかして、マジで怒ってたのか?これって仕返し?」

「…教えてあげないよ」

そう呟いて、アポロはそっと清麿にキスをした。

今度は清麿が嬉しそうに笑っていた。





吉野様のコメントv
『清アポは決戦前夜話で、
実際にはないんですけどね(当たり前だ)。あればいいなと。』

うわーん(∋_∈)潤おうお話しをありがとうございます(涙)
もうもう、アポロだけが魔物がいないじゃないですか…
皆でがんばろう!って盛り上がる中で
アポロがどんなに内心悲しい思いをしてるかと想うと…
吉野さんのお陰で救われる思いです///
清麿とアポロのコンビがとても好きなので
原作にももっと出してあげて欲しいです//
次回は可愛い吉野さんのロップス×アポロ小説もおとどけ!(〃∇〃)

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