第3話 「デ・ジャ・ヴ」

ナレーション「ついにVレンジャー内部に潜入した坂本。彼の目的は何か? Vレンジャーと大袈裟は坂本の陰謀を阻止できるのか? これは、正義と友情に命をかけた若者たちの物語である」

Vレンジャー本部。
坂本はあいの武器を手に取って見ている。
坂本「なるほどな。精神力をエネルギーに変えてるのか。やたら経済的だな。ケチな長野らしいぜ」
岡田「そんなバカにしたもんやないで。地球にやさしいっちゅうこっちゃ」
あい「そうよ。それにあたしたち、並みの精神力じゃないんだから」
坂本「どういうことだ?」
あい「だって、あたしたち、地球を守る戦士なんだもの。悪に立ち向かうパワーは誰にも負けないんだから」
坂本「悪に立ち向かうパワーね」
岡田「そやで。あんたも俺らの仲間やったら、一緒に戦おうや」
坂本の肩をたたく岡田。思わず一歩ひく坂本。

三宅「見て。博士、またうたたねしてるよ。それも、いつもうなされて苦しそうだし。どうかしちゃったのかな?」
森田「俺さ、このあいだ博士の寝言聞いちゃったんだ。“ぶっ壊しちまえ”とか“新しい破壊兵器を作ろう”とか言ってた。坂本と一緒に何かやってるみたいだった」
三宅「なんだよ、それ。まるで博士が悪の手下みたいじゃん」
井ノ原「博士、前に言ってたよな? 自分の中にも天使と悪魔が住んでるって。夢の中で悪魔の博士が顔を出してるのか?」
三宅「どうすんだよ、もし、もしだよ、博士と戦わなきゃいけなくなったらさ」
森田「博士は親友だった坂本でも、悪なら戦うって言ってた。俺たちも戦うしかないだろ」
井ノ原「たぶん博士は坂本と戦うためにVレンジャーを作ったんじゃないかな」
三宅「博士はなにかやり直したいことがあるみたいだったよ。でも、それは思い出したくないことだって言ってた。それってなんなんだろう?」
井ノ原「その前にこの妙な悪夢の正体を確かめることだな。どうも気になる」

研究所の一室。
坂本と長野(カツラなし)が部屋に入ると、奥の暗闇に椅子に座った人影が見える。
坂本「連れてきましたよ、マッチさん。彼が前から話してた長野です」
椅子の人影はゆっくりとこちらへ振り返る。
「ようこそ、私の研究所へ。長野くん。きみがここへ来るだろうことは、ずっと前からわかっていたよ」
長野「どういうことなんですか? ここはあなたの研究所なんですか? 僕にここで何をしろと言うんです?」
「大学時代と同じだよ。そこにいる坂本とパートナーを組んで、好きな研究をしてくれたらいい」
長野「好きな研究?」
「そうだ。きみが心の奥底でやりたいと思っていることだよ。きみの心の半分が熱望している研究だ。もし、それが成功したならそのかわりに・・・」
「博士、博士」
長野の頭の上から誰かの声が降ってくる。
長野「そのかわりに?」
「きみが欲しがっているものを・・・」
「博士、博士ったら」
誰かの声が頭上から聞こえ、全身が揺さぶられる。

Vレンジャー本部。
三宅に肩を揺すられ、目を覚ます大袈裟。カツラがずり落ちている。
三宅「博士、だいじょうぶ? うなされて、汗びっしょりだよ」
再び眠りこんでしまう大袈裟。
井ノ原「疲れすぎて起きてられないって感じだな。ずいぶん消耗してるぜ」
森田「また悪い夢見たのかよ。また例の悪い博士の夢かな」
三宅「でも、このまま続けば、博士の身体がまいっちゃうよ」
井ノ原「それか、その自分の中の悪魔ってやつに食われちまうか、だな」
三宅「いやだよ、そんなの。悪者の博士と戦うことになるなんてさ」
森田「そうと決まったわけじゃないだろ。それにしても、最近このカツラやたらずり落ちるよな」
カツラを手に取り、かぶってみる森田。
井ノ原「ずり落ちる? おい、もしかしてそれ・・・」
森田「うわあぁぁ、やめてくれぇぇぇ」
突然頭をかかえて、悲鳴をあげる森田。
森田「たっ、たのむからそれ以上近寄らないで、あいちゃん」
三宅「あいちゃん? 向こうの部屋じゃん」
森田「たしかに最初はきみのこといいなと思ったんだけど、もういいから。岡田とでも誰とでもつきあって。あっ、こっち来ないで」
井ノ原「ははっ。お前、あいちゃん狙ってたの?」
森田「きみが怖い、いや強いのはよーくわかったから。ねっ、きみとつきあうくらいなら、まだ岡田とつきあったほうがまし、いや、それも困るんだけどね」
三宅「何言ってんの? 頭おかしくなったんじゃねーの?」
森田「ねっ、岡田のほうが好みなんだろ? 俺、遠慮しとくからさ。俺以外なら誰とでもつきあっちゃってよ。そっ、そんなに迫ってこないで。あっ、やめてっ」
井ノ原「こいつ、うなされてやがるぜ」
井ノ原が森田の頭からカツラを取る。
森田「あれっ? 俺、夢でも見てたの? こっ、こわかったー!」
三宅「ねえ、お前の悪夢ってあいちゃんなの?」
森田「えっ? な、なんで知ってんだよ、そんなこと」
井ノ原「それよりこれを見てみろよ」
井ノ原がカツラの内側を2人に見せる。そこには左右に2カ所、小さな金属片が取り付けられている。
三宅「これか。これが博士の悪夢の原因なんだ」
森田「このちっぽけな機械のせいで、あんな悪夢を見せられたっての?」
井ノ原「これは単なる端末で、本体は別にあるんだろう。それにしても、博士は眠ってる時にしかうなされなかったっていうのに、お前ってよっぽど単純なんだなあ」
森田「る、るせっ」
三宅「やっぱりそれって、坂本のしわざだよね? 坂本はこないだからあいちゃんの武器を改造してるみたいだけど、あいつらだいじょうぶなのかな?」
井ノ原「な、なんだって!」

