第5話 「記憶のかけら」

ナレーション「坂本の陰謀を阻止し、さらに結束を強めたVレンジャー。だが、坂本の悪事が続くかぎり、大袈裟の心は晴れない。はたして二人に昔の友情のよみがえる日は来るのだろうか?
これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

坂本の秘密工場。
全身包帯だらけで、目を覚ます坂本。
坂本「ん?ここはどこだ?」
坂本の目にぼんやりと人の顔が写ってくる。
坂本「うん?・・・マ、マッチさん!」
がばっとベッドから起きあがる坂本。目の前にはマッチが、その後ろには鉄板DISHが座っている。
マッチ「坂本、もうだいじょうぶか?ひどい目にあったな」
坂本「マッチさん、すみません。あともう一歩というところだったんですが、長野のやつにしてやられました」
マッチ「長野?大学時代にお前のパートナーだったっていう男だな。どうやらお前はその男に勝てないようだね」
坂本「そっ、そんなことはありませんっ。くそっ、ちょっと油断したばっかりに・・・」
マッチ「油断?そこがお前の甘いところだな。いい、もうわかった。お前には一線を退いてもらうことにする」
坂本「一線を退く?どういうことですか?」
マッチ「お前の能力のほどはよく見せてもらったよ。いままでよくやってくれたと思う。だが、ここからはもういい。私が新しく発見・開発したエネルギー鉱石がある。お前にはその採掘現場で働いてもらうことにする」
坂本「マッチさん、ちょ、ちょっと待ってください!それはあんまりじゃないですか。私だってまだまだやれますよ。あんな長野のやつなんか」
マッチ「お前があの男に勝つことはないだろうよ。いままでのお前たちを見ていてわかった。お前にはできない」
坂本「そ、そんなっ。マッチさん」
ジョー「マッチさん、ちょっと待ったってもらえまへんか?」
マッチ「なんだ?」
マボ「そうですよ。坂本さんをかばうわけじゃないけど、これじゃああんまりです」
タツヤ「これまでのことだったら、俺たちにも責任がある」
マッチ「お前たち、この前は坂本とは一緒に仕事できないって言ってたんじゃないのか?」
タイチ「それはそうですけど、これは話が別です。鉱石の採掘現場なんて、一度行ったら二度と帰ってこれない・・・」
トモヤ「坂本さんは坂本さんなりによくやったと思う。もう一度チャンスをあげてください。お願いします」
坂本「お、お前ら・・・」
マッチ「お前たちがそこまで言うのなら、もう一回だけチャンスをやろう。あ、坂本、あいつらから奪ってきた武器を渡してもらおうか」
あいちゃんボンバーをマッチに手渡す坂本。
マッチ「どこかで見たような形だな。クロス・ペンダントか」
坂本「・・・」

坂本の回想。
坂本の家の居間で食卓を囲みながら、大きな声で研究について討論している長野と坂本。それを笑いながら見ている紗弥加と坂本の父親。
紗弥加の顔が次第にアップになっていくにつれて、その表情は寂しげなものに変わり、目からひとすじの涙がこぼれる。
紗弥加の声が聞こえる。
「お兄ちゃん。紗弥加、あの頃のお兄ちゃんと長野さんが一番好きだったよ」
「なぜだ?わすれたはずなのに、なんでお前のことばかり思い出すんだ?わすれてしまいたいのに。思い出しても俺にはつらいだけだっていうのに・・・」
ひとりつぶやく坂本。

