第1話 帰ってきたVレンジャー


朝日(バリボーの選手ではありません。念のため)に向かって立つ5人のシルエット。
景気よく「Theme of Coming Century 」が流れる。(ミレニアムだからね)
ナレーション「ミレニアムを迎えながら、なんということはなく中途半端に完結を迎えてしまったVレンジャー。あれから大袈裟は、Vレンジャーは、坂本は、鉄板DISHは、いったいどうなってしまったのか? はたして人類に明るい21世紀は来るのだろうか? これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

Vレンジャー本部。
コンピューターを操作している大袈裟。
ぼんやりと、モニターに映る街を見ている井ノ原。
無心にカレーライスを食べている岡田。
マンガを読んでいる森田。
鏡を見ているあい。
本を読んでいる三宅。
いつもののどかな風景が繰り広げられている。
井ノ原「坂本・・・」
急にぼそっとつぶやく井ノ原の言葉にみんないっせいに振り返る。
森田「なんだよ。また坂本があらわれたのか?」
井ノ原「いや、ちがうよ。あいつ、あれからどうしたかなって思ってさ」
あい「あれ、おもしろかったよね。お化粧ならともかく、顔に落書きしたのってはじめて」
三宅「ねえ、もう坂本を恨んでないの?」
井ノ原「わすれたわけじゃない。でも、なぜか前ほどの感情はなくなったな」
大袈裟「僕もだよ。あの坂本くんの秘密工場になにかを置き忘れてきたような、そんな気がするんだ」
森田「でも、もし坂本がまた悪いことをしたら、もちろん戦うんだろ?」
大袈裟「決まってるだろう。そのために君たちに集まってもらったんだからね」
深くうなずきあうVレンジャー。

(真っ暗な映像の中、坂本の暗いナレーション)
「真っ暗な闇の中、いつものように誰かが俺のそばに来て囁く。
「はじめて顔を合わせた日から君のことばかり考えてた。いつだって僕は君のことを見つめている。もう君は何も悩まなくていい。何も苦しむ必要はないよ。僕がこの暗闇の中から、きっと君を助け出してあげるから」
その人物は俺の正面で俺の両肩に手をかけ、俺を引き寄せようとする。顔は暗くて見えない。だが、その顔は俺の顔に近づいてきて、唇が・・・」

「ぎゃあぁぁぁ〜〜〜っっ!」
悲鳴とともに跳び起きる坂本。
ここは坂本の地下工場。鉄板DISHの面々があきれた顔をして坂本を見ている。
ジョー「なんやねん、急に。びっくりしたがな」
坂本「こっ、ここは・・・? ああ、よかった。またあの夢か」
マボ「夢見て寝ぼけてんじゃねーよ。ったくしょうがない人だなあ」
タツヤ「でも、いったい何の夢見てたわけ? あんな悲鳴あげるなんてさ」
坂本「い、いや。それが・・・」
トモヤ「おおかたマッチさんにでも怒られる夢なんじゃねーの?」
坂本(考え込んでいる)「・・・・・」
タイチ「マッチさんに怒られるなんていつものことじゃん。あんたらしくもない」
坂本(つぶやくように)「あれはいったい誰の声なんだ・・・?」

Vレンジャー本部。
コンピューターを操作している大袈裟の所に岡田が来る。
岡田「なあ、博士。ちょっと話があんねんけど」
大袈裟「ん? なんだい? 急ぐこと?」
岡田「そのままで聞いといて。あの坂本って人のことやねんけど、確かあの人博士の昔の友達やったなあ?」
大袈裟「そうだけど? 坂本くんがどうかしたの?」
岡田「俺さぁ、なんかあの人のこと気になってしょうがないねん」
大袈裟「え? 坂本くんのことが?」
岡田「うん、俺、どうしてもわからへんねん。ほんまにこのままあの人と戦ってええんか? 後悔したりせえへんか? 他に道はないんか? 人間の中には善と悪が共存してるて言うやんか。悪の暗い闇の中から救い出して、更正させたることはできへんのか? だって友達やったんやろ?」
やけに真剣な岡田の言葉に他のVレンジャーもやってくる。
井ノ原「お前、やけに熱心じゃん。いったいどうしたの」
あい「わっ、やっぱ岡田くんて男の人が好きだったんだ。でも、たしか前は森田くんじゃなかった?」
森田「ちっ、ち、ち、ちがうよ。あれは単なる誤解」
三宅「え〜っ、なんだよ、それ? お前ら、なんかアヤしいことあったの?」
岡田「ちゃうわっ。あれはやな、ちょっと怖いことがあって」
あい「うっそ〜、ふたりだけだったじゃない。そのあとだって、ふたり顔見合わせて赤くなったりして」
三宅「ひえ〜っ、それって本物じゃん」
森田「だからぁ、ちがうって。そんなわけねーじゃん」
井ノ原「そうだよな? だってお前、俺とつきあってんだもんな?」
思いっきり森田に頭をたたかれる井ノ原。

