第8話 「本部アローン」

ナレーション「ついに坂本を改心させることに成功したVレンジャーと大袈裟。果たしてこれからトントン拍子に事は進むのか? 一気に連載終了まで持って行くことができるのか? それともいつものようにここで足踏みなのか? これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

Vレンジャー本部。
坂本が加わってから部屋中にがらくたが増え、心なしか雑然としている。
井ノ原「なんか最近本部がきたなくなったよなあ。そう思わねえ?」
岡田「えー?そうか?俺、べつに思わへんけど」
三宅「だってお前も部屋かたづけねーもん。俺なんてきれい好きだから、こういうの耐えらんねーよ。いろんなもんがぶら下がってるし、あちこち変なもん取りつけたりしてるしさ」
あい「そうよね。ちょっとキタナイわよね。いったい何を取りつけてるのかしら?」
森田「坂本がさ、あれこれ作ってんじゃん。よくわかんないやつばっか」
岡田「そういや博士も一緒になって作ってんなあ。いままでの武器を改良するとかって。何に使うんかわからへんねんけど」
井ノ原「あの二人の組み合わせっていいのか悪いのかよくわかんねーよな」
そこへ勢いよく工作室のドアが開いて、大袈裟と坂本が入ってくる。
大袈裟「出来たぞ!ヒラ・カッターを改造してキタ・カッターだ!」
三宅「はあ?キタ・カッター?なに、それ?」
坂本「俺がここにいるとなると、マッチからよけいな妨害がくるだろうからな。敵を防ぐために本部据えつけ式になっている。5連発で、しかもブーメランみたいに何度でも使える」
森田「ふうん。でも、なんで名前がキタ・カッターなの?」
大袈裟「喜多方はラーメンがうまい!」
あい「えっ、それだけ?」
大袈裟「ほかにどんな理由がいるんだ?これが最大最強の理由じゃないか!」
ため息をつくVレンジャー。

もと坂本の地下工場。
鉄板DISHのアジトと化している。
ジョー「あーあ、結局俺らが貧乏くじ引いたわけやな。アジトも取り上げられて、ここがこれからの住処(すみか)や」
タツヤ「まさかあそこで坂本に裏切られるとは思わなかったな」
マボ「いや、そういう奴だとは思ってたさ。でも、あの人のためにはよかったんじゃねーか?」
タイチ「そのために俺たちが苦労するってことだよな。そういや最近体力仕事ばっかやってない?」
トモヤ「だって、俺たちそれがウリだからさ」
机の上の電話が鳴る。プッシュホンならぬダイヤル式の黒電話である。
ジョー「はい。あ、マッチさん。なんとかやってますわ。え? はあ、また俺らがですか? いえ、まあやれ言われるんやったらやりますけど。はあ、わかりました」
マボ「なんだ?また押しつけ仕事かよ」
タイチ「いまどきこんな電話機使ってる人いるの?これ希少価値だったりして」
タツヤ「リーダー、それよりマッチさんからは何て言ってきたんすか?」
ジョー「Vレンジャー本部を襲撃して、坂本を連れてこい、言うんや」
トモヤ「えー?マジかよー」

Vレンジャー本部。
大袈裟「こまったな。この調子でいくと、また予算が足りない」
井ノ原「あのさー、それは二人でどんどんがらくた作ってるからでしょ?」
坂本「がらくたとはなんだ、がらくたとは。立派な発明じゃねーか。だいたいここのスポンサーはちょっとケチくさくねーか?」
岡田「それは言うたらあかん」
大袈裟「とにかくみのさんの所に交渉に行こう。僕と坂本くんとあいちゃんは行く必要があるな。誰かひとり留守番してほしいんだけど」
森田「あ、俺残るわ。めんどくせーの嫌いだもん」
三宅「そうだよね。こないだもみのさんのこと脅してたから、やめといたほうがいいよ」
あい「じゃ、しっかりお留守番しててね」
坂本「おい、試作品とか置いてあるけどな、勝手にさわんじゃねーぞ」
森田を残して本部を出ていく大袈裟、坂本とVレンジャー。

ひとり残された森田。モニターの前の椅子にもたれ、ふんぞりかえっている。
「あーあ、退屈だよなー。なんかねーかなー」
おもむろに椅子から立ち上がり部屋中をうろつきまわるが、それだけではあきたらず工作室にはいっていく。工作室にはさまざまな変な機械とリモコンが置かれている。
思わずリモコンを手に取る森田。
「なんだ、これ?テレビとかビデオのリモコンみてーだな」
突如、本部内に鳴り響く警報。赤いランプが点滅する。
「な、な、なんだ?何があったんだ、いったい?」
あわててリモコンを手にしたままモニターの前に行く森田。

Vレンジャー本部前。
キックボードに乗った鉄板DISHの5人がせいぞろいしている。
タイチ「なあ、これも結局人力だろ?いくら流行ってるとはいってもさ」
トモヤ「だって、俺たち体力がウリだから」
マボ「つべこべ言ってんじゃねーよ。それよりどこから潜り込むかだ。坂本がいるとなるといろいろ侵入防止装置を作ってるにちがいねえ」
タツヤ「あの人ずいぶんひねこびてたからなあ。何作ってるかわかんねーぞ」
ジョー「なあ、ここ見てみ」
とジョーが指したのはいくつかのボタンの横にある張り紙である。
タイチ「危険?さわるな?このボタン全部あぶないってこと?」
タツヤ「うーん、でも確率からいって、それはちょっとおかしいんじゃないか?」
トモヤ「とりあえずどれか押してみたら?」