みののおもいっきり御殿。
応接間で渋い表情でふんぞりかえるみのの前にかしこまっている大袈裟とVレンジャー。
みの「しかし派手にやってくれたね」
大袈裟「すみません。まさかこんなことになるとは」
みの「僕だってね、いままでいろいろ資金援助してきたつもりだけど、こうまで破壊されたんじゃね」
大袈裟「社長さんにはほんとに感謝しています。でも、そこをなんとか」
みの「僕だってね、慈善事業じゃないんだよ。だいたい誰のせいでこうなっちゃったの?」
あい「ごめんなさい。あたしのせいなんです」
みの「え?あいちゃんのせい?そうなの。いやね、ちょっと釘をさしておきたかっただけで。いいんだよ、そんなこと気にしなくても。すぐに本部を補修してあげるからね」
岡田(小声で)「えらい態度の変わりようやな」
森田(これも小声で)「俺たちだったら、ぜってーすげー怒ってるぜ」
三宅(当然、小声で)「まったく女に弱いんだから。あー、やだやだ」
井ノ原「お前ら、なにこそこそ言ってんの。みのさん、本当にいいんですか?」
みの「まあ、仕方ないよね。きみたちだって一生懸命やってくれてるわけだしね。それにさぁ、じつはこの間から乗ってもらってるミラクル・スクーター、あれを気に入っちゃってくれた人がいてさ、資金を提供するからあれを使いたいって言ってきたんだよ」
森田(小声で)「えっ、あれを?」
岡田(これも小声で)「うそやろ?」
三宅(当然、小声で)「趣味わりー」
大袈裟「きみたち、なにを言ってるんだ。で、誰なんですか?その素晴らしい人はっ」
みの「うん、近藤って人なんだけどね。それでその人がぜひ発明者に会いたいって言ってるんだよ。大袈裟くん、きみ行ってくれるよね?」
大袈裟「もちろんですよ。なんならスクーターに乗ってうかがいます」

マッチの屋敷。
坂本「マッチさん、ここに長野が来るっていうんですか?」
マッチ「ああ。おもいっきり商事の社長をとおして話をしといたから、きっと来る。坂本、わかってるな?お前のやることは」
坂本「はい。でも、長野が素直に言うことを聞くとはとても・・・」
マッチ「その時には洗脳してしまうんだな。お前の作った悪夢増幅装置、あれを使えばわけないだろう」
坂本「それはそうですが・・・」

坂本の回想。
Vレンジャー本部で大袈裟博士になっている長野が坂本に語りかける。
「坂本くん、きみが求めてる力と僕たちが持っている力は違うものかもしれない。でも、いつかきっときみにもわかる日が来ると思うよ。正義の力、悪を憎む力、そして人を愛する力の強さをね。信頼や友情、きみがばかにするそういったものにも大きな力があるんだよ」
「愛だと?いまさら何言ってんだ。そんなものに力なんてあるもんか!」
吐き出すように言う坂本。

ミラクル・スクーターに乗って、マッチの屋敷へ向かう大袈裟。マッチの屋敷の門の前でスクーターを止める。ミラーがくるくる回り、音楽と「おもいっきり商事」という声が流れる。
大袈裟「ここか、近藤さんの屋敷は。でっかいなあ。これだったら気持ちよく資金援助してくれそうだ」
門の中へスクーターで入っていく大袈裟。

マッチの屋敷の中の応接室。
ヨーロピアン調の応接セットに向かい合って腰掛けているマッチと大袈裟。
大袈裟「それにしても本当にお若いですね。信じられないですよ」
マッチ「私?いやあ、そんなことはない。たんなる童顔ですよ」
大袈裟「私と同じくらいの年の友人のほうがよっぽど老けて・・・いやそのっ」
マッチ「ふうん?きみの作ったミラクル・スクーター、あれにはほんとに感心したよ」
大袈裟「本当ですか?自分でも会心の出来だと思ってたんですが、乗組員にはいまいち評判がよくなくて」
マッチ「乗組員?」
大袈裟「あ、いえ、スクーターに乗って宣伝してもらってるVレンジャーたちです」
マッチ「なるほど。ところで、あれは私の希望にあうようにモデル・チェンジしてもらえるのかな?」
大袈裟「もちろんです。どういうのをお好みなんですか?」
マッチ「そう、まずエンジンを強力なのに変えてもらって、水の上でも走行できるようにしてほしい」
大袈裟「水の上でも?いったい何に使うんですか?宣伝用じゃないんですか?」
マッチ「できれば空中も飛べるようなものがいいね。なにしろ瞬間移動装置のかわりに使いたいと思っているものだから」
うっすらと口元に笑いを浮かべるマッチと驚愕する大袈裟。
大袈裟「えっ?!瞬間移動装置ですって?!あ、あなたはいったい・・・」
マッチ「きみはたしか坂本くんの大学時代のパートナーだったね。きみのことは彼からよく聞かされている。一度あいたいと思っていたんだよ」
大袈裟「あなたは・・・そうか、あなたが坂本くんをあんなに変えてしまったんだな」