坂本の秘密工場。
いまだ悪夢から覚めやらぬ表情の坂本をじっと見つめる鉄板DISHの目は冷たい。
坂本「なんだ? お前ら」
マボ「坂本さん、あんた本当に俺らと協力してやってく気あるの?」
坂本「どういうことだ? そのためにマッチさんから派遣されてきたんだろうが」
タツヤ「はっきり言って、俺たちあんたが信用できない」
トモヤ「わすれたとは言わせないぜ。あんたマジで俺たちを殺そうとしてただろ」
坂本「な、なに言ってんだ。そんなわけないだろ」
ジョー「いいや。あの時のあんたは本気やった。俺らを虫けらみたいに思ってるんちゃうんか?」
坂本「ばかなことを言うな。いままでだって一緒にやってきたじゃねーか」
タイチ「いざって時に裏切られるのってたまんないからね。これからも一緒にやるっていうのなら、こっちにも条件があるよ」
坂本「条件? どういうことだ?」
ジョー「そやな。つまりこういうことや。今度は、あんたに矢面に立ってもらう。それがいやなんやったら、俺たちとは別個にやってもらうっちゅうこっちゃ」
マボ「じつはマッチさんにも話はつけてある。よーく考えて返事してほしい」
タツヤ「もしかしたらマッチさんからも何か連絡がいくかもしれないけど、俺た
ちのほうはそういうことだから」
トモヤ「下手したら、あんたクビかもな」
坂本「な、なんだと。お前ら・・・」

Vレンジャー本部。
岡田「博士、ほんまにこのまま戦う気なんか?」
大袈裟「岡田くん、いや、みんなも聞いて。僕にもよくわからないんだけど、僕の中の何かが戦えと命令してるんだ。坂本くんのことを考えると確かに心が痛いよ。でも、僕はこわいんだ。坂本くんの心にも天使と悪魔が住んでるかもしれないけど、僕の中にも住んでるんだと思うんだ。坂本くんが引きずり込まれたものに、いつか僕も引きずり込まれるんじゃないかって気がする。それがどんなものかはわからないけどね。ときどきわけのわからない悪夢にうなされることがある。でも、僕の中で誰かが、たぶん天使の僕が、全力でそれを叩きつぶせって言ってる。だから、僕は決めたんだ。坂本くんが悪なら、たとえどんなことになろうと彼を倒すって」
井ノ原「博士、本当にそれでいいんだよね? 博士が戦うのなら、俺たちも戦う。たとえそれが博士にとって悪夢でも」
森田「俺、博士が夢にうなされてるの見たことあるよ。とても苦しそうだった。
でも、俺たち、選ばれた戦士だからな」
あい「もし、あたしたちに出来ることがあるのなら、なんでも言ってください」
三宅「俺たちも覚悟を決めたから。戦うっきゃないって」
大袈裟「ありがとう。みんなで悪と戦おう」

坂本の秘密工場。
寝ている坂本の枕元で携帯電話が鳴る。寝ぼけ眼でそれを取る坂本。
坂本「はい」
「俺だ」
ベッドの上に体を起こす坂本。
「マッチさん」
「坂本」
「はい」
「今まで、よくやってくれた。ありがとう。もういいから」
「そ、そんな、マッチさん。まさか鉄板DISHのやつらの言うことを真に受けてるんじゃないでしょうね? それじゃ、前に見た悪夢と同じじゃないですか」
「ふふふ・・悪夢? そうかもしれないな。でも、誰にとっての悪夢になるのか・・」
「マッチさん、ちょっと、マッチさん。それはいったいどういう意味なんですか?」
「いいか、坂本。俺がこれから言うことをよく聞け」
「はい、マッチさん・・・」

Vレンジャー本部。
大袈裟とVレンジャーが揃っているところへ、突然坂本がやってくる。Vレンジャーも大袈裟も驚いて二歩さがる。
大袈裟「さ、坂本くん!」
坂本「長野、いや大袈裟。俺は今日からお前の仲間だ」
あい「なによ急に」
坂本「何でもいい。突然クビにしやがって」
井ノ原「リストラされたのか」
坂本「うるせえ。とにかく俺はお前たちと一緒になる」
大袈裟「でもね、坂本くん・・・」
坂本「どうした? まさかあの悪夢と同じで、お前たちもクビになったっていうんじゃないだろうな?」
森田「悪夢? クビ? なんのことだよ。だいたいあんた、俺たちの敵役だろ? ホントにこれでいいと思ってんの?」
三宅「いいわけないだろ。おい、岡田。お前、さんざんこのままでええんか? とか言いやがって。ったくどうすんだよっ」
岡田「更正さして、連れ戻す手間が省けてよかったやんか。な?」
坂本「更正? 連れ戻す? なんのことだ?」
井ノ原(岡田を指して)「こいつがあんたのことが気になってしかたないって言うんだよ」
坂本「えっ?」
思わず岡田から一歩ひく坂本。
大袈裟「そうそう。友達だろ、助けてやらなくていいのかってうるさいったら」
さらに一歩ひく坂本。
あい「前は森田くんが好きだったんだけど、いまはあなたらしいわよ」
森田「だから、それはちがうって」
坂本「森田ってお前?」
森田「そうだよ、なんか文句あるのかよ。がに股は直んねーぞ」
坂本「いや、スカートはいてないから別にいいけど。ふうん」
森田「なんだよ」
坂本「似てんじゃん」
森田「ハ?」
坂本「似てんじゃん、お前と俺って」
凍りつく森田と大真面目な坂本。ふたりを見比べるVレンジャーと大袈裟。

ナレーション「新シリーズになって、にわかに変化を見せ始めたVレンジャーと大袈裟、坂本、そして鉄板DISHの関係。はたして坂本はVレンジャーに合流することになるのか? そしてこのシリーズはおちゃらけなのか、シリアスなのか? それはともかく、行け!Vレンジャー。最高にナイスなヒーローたち!」

TO BE CONTINUED!


(リターン・マッチ)
新連載記念ということで、みなさんに問題をひとつ。
この回の中に前回連載の「Vレンジャー」から、そっくりそのまま5行以上パクった部分が3カ所あります。それはいったいどこでしょう?
(ヒント:hongming先生の文章からパクってます)


VレンジャーR・トップへ

メインのぺージへ