第28話 パラレル編・企業戦士物語・5

(by さこさん)

 あれよあれよと言う間に3連勝。彼らに社会の厳しさを教えるはずが、人生なんとかなるもんだ、と思わせてしまった様な今回の企画。だが、昨日の敵は今日も敵。生き馬の目を抜く様なこの企業戦争。このまますんなり行くはずはない(って言うか行かせない)。果たして彼らは本当に台湾行きをゲット出来たのか?
 これは営利追求に命をかけた、企業戦士の物語、だったはずである…。

 おもいっきり商事。
 『プロジェクトV』ルーム。
 
岡 田「台湾かぁ〜、ジャッキー・チェンに会えるかな」
三 宅「ジャッキー・チェンは香港だって」
森 田「じゃあ、俺、サモハン・キンポーでいいや」
三 宅「それも香港」
井ノ原「俺は、やっぱブルース・リーだな」
三 宅「だから、それも香港! しかももう死んでるじゃないか!!」
あ い「金城武に会えるかしら〜」
三 宅「だ〜か〜ら〜! それっ、はいいのか…」
森 田「ビビアン・スーに会えるかしら〜」
井ノ原「かしら〜、っておまえ何おかまになってんだよ。それにビビアン・スーだったら日本の方が会える確率高いじゃんかよ。噂によると横浜あたりで刑事やってるらしいぜ」

 浮かれまくるVレンジャーの面々。
 とそこへ浮かない顔をした大袈裟が入って来る。

三 宅「あっ、大袈裟課長、どうでした? 台湾へはいつから行くんです?」
大袈裟「えーっ、その事ですが、あれはなくなりました」
井ノ原「なくなったって、一体どう言う事ですか?」
大袈裟「ですから、今までの勝負は全部無効になりました」
森 田「だって、最初の約束じゃより多く仕事を取った方が台湾進出のパートナーになるって話だったじゃないですか!」
大袈裟「確かに、最初の約束ではそうでした」
岡 田「せやったら、5戦のうち3勝したうちの勝ちやないんか?」
あ い「そうよ〜。でもって、あいは台湾で金城君とフォーリンラブするのが夢だったのに」
岡 田「だったのに〜って、あいちゃんの夢は受付嬢になって寿退社やなかったんか?」
あ い「夢は進化するものなのよ。細かい事ごちゃごちゃ言わないの」
大袈裟「とにかく、もうこれは決定された事なんだよ」
井ノ原「でもそれじゃ納得がいきませんよ、ちゃんと事情を説明して下さい!」
大袈裟「実は昨日、みの社長と喜多川会長のところに結果報告も兼ねてご挨拶に伺ったんだよ。そしたらいきなり『こんなに簡単に決まっちゃ面白くないよ、もう1回やろ、ユー、OK?』って言われてしまって…」
森 田「それじゃあ、これまでの俺たちの努力は一体何だったんだよ!!」
岡 田「全部、水の泡言うんか?」
三 宅「一生懸命頑張ったのに…」

   (陰の声:って君達は一体何かしたのか?)

森 田「ん? 誰か何か言った?」
井ノ原「でも、って事は俺やあいちゃんにも活躍するチャンスが出来たって事ですよね?」
大袈裟「そう言う事になるね」
あ い「じゃあ、あいも“しゅっこう”っていうのが出来るってこと?」
井ノ原「っしゃーーー! 俺の腕の見せ所だぜ!!」

   (影の声:って君達は一体何か出来るのか?)

井ノ原「ん? 誰か何か言った?」
あ い「嬉し〜い。あいOLになって会社で働くって言うのが夢だったんですぅ〜」
森 田「はぁ〜? さっき金城武と封印デブが夢だって言ってたじゃねぇか」
三 宅「フォーリンラブ」
あ い「いちいちうるさいわね。だから言ったでしょ、夢は刻一刻と進化するもんだって」
岡 田「でもやっぱ納得出来へんなぁ。昨日までOKやった事が今日はダメやなんて…」
み の「それが社会ってものなのさ」
一 同「みの社長!」

