第27話 パラレル編・企業戦士物語・4

(by さこさん)

大袈裟の綿密な事前調査のお陰で2勝目も勝ち取ったVレンジャーたち。第3戦目の依頼は水泳インストラクター。数々の勝利記録を引っさげて派遣されし戦士は三宅。今度こそ実力で勝星をあげられそうだ。(だが、未だかつて彼の泳ぐ姿を見たものはいない…)
これは営利追求に命をかけた、企業戦士の物語である。

 都内某所にあるスイミングスクール『四ッ葉』。
 プールサイド。
 水着姿の三宅と山口。
 向こうからメガホンを持った男(おりもまさお)がやって来る。

おりも「どうも初めまして、コーチのおりもです。いやぁ、お二人ともいい体してますねぇ。これは期待できそうだ」
大袈裟「彼はあちこちの大会でも優秀な成績をあげてますから」
おりも「そうですか、それは頼もしいな。で、こちらの方は?」
坂 本「そりゃもう、この筋肉を見ていただければお分かりでしょう。スポーツ万能。100Kmマラソンを走りぬいた経験もありますし、『自転車ノンストップどこまで行けるか競争』ではあの世界のジャッキー・チェンを相手に見事勝利。走っては流しそうめんやアヒル隊長には僅かにおよびませんが、それはもう弾丸の如くですよ」
おりも「ほぉ〜、なんだか良く分かりませんが、これまた頼もしいですね。では早速受け持って頂くクラスを見て頂きましょうか」

 案内されたプールでは、必死の形相のスクール生(伊集院光、松村邦洋、森久美子、渡辺えり子)が水飛沫をあげている。
 プールサイドには、陸に打ち上げられたトドよろしく別のスクール生(ホンジャマカ石塚、キャシー中島)が横たわっている。
 隣のサウナ室では、年配のスクール生(野村沙知代、浅香光代)が無言で汗を流している。

おりも「当スイミングスクールでは、通常の競泳クラスの他に水泳によるダイエットクラスも開設してるんですよ。今回お願いしたいのは、このダイエットクラスなんです」
坂 本「それはもう、まさにうちの山口の為にあるような仕事ですよ。この山口、スポーツも得意ですが、ダイエットにかけてもスペシャリストでして。お見受けしたところ、こちらの三宅くんはダイエットには縁のなさそうなタイプのようですし。やはりダイエットは経験したものにしか分からない部分がありますからねぇ。どちらかと言えば、こちらに人を派遣されるより入会なさった方がいいんじゃないですか、おもいっきり商事さん?」
大袈裟「むっ! 失礼な。私の場合はこれは贅肉ではなくて筋肉ですからいいんです。そう言うあなたこそすこしは体脂肪を増やす努力をされた方がいいんじゃないですか? 年取ってからカサカサだと老けて見えますからね、って言うかもう老けてるか」
坂 本「なんだと?」
おりも「まぁ、まぁ、まぁ、まぁ。取り敢えず、期間は1週間でしたね? お二人とも頑張って下さいね」
三・山「宜しくお願いします」
おりも「ちょっと指導要項取って来ますので。レッスンメニュー等、詳しい事は後程ご説明します」

 4人を残し、事務所へ戻るおりも。

大袈裟「大丈夫かなぁ、三宅君? いくら泳ぎが得意と言ってもあんな体の大きな人達にしがみつかれたらひとたまりもないんじゃない?」
三 宅「ヘーキ、ヘーキ。それに俺、車ごと海に落ちた場合の脱出訓練受けたことあるし」
大袈裟「そんな妙な訓練、一体どこで受けたんだ」
三 宅「いいじゃん、どこだって。まぁ、ちょっとした俺の裏技ってやつ? 大丈夫、何とかなるでしょ」
大袈裟「だといいけど…」

 強敵を目の前にして今回ばかりは少々不安気な大袈裟。
 一方、今度こそはと自信満々な坂本。

坂 本「いいな、すでに2敗している我が社にもう後はない。お前が最後の切り札だ。しっかりやってくれよ。 ま、でも今回は楽勝だろ。あんな吹けば飛ぶようなガキに何が出来るとは思えないし、ドンと行け、ドンと!」
山 口「はぁ…」

 鼻息荒い坂本とは対照的に、今一つはっきりしない態度の山口。

おりも「お待たせしました、三宅さん、山口さん。そろそろ始めましょうか」
大袈裟「じゃ、三宅くん、くれぐれも無理はしないようにね」
坂 本「分かってるだろうな、山口、死ぬ気でやれよ!」

