第16話 「香港笑劇戦闘記・前編」

(by やーちゃんさん)

 かつてあれ程、激しく戦った大袈裟博士率いるVレンジャーと坂本率いる鉄板DISHのメンバー! 今や坂本は大袈裟のパートナーに、鉄板DISHも何処へ行ってしまったのか?
 そして数々の伝説的な戦闘記録が語られてきた中、まだ語られていない衝撃的いや笑劇的な戦いが、一枚の写真をキッカケに今、再現されようとしている。その名も「Vレンジャー-香港笑劇戦闘記」として。
 これは正義と友情に命をかけた若者の物語である!
   
 Vレンジャー本部(現在)

 実験室(かつての工作室)から聞える笑い声に聞き耳をたてる、森田、岡田、井ノ原、三宅、あい!
坂「そうだったなあ! あの実験の時は焦ったよ!抱しめても何にも言わないんだからな」
長「坂本くんには、本当感謝しているよ! あの時があるから、今、生きているのだもの」
 顔を見合わせ、口に手を当て驚きながら、扉の向こうを怪しむ5人!
森「何かあの二人普通でないと思わないか? 抱しめるだぜ!」
三「レッドに普通でないとは言われたくないと思うよ! でも意味深だよね、あの時なんて」
井「ああ、仲が良過ぎるのを超えている気がするあの二人は」
岡「朝から夜まで、ほとんど実験室におるでー! よう飽きないもんやわー」
あ「いや〜ん、密室に二人で危ない実験なんて、あい恥ずかしくって赤くなる!」
森田、三宅、岡田、井ノ原は、あいの顔を呆れ顔で見つめた。
森「まぁ、どうでもいいんだけどさ!それよりこれから俺達ってどうなるの?」
 その時、電話が鳴りナンバーディスプレを見て、5人は嫌な顔をした。
長「もしもし、お久しぶりです!みのさんお元気でしたか?」
み「それがとっても困った事が起きて、あっ坂本くんも一緒に来てくれると嬉しいなー」
 みのの只ならぬ声に思いっきり商事にミラクル・スクーターで向った長野と坂本。
 途中、バック・ミラーがくるくる回り、ちゃんちゃかちゃん♪おもいっきり商事♪の歌にもめげずに二人は急いで向かった。
み「あっよく来てくれたね!実はこっちとそれとあっちとどれがいいか意見聞かせて」
 社長室にある大理石のテーブルに、所狭しと散乱しているCDケースとジャケット写真。
長「あのこのCDが何かあるのでしょうか?」
坂「困った事ってこのことですか?」
み「そう、僕もねぇ「孫」みたいな歌出すことになったの!でもどうも決まらなくってね」
 長野と坂本はあっけに取られた顔をしたが、渋々CDの選択を始めた。
 何と言ってもみのはスポンサーなのだから、たとえ大馬鹿野郎でも従うしかなかった。

再びVレンジャー本部

三「何で僕が、孫の役で台詞言わなきゃダメなんだよ」
井「そりゃ声が子供ぽっいからのと、噛みクセがあるからだろう」
森「うきゃゃゃゃ、面白そうじゃん! 俺、見に行きてー」
岡「あのなー人の不幸をそんなん笑っていたら自分も今に同じ目に会うでー」
あ「羨ましい! それってアイドルになるチャンスだもんね」
坂「どういう連中なんだよ! こいつら本当に正義の味方なのか? なぁ、長野」
 あいが坂本をじろっと睨み、坂本は、口に手を当て下を見てうつむいた。
長「あいちゃん、今は仲間なんだからね! みのさんがレコーディングを見学に来ないかと言っていたのだけど」
 しばし顔を見合わせる岡田、井ノ原、森田、あい、坂本に苦笑いする長野。
三「皆、行かないなら、僕は行かないからね」
 口をとんがらしたブルーを見て森田、岡田、井ノ原、あい、長野、坂本もレコード会社に行く事が決定した。
 
 次の日、レコーディング・スタジオ
三「ねぇ、今日もお爺ちゃんのおもいっきりカレーがたべたいなー僕」
み「ほんに〜カワイイ孫の為に♪ 今日も作るよ健康カレー♪」
 声を聞いいてられず外に出る、森田、井ノ原、長野、坂本、そしてレコーディングの終わった三宅。
長「あれ、イエローとあいちゃんは」
井「あいちゃんが隣のオーディション会場に行ってしまって、連れ戻しに行ったよ」
坂「本当に正義の味方なのかよ! 信じられないことするな」
 森田、井ノ原、三宅は坂本をじろっと睨み付けた。
岡「違う言ってるんやん、俺はオーディションに来たんやないって」
森「どうしたんだよ! お前トロイからなー」
三「バカよりいいと思うよ!」
井「どうかなー噛みクセよりいいかもよ」
坂「どっちもどっちだと思うがなー」
長「さあ、皆揃ったみたいだから帰ろう!」
 帰ろうとするとみのがカレー店のチケットを長野に差出し、森田、三宅、岡田、井ノ原あい、坂本は渋谷のカレー店へと向かった。
 途中、黒集りの人込みとテレビ中継に興味を持ちあいと森田が走り出した。
 そこには渋谷にオープンした自分の店「ジャッキーズ・キッチン」のオープン開催式に駆け付けたジャッキー・チェンとファンがいた。
 手を振る森田に気付くとジャッキー・チェンは店内へと後ずさりしながら叫んだ。
ジ「近付かないで! チーム・カミングセンチュリー、イヤー! 香港もう来ちゃダメよ!」
 通りの向こうで見ていた井ノ原、岡田、三宅、長野、坂本は溜め息を付いた。
井「ムリもないよな! あんなことがあったのだから! ジャッキーだって人間だものな」
岡「ほんまやー! レッドのせいやわー! 余計なことしなければ今頃は……」
三「うん、スポンサーだったよねジャッキー・チェン! 孫の声なんてしなくて良かっただろうな」
坂「まぁそう落ち込むなって陽はまた昇るって、悪いことばかりじゃないって」
あ「あなたのせいでしょう! 元はと言えば、私達のジャマをしたからでしょ」
 あいが坂本を睨み付けるのと同時に、井ノ原、岡田、三宅もじっと睨んだ。
長「もう皆、今は仲間なんだからさ!ブラック、イエロー、ブルー、あいちゃん