モニターの前の森田。
「あれ?こいつら鉄板DISHのやつらじゃねーか。ここに何しに来たんだろ?」
モニターのスピーカーボタンを押す。

Vレンジャー本部前の鉄板DISH。
いままさにボタンを押そうとするジョーの耳にスピーカーから森田の声が聞こえる。
森田「なあ、お前ら何やってんの?」
ジョー「なんや、見てたんか。そんならしょうがない。坂本さんを出せや」
森田「いねーよ」
タイチ「うそつけっ。ここに逃げこんだのはわかってんだからなっ」
森田「だから、いまいねーよ。俺、ひとりで留守番なの。なあ、俺さぁ、退屈してるから、お前らちょっと入ってこねー?」
トモヤ「おい、ちょっと待てよ。お前、なんか魂胆あるんじゃねーのか?」
森田「なんでだよ?一緒に学芸会の練習した仲じゃん」
マボ「げっ、学芸会。おっ、思いだしたくもねー・・・」
森田「すんだ事はもういいじゃん。キックボード持って入ってきなよ。俺、それ乗ってみてーもん。な?」
タツヤ「なんかお前らのことは信用できないからなー。ホントにお前ひとりなのか?」
森田「信用しろよ。ひとりっきりだって」

顔を見合わせる鉄板DISH。
ジョー「じゃあ行くか」
タイチ「その前にちょっとそのボタン押してみようよ」
トモヤ「え?やっぱ押すの?どれを?」
森田「ボタン?ボタンって何のことだよ?」
マボ「それ、その端の青いの押してみろよ」
森田「青?おい、その辺のって下手にさわるとやばいみてーだぞ」
タツヤ「いいから、いいから」
青いボタンを押すトモヤ。とたんに身体に電流が走り、悲鳴をあげる。
トモヤ「いっ、いって〜!」
森田「あ〜あ、だから言ったのに」

Vレンジャー本部。
ドアが開いて鉄板DISHの5人が入ってくる。
ジョー「ここがお前らの基地なんか。思ったより汚いとこにいてんなあ」
森田「坂本のせいだよ」
マボ「坂本さんの?なんでまた」
森田「あの人がつまんねーがらくたばっか作るからこうなったの。それよりキックボード貸してよ」
トモヤ「おい、さっきの電流は何なんだよ?はっきり聞くまでは貸せねーぞ」
森田「ああ、あれさ、あれも坂本が作ったんだけどさ、6分の1の確率で電流が流れるらしいよ。あんたよっぽど運が悪いんだなあ」
トモヤ「運が悪いで片づける気かっ?!痛かったんだぞ!」
森田「・・・知ってるよ」
タツヤ「え?なんで知ってんの?」
森田「それは俺が・・・、ってべつにいーじゃねーかよ」
タイチ「ははっ、お前あれで痛い目にあってるだろ?ぜってー引き当ててるだろ?そういう顔してるって」
ジョー「顔は関係ないんちゃうか? ボタンなだけにボンタンはいてるから・・・」
「えっ?」
いっせいに森田を見る鉄板DISH。
森田「誰がボンタンはいてんだよっ。いまどきそんなのはくかっ?!」
ジョー「ちゃうか? じゃな、ボインやから・・・」
「えっ?」
再びいっせいに森田を見る鉄板DISH。
森田「あのなー、俺男なんだけど?どこにあるってんだよ。それにいまどきボインなんて言うかっ?!巨乳だろ、巨乳っ」
ジョー「巨乳ええよな〜。印鑑持ってないときは代わりになるし」
マボ「それは拇印だろっ!」
ジョー「う〜ん、じゃ、モダンな格好してるから・・・」
森田「モダン? なにそれ? あ、モダン焼き? お好み焼きの」
ジョー「ちゃう。ナウいっちゅうことや」
マボ「リーダー、それってどっちも同じくらい死語なんだけど」
ジョー「死語?そんな言葉は俺の辞書にはないで。わかったっ!寝るときバタンキューやから・・・」
森田「俺、寝つき悪いの」
トモヤ「それはむしろ俺」
鉄板DISHの一同うなずく。
タイチ「寝つきいいだけじゃなくて寝起き悪いもんな。ちょっとやそっとじゃ起きやしない」
トモヤ「そんなことどうでもいいじゃん」
ジョー「じゃあ、街角で箱持って立ってる人にお金あげたやろ?」
タツヤ「それは募金だろうが」
ジョー「じゃあな、あれや、お前あれやってたやろ?」
森田「なんだ?」
ジョー「(ポーズを取りながら)アイーン!」
ずっこける5人。

ナレーション「やっぱり最初に心配したとおり作者の悪いくせが出て、北風がぴゅーぴゅー吹き荒れるVレンジャーR。本部にまんまと潜りこんだ鉄板DISHのはずだが、その後いったい何をやってんだっ?! 本部を預かる森田はどんな留守番をしてるんだっ?! こいつら本当にやる気あるのかっ?!そもそも作者!こんなストーリー展開でいいと本気で思ってんのか?! まともなはずの大袈裟、坂本、残りのVレンジャーははたしてこの異常事態を乗り越えて、再び本部に帰ることができるのだろうか?」

TO BE CONTINUED!


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