 それぞれに叱咤激励し、スクールを後にする大袈裟、坂本。
 おりも、三宅、山口の二人にクラスの説明を始める。

おりも「ダイエットクラスのメニューは、まずプールサイドでのエクササイズ、次に水中でのエアロビクス、その後、軽く流して、最後はサウナで絞る。これが1サイクルです。大体みなさん、間に休憩を挟んで1日に2サイクルぐらいなんですが、中にはちょっと困った方もいまして…」

 おりもが指差した先には、一目でその筋と分かる男性二人(安岡力也、安部譲二)。

三 宅「うっわー、なんかやばくない、あの人達? 目がいっちゃってるじゃん」
山 口「なんだかフラフラしてませんか?」
おりも「そうなんですよ。あの二人、1日に4サイクルも参加されていくんです。当スクールは月謝ではなく、1サイクル単位でお支払頂いてますので、数多く参加して頂くのはありがたいんですが、ですがここまでくると生命にも関わってきますし。幾度となくやり過ぎは危険ですからと、注意はしてるんですけど、聞く耳もたずで。どうやら、どちらが先にダイエットに成功するかで賭けをしてるようなんですよ」
三 宅「ふ〜ん、そうまでして痩せたいのかなぁ」
山 口「太ったことのない君には分からないさ」
おりも「じゃあ、まずはエクササイズの指導からお願いしましょうか」

 プールサイドに生徒達を呼び集めるおりも。

おりも「今日からこのクラスを担当して頂く、三宅さんと、山口さんです」
三・山「宜しくお願いします」
伊集院「なんか頼りなさそうだなぁ、こっちの人」

 三宅を指差す伊集院。

 森 「けど、ちょっとタイプだわ〜」
渡 辺「だめだめ、ここで必要なのは顔より体。この人じゃ私達が溺れたら一緒に溺れちゃいそうじゃない」
松 村「その点、こっちの人は頼れそうですね」

 山口を指差す松村。

石 塚「いいですね。顔も四角、体も四角、足も四角でドーンとしてるとこがいい」
中 島「このガッシリ感が主人を思い出させてグットだわぁ」
野 村「最近の若い子はスタイル気にしてロクに食事を取らないから、みんなヒョロヒョロで何の役にも立ちゃしないけど、この子はいけそうだわね」
浅 香「いい年して挨拶もろくに出来ない奴が何を偉そうに」
野 村「あら、誰の事おっしゃってるのかしら?」
浅 香「とぼけるんじゃないよ! たとえおテントさんが許しても、あたしゃ許さないからね!」
野 村「許さないって、一体何をああたに許してもらうのかちっとも分からないですわね」
浅 香「ふざけるんじゃないよ! いいかい、人ってのは仁義を忘れちゃおしまいなんだよ。人様から借りた物はきちんと返す、嘘はつかない、爪は短く、ハンカチ・チリ紙は忘れずに、って小学校で習わなかったかい?」
野 村「フン、何を言ってもあたくしは取り合いませんよ、『金持ち喧嘩せず』ってね」
浅 香「なんだと〜!」
 
 すわっ、殴り合いか?! と思われたところへ、一足遅れた安岡、安部がやって来る。
 が、疲労の為か足元が覚束ない。
 『危ない!』と叫ぶ間もなく、三宅、山口を巻き込みプールへ転落。

 ドッパーーーン!(S.E)

おりも「三宅さん! 山口さん!」

 おりもが飛び込もうとしたその時、安岡、安部の二人を抱えた三宅が浮かび上がってくる。
 
おりも「三宅さん、大丈夫ですか?!」
三 宅「水の中では体の大きさは関係ないですからね。あれ? 山口くんは?」
おりも「そう言えば、まだ上がってきませんね」
 
 心配そうに二人がプールを覗きこんだ瞬間、物凄い勢いで水飛沫が上がり出す。

山 口「たっ、たっ、助けて〜〜〜!」
おりも「助けて、って…。山口さん、まさか?!」
山 口「俺は水はダメなんだーーー!」
おりも「泳げないんですか?」
山 口「泳げませ〜〜〜〜ん!」 
おりも「泳げないんじゃ話にならないな。それではこのダイエットクラスは三宅さんにお願いします」
三 宅「はい!」

『運も実力のうち』とは言うものの、ここまでくると誰かの意思を感じずにはいられない。(陰の声:だって私はVファンなんだも〜ん)。 なっ、何だ今の声は?! それはさておき、なんと言うことだ、これで台湾進出はおもいっきり商事の手中に。仕事なんてチョロイもんじゃん、と思ったそこの君! 社会はそんなに甘くない。一寸先は闇な企業戦争。明日には想像を絶する試練が君達を待ちうける! 行け、Vレンジャー。底抜けにタナボタな戦士たち!

TO BE CONTINUED!


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