SUPER FLY

 アクセス・カウンター60000突破ということで、こんなのを書いてみました。
 「FROM rain」を読んでいない方は、そちらを先に読んでください。


 入学式の日、帰り道で、母親が健に話しかけた。
「ちゃんと自己紹介できたんだってね。長野先生が言ってた」
 健は黙って頷いた。
「ずいぶん若い先生ね。先生っていうより、お兄さんみたいね」
 健はまた頷いた。会話が続かず、母親も黙った。

 家に帰ると、健はすぐ自分の部屋に行ってベッドに横になった。明かりはつけず、目を閉じてじっとしていたが、眠りに落ちることはなかった。
 しばらくすると、玄関の方で音がした。
「おかえりなさい」
 父親を出迎える母親の声が聞こえた。
「今日ね、健もちゃんと自己紹介できたのよ」
「そうか、よかったな。とりあえず、ビールを出してくれ」
「それだけ」
「ああ」
「これからのこととか、心配じゃないの」
「俺が心配したってどうにもならないだろう」
「でも……」
「俺だって疲れてるんだよ」
 会話に耳を傾けていたが気がつくと、健は空を飛んでいた。
 体はいつの間にか窓を抜け、雲の近くまで飛び上がっていた。
 健は、ぼやけた三日月を見ながらすいすい飛び回った。雲の中に隠れたり、雲の切れ目を通り抜けてみたり。
 しかし、飛んでいる健をどこからか見ているもう一人の健がいた。それに気づくと、健は自分の部屋にもどっており、ベッドの上にいた。
 健がもどってきたとき、もう話し声は聞こえなかった。

 定時制高校には給食があった。
 同級生には女の子もいたが、その子は、養護教諭と同じテーブルで食べている。
 健はいつも黙って食べていた。担任は時折、健に話しかけたが、健は頷くか首を横に振るかするだけだった。
 いつも同じテーブルで食べるのは、担任と、大阪から来た生徒と、健の後ろに坐っている生徒だけだった。健の後ろに座っている生徒は、自分から人に話しかけることがあまりなかったが、大坂から来た生徒はよくしゃべった。
 ある日、給食の時、担任は、もう一人の同級生を自分の前に座らせた。三度目の一年生生活を送っている生徒だ。その生徒は、二日続けて休んだ理由を聞かれ、担任の小言が終わると、健に話しかけてきた。
「君、いつも黙ってるね」
 健は相手をしなかった。すると、その同級生は、
「何だよ、シカトかよ」
と言って健をにらんだ。しかし健は黙っていた。
 その日、健は、家に帰ってからまた空を飛んだ。それを見ているもう一人の健に気付くまで。

 病院。
 健は、診察室で医師と向かい合って坐っている。
 医師は尋ねた。
「最近も飛んでるの」
 健が頷くと、
「そう。薬は飲んでる」
と尋ねた。再び健が頷くと、廊下で待っていた母親を招き入れ、健には、廊下のソファーで待っているように言った。
 しばらくして廊下に出てきた母親は目を赤くしていた。

 給食の時、大阪から来た岡田は、三度目の一年生の井ノ原とよく話していた。
 岡田と井ノ原は、時々健にも話しかけ、健は頷いたり首を振ったりはした。
 一度、岡田が、お母さんに二階の窓から逆さ吊りにされた話を聞いた時、健は思わず笑ってしまった。森田も笑っていた。
 健が笑っているのを見て、岡田は、
「お、三宅君も笑っとる。やっと受けたで」
と言い、
「三宅君は、中学校で何か部活やっとったの」
と尋ねた。健は小さな声で、
「僕、中学校行ってないんだ」
と答えた。
 健は、学校に入るまで、一年間家にいたことも話した。
 その日は空を飛ばなかった。