 部屋へ入ってくるみの社長。
 
み の「この業界で生きて行こうと思ったらね、喜多川コンツェルンの言う事は絶対なんだよ。あそこが白と言ったら、カラスだって白鳥になるんだよ」

 大きくうなずく大袈裟。

み の「とにかく、もうあと一踏ん張りだ。みんな、何とか頑張ってくれたまえ」
一 同「はい!」
大袈裟「と言うことで次の仕事は…」

 一方、近藤商事。
 『プロジェクトG』ルーム。

国 分「あ〜あ、これで台湾行きはパァ〜かぁ」
山 口「まっ、いいじゃない。あれは一時の夢だったんだよ」
松 岡「そうそう、俺達の本来の仕事は化粧品販売なんだからさ」
城 島「そう言えば、どうやら新作が出来るらしいで」
国 分「へぇ〜、今度はどんなヤツなんだろう」
城 島「なんでもなぁ、カップル同士で使うボディーローションらしいで」
山 口「えっ! やっぱりあの噂は本当だったんだ」
松 岡「何だよ、その噂って?」
山 口「そのローションの名前なんだけど『塗られてBANZAI』って言うらしいんだ」
松・国「うわぁ〜…」
城 島「うわぁっ〜! カッコええなぁ。横文字入っとるで」
長 瀬「城島さん、すごいっすねぇ! 英語も出来るんすか、すごいっすよ!!」
国松山「……」

 とそこへ不気味な笑顔を浮かべた坂本が入って来る。

国 分「どうしたんですか、坂本課長? 台湾行きはポシャったって言うのに何だか上機嫌じゃないですか?」
坂 本「その事だけどな、今までの事は全部なし! もう1回やり直し〜!!」
山 口「やり直しって、一体どういう事ですか?」
坂 本「だ〜か〜ら〜、これまでの負けは全部チャラなんだよ〜ン」
松 岡「って事は俺達にも台湾行きのチャンスがまだあるってことか?」
坂 本「その通り。あと2戦、これに勝てば今度こそ台湾進出だ! 世界デビューだ!!」
城 島「っしゃーーー! やったるでーーぇ!!」
坂 本「いや、君は、もう、いい…。とにかく、ほんとにこれが最後のチャンスだからな。1度ぐらいいいとこ見せてくれよ」
松 岡「ちょっと待てよ。だいたいなぁ、これまで負けたのだってあんたの采配がまずかったからじゃないのか?」
国 分「そうそう、詰めが甘いんだよ、詰めが」
坂 本「(ボソっと)って、お前に言われたかないね…」
松 岡「だから、今回は俺達で決める」
山 口「で? 次の仕事って言うのは何なんですか?」
坂 本「えっと、“調理師”だそうだ」
長 瀬「あっ、俺やってみたいな〜。TVの『ザ・シェフ』とかカッコ良かったっすよね」
松 岡「ばか、お前みたいな適当な奴に料理が作れるわけねーだろ。料理と言ったら『流れ板の松』。この俺様をおいて他にいないでしょう」
国 分「まっ、賢明な選択でしょうね」
坂 本「でも俺の直感は『長瀬で行け』と言っているんだが…」
松 岡「あんたの直感なんて当たるわきゃないじゃん」
国 分「そうそう、フィーリングやひらめきで出来る程、仕事ってのは甘くないですからね」
山 口「じゃ、次の仕事は松岡君と言う事で」
城 島「女将しげ子じゃダメかしら?」
一 同「いいからおまえは引っ込んどれ!!」

 どうだ諸君、これが企業、これが現実と言うものだ。昨日までOKだった企画が今日にはボツになり、今日まで仲間だった君の同僚が明日には上司側に寝返っていることもある。調印直前の契約は破棄され、今日中に支払われるはずの代金は明日になっても入金されず、今出たはずの蕎麦屋の出前は1時間たっても届かない。今回こそは社会の厳しさを思い知ったであろうVレンジャー達。だがここで負けてはいけない。これを乗り越えればきっと明るい未来が君達を待っている。
行け、Vレンジャー。底抜けにネバギバな戦士たち!

TO BE CONTINUED!


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