 そこへ森田が涼しげな顔で首を傾げながら帰って来た。
森「なーんかジャッキー感激の言葉言っていたよ! 俺達のこと忘れられないんだなー、俺も忘れられないよ! あの本場中華!」
 感慨にふけっている森田を呆れ顔で見て、長野、坂本、井ノ原、岡田、三宅、あいは、足早にカレー店へと歩き始めた。
 食事をし終わり、Vレンジャーの本部に戻った長野は、中国茶(思いっきり商事の健康茶)を井ノ原、岡田、三宅、あい、森田、そして落ち込んでいる坂本に淹れた。
長「この写真、さっき見つけたんだ! まぁ坂本くんもそんな落ち込まないで、今となってはいい思い出だよ!」
 長野がテーブルに置いた写真には、ジャッキー・チェンと巨大なブラックと小さなレッド、ブルー、イエローそして大袈裟博士つまり長野が写っていた。
 当時、坂本は敵だったのでいないのは分かるが、あいも何故か写っていなかった。
 中国茶を飲みながら長野は懐かしそうに回想し始めた。


 某月某日 天気快晴  Vレンジャー本部
 相変わらずカップラーメンの日々を過すVレンジャー達

森「ああー歯ごたえのあるモノが食べてぇー! もうこうなりゃ何の肉でもいい」
三「そう言うこと言うのやめろよ! 動物愛護協会に訴えられるよ」
岡「せやけど、カップラーメンはもういいわ! 他って言ってもなーあの健康食品か」
あ「絶対イヤ、あの健康食品まずいんだもん! でもカップ・ラーメンもイヤ」
井「博士、気のせいかな? 何かラ王ばっかり食べてない俺達」
 森田、三宅、岡田、あい、井ノ原は疑いの目で大袈裟を見つめた。
大「分かってしまったか! 実は香港旅行が今、懸賞になっていてね! それでラ王な訳」
 大袈裟はにこにこ顔で、Vレンジャー達を見たが、軽蔑の眼差しで見つめ返された。
 世の中、そんなにうまく行けば苦労はないぞ大袈裟! 一攫千金の夢物語より、汗水たらして地道に働くことこそと、作者が説得に懸かろうとしたその時、郵便屋が6通の手紙をVレンジャー本部に配達して来た。
 すぐ側にいた森田がその手紙を開いた。
森「えーとラ王香りの港の旅行きごにち間当然おめでとうございます! だって」
 訝しげに井ノ原がその手紙を受け取り、読み直した。
井「えっとラ王香港旅行5日間の旅懸賞ご応募当選おめでとうございます! つきましては旅の手筈を取りたいので、早急にご連絡下さい!」
 どの手紙も同じ内容が書いてあり、Vレンジャーと大袈裟博士は小躍りして喜んだ。
大「良かった、君達も一緒に行けて! 実はみのさんには悪いけど別なスポンサーを探してたんだ! それでジャッキー・チェンはチャレンジする人間が好きだってことでね、何とか僕達のスポンサーになって貰えないかと思ってこの懸賞に応募したんだよ!」
三「博士! ごめんねそうとは知らないで、軽蔑したりして! 僕、精一杯やるね!」
岡「嬉しいわ博士! 俺もジャッキーにスポンサーになって貰えるように努力するわ」
あ「ジャッキー・チェンに会えるの? どうしようあい、何、着ていけばいいかな」
森「ホンコンか! 何、食おうかなー、今から楽しみだよ!」
井「博士、物事をスムーズに運ぶ為に、レッドとあいちゃんには留守番頼みませんか」
大「まぁ、そんな事言わずに皆で行こう! せっかくの旅行でもあるのだからブラック」
 大袈裟博士とVレンジャーが夢の中で、かの地香港へと思いを馳せている頃、坂本は地下工場で良からぬことを鉄板DISHのメンバーと考えていた。

 坂本の地下工場
ジ「ほんまかいなー! そんな6人も簡単に当たるもんやろか?」
マ「俺はラ王の本家本物だよー! 嘘を言ってどうなるんだよ」
ト「香港か、食い物美味しいそうですね! リーダー」
タイ「ああーいいよな! 俺達も行きたいよね」
坂「長野が、只、香港旅行に行きたくて応募したとは思えないなー」
タツ「香港って言えばジャッキー・チェンがいるけど、でも関係ないか」
坂「それだ! ジャッキー・チェンだ! 長野はジャッキー・チェンに会いに行ってスポンサーになって貰おうとしているんだ!」
 坂本はジョー、マボ、トモヤ、タイチ、タツヤの顔をじっーと見つめて叫んだ。
坂「俺達も香港に行くぞ! そして長野の計画を必ず阻止する! 分かったな!」
 せっかく楽しいはずの大袈裟博士とVレンジャーの香港旅行は、坂本と鉄板DISHの出現によって邪魔されようとしていた。負けるなVレンジヤー! 香港の街を守れるのは君達だと思う! これは正義と友情に命をかけた若者の物語である。

TO BE CONTINUED!


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