第4話 「夢のつづき」

ナレーション「坂本の陰謀にやっと気づいたVレンジャーたちに反撃の機会がやってきた。はたして宿敵・坂本を打倒することはできるのか? 大袈裟と坂本のかつての友情はどうなるのか? これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

Vレンジャー本部。
にっこり笑った大袈裟はやぎのかぶりもの(ただし頭部だけ)を取り出して、坂本に見せる。
坂本「なんだ? それは」
大袈裟「急なことで、使い回しで悪いんだけどね。以前、やぎの雪ちゃんを演るために作ったものなんだ。ちょっと臭いかもしれないけど」
坂本「雪ちゃんってハイジのか? ばか。なんだって俺がそんな・・・」
大袈裟「もちろんこれだけじゃないよ。きみが僕のカツラにつけてくれた例の装置もつけさせてもらう」
坂本「な、なんだと」
井ノ原「博士、なかなかやるじゃねーの。この野郎にはそれくらいしてやんないとな」
森田「そうそう。せっかく作ったもんなら、自分で味わってもらおうじゃん」
あい「そうよねー。純真なあたしたちを騙してくれちゃって。正直マジむかついたー」
三宅「そうだね。それをつけたあんたがどういうふうになるか楽しみだよ」
岡田「こうなったら、あんたの本心ってやつを見してもらうわ」
大袈裟「ほら、できた。さあ、みんな坂本くんを押さえて」
いっせいに坂本に飛びかかるVレンジャー。
坂本「てめえらっ、この野郎っ!」
坂本は必死に抵抗するが、多勢に無勢で押さえ込まれてしまい、椅子にくくりつけられる。
井ノ原「ほらほら、おとなしくしろよ」
坂本の頭にかぶりものをかぶせる大袈裟。

坂本「ぎゃああぁぁぁ〜っ!やめろっ、やめてくれ〜〜〜っ!」
いきなり悲鳴をあげて暴れる坂本。
井ノ原「なんかさぁ、さっきのお前の時と似てるなあ」
森田「え? 俺こんなみっともなかったの? うそでしょ?」
三宅「いやぁ、こんなもんだったよ。でも、坂本のほうがパワーアップしてるみてーだな」
坂本「よせっ、よせっ。それ以上近寄らないでくれっ。俺、そんな趣味ねえんだ。どうせなら腐ってても女がいいっ」
あい「腐ってても女? そういや岡田くんが近くに行ったときも悲鳴あげてなかった?」
岡田「なんで俺やねん。みんな俺のことをなんか誤解してへんか?」
井ノ原「誤解だったらいいけどな」
三宅「そういや、レッドのやつもあいちゃんより岡田のほうがいいって言ってなかった?」
森田「えっ? い、い、言ってねーよっ」
井ノ原「言ったよ。確かに俺は聞いた」
あい「なにそれ? 失礼しちゃうなあ。森田くんもやっぱ男の人が好きなんだ」
岡田「うそやろ? 俺、そんなん困るで」
森田「俺だって困るよ」
坂本「はじめて顔を合わせた日から俺のことばかり考えてたなんて言うなっ。いつだって僕は君のことを見つめている? もう君は何も悩まなくていい? 何も苦しむ必要はない? っざっけんじゃねー。僕がこの暗闇の中から、きっと君を助け出してあげる? んなもんいらねーよっ。いいから消えちまえっ」
三宅「なに言ってんの? こいつ」
森田「なんかホモのやつに迫られてるって感じだよな」
大袈裟「僕だ・・・」
あい「えっ? 博士、なんか言った?」
大袈裟「これは僕が言った言葉だ」
岡田「げっ。もしかして博士って、博士ってホモやったんか?」
大袈裟「そういうわけじゃないよ。でも、これは大学時代に僕が落ち込んでた坂本くんに言った言葉だ。あんまり落ち込み方がひどいんで、なぐさめてあげたかったんだ。坂本くんはその時、すっかり酔いつぶれて寝てると思ったんだけど、聞こえてたんだな」
井ノ原「でも、それがいまになってこいつを苦しめてるんだから、皮肉なもんだな」

坂本の秘密工場。
トモヤ「なあ、なあ。この機械さあ、いっそ最大出力にしちゃったらだめなの?」
マボ「ああ、もういいんじゃないか? やっちまえよ」
タイチ「そうだよね。めんどくさい。じゃあいくよ」
悪夢増幅装置のパワーを最大にあげるタイチ。

Vレンジャー本部。
坂本「い、行くな。行くんじゃないっ。やめろ、やめるんだ」
井ノ原「おい、今度は泣きだしたぜ」
坂本「行っちゃだめだ。紗弥加」
森田「紗弥加? 女の名前じゃん」
三宅「腐っても女、かよ」
大袈裟「・・・紗弥加ちゃんは坂本くんの妹だよ」
あい「妹? この人妹いるの? イメージあわなーい」
坂本「大沢っ、てめーのせいで、てめーのせいで紗弥加はっ、おやじはっ。許さねえ、全部てめーのせいだ」
岡田「大沢? 誰のことや?」
大袈裟「さあね。知らないな。でもきっと紗弥加ちゃんたちになにかあったんだろうな」
坂本「俺は、俺は、俺は、後悔なんかしないっ。あれで正しかったんだ。全部てめーのせいじゃないかっ。長野っ、お前は何をやってたんだ? お前さえ紗弥加をつかまえてくれてたらっ。いや、もういい。長野、俺と一緒に墜ちよう。お前も墜ちるところまで墜ちてしまえっ」
黙って坂本の頭から、かぶりものを取る大袈裟。ぐったりと意識を失う坂本。
井ノ原「博士っ、いいんですか? こいつをここで許しても」
大袈裟「これ以上は見てられないよ」
森田「あんな目にあわされたのに?」
大袈裟「たとえ坂本くんがどんな坂本くんであっても、僕の友達だったことには変わりないんだ」
あい「なんかわかる気がする」
岡田「そうやなあ。それが友達っちゅうことかもな」
井ノ原「そんなに甘い考えでいいのかね? こいつはきっと腹の底まで腐ってるぜ」
森田「でも、どっちみちここからは逃げられないわけだから」
三宅「また裏切られなきゃいいけどね」

