第2話 いつか見た夢

ナレーション「いきなり仲間に入れろとVレンジャー本部に乗り込んできた坂本。彼は本当に正義の味方と生まれ変わることができるのか? 大袈裟、Vレンジャーは坂本を一体どうするのか? これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

Vレンジャー本部。
坂本「とにかく今日からは俺も入れてくれ。もうVレンジャーなんてやめちまえ、やめちまえ。6人になるからブイロクでどうだ?」
三宅「勝手に決めんなよ。なんで6人にならなきゃいけないんだよ」
坂本「いいじゃねーか。5人戦隊なんてありきたりだよ。6人がいいって。ブイロクノサカモト、いいじゃん。俺、最年長戦士、な」
あい「それってかっこいいの?」
井ノ原「さあ? おい、イエロー。お前、鼻の穴ひろげてうっとり見つめてないで、坂本さんにさっきの説明してやれよ」
岡田「見つめてなんかないわっ。ぼーっとしてただけや」
と言いながら坂本に一歩二歩近づく岡田。反対に後ずさりする坂本。
坂本「おい、た、頼むからこいつを俺のそばに近づけないでくれ。あ、悪夢が・・・」
岡田「なんでやねん。けど、あんたが夢に見るくらい悩んでるってことはわかるで」
坂本「ちっ、ちがう。そういう夢じゃない。暗闇で誰かが俺を、俺を・・・」
岡田「だいじょうぶやって。もうそんな暗闇で苦しむことない。俺らが助けだしたる」
坂本「いっ、いいっ。それ以上言わないでくれっ」
岡田「なんでや。ええからちょっと聞けや」
坂本の肩に手をかける岡田。
「ぎゃあぁぁぁ〜〜〜っっ!」
本部中に響きわたる坂本の悲鳴。

井ノ原「博士、ちょっと」
部屋のすみっこへ行く大袈裟と井ノ原。
大袈裟「なんだい、いったい」
井ノ原「どう思ってんですか、あの人のこと」
大袈裟「あの人って坂本くんのこと?」
井ノ原「ほかにいないだろ。本当に信じられるの? ちょっと虫がよすぎないか?」
大袈裟「さあ、ね」
井ノ原「さあ、ねって。あのなー」
大袈裟「わかってるさ。本当に改心してるのなら、それでいい。でも、もしそうでなければ・・・」
井ノ原「そうでなければ?」
大袈裟「裏になにかあるってことだよ。気を締めてかかったほうがいいね」
井ノ原「博士、そのことでちょっと話があるんだけど・・・」
ひそひそと話し合う大袈裟と井ノ原。

坂本の秘密工場。
鉄板DISHがゆったりとくつろいでいる。
タイチ「なんかあの人がいないと気分がすっきりするよね」
トモヤ「ああ。同じ部屋なのに広々した感じだよな。こう手足がのばせるっていうか」
マボ「なんだかんだうるさい人だったからな。ったく、うっとおしいったら」
タツヤ「説教好きだったからな。いまごろ何やってんだか」
マボ「リーダー、その後マッチさんからは何か言ってこないの?」
ジョー「なんでも計画があるから、それを手伝えっちゅうことや」
タイチ「計画? なんの計画かな?」
タツヤ「俺たち、ここにいたままでいいのかな?」
ジョー「またマッチさんから連絡があるやろ。それまでは、まったり過ごそうや」

Vレンジャー本部。
すっかり打ち解けている坂本と森田、三宅、岡田、あい。遠巻きにそれを見ている大袈裟と井ノ原。
あい「ねえ、なんでリストラされちゃったの? なんか失敗したわけ?」
森田「失敗といえば失敗つづきだよなあ。だって何一つ成功してないじゃん。ほんとに何やらせてもダメねえ」
坂本「るせっ。てめーらのせいじゃねーか」
三宅「やっぱ能なしの人間を雇っとくほど、どこも甘くはないからね。この不況だしさ」
坂本「おいおいおいっ。だーれが能なしだって?」
Vレンジャー全員「あんた!」
坂本「おい、長野。こいつら一体なんなの? 俺に何か恨みがあるってのか?」
三宅「あんたさぁ、これまでに何やってきたか覚えてないの?」
森田「俺なんか、もうちょっとで斬られるところだったんだぜ?」
あい「そうよ。あたしみたいなか弱い女の子もいるってのに、さんざん襲ってくれちゃったじゃない」
「えっ?」
思わず顔を見合わせる森田と岡田。
三宅「だいたいね、いままであれだけやっといて虫がよすぎるんだよ。いきなり仲間だなんて言われてもさぁ」
岡田「まあ、ええやないか。坂本さんかて、苦労なくマッチって人の手から逃れられたんやから、よかったやんか」
坂本「あ、ああ・・・」
言いつつ後ずさりする坂本。
森田「ほら、ただひとりの味方じゃん。もっと優しくしてやれよ。な?」
坂本「・・・・・」

