第14話 番外編・忍法五番勝負・4 「風の巻」

(by hongming)

ナレーション「めざす宝は謎のもの。どんな形か知らないが。キラリと光る、玉の汗。底抜け忍者だ、武威連者。山道よたよたよたよた、武威連者が行く。これは、困難に負けずに目的を果たそうとした若者たちの物語である」

 山の頂上。
 酒を飲んでいる坂本。

 山道を行く五人。
 汗をかきながら山道を登っていく武威連者。井ノ原が先頭。一番後ろに大袈裟。
森田「ここが連中の本拠地っていう話だったよね」
大袈裟「ああ。だから次々に敵が出てくるじゃないか」
三宅「何かなー」
大袈裟「不安か」
岡田「不安やのうて不満や」
井ノ原「しゃれかよ。さっきのやつと気が合いそうだな」
大袈裟「ふざけてる場合じゃないよ。まだあと二人いる」
井ノ原「あとの二人は、ちゃんとした敵なんだろうな」
大袈裟「……」
森田「何で黙るんだよ。どんな連中か知ってるんだろ」
大袈裟「知ってる。だから答えようがない」

 山の頂上。
坂本「ああ、いい気持ちだ。昼寝でもするか」
 横になり、腕を枕にして目を閉じる。

 汗をかきながら山道を登っていく武威連者。井ノ原が先頭。一番後ろに大袈裟。
岡田「疲れた」
井ノ原「お前、一番若いのにそんなこと言うなよ」
岡田「若くても疲れるがな」
三宅「ほんと疲れた。少し休もうよ」
大袈裟「しょうがないなあ」
 大袈裟の声に振り向くと、大袈裟はすでに道ばたの岩の上に座り込んでいる。
森田「何で自分だけ休んでんだよ」
大袈裟「みんなも休みたいだろうと思って」
井ノ原「しょうがねえなあ」
 見ると、井ノ原も座り込んでいる。それを見て、森田、三宅、岡田も座り込む。
森田「こうやって、疲れてるところに敵が来たら困るな」
岡田「そら困るな」
大袈裟「そんなこと言ってると……」
「その通りだ」
 声のした方を見ると、トモヤが立っている。
岡田「でかー」
井ノ原「ほんとだなあ。背が高いなあ」
森田「隣に立ちたくないな」
三宅「六尺以上ありそうだね」
大袈裟「相変わらずだねえ」
トモヤ「ほかに言うことねえのかよ」
大袈裟「ない」
井ノ原「俺たち、疲れてるんだよ」
 全くやる気のない武威連者。
トモヤ「おい、お前ら宝を狙って来たんだろう」
井ノ原「そうだよ」
トモヤ「俺たちは、その宝を守ってるんだよ」
三宅「知ってるよ」
トモヤ「だったら戦えよ」
森田「少し待ってくれよ。休んだら戦うから」
トモヤ「早くしろよ」
岡田「短気やなあ」
大袈裟「よし、仕方がない。戦おう」
 立ち上がる五人。トモヤは身構える。
大袈裟「で、どうやって戦う?」
トモヤ「どうやって、って」
大袈裟「戦うっていっても、いろいろあるだろう」
井ノ原「そうだよ、どういうふうに戦うんだよ」
トモヤ「どうって、俺たち忍者だし……」
岡田「忍者もいろいろやで。だいたいあんさんの仲間って、ろくな戦い方せえへんのばっかりや」
トモヤ「そ、それは……」
三宅「どうするの。ほら、戦おうよ」
トモヤ「お、おう。戦おう」
森田「だから、どうやって戦うんだって聞いてるんだよ」
トモヤ「……」
井ノ原「ちゃんと考えてから出て来いよ」
トモヤ「ごめん」
大袈裟「ま、そう厳しいことばかり言うなよ。向こうも仕事なんだ。何か考えてあげようよ」
岡田「そうやな。考えてみりゃ、同じ忍者仲間やし」
三宅「ちゃんと決着がつくようにしようね」
トモヤ「ありがとう」
森田「ま、そう緊張しなくていいから」
大袈裟「よし、こうしよう。こっちは五人いるから、このまま戦うと五対一で、ちょっと卑怯だ」
トモヤ「ちょっとじゃなくて、かなり卑怯だろう」
井ノ原「だったら、お前らも五人まとめて出てくりゃいいじゃねえか」
トモヤ「……」
大袈裟「まあまあ。で、どうするか、だ。五対一にならないように一人ずつ戦うのも大変だ。一遍で済む方法を考えた」
三宅「どうするの」
大袈裟「こっちがめざすのは頂上だ。こっちが頂上へ向かう以上、向こうも頂上へついて来ざるを得ない」
森田「小猿? どこに猿がいるんだよ。俺の事じゃないだろうな」
三宅「(小声で)違うよ。ついてくるしかない、って言ってるんだよ」
大袈裟「だったら、一緒に頂上へ行こう。ここから一斉に歩き出して、一番少ない歩数で頂上に着いた人が勝ち。これでどうだ」
トモヤ「俺はいいけど」
岡田「それはちょっと俺ら不利やろう」
井ノ原「足の長さが違いすぎる」
三宅「でも、それなら一遍に勝負できるよね」
森田「よし、やろう。俺は負けねえ」
 顔を見合わせる大袈裟たち。
森田「何だよ」
大袈裟「いや。何でもない。さあ、始めよう」
トモヤ「悪いけど、俺は三千歩でシャムの国から帰ってきたこともあるんだぜ」
井ノ原「あえて相手に有利な戦いを挑む、それが俺たちだ」
岡田「かっこええ」
大袈裟「さあ、並んで並んで」
 山道に横一列に並ぶ武威連者とトモヤ。
大袈裟「せーの」
「イーチ、ニーィ、サーン……」
と数えながら歩き出す六人。声はそろっているが、トモヤだけがどんどん前へ行く。
森田「畜生! このままじゃおいてかれちまう」
大袈裟「そう熱くなるなよ」
岡田「けど、離されるばっかりや」
トモヤ「俺の勝ちは決まりだな」
 どんどん先へ行くトモヤ。大袈裟はそっと合図して武威連者にその場で足踏みさせる。森田は怪訝な顔。
三宅「すごーい。あんな先に行っちゃってる」
井ノ原「なんて足が長いやつなんだ」
 調子に乗って大股でどんどん歩いていくトモヤ。ついにその姿が見えなくなる。
森田「何だよ、負けちまうじゃねえかよ」
大袈裟「それでいいんだよ」
森田「よくねえよ、勝ちてえよ」
井ノ原「落ち着けよ。敵を追い払うのが目的だったんだから」
森田「え? そうだったの?」
三宅「敵も単純だけど……」
森田「何言ってんだよ。俺だってちゃんと分かってたよ」
三宅「ほんとかよー」
森田「分かってたよ」
 疑わしそうな目で見る四人。
森田「分かってたって言ってんだろう」
大袈裟「まあまあまあ。とにかく先へ進もう」
 歩き出す五人。
大袈裟「敵はあと一人、いや、あと二人出てくるはずだ」
井ノ原「あと二人?」
大袈裟「向こうは五人組だが、頭領が別にいる」
岡田「そういや、そういう話やったな。俺らと同じか」
三宅「でもさー。さっきのでかいのが、頂上で待ってるんじゃないの」
井ノ原「あっ、そうか。やっつけてないもんな」
三宅「頂上ではどうするの」
大袈裟「……そこまでは考えてなかった」

