第7話 「I'll be there 」

ナレーション「ついにマッチと坂本の手で洗脳されようとしている大袈裟。坂本とともに悪の手先になってしまうのか?急行するVレンジャーたちは間に合うのだろうか? これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

マッチの屋敷。
ヘルメットの形をした悪夢増幅装置をかぶせられ、いまにも坂本の手でスイッチを入れられようとしている大袈裟。
坂本の手のスイッチが握りしめられようとして、手から滑り落ちる。
坂本「できない・・・」
マッチ「坂本!なにをしている。スイッチを入れてしまえ」
坂本「俺にはできない。やっぱり長野は俺にとっては特別な人間なんだ」
マッチ「この男がお前の中の最後の良心ってわけか?だが、この男と一緒ではお前の希望はなにひとつかなえられないだろうよ」
大袈裟「坂本くん、きみがそんなに欲しがってるものっていったい何なんだ?」
坂本「それは・・・若返りの秘法だよ」
大袈裟「若返り?」
坂本「お前にはわからないさ」

その時、いきおいよく扉が開いて、ミラクル・スクーターに乗ったVレンジャーがあらわれる。
マッチ「な、なんだ?!お前ら。人の家の中にそんなもので乗り込んできて」
井ノ原「あれっ?これがお気に入りなんじゃなかったっけ?ミラクル・スクーターの現物とそれに乗ってるVレンジャーがわざわざ来てやったってのにさぁ」
森田「そうそう。どうせだったら、その性能までよ〜くお見せしろってよ。だから、俺たちわざわざ出張してきてやったの」
5台のミラクル・スクーターのバックミラーがくるくる回り、チャンカチャンカチャンという音楽と「おもいっきり商事」という声が流れる。
三宅「これこれ。この音楽と声が特徴なんだよね。もちろん曲も声も自由に変えられるしさ」
ふたたびミラクル・スクーターのミラーがくるくる回り、音楽と声が流れる。
マッチ「そんなものはもういらない。おい、坂本、早くスイッチをいれるんだ」
あい「え〜っ?どうして?すっごく素敵な宣伝カーだと思うけど」
岡田「そやで。燃費もよくって安上がりやしな」
井ノ原「それとも本当の目的は別にあったってことか?」
マッチ「うっ、うるさいっ。おい、坂本、何をしている!」
またまたミラクル・スクーターのミラーがくるくる回り、音楽と声が流れる。
マッチ「おい、いいかげんにその音を止めろ」
森田「できねーんだよ。そういう仕様になってるんだ。俺たちもそれには閉口してる」

坂本「マッチさん、俺はずっとあんたにあこがれてきた。あんたみたいにいつまでも若くいたかったんだ。でも、長野を見ていて俺は考えが変わった」
マッチ「何をいうんだ。お前だって秘法を使えば、若返ることができる」
坂本「いいんだ、このままで。長野を見てみろよ。わざと老人の格好までしている。回りには子供みたいなやつが集まってるってのにな」
森田「子供みたいなやつって?」
三宅「もしかして俺たちのこと?」
あい「レディーに向かって失礼しちゃう」
岡田「レディーはないやろ」
いつのまにか大袈裟はヘルメットのようなものをはずし、カツラをつけている。
大袈裟「坂本くん、人間の本質は外見では計れないってことだよ。その人がどんなに若く見えるかは知らない。でも、心は若くないんだ。むしろ醜いよ。エゴと欲望でいっぱいじゃないか」
マッチ「なにをいう。エゴや欲望があるからこそ、人間はここまで進化することができたんじゃないか。求める心のないものには何も得られやしないんだ」
井ノ原「坂本、俺はまだあんたを心から許すことはできないかもしれない。でも、博士の言うことはわかる。あんたは求めるものと相手をまちがったんだ。若返りの秘法なんて、そいつには与えられないはずだ」
森田「前にも聞いたことがあるよな、バカ返りの美貌って」
三宅「ちがうって。それじゃお前だって」
あい「バカはともかく、美貌っていったらあたしでしょ?」
岡田「だから、ちゃう言うてるやろ」

大袈裟「坂本くん、彼らを見ていたらわかるだろう?その人のみせかけの若さと彼らの本物の若さのちがいがね。それはたんなる年齢の問題ではないよ。心のみずみずしさなんだ。彼らは心底悪を憎み、正義に燃えている。その精神パワーの強さは、きみにもよ〜くわかってるはずだよね。その心さえあれば、若さは取り戻せるんだよ。外見じゃあないんだ」
井ノ原「坂本、黙ってないでなんとか言えよ!」
坂本「わかってる。俺にもわかってるんだ。だが、俺の手はすでにどうしようもないくらい悪事で汚れている。もう戻れない。引き返すわけにはいかないんだ!」
大袈裟「引き返せるさ。やり直せるさ。その人から離れさえすればね」
井ノ原「もし、あんたが本当にやり直す気になったんなら、俺たちにできることなら何だって手伝うぜ」
坂本「俺は、俺は、俺は・・・」
森田「折れ歯?」
あい「枯葉じゃないの?」
岡田「ちゃうちゃう。関西弁やろ。”おったら”っていう意味や」
三宅「お前ら、ほんとにバカじゃねーの?この3バカ!」
井ノ原「お前もいれて4バカだろ?」

