第24話 パラレル編・企業戦士物語・1

(by さこさん)

 過去へ飛んだり未来へ飛んだり、なにかと忙しいVレンジャーの面々。凡人には思いもつかない装置や武器を手に、日夜、悪と戦いつづけているようだが、たまには己の知恵と勇気そしてその体一つを頼りに戦わせてみようと思い、ってそりゃ一体誰の思いなんだ? などと言う小さな疑問は重箱の隅に置いといて、彼らを社会の荒波でモミモミし、いついかなる時と場所でも活躍できるマルチな正義のヒーローとして成長させる為の試練を課す。
 これは営利追求に命をかけた、企業戦士の物語である。

 春四月。満開の桜が咲き誇る中、ここ『おもいっきり商事』では入社式が行なわれていた。

社 長「…と言うわけで、是非とも新入社員の諸君には頑張って頂きたいと思います」

 壇上で社員への挨拶をする『おもいっきり商事』社長(みのもんた)。
 それを神妙な面持ちで聞いている新入社員たち、に混じって、 こっそり携帯でメールを打つ者(加藤あい)。
 ヘラヘラとしまりのない顔でまわりの女子社員に手を振る者(井ノ原快彦)。
 眠気をこらえているのか眉毛を抜く、といきなり何を思ったかおもむろにそれを口に放り込む者(森田剛)。
 こらえ切れずに口を開けて寝ている者(岡田准一)。
 姿勢を正し社長の話しに耳をかたむけている、様に見えて実は全く聞いていない者(三宅健)。

秘 書「それでは、新入社員のみなさんはこれより、配属先へ移動の上、各部署の指示に従って下さい」

 社長秘書(渡辺麻里奈)の誘導により各々配属先へ移動する新入社員たち。

 『プロジェクトV』と張り紙のされたドア。
 部屋の中には先程の5人。
 とそこへ、ファイルを抱えたボサボサ頭にヨレヨレネクタイの男(大袈裟博)が部屋へ入って来る。

大袈裟「はじめまして。この度、こちらの部門を統括することになりました、課長の大袈裟です。さっそくですが、これから君達の出向先を発表させて頂きます」
森 田「ってあの、言った事はきちんと守りましょうって言う?」 
岡 田「それは実行やろ。しゅっこういうのは、船で旅出つ人に紙テープ投げて『元気でな〜』っちゅう…」
三 宅「それは出港。字が違うだろ。出向って言うのはよその会社へ派遣されてそこで働くって言うことだよ」
井ノ原「でも、出向先って、俺達の勤務先はこのおもいっきり商事じゃないんですか?」
大袈裟「もう君たち、ちゃんと社長の話を聞いてたの? 我がおもいっきり商事は、これまで 健康食品の販売を中心にやってきたんだけど、今年から人材派遣も始めることにしたんだよ。で、君たちはその派遣社員第1号」
あ い「ええぇ〜、そんなぁ〜! あい、ここの受付嬢になって、いい男ゲットして寿退社するのが夢だったのに〜」
大袈裟「それぞれの出向先はクライアントのニーズに合わせて、先日の面接試験の結果決めさせて頂きました」
森 田「面接って、俺、ただ身長と3サイズ聞かれただけだぜ!?」
三 宅「僕は『君は泳げるかね?』って聞かれた」
あ い「あいは負けず嫌いかどうか聞かれたわ」
岡 田「俺は『君は関西出身だったよね』って聞かれたで」
井ノ原「俺なんか『得意料理は何かね?』だぜ」

 とそこへ、今度は社長のみのが部屋へ入って来る。

み の「どーも、みなさん。大袈裟課長から話は聞いてくれたかな? 今回の件は、我がおもいっきり商事創立以来のライバル社である近藤商事とのコンペだからね、一つ宜しく頼むよ」
森 田「ってあの、戦時中、女の人たちがはいてたって言う?」
岡 田「それはモンペやろ。こんぺいうのは、オレンジ色の着物きた落語家で『ど〜も〜』っちゅう…」
三 宅「それはこん平。コンペって言うのはよその会社と競争して勝った方が仕事もらえるって言うことだよ」
あ い「近藤商事ってあれでしょ、あのシミ・シワ隠しに厚塗りしても素肌っぽく見えるって言う『ギンギラギンにさりげなく』シリーズの化粧品で一躍有名になった?」
み の「先代の正臣の頃はうちの方が優勢だったのに、社長が息子の真彦に変わってからと言うものグングン売上を伸ばしちゃって、今やうちと肩を並べるほどだからね」
井ノ原「でもコンペって、いったい何を競うんです?」
大袈裟「実は今度、あの喜多川コンツェルンが海外展開の第一歩として台湾に進出することになったんだ。社員の殆どは現地採用になるんだけど、管理職は日本からの出向と言うことで、今回依頼のあった5社のうち、採用された数の多い方の会社から派遣するって言うことになったんだよ」
み の「あっ、それからね、この部の名前だけど、子会社として独立させたときに使おうと思って考えてた名前があるんで、それ使うことにしたから。はい、これ名刺。じゃ、期待してるからね、宜しく!」

 名刺の箱を手渡し部屋を後にするみの社長。
 大袈裟の手元にはプラスチックケースに入った名刺の束。
 名刺のアップ。

 『人材派遣会社 会社へ行こう!』
  課長 大袈裟 博

全 員「……」

 場所は変わって近藤商事。
 同じくこちらでも入社式が行なわれている。

 以下、『おもいっき商事』と似たり寄ったり。
 あまり出来そうな新入社員はいなさそうな様子。

 『プロジェクトG』と張り紙のされた部屋。
 中には5人の新入男性社員、のはずだが若干1名、妙に顔のシワが多く年齢不詳。
 とそこへ、紫のシャツにピンクのスーツと言う、およそまっとうな会社ではみかけない格好をした男(坂本昌行)が部屋へ入って来る。

 以下、『おもいっきり商事』と似たり寄ったりのやりとり。
 ただし、駄洒落のレベルはさらに寒いもの(例:下のト書き)が発せられた模様。

 とそこへ、近藤じゃなくって今度は社長のマッチ(近藤真彦)が入って来る。

マッチ「と、そう言うことだ(って、おいおい)。坂本課長あとは宜しく!」

 名刺の箱を手渡し部屋を後にするマッチ社長。
 坂本の手元にはプラスチックケースに入った名刺の束。
 名刺のアップ。

 『人材派遣会社 敏腕奪取』
  課長 坂本昌行

城 島「すごい名前やなぁ、『としうえぶんどり』かいなぁ」
国 分「…ちがう」
城 島「へっ? じゃあ『としうでぶんどり』?」
山 口「…ちがう」
城 島「あっ、そかそか『としうでふんどり』」
松 岡「って一体どう言う意味なんだよ『としうでふんどり』って!」
城 島「いや別に意味はない。ちょっとボケてみだだけや」
長 瀬「城島さん、すごいっすねぇ。いっぱい漢字の読み方知ってるんすね、すごいっすよ!」
国山松「……」

どちらの会社に仕事が決まったとしても、雇用主の苦労は火を見るより明らかだぞ、人材派遣会社『会社へ行こう!』と『敏腕奪取』。果たして勝利はどちらの頭上に輝くのか? 行け、Vレンジャー。底抜けに前途多難な企業戦士たち!

TO BE CONTINUED!


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