 山の頂上。
 社(やしろ)のところについたトモヤ。
トモヤ「やったー。俺の勝ちだ。三千歩もなかったぞ」
 見ると、坂本が寝ている。
トモヤ「こんなとこで寝てら。俺も寝て待ってよう」
 横になるトモヤ。たちまち眠り込む。

 山の麓。木陰で昼寝していたあいが目を覚ます。
「のどが渇いちゃった」

 山道。登っていく武威連者。
大袈裟「そろそろ次のが出てきそうだな。うわっ」
 大袈裟は、道に掘られた落とし穴に落ちる。
井ノ原「落とし穴だ」
 井ノ原が道から飛んで離れ、笹の茂みに入ると、上から網が落ちてきて井ノ原を包む。
井ノ原「しまった」
 森田、三宅、岡田は、井ノ原とは反対側の茂みに入り身を寄せ合う。突然足元から網が現れ、三人は網に包まれて宙づりになる。
森田「やられたっ」
三宅「でも、忍者らしくなってきたね」
岡田「本格的やん」
「はっはっはっは」
 木陰からタイチが現れる。
タイチ「かかったな」
 もがく武威連者。うれしそうなタイチ。してやったり、という表情。

ナレーション「敵も味方も間抜けなことを繰り返していたが、ついに忍者ものらしい展開になってきたVレンジャーR。頂上を目前に、最大の危機が迫る。どうなる武威連者。やるときゃやるぜ、の忍者たち」

TO BE CONTINUED!


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