 一学期の終わりに保護者会があった。
 健がテレビを見ていると、母親が帰ってきていきなりこういった。
「健ちゃん、自分のこと正直に話せたんだってね」
 健は頷いた。
「みんなと話せるようになったのね」
 健はまた頷いた。
「同級生のみんなと、友達になったの?」
 健はテレビを消して、階段を上がり、自分の部屋に行った。
 ベッドに横になってじっとしていると、父親が帰ってきた音がした。
 母親の声が聞こえる。
「健がね、自分のこと自分からみんなに話したんですって」
「そうか」
「不登校だったことも、去年ずっと家にいたことも話したんだって」
「そうか。ビール出してくれ」
「ねえ、あなたのところの新聞に、定時制高校のこと、書いてみたら。あたしたちみたいな人の役に立つかもしれないし」
「そうだな……」
「記者の家庭に起こったことを書けば、説得力あるんじゃない」
「バカなこと言うなよ。子供が定時制高校に行ってるなんて、みっともなくて人に言えるわけないだろう」
 その日、健は久しぶりに空を飛んだ。
 そしてやはり、飛んでいる健を見ているもう一人の健がどこかにいた。

 夏休みの間、健はずっと家にいた。
 学校に行くのに、夕方起こされることもなく、いつも、寝たいときに寝ていた。
 そして何度も何度も空を飛んだ。
 雲の上は涼しくて気持ちが良かった。満月の時も三日月の時も飛んだ。雲の上まで飛び上がって見ると、満月は、地上で見るときより大きく見えた。
 夏休みの間にも一度、病院に行った。
 最近はしょっちゅう空を飛んでいることを医師に話すと、その後、健を待たせて医師の話を聞いていた母親は、泣きながら廊下に出てきた。

 二学期。
 久しぶりに学校へ行くと、岡田は髪を短くし、金髪にしていた。
 四年生が修学旅行にいっている間に遠足があったが、健は行かなかった。行かなかった一年生は健だけだった。加藤あいちゃんはおみやげに小さなクッキーをくれた。健は家に帰ってから一人で食べた。
 健の後ろに座っている森田は、二学期になったら、給食の時に、少しずつ同級生と話をするようになっていた。
 父親は健が家に帰ってから帰ってくることが多く、ベッドで横になっていると、父親と母親の話し声が聞こえることがある。
「健ね、今日は、起こされなくても一人で起きてきたのよ」
「何時に」
「四時ぐらい」
「夕方の四時だったら誰だって起きてる時間だろう。ちゃんと朝起きるようにさせろよ」
「少しずつはよくなってるみたいよ」
「みたいじゃだめなんだよ。人並みに朝起きなくちゃ」
「でも、学校は夜なんだし……」
「それがよくないんだよ。定時制なんて。そんなものがあるから健みたいなやつがのうのうとしてられるんだ」
 こんな話が聞こえてくると、健はいつの間にか空を飛んでいる。そしていつももう一人の健がそれを見ているのに気付くのだった。

 文化祭の日は休んだ。昼間だから起きることができないし、興味もなかった。
 岡田は、井ノ原とライブで歌ったと言っていた。
「来年は聞きにきてや」
と言われ、健は黙って頷いた。

 冬休みには、一回しか空を飛ばなかった。飛んだ時には、やはり、もう一人の健が健を見ていた。

 三学期はすぐに終わった。
 卒業式は出なかった。

 進級は問題なく、二年生になれた。
 母親は、
「進級のお祝いに何か買ってあげようか」
と言ったが、健は黙って首を横に振った。

 始業式の日、給食を食べていると、担任と同級生が不満そうに、調理の人が一人減ったことについて話し合っていた。
 担任の話を聞いて岡田たちが口をとがらせたのを見て、あいは笑った。健はその笑顔を見ていたが、目が合って下を向いた。

