(by さこさん)
ひょんな事から派遣社員となってしまったVレンジャーたち。しかも彼らの肩には親会社の将来もかかっている。果たして彼らは、宿敵・近藤商事に打ち勝ち、見事台湾行きをゲット出来るのか?!
これは営利追求に命をかけた、企業戦士の物語である。
都内某所にある百貨店『Sat as Uma』。
エレベーターホール。
制服を手に憮然とした表情の森田、それとは対照的になぜか嬉しそうな城島。
カツコツと言う足音と共に、ややO脚気味のエレベーターガールがやって来る。
エレガ「どーも。ちょっと今主任が手が離せないので、私がご説明して差し上げます」
森 田「あの〜、ひょっとして男の人?」
エレガ「ひょっとしなくても男よ。でも他の女子社員には負けないわよ。申し遅れましたが 私、同じく派遣社員の中居と申します」
森 田「おい、どう言うことだよ!」
大袈裟に詰め寄る森田。
大袈裟「いや、だから、あの、こちらの要望が『カツラとスカートの似合う小柄な男性』ってことだったから…」
中 居「つまり、エレベーターってのは満員電車みたいなもんで結構痴漢とかいんのよ。だったら男がやりゃあいいんだけど、やっぱ“エレベーター”ときたら“ガール”でしょ、ってな事でパッと見可愛い女の子に見える男を今増やしてるとこなんだけどねぇ…」
しげしげと城島を眺める中居。
そんな中居の視線に気づいているのかいないのか、ただひたすら嬉しそうな城島。
中 居「とにかく、あと1時間で開店だからとっとと着替えてきて」
大袈裟「じゃ、じゃあ、森田君、しっかりね」
逃げる様に走り去る大袈裟。
一方、不安そうな面持ちで城島を見つめる坂本。
坂 本「あの、なんだったら国分君と変わってもらっても…」
城 島「大丈夫やて、まかしとき」
坂 本「いや、でもこの仕事には我が社の社運がかかって…」
城 島「せやからまかしときって。大船に乗ったつもりでこの茂子におまかせあれ!」
蹴り出すように坂本を追い払う城島。
坂本、なおも不安そうに後ろを振り返りつつ出て行く。
城 島「ほな、森田君、着替えに行こか」
森 田「えっ? なに? ちょっ、ちょっと!」
森田の手を握り更衣室へ駆け出す城島。
20分後。
同じくエレベーターホール。
先程の中居のほかに数名のエレベーターガールとそのリーダーらしき女性(伊藤かずえ)。
中 居「遅いわよ」
あわてて列に並ぶ、おかっぱ頭と襟元に結んだボウタイも愛くるしい森田、が足元が映るとそれは見事なまでのガニ股。
一方、城島。
手拭のごとく結ばれたボウタイが、角のたばこ屋のおばちゃんを彷彿とさせる。
伊 藤「はじめまして、私が主任の伊藤です。今日から1週間、あなたがたのトレーナーも務めさせて頂きます」
にこやかに微笑んだかと思うといきなり伊藤の左眉がピクリと上がる。
伊 藤「と言う事で、まず2人とも、姿勢が悪い! 城島さん、猫背はやめなさい、猫背は! それから森田さん、足は閉じる! はい、そこで笑ってる中居さん、あなたもです! 膝はきっちりつける!!」
中 居「閉じろったって、開いちまうんだから仕方ねぇじゃん」
伊 藤「それから森田さん、スカートは腰で履かない! きちんとウエストの位置まで上げる!」
森 田「(小声で)あたしはウエストが細いんですぅ」
伊 藤「はい、無駄口はたたかない。次、お辞儀の練習! 腰からしっかりと曲げて45度。そのまま静止で3秒。そして心を込めて『いらっしゃいませ』。はい、森田さん!」
森 田「いらっさいませ」
伊 藤「こんな簡単な言葉で噛まない。もう一度!」
森 田「いらっひゃいませ」
伊 藤「森田さん、こんなところで躓いていては特別催事場のご案内は出来ませんよ。いいですか? 本日の催し物は、『フランスからいらした新人シャンソン歌手、シャルル・ジョワイユさんによるシャンソン・ショー、シャンデリア広場にて正午から』ですからね」
森 田「はぁ〜?」
伊 藤「はぁ〜、じゃない! 『新人シャンソン歌手』、はい!」
森 田「しんちん、しゃんちょんきゃしゅ」
伊 藤「違う! 『新人シャンソン歌手』、はい!」
森 田「ちん…」
伊 藤「どこに『ちん』なんて言葉がありますか! はい、あちらで練習!!」
森 田「はぁ〜い」
ブツブツとつぶやきながらホールの隅へ移動する森田。
伊 藤「では、次、城島さん」
城 島「いらっしゃいませ」
城島、言いつつ頭を下げるが、体が硬いため動いたのは首だけ。
伊 藤「城島さん、亀じゃないんだから首だけ突き出すのは止めなさい。はい、また背中! 曲がってますよ」
城島、再度試みるがやはりその姿はどう見ても亀。
伊 藤「あなた本当に体が硬いわねぇ。はい、もう一度!」
城 島「いらっしゃいま…」
と城島が前かがみになった瞬間、いきなりその背中に馬乗りになる伊藤。
城 島「しぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
伊 藤「そうそう、少なくともこの位まで頭は下げないとねぇ。あら? どうしたの城島さん? もう元に戻って結構よ」
城 島「こ、こ、こっ、腰が……」
伊 藤「あらぁ困った人ねぇ。ご挨拶はエレガの基本。これが出来ない方にエレガは務まりませんわ。 と言うことで、城島さん、ご苦労様。じゃ、3号機は森田さんにお願いします」
森 田「はぁ〜い」
なんと森田、戦わずして白星ゲット! 先ずは1勝だVレンジャー。だがここで気を抜いてはいけない。明日には新たな戦いが君たちを待っている。行け、Vレンジャー。底抜けにラッキーな企業戦士たち!
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