第19話 「美しい星」

(by hongming)

ナレーション「時を超え空間を越え、大活躍のVレンジャー。番外編ばかりが続いたが、遂に本編に新しい展開が生まれることとなった。これは、正義と友情に命をかけた若者達の物語である。でも、どういう話だったんだっけ……。忘れちまった」

 宇宙に浮かぶ青い星・地球。
 カメラが引くと、巨大なディスプレイに地球が映っているのがわかる。地球を見ている人物の後ろ姿。
「美しい。ここにしよう」

 Vレンジャー本部。
 みんなでお茶を飲んでくつろいでいる。岡田は、湯気の立つカップラーメンの蓋を開けている。
三宅「最近ヒマだね」
岡田「そうやなあ。ま、平和でええこっちゃ。お、でけたでけた。うまそうや」
森田「よくそんなにラーメンばっかり食っていられるな」
岡田「うまいんやもん」
大袈裟「そうだよ。ラーメン食べて何が悪いんだよ。言ってみろ」
坂本「そうムキになるなよ。でも、ヒマだったはずなのに、忍者になったり、香港行ったりしてたような……」
井ノ原「あんた、大丈夫か? ボケるのはまだ早いだろう」
森田「早くないんじゃない。ずいぶん歳食ってるみたいだし」
坂本「ふ、ふざけるな。俺をいくつだと思ってるんだ」
あい「四十歳くらい?」
三宅「まさかあ」
坂本「そんな歳のわけねえだろ」
三宅「そうだよね。どうみても五十歳は過ぎてるよ」
森田「そうだよな」
坂本「お、お前ら」
 坂本が怒りに身を震わせながら立ち上がると、大袈裟がなだめ、
「まあまあ。冗談に決まってるじゃない。それより、敵はどうしてるんだろうね」
 岡田は無心にラーメンを食べている。
三宅「あの連中、元気でいるのかなあ」
井ノ原「敵の心配なんかするなよ」
三宅「けど、気にならない? 味方にしたいっていう話もあったはずだし」
あい「そう言えばそうだったわよねえ」
坂本「なんだかずいぶん昔の話のような気もするなあ」
三宅「歳とると、時間のたつのが早くなるっているしね」
坂本「お前……」
大袈裟「(慌てて間に入り)そ、そうだ、坂本くん。坂本くんは鉄板DISHがどこにいるのか知ってるんだろう」
坂本「ああ、知ってるよ。俺が造った地下工場にいるはずだ」
大袈裟「じゃあ、こっちから行ってみようよ」
三宅「先手を打つんだね」
森田「なんでクリスマスでもないのにサンタを待つんだよ」
三宅「サンタを待つんじゃないよ。先手を打つ、だよ。先んずれば人を制す、っていうだろ」
井ノ原「先に滑り込んだ人はセーフって、野球の話か? お前、野球の勉強してるのか」
三宅「違うよ、先手必勝っていうことだよ」
あい「エステ一生? きれいでいるためには、一生エステに行かなくちゃいけないのね」
三宅「……」
坂本「(大袈裟に向かって)お前、よくこんな連中と一緒に戦えたな」
大袈裟「いや、まあ……」
井ノ原「こんな連中っていうけど、こんな連中に負けてた方もどうかと思うよ」
坂本「……」
 気まずい空気。
 がつがつラーメンを食べていた岡田が、カップを持ち上げてスープを飲み干し、初めて周りの雰囲気に気づく。
岡田「ん? みんな、どないしたん」

 山の上。
 白馬にまたがった光一が下の方を見ている。視線の先にはトラックが止まっており、荷物を持った人影が荷物を積み込んでいる。
光一「いよいよか……」
 そこへ突然、「おい」と声がかかる。光一は振り向きもせず、
光一「何やねん」
「何やねんやないやろ。人が見とるわけやないんやから降りんかい」
光一「馬がえらそなこと言うなや」
「何が馬やねん。降りんかい。はよ、降りいな」
光一「しゃあないなあ」
 光一が渋々白馬から降りると、白馬の首がはずれ、中から堂本剛が顔を出す。
堂本剛「あーしんど。何でお前は上に乗って、俺だけ中やねん」
光一「しゃあないやろ。操縦できるのは自分だけなんやから」
堂本剛「ほかの資格より、これの操縦免許とらんかい」
光一「そのうちな。あ、あれ見てみい」
 光一の指差す方を見ると、自動車が一台、その後ろからスクーターが五台、トラックの方へ走ってくる。
光一「これからが見ものやけど、そろそろ帰らなあかん」
堂本剛「もうそんな時間か。窮屈な思いばっかりや」
 深呼吸し、新鮮な空気を吸い込む堂本剛。
 光一は馬の背のファスナーを開け、後ろ足の中に自分の足を入れ、腰を曲げて内側からファスナーを閉める。
堂本剛「ほな、行こか」
 堂本剛は馬の首をかぶり、完全な馬の姿になる。
「いくで」と声がすると、馬の姿がスッと消える。