「健のやつは最近どうだ」
「珍しいわね、自分から健のこと言いだすなんて」
「俺だって気になるさ」
「休まないで行ってる」
「そうか。しかし、普通なら三年生の歳だよな。どうするんだろう」
「どうするって」
「大学だよ。定時制じゃ大学には入れないだろう」
「そんなことないみたいよ。推薦で大学に行く人もいるって、長野先生が言ってた」
「定時制からでも入れるような大学じゃ、行ってもしょうがないだろう。健が定時制に行ってるっていうだけで、俺がどれだけ肩身の狭い思いをしてるか、少しは考えてくれよ」
「新聞に書いてることと随分違うこと言うのね」
「誰だって本音と建て前ぐらいあるだろう。せめて大学ぐらい、名の通った所に行ってくれないと困るんだよ」
 気がつくと健は空を飛んでいた。しかし、今日は一人ではなかった。二人で並んで飛んでいた。健たちは、二人で雲の上を飛び回った。少しの間、手を繋いで飛んだりもした。しかし、もう一人の健が見ているのに気がつくと、一人でベッドの上にいた。

 翌日、給食の時、健は時々あいを見た。しかし、あいはそれに気付かなかった。
 突然森田が話しかけたきた。
「三宅は、両親ともいるの」
 健が頷くと、
「大事にしろよ」
と言った。

 数日後、健はあいと二人で並んで歩くことができた。
 一時間目が終わった時、二人だけノートに写すのが遅かったからだ。
 食堂に降りる階段の途中で、健は聞いてみた。
「一緒に飛んだよね」
「飛んだって」
 あいは立ち止まり、驚いたような顔をして健を見た。
「え、あっ、違うんだ。何でもない」
 健は急いで階段を下りた。

 病院。
 医師はいつものように、最近飛んでいるかどうか尋ねた。
 健は首を振った。
「飛ばないの?」
「前よりは飛ばなくなったみたい」
「昔は飛べたのに?」
「うん……」
 その日、病院からの帰り、母親は機嫌がよかった。
 父親が帰ってきてから話しかける声もいつもよりは明るかった。
「健、よくなってきてるみたいよ」
「そうか」
「このままよくなってくれるといいんだけど」
「今更よくなったって、いい大学に入れるわけじゃないだろう」
「どうしてそんなことばかり言うの」
「息子が定時制高校に行ってるなってばれたら、職場じゃ笑い者だよ」
「新聞記者ってみんなそうなの」
「記者じゃなくたってそうだよ。せめていい大学くらいはいいとこに入ってもらいたいよ。昼間はあいてるんだから、予備校に行かせたらどうだ。俺の子だから頭は悪くないはずだ」
 健はベッドの上で目を閉じた。
 その日は飛べなかった。

 給食の時、岡田が昨日見た夢の話をした。
「ほんまにすいすい飛べるんや。気持ちよかったけど、一つだけよくないことがあった」
「何だよ、よくないことって」
 井ノ原が尋ねると、岡田はこう答えた。
「井ノ原くんが一緒なんや。並んで飛んどった」
「なんで俺が一緒だといやなんだよ」
「そやかて、せっかくの夢なのに」
「俺だって岡田と一緒はいやだよ。せめてあいちゃんとなら我慢できる」
「なんでがまんなのよ」
 あいは笑って言った。健がその笑顔を見ていると、あいが健を見た。健は目を合わせたくなかったので岡田の顔を見た。岡田は健と目があったので、こう聞いてきた。
「三宅君も空飛んだりするやろ」
「うん」
 健は答えた。
「前まではよく飛んでた」
 そこに担任が、横から、
「そうなんだよな、子どものころは空を飛ぶ夢を見るのに、大人になると見なくなるんだよな」
と、口を挟み、岡田は、
「まるっきり俺が子どもみたいやん」
と言って口をとがらせた。
 森田はそれをみて笑っていた。健は森田に聞いてみた。
「森田君は飛ばないの」
 そう言うと、森田はびっくりして健を見た。
「飛ぶ夢か。子どもの頃は見たような気もするな」
 健はもうそれ以上食べる気がしなくて、食器を下げて教室にもどることにした。食堂から出る時、森田が、
「俺、初めて三宅に話しかけられたよ」
と言っているのが聞こえた。