Vレンジャー本部の別室。
坂本があいの武器をあいに手渡している。
坂本「さあ、これで放出されるエネルギーは倍増されてるはずだ」
岡田「ふうん。博士もすごいと思ったけど、坂本さんもたいしたもんやなあ」
あい「でも、ホントにこれでだいじょうぶなの? ちょっと不安」
坂本「俺を信じろ。なんなら試してみたらいい」
あい「そうはいってもねえ」
岡田「これを使ったら、えらいことになるやんか」
坂本「じゃあ、次はお前の番だな。武器を俺によこせよ」
岡田「俺か? 俺の武器はこれや」
坂本に武器を手渡す岡田。

井ノ原「ちょっと待て。そいつに渡すんじゃないっ」
坂本、岡田、あいのいる部屋に井ノ原、森田、三宅が乱入する。
坂本「なんだ、お前ら。ノックもせずに入ってきて」
森田「黙れ。お前を信用した俺たちがばかだったよ。なんだ? これは」
森田は大袈裟のカツラを坂本につきつける。
岡田「ちょっと待てや。これいったいどういうことやねん」
井ノ原「騙されたんだよ、俺たちは。この野郎にさ」
あい「うそっ。うそでしょ?! だって一緒に悪を倒そうって」
坂本「おい、いきなりそれはないんじゃないのか? いったいなんなんだ、そのカツラは」
三宅「見ろよ。なんでこんな変な機械がこれにくっついてんだよ? あんた、なに企んでんだ?」
5人の顔を順番にじっと見つめる坂本。
坂本「そうか。バレたんじゃあしょうがない。そこの女の武器の複製とでこっぱちの武器をいただいて消えるとするか」
岡田「おいっ、あんた本当に俺らを騙したんか?!」
坂本「ふん。一緒に悪を倒すだ? ガキみてーなこと言ってんじゃねーよ。じゃな」
井ノ原「また瞬間移動装置を使って逃げる気か? そうはさせないぜ」
坂本「じゃあ、どうするっていうんだ?」
薄笑いを浮かべて瞬間移動装置のスイッチを入れる坂本の顔が、次の瞬間驚愕にゆがむ。
坂本「な、な、なんだ?!どうして移動できないんだ?!」

「本部の回りにシールドを張ったんだよ、坂本くん」
声とともに大袈裟(カツラなし)が部屋に入ってくる。
三宅「博士、もう起きてもだいじょうぶなの?」
大袈裟「ああ、少しすっきりしたからね。心配かけてごめん。坂本くん、きみはここからは逃げられないよ」
坂本「ふん、それはどうかな?」
大袈裟「悪あがきはやめたまえ。きみときみの仲間をつなぐ糸は断ち切られてるんだ。その悪夢増幅装置をのぞいてはね」
森田「悪夢増幅装置? なるほどな。それであんなにうなされたってわけか」
大袈裟「この装置は人間の心の中の一番弱い部分に働きかけるんだ。その人が思い出したくない、後悔しているような記憶をリアルに蘇らせる」
三宅「なるほどね。ところでさ、お前。(と、森田の肩をたたいて)いままで後
悔したことってないの?」
森田「ない。そんなもんあるわけない」
井ノ原「あいちゃんに手を出そうとしたのが唯一の後悔ってことか。ほんとにお前っておめでたいやつだな」
あい「えっ? あたしがどうかした?」
森田「なっ、な、なんでもない。全然関係ない」

坂本の秘密工場。
電話に向かって話しているジョー。
ジョー「はい、わかりました。そのほうが効き目が早うて助かりますわ。ほな」
電話を切るジョー。
マボ「マッチさん、なんだって?」
ジョー「パワーアップせえっちゅうこっちゃ」
タツヤ「なんにしろパワーはあったほうがいいからな」
トモヤ「そうそう。パワーとガタイは大きい方がいい、と」
じろっとタツヤとトモヤを見るジョー。
タイチ「じゃあ早くしなよ。ここでじっと待ってんのも退屈だしさ」
ジョー「よっしゃ、行くでー。悪夢増幅装置パワーアップ!」
スイッチを勢いよく右に回すジョー。

Vレンジャー本部。
大袈裟「とにかく、坂本くん、そのあいちゃんと岡田くんの武器は返してもらうよ。いいね?」
坂本「しかたねーな」
おとなしく大袈裟に武器を渡す坂本。
坂本「で、俺をどうするつもりなんだ?」
大袈裟「これだよ」
手に何かを持ち、にっこりと坂本に微笑みかける大袈裟。

ナレーション「危ういところで坂本の陰謀をくい止めたVレンジャーと大袈裟。大袈裟は坂本に何をするつもりなのか? ついにVレンジャーに坂本を倒す時がやってきたのか?!」

TO BE CONTINUED!


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