 光一が見下ろしていたトラック。
 鉄板DISHのメンバーが荷物を積み込んでいる。
 そこへ、自動車が横付けに止まり、中から大袈裟と坂本が出てくる。
ジョー「あ、坂本はん」
坂本「よう。久しぶりだな」
マボ「何だよ。何の用だよ」
大袈裟「最近来ないから、どうしたのかと思って」
タイチ「なんか怪しい」
 そこへ五台のスクーターが遅れて到着。乗っているのはもちろんVレンジャーの五人。
 五台そろって、「チャンカチャンカチャン、おもいっきり商事」。恥ずかしそうな顔になるVレンジャー。
タツヤ「な、なんだよ。不意打ちかよ」
あい「いつも不意打ちなのはそっちじゃない」
岡田「そうや、そうや。あんたらこそ不意打ちしてきとる」
「チャンカチャンカチャン、おもいっきり商事」
トモヤ「くい打ちなんかしてないよ」
マボ「そうじゃないよ。黙ってろよ」
「チャンカチャンカチャン、おもいっきり商事」
タツヤ「エンジン切れよ」
三宅「そうだね。ガソリンの無駄遣いだ」
 スクーターのエンジンを切る五人。みんながほっとする中、
ジョー「なんや、エンジン切ると今のは聞こえなくなるんか。ええなあと思っとったのに」
 Vレンジャーはそれには答えず、スクーターから降りて、トラックに歩み寄る。
森田「何やってんだよ」
井ノ原「引っ越しか」
ジョー「そうなんや。ほかの仕事をすることになってな」
坂本「まさか、鉱山に……」
ジョー「いやいや、そんなきついことやないんや。今年の夏から海の家を出すことになったから、そっちをやるように言われたんや」
大袈裟「唐突だなあ」
ジョー「ほんま、急な話で驚いたわ。おまけに新しいメニューを考えろ、言われて」
坂本「でも、お前ら料理は得意だろう」
ジョー「ようわかっとるな。俺の料理いうたら、そんじょそこらのもんとは違うで」
タイチ「リーダーのはちょっと不安なこともあるけどね」
ジョー「何言うとんねん。愛のエプロンの力を見せたるがな。ラブ・イズ・OKや」
坂本「メニューはこれから考えるのか」
タツヤ「新メニューはもう考えてある。カレー焼きそばとピラフ牛丼だ」
岡田「うまそうやなあ」
マボ「よかったら、遊びに来いよ。サービスするぜ」
岡田「ほんまか、おごってくれるんか」
タツヤ「いいよ」
岡田「大盛り! 大盛りで頼むで」
マボ「……」
あい「なんだ。みんないい人じゃない」
タイチ「そりゃそうだよ。俺なんか、もともと正義の味方だし」
トモヤ「そうだ。せっかくみんな来てくれたんだからさ」
岡田「なんぞ食わしてくれるんか」
森田「さっき、ラーメン食ったばかりだろ」
岡田「でも、今いうとった、カレー牛丼とか」
三宅「そんなの食べたくないよ」
タツヤ「カレー焼きそばとピラフ牛丼だよ」
岡田「食わしてくれるんか」
トモヤ「せっかく来たんだから、荷物運ぶの手伝ってくれよ」
 がっくりするVレンジャー。

 マッチの広間。
 テーブルには金塊が積まれている。
マッチ「なぜ、あいつらに手を引かせるだけでこんなにもらえるのか……。ま、いいや、新しい車買おう」

ナレーション「久々の新展開にナレーターの心も躍る。しかし、今ひとつ作者が信用できないのもまた事実だ。これから一体どうなるんだ。行け、Vレンジャー。先行き不安な戦士達」

TO BE CONTINUED!


VレンジャーR・トップへ

メインのぺージへ