 健が森田に話しかけてからしばらくの間、健もしゃべるようになると思ったらしく、井ノ原はいろいろ話しかけてきた。しかし、健はあまり返事をしなかった。
 あいつはあいにもいろいろ話しかける。あいはよく笑っていた。健は、あいの笑顔を見るのは好きだったが、井ノ原が笑わせるのはいやだった。
 あまり話しかけてこない森田の方が親しみがもてた。
 健はある日、給食の時に、森田に聞いてみた。
「どうして、前、両親がいるかって聞いたの」
 森田はまた驚いていた。担任が心配そうに健と森田を見ていた。
「何でって、ただ聞いてみただけだよ」
「森田君はいるの」
「俺は……いない」
「いないのもいいかもね」
「ふざけるなよ」
 そこに、井ノ原が割り込んできた。
「おっ、しゃべるようになったと思ったら、いきなりケンカか」
 健は黙った。
 放課後、健は、担任に廊下で呼び止められた。
「三宅、みんなと話をするのはいいことだと思うけど」
 そう言って、少し声を低くして、
「ひとの家のことは聞かない方がいいよ。相手が誰でも。森田にも言っておくから」
 その日は、久しぶりに飛べた。しかしすぐにもう一人の健に見られているのに気付いた。そして、もう一人の健は、今までよりもずっと近いところで健を見ているような気がした。

 二度目の夏休み。
 ずっと家にいたが、休みの間は、とうとう一度も飛べなかった。
 病院へ行くたびに、最近飛んだかどうか聞かれたが、飛んでないと答えるのがいつものことになってしまった。
 そして母親は、医師の話を聞いた後、いつもうれしそうにしていた。

 遠足には今年も行かなかった。森田も行かなかった。
 あいは健だけじゃなく、森田にもおみやげを買ってきてくれた。
 健は、森田は行けばよかったのにと思った。

 二学期には、時々は飛ぶことがあった。
 たいていは一人で飛んでいたが、時には二人で飛ぶこともあった。
 二人で飛ぶ時、あいはいつも健に笑顔を見せてくれていた。
 しかし、空を飛ぶ時間は短くなり、空を飛ばない日ばかりが続くようになってきた。
 そして、空を飛ぶ健を見ているもう一人の健がはっきり見えるようになってきた。もう一人の健は、いつも健に向かって何か言っていた。でも何と言っているのかは分からなかった。

 三年生になったばかりのある日、健が自分の部屋のベッドで横になっていると、下から父親の声が聞こえた。父親は酔っぱらっているようだった。
 母親はあきれている。
「いやねえ、そんなに飲んで」
「これが飲まずにいられるかよ。お宅の息子さん、大学はどこになりました、だとさ」
「なんて答えたの」
「予備校に行ってるって言っといたよ」
「正直に言えばいいのに」
「言えるわけないだろう。あいつは同期で、息子も同じ歳。わざわざいやみったらしく聞いてきやがって。息子が現役で合格できたのがよっぽどうれしかったんだろうよ。何しろあいつは、二年も浪人してやっと合格したんだからな」
「いつまでも隠しておくつもりなの」
「あいつが、名前を出しても恥ずかしくないような大学に入るまでだ」
 その日は久しぶりに長い間空を飛んだ。
 あいも一緒だった。
 でも、健とあいが飛ぶのを見ているもう一人の健が、こう言っているのが聞こえた。
「嘘なんだ。飛んでなんかいないんだ」