大袈裟「坂本くん、ちょっと」
坂本を呼びつける大袈裟。
坂本「なんだ? みんなの前では話せないことか?」
大袈裟「きみは、いったい何のためにここに来たの?」
坂本「なに言ってんだ。言いにくいことを何度も言わせるなよ。クビになったって言っただろうが」
大袈裟「坂本くんをクビに? まさか!」
坂本「鉄板DISHのやつら、よくも俺を裏切りやがって・・・。いや、そんなことは関係ない。俺も捨てたもんじゃないってことを教えてやる。それより長野、お前そのとんでもないカツラいつもつけてるのか?」
大袈裟「なんかこれがないと落ちつかなくってね」
坂本「ちょっと貸してみろよ」
大袈裟のカツラをかぶってみる坂本。
坂本「わっ。いけてねー。やっぱ返すわ」
カツラを返す坂本とそれを見つめる大袈裟。

深夜、電話のベルの音。
「はい」
「あ、マッチさん? うまくいきました。疑われてないと思います。これから計画を実行していいんですか?」
「ああ、こっちの準備は手配しておく。あの男に悪夢を見せてやれ。いいな、坂本」
「はい。望むところです」

坂本の秘密工場。
当然坂本の姿はなく、そこにいるのは鉄板DISHの5人である。
ジョー「マッチさんから連絡があったんや。ここで待機しとけって」
タツヤ「どういうことだよ、それって。ここでただ待ってりゃいいのか?」
タイチ「マッチさんがそう言うなら、そういうことじゃねーの?」
ジョー「ただなあ、これの用意をしとけ言われたわ」
トモヤ「これってなに? あ、瞬間移動装置か」
ジョー「それだけやないで」
マボ「これ、か」
5人の前に大きな機械の黒い影がうつる。その時、ジョーの携帯電話の呼び出し音が響く。(着メロは「男はつらいよ」)
ジョー「はい。あ、マッチさんでっか? はい、用意どん! やなくて用意万端
ととのうてます。いつでもOKですわ。はい、わかりました」
マボ「マッチさん、なんだって?」
ジョー「機械のスイッチを入れろ、言われたわ」
タツヤ「いよいよ、だな」
マボが大きな機械のスイッチを入れる。ブーンという機械の振動音が響く。

Vレンジャー本部。
井ノ原「おい、ちょっと来いよ」
森田「え? 俺?」
井ノ原「ほら、見てみろよ」
そこでは大袈裟がうたたねをしている。カツラがずり落ちかけている。
森田「ああ、もうしょうがねーなあ。(とカツラを直す)最近、よっぽど疲れて
んだなあ。居眠りばっかじゃん」
井ノ原「お前もそう思うだろ? どうやら夜、眠れないらしいぜ」
森田「え? どういうこと?」
井ノ原「あの坂本が来てからってことだよ」
森田「坂本が来てから? また何か悩んでるのか?」
井ノ原「だけならいいんだがな。ずっと悪夢にうなされてるみたいなんだ。いくら坂本が悩みの種だっていっても、こいつはちょっと変だぜ」
森田「あんた、もしかして坂本を疑ってるのか?」
井ノ原「じゃあ、お前は疑ってないのか? 本当に信じられるのか?」
じっと井ノ原を見つめる森田。

霧の中、坂本の姿が近づいてくる。長野(カツラなし)はクロス・ペンダントを握りしめて坂本を見つめている。
坂本「長野、よく来たな。さ、俺と一緒に行こう。この先に俺とお前にふさわしい世界がある。お前に会わせたい人がいるんだ」
長野「ふさわしい世界? 会わせたい人?」
坂本「そこでは俺たちの望む研究が好きなだけできる。この世界は俺たちの思うままさ。資金は後押ししてくれる人がいるしな。その人なら、俺たちの望むものをきっと与えてくれる」
長野「坂本くん、それはいったい誰なんだい?」
坂本「来ればわかるさ。さ、こっちだ」
目の前に大きな研究所の姿が浮かんでくる。

三宅「博士、博士」
大袈裟「ん? ああ、夢だったのか」
だるそうに身を起こす大袈裟。
三宅「ずいぶんうなされてたけど。どうしたんですか?」
大袈裟「どこかで見たことがある、そういう夢を繰り返し見るんだよ」
三宅「デ・ジャ・ヴってやつ? 既視感、だったっけ?」
大袈裟「目覚めるとほとんど忘れてしまうんだけど。坂本くんは?」
三宅「岡田とあいちゃんと3人で、武器の改造をしようとしてるんですけど」
大袈裟「なんだって? 武器の?」
三宅「僕はあの人をそこまで信用していいのか、疑問なんですけど」
大袈裟「そうか・・・。ね、三宅くん。人が一番思い出したくないものって何かな?」
三宅「いやな記憶なんじゃないかな? 身近な人が死んだり、大切なものが壊れてしまったり。そうだ、自分の不本意なことをやってしまったりとか」
大袈裟「不本意なこと、か」
三宅「うん、それが一番思い出したくないことだな。思い出すたびに、後悔したり、自己嫌悪に陥ったりしちゃうもんね。できることなら、その時点に戻ってやり直したいと思うことがあるよ」
大袈裟「やり直したい、ね。そう、そのとおりかもしれない」

ナレーション「Vレンジャー本部に潜り込んだ坂本。彼とマッチの陰謀とはなにか? 悪夢とはいったい何のことなのか? Vレンジャーたちにはたして坂本に対抗することができるのだろうか?」

TO BE CONTINUED!


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