第26話 パラレル編・企業戦士物語・3 

(by さこさん)

 先ずは森田の活躍(?)で1勝をあげたVレンジャー。今回の派遣先はなんと幼稚園。選ばれし戦士はなぜか岡田。一体どんな試練が彼を待っているのか?
 これは営利追求に命をかけた、企業戦士の物語である。

 都内某所にある幼稚園『みなみ園』。
 園長室。
 応接セットに向かい合って座っている、大袈裟・岡田と坂本・国分。
 その向こうの机に園長(みなみ)。

みなみ「えっと、こちらが岡田さん。で、こちらが国分さん」

 手にした書類を見つつ尋ねる園長。

みなみ「(ボソっと)二人とも合格と」
岡・国「はっ?」
みなみ「いえいえ、こっちの話し。では、取り敢えず1週間ほど様子を見させて頂いて、 おってご連絡申し上げますわ」
大・坂「宜しくお願い致します」

 部屋を後にする大袈裟と坂本。
 その後を岡田が追って出る。

岡 田「なんで俺が保父やねん?! そりゃ子供は好きやけど、幼稚園の先生言うたら普通、女性やろ。だったらうちにはあいちゃんがおるやないか」
大袈裟「いや、私の事前のリサーチによれば、この仕事に君以上の適任者はいない。いつも通りの君でいれば大丈夫だから」
岡 田「せやけど…」
大袈裟「とにかく1週間、我が社のために頑張ってくれ、じゃ!」
岡 田「あっ、ちょっと待っ…、しゃあないなぁ」

 しかたなく園内に戻る岡田。
 そこへ園長と他の職員たち(横山裕、渋谷すばる、村上信吾)がやって来る。

みなみ「岡田先生、ちょうどよかったわ、他の先生方を紹介するわね。左から横山先生、渋谷先生、村上先生よ」
横 山「横っちっす、よろしく」
渋 谷「すばるっす、よろしく」
村 上「ひなです、よろしく」
みなみ「こちらが岡田先生でこちらが国分先生。准一先生、太一先生とお呼びしても宜しいかしら?」
岡 田「ええで」
国 分「ええでって君、借りにも雇い主に向かってその言葉使いはないんじゃないかい? そもそも指導者たる者…」
みなみ「おほほほほほ、宜しくてよ。じゃあ、次は子供たちに紹介するわね」

 園長の案内で教室へ移動する岡田と国分。

みなみ「は〜い、みんな。今日からみんなと一緒に遊んでくれる准一先生と太一先生よ。なかよくしてあげてね」
子供達「は〜い!」
みなみ「お二人ともピアノの方はお出来になるの?」
岡 田「童謡の伴奏ぐらいでしたら」
国 分「こちらはオルガンですよね? じゃあコード弾きでよければ」

 子供たち(三倉茉奈、三倉佳奈)にせがまれてオルガンを弾く二人。

茉・佳「今度の先生は二人ともオルガンが上手やね」
横 山「なに言うか、先生かて太鼓叩かせたら右に出るものはないわい」
茉 奈「でも太鼓じゃ歌、歌えへん」
村 上「先生、ピアニカなら弾けんねんで」
佳 奈「でもピアニカじゃ一緒に歌えへん」
佳 奈「伴奏なんかいらんのや、歌は心。アカペラで歌えばええねん」
茉・佳「でもアカペラで先生らの歌は、聞かれへん」
横 山「いちいちうっさいガキやなぁ、つべこべ言う奴はしばくで」
国 分「どうするんですか?」
横 山「へっ?」
国 分「ですから今、つべこべ言うと“芝生で”っておっしゃったから、こちらの幼稚園では生徒が言う事をきかない時、どんな対応をなさるのかと思って」
横 山「はぁ〜?」

 とそこへ、白の割烹着に三角巾姿の男(志賀勝)が給食を持って入って来る。

志 賀「給食の時間やでぇ。お残しは許しまへんでぇ」
国 分「えっ? 給食にお好み焼きですか??」
志 賀「なんぞ、文句でもありまっか?」
国 分「いえ、別に。ただちょっと珍しいなと…えっ!? ご飯も一緒ですか!?」
志 賀「自分、なんぞ自分のメニュウにいちゃもんつける気か?」
国 分「自分のメニューって、僕が考えたんじゃありませんよ」
志 賀「せやから、自分は何か文句があるんかと聞いとんのじゃ」
国 分「あなたが、あなたの考えたメニューに文句があるかどうかは僕には分かりませんね」
志 賀「ごちゃごちゃうるさいで、自分!」
国 分「僕もあなたがうるさいと言う事に関しては同感です」
志 賀「自分! 自分をおちょくっとんのか!!」
みなみ「まあまあ志賀さん。何分、太一先生は今日が初日ですし、細かい事はおいおいね。そうそう、太一先生、私ちょっと外に出て参りますので、すいませんがこの書類を園長室に持って行ってついでに鍵をかいどいて下さいませんか」
国 分「はい」