 次の日、健は早めに学校へ行った。あいはいつも一番に来ていると聞いていたからだ。
 教室に入ると、あいはいなかった。しばらく待っても来なかったので、ほかの部屋にいるのかと思って職員室をのぞいてみた。すると、あいは、担任の机のそばのソファーに腰掛けていた。
 健が入っていくと、担任もあいも驚いて健を見た。
「三宅……今日は早いね」
 健はただ頷いてあいの隣に坐った。あいは不思議そうに健を見ている。
 健は思い切って聞いてみた。
「あいちゃんも空を飛ぶよね」
「空?」
 あいは担任を見た。担任は健を見ている。
「飛ばないの」
「夢でなら……」
「そうなんだ。やっぱりそうなんだ」
「三宅は飛ぶのかい」
 担任がそう聞いた。しかし健はそれには答えないで、
「何だかわかってきたよ」
と言って職員室を出た。
 給食の時、担任は時々健を見たが、健はずっと黙っていた。

 次の日も早く学校に行くと、あいが一人でいた。
 健はもう一つ気になっていたことを聞いてみた。
「あいちゃんは好きな人、いるの?」
 あいはしばらく無言で三宅の顔を見つめた。
「どうして急にたくさんしゃべるようになったの」
「僕、知りたいんだ。好きな人、いるの」
 あいは困ったような顔で健を見た。
「三宅君、もしかしてわたしのこと……」
「教えて欲しいんだ」
「そりゃあ、好きな人はいるけど」
「その人に言ってみたの」
「ううん。言ってもどうせだめだと思うし……」
「だめそうなの」
 あいは頷いた。
「こっちが好きになったからって、相手も好きになってくれるとは限らないもの」
「そうか、そうだよね」
「三宅君、どうして急に話すようになったの」
「僕は……。自分でもよくわからないんだ。ごめんね」
 あいは首を振った。

 数日後、学校を出て駅に向かって歩いていると、四人ぐらいの男に囲まれた。
「ちょっと来い」
と言われたが、健は黙って立っていた。
「来いってんだよ」
 相手の一人がそう言った時、後ろから声がした。
「おーい、どうした」
 振り向くと、井ノ原が走ってくるところだった。
 井ノ原は、健の隣に立って、
「何か用か」
と言って相手をにらんだ。相手もちょっとにらみ返したが、
「何でもねえよ」
と言ってぞろぞろと立ち去った。
「大丈夫か」
 そう聞かれて健は頷いた。
 その日は井ノ原と一緒に駅まで行った。

 次に病院に行った時、健は医師に聞いてみた。
「僕のほかにも空を飛ぶ人はいますか」
「いるよ」
「でも、ほんとうには飛んでいませんよね」
「三宅君はどうなの」
「僕は……ほんとうには飛んでいなかった……」
「そう。飛んでなかったの」
 その日の帰り、母親はとてもうれしそうだった。

 健は、井ノ原の話を聞いて笑うこともできるようになった。
 時々、ベッドに横になって、自分が飛んでいるところを思い浮かべてみたが、思い浮かべることはできても飛ぶことはできなかった。

 一学期が終わって、保護者会があった日、帰ってきた母親は、テレビを見ていた健を見てこういった。
「健も自分から話しかけるようになったんだってね」
 健は頷いた。
「話ができるようになってよかったね」
 健はまた頷いた。
「でも……」
 そう言いかけて母親は涙ぐんだ。
「ママとは話をしてくれないのね」
 健は黙って自分の部屋にもどった。

 しばらくすると、父親が帰ってきて、母親と話しているのが聞こえてきた。
「健が、同級生に、自分から話しかけたりしてるんですって」
「そうか。それぐらいできなきゃしょうがないだろう。ビール出してくれ」
「うれしくないの」
「そりゃあ、うれしいさ。だけど、人並みに近づいたっていうことでしかないだろう」
「健がどうなればいいの」
「俺みたいに一流大学に入って一流の会社に就職してくれりゃなきゃだめだ」
 そんな会話を聞きながら、健はベッドで目を閉じた。しかし、空を飛ぶことはなかった。
 健はつぶやいた。
「僕はもう飛べないんじゃない。もう飛ばないんだ」


 何だか問題作になってしまいました。
 ほかの同級生の話を書くときには、もっとわかりやすい、思いっきり青春小説にしたいと思います。

(1999.7.21 hongming)