第6話 「一秒のオセロ」

ナレーション「マッチと坂本の罠にはまり、坂本とともに悪の道に墜ちるか、それともともに滅びるか、二者択一をせまられる大袈裟。はたして彼の選択は?そしてVレンジャーはどうなるのか? これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

Vレンジャー本部。
井ノ原「博士のやつ、うまくいったのかな?」
森田「どうかな?でも、博士のセンスを理解できるなんてすごい人もいたもんだな」
三宅「だけど、ちょっと変じゃない?あれをどうやって使うっていうんだろ?」
あい「宣伝用じゃないの?やっぱ。あの音楽とセリフを変えればなんとかなるかも」
岡田「でも、食料品とかならまだええけど、あんなもん、ふつうには使いにくいやろ。だいたい商品のイメージっちゅうもんもあるしな」
顔を見合わせるVレンジャーたち。
井ノ原「そういや相手は企業の名前じゃなかったな。俺、なんかいやな予感がしてきたぜ」
森田「また坂本のやつか。しょうこりもなく博士に手を出してきたのかよ」
あい「どうも話がうますぎると思った。ほんとしつこいったら。正体ばれてるのに」
三宅「でも、博士は坂本のことになると、なぜかいつも悲観的なんだ」
岡田「そういや、前もそんなこと言うとったなぁ」
三宅「俺にはよくわからないけど、きっとあの坂本ってのが博士の中の悪魔の部分とかかわってるんだ。博士は坂本と戦うことで、じつは自分の心の一部と戦ってるんじゃないかって気がする」
井ノ原「この間の悪夢の件もあるしな。このままほっといたら博士があぶない。ただでさえ坂本のことでは不安定なんだから、いつあいつのほうに転ばないとも限らないぜ」
森田「俺にはわかんないよ、なんであんなにされても友達って思えるわけ?」
岡田「そりゃあ友達やからやろうなあ。うまく言われへんけど、そういうもんちゃうんか?」
井ノ原「友達だからかどうかはわからないけど、とにかく博士には坂本に惹かれる何かがあるんだろ。とにかく急ごう」
三宅「そうだよ。みのさんの所に行って、どこに行ったのか聞かなきゃ」
それぞれミラクル・スクーターに乗り込み、みののおもいっきり御殿に向かうVレンジャーたち。

マッチの屋敷。
応接室で対峙する大袈裟と坂本、マッチ。
坂本「長野、もう一度俺と一緒に組もう。ここでなら、俺たちが望んでいたものはすべて手に入るんだ」
大袈裟「坂本くん。でも、僕にはいまさら悪事に手を染めることはできない」
坂本「悪事?何が善で何が悪か、お前にわかってるっていうのか?この世の中がどんなにくだらない連中によって作られてるか、お前は知ってるのか?このままでは人類に未来なんてない。俺たちは作り変えるんだよ、この世界をな」
大袈裟「この世界を?」
坂本「そうさ、昔いつも言ってたじゃないか。この腐った世界を変えたいって。それにここには好きな研究を好きなだけできる資金も設備もある」
マッチ「そのとおりだよ、長野くん。さ、その変なカツラは取りたまえ。私たちは腹を割ってゆっくり話し合う必要があるとは思わないか?」
坂本「いままでのことは悪かった。長野、もう一度大学時代に戻ってやりなおそう。俺たちふたりなら、どんなことだってやり遂げられるだろう」
うつむきながら、カツラを取る大袈裟。

大袈裟の回想。
大学の研究室で実験をしている坂本と長野(カツラなし)。
坂本「できた!見ろよ、これで俺たちの理論が証明されたってわけだ」
長野「そうだね。でも、これを実用化してくれるところなんてあるのかな?」
坂本「そんなことは問題じゃないさ。とにかく完成させることだ。完成させさえすれば、きっとどこかで使ってくれる」
長野「でも、資金はどうするのさ」
坂本「資金?う〜ん、そうだなあ・・・」
長野「やりたいことがあっても、資金がないんじゃどうしようもないよ」

みののおもいっきり御殿。
巨大な応接間ではみのが森田にせめられている。
森田「このごうつくばりっ!金のことばっか言ってんじゃねーよ。どこに行かせたんだ?博士をよ」
みの「き、きみね、かりにもスポンサーに向かってその言葉遣い・・・」
森田「るっせーんだよ。それで博士になにかあったら、あんたどうすんの?俺たちただじゃあおかねーからな。そうなったら、スポンサーもくそもねーんだよ」
他のVレンジャー4人は森田の後ろにならんで立っている。
三宅「ねえねえ、いいの?ほっといて。みのさん、怒りださないかな?」
井ノ原「ほっとけよ。ああいうのはあいつが一番似合ってる。みのさんが、びびるまでやらせとけよ」
岡田「そうかなあ?ブラックかて、けっこう似合ってるんちゃうんか?」
あい「うん、ほんと。見た感じ、ちょっとこわ〜い!」
井ノ原「こわいって、あのなー。(小声で)あいちゃんに言われたかねーよ。自分のこと棚に上げちゃってさ」
あい「え?なんか言った?でも、みのさんをびびらせるって、どうして?」
井ノ原「そりゃあ、なにしろみのさんの大事な取引先のところへなぐり込みに行くんだからさ」
三宅「なるほど。そうだよね。手加減しろとか言われてもこまるしさ」
岡田「手加減できるような相手やったらまだええんやけどな」
一方、みのは森田に襟首をつかまれている。
みの「ちょ、ちょっと待ってよ。ハードボイルドだなあ。刑事じゃないんだから、離してよ。近藤さんとこはちゃんと教えるから。でも失礼なことしないだろうね?」
森田「そんなのわかんねーよ。向こうの出方しだいじゃん」
みの「そ、そんな、それじゃあこまるよ」
森田「じゃあ、なんだって博士をひとりで行かせたんだよ?ぜ〜んぶあんたのせいじゃん。あんたの代わりに俺たちが行ってやるんだから、感謝しなよ。ぐずぐず言ってないでさ」
みの「ま、まあ、待ってよ。悪かったよ。ね?勝手に行ってもらっていいから」
井ノ原(森田をひきとめて)「もう、このへんでいいだろ。で、みのさん、博士はどこなんですか?教えていただけますよね?」
みの「う、うん。ここだよ。でもほんとに大袈裟くんは危ないの?」
しぶしぶ住所のメモを井ノ原に渡すみの。
井ノ原「おそらくは。さ、みんな、行くぜ!」
いっせいにミラクル・スクーターに乗り込むVレンジャー。