 書類を手に部屋を出る国分。
 やがて教室に戻って来ると、子供達と一緒の席に着く。

国 分「それにしても園長先生もおかしな事言うよなぁ。あんな事して何か意味があるんだろうか?」
岡 田「何ごちゃごちゃ言うとんのや。はよ食べや、美味いで」
国 分「炭水化物をおかずに炭水化物を食べるなんて栄養学上好ましくないよなぁ。食事ってもんはバランスが大切なんだから」

 ブツブツ言いながらも、食べる国分。

国 分「あれっ、でも結構いけるかも」
岡 田「飯なんて、美味けりゃ何をどう食ってもええのや」
茉 奈「太一先生、明日はもっとご馳走やで。かしわのガーリックソテーや」
国 分「柏餅のにんにく炒めぇ〜?」 
佳 奈「でもって明後日はもっとすごいで。まむしやまむし」
国 分「まっ、蝮??」

 想像を絶するメニューの数々に国分が卒倒しかけたその時、鶏が絞め殺され、あっ、いやいや、絹を引き裂く様な悲鳴が園長室から聞こえてくる。

みなみ「あ〜〜〜れ〜〜〜〜〜!」

 園長室に駆けつける一同。

一 同「どうしたんですか! 園長先生!」
みなみ「ど、ど、泥棒!」
 
 園長が指差した先には、めちゃくちゃに荒らされた室内。
 
岡 田「あっちゃ〜。こりゃひどいわ」
みなみ「太一先生、ちゃんと鍵は“かいどいて”くれたんですよね?」
国 分「はい。でも何も臭いませんでしたよ」
みなみ「はっ?」
国 分「ですから、言われた通り鍵を“嗅いで”みましたけど、別に臭くなかったですよ」
横 山「嗅いだぁ?」
国 分「はい」
村 上「園長室の鍵を?」
国 分「はい」
渋 谷「クンクンってか?」
国 分「はい」
横村渋「ドワッハッハッハッハ」

 堰を切った様に笑い出す三人。

国 分「何がおかしいんだ! 僕は園長先生に言われた通りにしただけだぞ」
岡 田「あんなぁ、鍵を“かぐ”言うんは、関西弁で鍵を“閉める”っちゅう意味なんや」
国 分「知らないよ、そんな事! そもそも…」
みなみ「まあまあ、太一先生。お話し合いは後にして、取り敢えずその辺りをなおして下さいな」
国 分「直すって、別に壊れた様なものは見当たりませんが」

横村渋「ドワッハッハッハッハ」

 またもや笑い出す三人。

国 分「失敬だぞ君達! 今度は何なんだ!」
岡 田「“なおす”言うんは、“片付ける”っちゅうこっちゃ」
国 分「だったらちゃんとした日本語で言ってもらわないと分からないよ!」

 とそれまで終始にこやかだったみなみ園長の様子が豹変する。

みなみ「ちゃんとした〜? 日本語〜ぉ?」
国 分「ええ。幼稚園の様な公の場においては標準語を使って頂かない…」
みなみ「なに言うとんのや、このボケ! 太閤さんの時代から日本の首都は大阪、標準語は関西弁と決まっとんのや!! 第二外国語として子供達に東京弁でも教えよか思たけど、やっぱ関東人はあかん! もうあんたクビやクビ!!」
国 分「そっ、そんなぁ…」

 みなみのあまりの剣幕に、茫然自失状態の国分。

みなみ「じゃ、准一先生。明日からこの『通天閣組』は准一先生にお願いしますわ」
岡 田「は、はぁ〜」

 所変わって思いっきり商事。

大袈裟「だから大丈夫だって言っただろ? あそこの幼稚園は、まぁ言ってみればインターナショナルスクールみたいなもので、関西から転勤してきた人たちが、子供たちが関西弁を忘れない様にって入れる幼稚園で、先生も園児もみんな関西出身なんだよ。あとこれは極一部の人間しか知らない事なんだけど、じつはあの園長は無類のアイドル好きなんだ。となれば、これはもう岡田君以外の適任はいないでしょ」
岡 田「せやったんか。それにしてもあの国分言う人大丈夫やったかなあ。大分ショック受けてたで」

 一方、近藤商事。

国 分「…もうかりまっか、ボチボチでんなぁ。チャウチャウ犬ちゃうねんで。ブツブツブツ…」
松 岡「おい、太一のやつどうしたんだ?」 
山 口「さぁ? 『みなみ園』から帰って来てからずっとああなんだね」
長 瀬「なんか、わっけわかんない事ばっか言ってるんすよ」

 とそこへ、心配顔の城島が国分に声をかける。

城 島「おい、太一。どないした?」
国 分「どないもせえへん…って、か、関西弁?! いっ、いやだーーーー!」

 泣き叫び逃げ出す国分。

 再び、思いっきり商事。
 チビた鉛筆をなめなめ手帳に何かを書きこんでいる大袈裟。

大袈裟「これで2勝っと。えっと、次の派遣先は…」

またもや敵の自爆により2つ目の白星を上げてしまったVレンジャー。だが世間はそんなに甘くない! 明日には予想もしえない試練が君達を待っている! 行け、Vレンジャー。底抜けに濡れ手で粟な戦士たち!

TO BE CONTINUED!


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