マッチ「もういい。お前らの言うことにはうんざりだ。坂本、お前にはつくづく愛想がつきた。そいつらと一緒に消えてもらおう」
マッチの合図とともに黒装束の男たちがバラバラッとあらわれる。
井ノ原「来たぞ。みんな、戦闘態勢だ!」
いっせいに身構えるVレンジャーたち。
坂本「待て。その必要はない」
大袈裟「坂本くん?どういうこと?」
坂本「マッチさん、あんたは俺のことを見捨てたつもりかもしれないが、同時に俺のほうこそあんたを捨てたんだ。あんたはこの世界に存在すべきじゃない。あんたのような人がいるから、戦争や悪事が絶えないんだ」
マッチ「言うじゃないか、その一員だったお前が。で、どうするっていうんだ?」
坂本「俺があんたに渡した長野の作った武器、あれは俺の精神パワーに反応するようにできている」
マッチ「ん?あのクロス・ペンダントか。だからどうだっていうんだ」
あい「もしかしてあたしの?」
岡田「あいちゃんボンバーや」
坂本「長野、お前のおかげで俺は目が覚めたよ。いままでのことは悪かった。俺はその罪を背負っていく」
大袈裟「坂本くん、どうするつもりなんだ?!」
坂本はいきなり走り出し、マッチの両手首をつかむ。
マッチ「な、な、なにをする!はなせ!」
坂本「お前たちはここから逃げろ。こいつは俺がなんとかする。あぶないから、俺たちから離れるんだ」
思わずマッチと坂本から距離をとるVレンジャー。
井ノ原「博士、博士も離れないとあぶない」
大袈裟「でも、坂本くんが・・・」
坂本「俺のことはもういいんだ。後のことはお前に頼んだ。お前と友達でよかったよ。じゃな、あばよ」
言うなり大爆発が起こり、あたりはもうもうたる煙につつまれる。

しばらくの後・・・。
井ノ原「おい、みんなだいじょうぶか?」
森田「ああ、前にもこういうことあったよな?」
三宅「そうだね。ネタ切れなんじゃねーの?」
あい「えっ、誰が?」
岡田「さあ、誰やろ」
大袈裟「坂本くん・・・」
大袈裟のがっくりした様子にしんみりするVレンジャー。
井ノ原「なあ、そういえばさあ、あいちゃんボンバーって使った本人にはなんの影響もないんじゃなかったっけ?」
あい「あ、ほんと。そういう話だった」
三宅「ということは、坂本は?」
大袈裟「いそげ!坂本くん、どこだ?」
マッチと坂本の立っていたあたりを探す大袈裟。
よくよく目をこらすと、焼けこげだらけのがらくたの中に全身煤だらけの坂本が倒れている。大袈裟が坂本の身体を揺する。
大袈裟「坂本くん、だいじょうぶかい?」
弱々しく目をあける坂本。
森田「おい、もうひとりのやつは?」
坂本「くそっ、逃げられた。なぜだ、俺の精神パワーが足りなかったのか?」
大袈裟「きっとあの人には、なにか別のパワーが働いているんだろう。きみのパワーはじゅうぶん強力だったよ」
井ノ原「おい、手を貸すよ」
井ノ原が坂本に手をさしだす。坂本はその手を取って立ち上がる。
大袈裟「坂本くん、これからきみは僕たちの仲間だ。また昔のように一緒に手を取ってやっていこう。みんなもそれでいいね?」
それぞれにうなずくVレンジャー。

坂本「ちょっと待ってくれ」
井ノ原「おいおい、まだなんかあるのか?」
坂本「俺のことじゃない。鉄板DISHのやつらのことだ。あいつら、俺をかばおうとした。きっとこれからマッチさん、いやマッチのやつのもとで辛い目にあうに決まってる。今度は、あいつらを助け出してやりたいんだ」
岡田「そうやなあ。あいつら、そんなに悪いやつらやなかったもんなあ」
三宅「あんたのほうがよっぽど悪だったよ」
あい「あんまり戦力にも頼りにもなりそうにないけどね」
大袈裟「でも、僕はうれしいよ。坂本くんの口からそんな言葉が聞けるなんてね」
森田「前に博士言ってたよね?俺たち正義のために戦う戦士だって。だから、あんたも正義に目覚めたんなら俺たちと一緒に戦えばいい」
坂本「ばか。そんなに俺を信用するんじゃねえ。俺はただ、長野と一緒に研究を続けるだけのことだ。正義だの悪と戦うっていうのはお前たちにまかせる」
三宅「あーあ、やっぱりね」
坂本「なんだ?」
三宅「だから、あんた老けてるんだよ」
絶句する坂本。
井ノ原「そうだよな。ここで乗り気になるくらいじゃないと、若いとは言えねーよな」
あい「なーんだ。ちょっとばかし見直したのにな」
岡田「年寄りはやっぱ年寄りっちゅうことやな」
森田「そういや、最年長戦士とか言ってたじゃん?」
坂本「うっ、うるせー。お前ら、やっぱろくなもんじゃねーな。長野、お前だけだわ、俺の味方は」
大袈裟「さあ、それはどうかな?じゃあ、きみにも老人の格好をつきあってもらおうかな」
坂本「・・・・・」

ナレーション「長い戦いの後、ついに坂本を寝返らせたVレンジャーと大袈裟。彼らに鉄板DISHを救い出すことはできるのか?悪を滅ぼすことができるのか? 行け!Vレンジャー。戦いはまだ始まったばかりだ!」

TO BE CONTINUED!


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