マッチの屋敷。
マッチ「さあ、大袈裟くん。心を決めてくれたかな?」
大袈裟「近藤さん、いやマッチさんというんでしたっけ。坂本くんがあなたの傘下についたわけは理解できましたよ」
マッチ「それでは、うちに来てくれるということだね」
大袈裟「たしかにあなたのお申し出には、僕にも惹かれるものがあります。何のこだわりもなくお会いしていたら、きっと坂本くんと同じことをしていたでしょうね」
坂本「どういう意味だ?」
大袈裟「坂本くん、僕はきみと別れてから、なぜか悪と戦う準備ばかりしてきた。これといった理由もないながら、だ。でも、いまわかったよ。僕がしてきたことは、坂本くん、きみと、そしてマッチさん、あなたと戦うためだったんだ」
ふたたびカツラをかぶる大袈裟。
坂本「長野、なにを言うんだ。失礼なこと言うんじゃない。マッチさんはな、俺たちの夢を全部かなえてくださるんだ」
大袈裟「僕たちの夢?たしかに大学時代にふたりで見た夢は美しかったかもしれない。でも、すでにそれはゆがめられてしまってるんだよ。きみ自身と同じにね」
坂本「ゆがめられてる?俺がか?」
大袈裟「そうだよ。きみも言ってたじゃないか、昔の自分とはちがうって。わからない?たぶんそれはその人のせいだよ」
坂本「ばかなっ。俺が変わったのは、この腐った世界のせいだ」
マッチ「もういい。坂本、例の用意をしろ。お前の言ったとおり、素直にわれわれの仲間にはなりそうもないな」
坂本「マッチさん、でもそれは・・・」
マッチ「何をためらっている。昔のパートナーに面と向かってしまっては、非情に徹することができないのか?お前らしくもない。最初の打ち合わせどおりだろう?長野くん、私の要請を素直に聞いてもらえないのなら、きみの考え方を変えてもらうよ。きみが望むと望まざるにかかわらず、だ」
マッチが指を鳴らして合図すると、コードをつけたヘルメットのようなものを持った男がふたりあらわれる。
大袈裟「僕を洗脳しようっていうんですか。ひきょうな・・・」
マッチ「察しがいいな。さすがは私を敵にまわすだけはある。さあ、その男を取り押さえるんだ」
男たちに羽交い締めにされる大袈裟。

マッチの屋敷に向かってミラクル・スクーターで疾走するVレンジャー。
井ノ原「急げ!なんだかどんどん悪い予感がしてくる」
森田「坂本のやつがいたら、ぜってーぶんなぐってやる」
三宅「それより博士がどうかなっちゃわないか心配だよ」
岡田「とにかく急がな。あいちゃん、だいじょうぶか?」
あい「うん、がんばる」

マッチの屋敷。
坂本「待ってください、マッチさん」
マッチは驚いたように坂本を見る。
マッチ「坂本、どういうことだ?」
坂本「長野ともう一度話をさせてください。かならず説得してみせます」
マッチ「無駄なことだ。私は裏切られるのは嫌いだからね。こんな考え方の男を仲間にはできないよ」
坂本「俺は、もとのままの長野と一緒に仕事がしたい。変えられてしまった長野じゃいやなんです」
マッチ「甘いな、お前は。まだ友情だとか心とやらにこだわってるのか?」
坂本「マッチさん!」
大袈裟「坂本くん、だから言っただろう?きみがこんなふうに変わってしまった全ての原因はその人にある。きみはすっかり昔の心をなくしてしまったわけじゃないんだ。まだ、戻れる。夢も希望も取り戻せる。友情も愛も消えてしまったわけじゃないっ」
坂本「長野・・・」
マッチ「その男に悪夢増幅装置をかぶせろ」
大袈裟のカツラがはぎ取られ、頭にヘルメットのようなものがかぶせられる。
マッチ「長野くん、これまでだよ。次に目覚めたときには、きみは私の言うことに従順になっているだろう」
大袈裟「坂本くん、まだ間に合うんだ!自分を取り戻せ!失ったものはすべてきみのもとに帰ってくるんだ」
坂本「すべて?紗弥加もか?おやじもか?俺の大切なものはなにも帰ってきやしないっ」
大袈裟「死んだ人は帰ってこなくても、その心も愛も帰ってくるよ。いまのきみを見たら、きっとふたりとも悲しむだろうね」
坂本「だっ、だまれっ」
マッチ「おい、坂本。スイッチをいれろ」
大袈裟「坂本くん、それでもきみはこの人を選ぶのか?そんなに僕が信じられないか?これはきみにとって最後のチャンスなのに!」
坂本の手にスイッチが握られる。

ナレーション「たいした動きもないのに、選択する立場が入れ替わってしまった大袈裟と坂本。大袈裟はこのまま洗脳されてしまうのか?Vレンジャーははたして間に合うのだろうか?」

TO BE CONTINUED!


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