大袈裟のおぼろげな回想。
とある研究所の一室。
坂本と長野(カツラなし)が薄暗い部屋に入ると、奥の暗闇に椅子に座った人影が見える。
坂本「連れてきましたよ、マッチさん。彼が前から話してた長野です」
椅子の人影はゆっくりとこちらへ振り返る。
マッチ「ようこそ、私の研究所へ。長野くん、いつかきみがここへ来るだろうことは、ずっと前からわかっていた」
長野「どういうことなんですか?ここはあなたの研究所なんですか?僕にここで何をしろと言うんです?」
マッチ「大学時代と同じだよ。そこにいる坂本とパートナーを組んで、きみたちの好きな研究をしてくれたらいい」
長野「好きな研究?」
マッチ「そうだ。きみが心の奥底でやりたいと思っていることだよ。きみの心の半分が熱望している研究だ。もし、それが成功したなら、そのかわりにきみが欲しがっているものを全て与えよう。権力も財力も、そうきみが望むなら若ささえもね」
長野「若さ・・・?」

マッチの屋敷の応接室。
マッチ「変えた?ふふ、どうかな?自分で変わったんだよ。本当の自分にね」
大袈裟「近藤さんでしたね?あなたに本当の坂本くんがわかってるっていうんですか?彼は前からあんな人間だったわけじゃない。研究熱心な、男気のあるやつだったんだ」
マッチ「それは本当の彼ではないね。本当の彼は破壊を求めていたはずだ。優秀な頭脳を活かせる研究所と資金、そしてなによりも力をね。それはきみも同じだろう?」
大袈裟「権力や財力、そして暴力、ですか?あなたの言う力は。だったら僕には必要ない」
マッチ「本当にそうかな?」
パチンと指を鳴らし、合図するマッチ。ドアを開けて入ってくる坂本。
大袈裟「坂本くん、やっぱりここにいたのか」
マッチ「坂本、じゃ、後のことはまかせたよ。わかってるな?これが最後のチャンスだ」
坂本「はい、マッチさん」
大袈裟「最後のチャンス?何のことだ?」
坂本「お前と俺がもう一度大学時代のように手を組むか、それとも俺がお前の前から永遠に姿を消すかのどちらかってことだ」
大袈裟「姿を消す?それはどういう意味?」
坂本「俺はお前のせいでマッチさんの信用を失っている。だからお前を俺の仲間に引きずり込んでやる。さもなくば」
大袈裟「さもなくば?」
坂本「俺ももうおしまいってことだよ」
大袈裟「坂本くん・・・」
マッチ「長野くん、いや、いまは大袈裟博士だったな。そういうことだよ。パートナーだったきみと坂本は運命を共にしてもらう。坂本と組んで私のもとで研究するか、坂本と一緒に鉱石の採掘現場で一生を終えるかのどちらかだ。さあ、どっちを選ぶんだ?」

ナレーション「罠にはまり、マッチの前で白か黒かの選択をせまられる大袈裟。はたして大袈裟はどちらを選ぶのか?そしてVレンジャーのもとに大袈裟が帰ってくる日は来るのだろうか?」

TO BE CONTINUED!


VレンジャーR・トップへ

メインのぺージへ