坂本の縄をほどく三宅。その途端、気絶していたはずの坂本ががばっと跳ね起き、大袈裟の手に渡したあいの武器の複製を奪う。
坂本「わっはっは。油断したな。このあいちゃんボンバー・スーパーを使えば、シールドなんて役にたつもんか。ここから脱出することなんてなんでもないさ」
大袈裟「あいちゃんボンバーは、あいちゃん以外の人間には反応しないよ」
坂本「だから俺が作り替えたのさ。俺にも使えるように、しかもさらにパワーアップさせてな」
井ノ原「きさまってやつは。やっぱりとことん腐ったやつなんだな」
三宅「博士をまた裏切ったことになるんだ」
坂本「裏切った? 長野をか? 長野が俺のことを信じてるっていうのか? ばかか? お前ら」
岡田「博士はな、どんなあんたでも友達には変わりないって言うたんや!」
坂本「ばっかじゃねーの? いつまでも続く友情なんて気持ち悪いぜ。俺は昔の俺とは違うんだよ」
あい「・・・許せない」
坂本「なんだと?」
あい「ぜったい許せない。あたしたちの信頼を裏切って、博士のことまでそんなに言うなんて」
岡田「俺もや。博士はそれでもあんたを友達やと思ってんのに。俺たちだけじゃなく、あんたは博士の友情さえも裏切るんか?!」
坂本「友情? 信頼? ふん。そんなものが何の役にたつってんだ? 俺が欲しいのは力だよ。力と、そして若さなんだよ」
森田「あんたには手に入らないよ。そんな考えでいる限りはな」
坂本「手に入れるさ。俺なりの方法でな」
大袈裟「坂本くん、きみが求めてる力と僕たちが持っている力は違うものかもしれない。でも、いつかきっときみにもわかる日が来ると思うよ。正義の力、悪を憎む力、そして人を愛する力の強さをね。信頼や友情、きみがばかにするそういったものにも大きな力があるんだよ」
坂本「ふん。どこまでもばかなやつらだ。信頼したおまえらがばかなんだよ。じゃな、あばよ」
あいちゃんボンバーを握りしめる坂本。その瞬間、ものすごい大爆発が本部を襲う。
「うわあぁぁぁぁぁ〜〜〜〜っっっ・・・」
誰のものともわからない悲鳴の響く中、煙と埃で何も見えなくなってしまう本部。

しばらく後のVレンジャー本部。
室内はさんさんたるありさまと化している。
大袈裟「みんな、だいじょうぶだった?」
森田「べつに怪我はねーよ」
井ノ原「俺も。坂本は? やっぱり逃げられたか」
あい「たぶん重傷だと思う」
三宅「えっ? あいちゃん怪我したの?」
あい「ううん、坂本さんが。だって、あたしすっごく頭にきてたんだもの。死んじゃえって思ったくらい」
岡田「そういやあ、ごっつい悲鳴が聞こえてたなあ。俺らみんな怪我がないっちゅうことは、あれは坂本やろなあ」
大袈裟「たぶん爆発でシールドが破れた後に瞬間移動装置で逃げたんだろうけど、あいちゃんが本気で怒ったときの精神パワーはすごいからね。さすがの坂本くんも、そこまでは計算できなかったんだろうね」
三宅「いい気味だよ。ちょっとは思い知ったらいいんだ」
森田「ざまあみろってとこだな」
岡田「いつかあの人にも博士の信念が伝わったらええな」
大袈裟「そうだね。でも、近い将来きっと僕か坂本くんか、どちらかの考えが変わるような気がするんだ」
三宅「いやだよ、俺。もし博士が悪魔に変わっちゃったりしたら」
大袈裟「わかってるさ。でも、きっとそれは僕が通って行かなければいけない道なんだろうね。悪夢のつづきはいい夢なのかな? それとも・・・」
森田「いまそんなことで悩んでもしょうがないだろ。それよりこのぼろぼろの本部どうすんの?」
井ノ原「しゃーねーな。じゃあ、みんなで掃除にかかるとするか。さぼんなよ」

坂本の秘密工場。
鉄板DISHが揃っているところへ、坂本が満身創痍であらわれる。
ジョー「さっ、坂本さん、どないしたんでっか? その格好。全身焼けこげだらけやないか」
坂本「と、とんでもないパワーだ・・・」
マボ「計画はうまくいったんですか? ・・・なわけねーよな、それじゃあ」
坂本「なんて恐ろしい力なんだ・・・」
タツヤ「恐ろしい力? いったい誰のこと?」
坂本「あい・・・」
そのまま意識を失う坂本。あっけにとられている鉄板DISH。

ナレーション「こうして悪夢から覚め、またひとつ試練を乗り越えたVレンジャー。大袈裟の友情にもかかわらず、悪から抜けることのない坂本。両者の戦いはいつまで続くのか? そしてどちらが勝つのか? 行け、Vレンジャー。悪を打倒し、正義を守り抜け!」

TO BE CONTINUED!


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