声が聞こえる。
手に入らないなら壊してしまえ。
彼の人の血は美しい。喉元を掻き切って証を刻みつけよう。
最期を迎える彼の眼に映るのは私だろうか。
それとも私の中の愛しい男の面影か。

恐ろしい夢から覚めた。
布団の上に起き上がると、夜着が寝汗で肌に張りつく。
土井先生を殺して消えゆく命に口づけた。
不思議と夢の中の自分の心は穏やかだった。
吹き出る赤い血を浴び幸せすら感じた。
愛の業はどれだけ深いのか。

昨日、忍術学園を訪れた。
久方ぶりに会う土井先生は少し痩せたようだ。
気付いてしまった。
父との間に流れる空気。
平静を装っていても絡まる視線。
隠しきれない甘い雰囲気。

ああ、恨めしい。
彼の人は父に抱かれどんな声で啼くのか。
想像すれば自分の中の魔物が暴れ出し激情に火をつける。
壊せ、自分の物にならぬなら殺してしまえ。
朽ち果てるまで愛し合えるのに。

彼は何事もないように私に笑いかける。
その声が私を狂わせるとも知らずに。
何気なく私に触れる。
その指を手折ってしまいたい。愛しい人。

想いはいつしか消えゆく。魔物は静かに眠りにつくのだろう。
血に染まる手。美しい屍は静かに眠る。
ひんやりとした肌に触れ、指先に死を実感し安堵する。
あなたは私だけのもの。冷たい唇に口付ける。
誰にも渡さない。
もう二度と…





利吉くん頑張れ!