旅は台風を引き連れて 前編
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別府に向かう八幡浜発のフェリーは、波が荒かった。

晴れている日の八幡浜港
ばさーん、どーん。
だ、大丈夫なんかこのフェリー?
船体をたたきつける波しぶきは、揺れとともに大きな音を立てた。
ようやく台風が、逸れたというのに・・・・。
何だ、みんな平気で寝ているじゃん。
それもそうだ、この日に向けて膨大な仕事の量をこなしてきたのだろう、
3人の顔には、いささか、疲労が感じられたおっさんの顔をしていた。
ころころころ・・・。
「宇和島フェリー」とかかれた洗面器が転がってきた。
おい、リアルじゃねえか、気分が悪くなる。
一人、興奮していた私は、前日ろくに寝てないにも関わらず、
「まー、まー、まー、まー」と、中国語の四声練習に余念がなかった。
別府。
ここから、高速バスで福岡は、博多へと向かう。
出発時間より20分も遅れたバスが高速に乗ると、
そこは、濃い霧で道路が全く前が見えないほどであった。
「時速60キロ制限」
ふっ、福岡に時間通り着くのだろうか・・・。
車内ビデオでは、役所さんの「絆?」の映画が流れていた。
横の席には、年下とはいえ、役所広司以上に貫禄十分の藤井氏。
見た目30歳といっても、疑う人がないほどである。
「フジタさん、飛行機の時間大丈夫ですかね。」
「そうやな、間に合ってもぎりぎりかもしれんな・・・・」
「え、じゃいけんかったら福岡で遊びますか。」
「なんでやねん!!!」
それより心配は、制限速度は60qだというのに、
100q程度で霧の中をぶっ飛ばしていく運ちゃんのドライビングテクであった。
福岡。
なぜか曇りだった。
台風も関係なく、雨も降っていなかった。
が、すでに遅刻。
ご存じの通り、出発の2時間前にはチェックインしなくてはならない。
急がなくては。
結果、20分の遅刻で、チェックイン。
どうにか間に合った。
西坂・宮本両氏は、バスでもたっぷり寝たのか、元気そうだ。
そういえば、我々、朝から何も食べていない。
僕等は近くのビッフェで、ホットドックにかぶりつくと、
何も言わず、待合室に座った。
藤井一人、べろべろと犬のようにソフトクリームをなめ回している。
ここまで、あえて、みんながさけていた話題が一つある。
そう、ホテルが決まっていない。
これまた誰も口を開くことなく、ぱらぱらとガイドブックのホテルのページを流し読みしていた。
「エバー航空・・・・便のお客様・・・」
おっ、久しぶりだ。
釜山から半年ぶりの出国だ。
飛行機で出国するのは、まさに1年半ぶり。
エバー航空。

緑の制服のスッチー(正確には客室乗務員さん)の案内で機内へ。
ちっ、あれだけ窓際希望って言っておいたじゃねーか、
僕の席は、真ん中のシート列のそれまた真ん中だった。
あのチェックインカウンターのねーちゃん、帰ったらぶっ飛ばしてやる。
それもそのはず、僕には「台風の目」を撮影してこいという指令が出ていた。
まあ、無理だろうが・・・。
シートにどっかりと腰を据えると、シートベルトをし、ぱらぱらと機内誌などを流し読みした。
離陸直前。
僕は、この瞬間が大好きだ。
(BGM:「デルタフォース」のテーマもしくは、「バックトゥザフューチャー」でも可)
きゅぃーん。
きたきた きたきた。
シビックでここまで出せたらなー。などとお馬鹿なことを考えているあいだに、
機体はふっと浮き上がった。
あっと言う間に、雲の上に。
もう、する事がない。
ここでやっと眠気がおそってきた。
ふう。うとうと・・っとした瞬間、機内食サービスのアナウンスがなった。

機内食と言えば、ドリンクサービス。ドリンクサービスといえば、ビール。
「台湾ぴーじゅー(ビールのこと)ぷりーず」
ここで僕と、宮本氏、はやくも「ふぉっ、ふぉっ、ふぉふぉほ」 状態。
「ワインいるひとーっ?」機内サービスがまわってくる。
今度は、ワインか。
これまた、赤をしこたまいただく。
向こうの席で、藤井が、あきれ顔でこちらを見ている。
しるかーっ。
ただなものは、全部飲む。
こうして、今年25歳の二人(「四捨五入しないでね委員会」所属会員)は

機体が降下しはじめる頃には、テンションはうなぎのぼりであった。
中正国際空港。
台北着。時差は、1時間。
格安のエアポートバスに乗り込むと、市内へ向かった。
バスの窓はどす黒いスモークが張っていて、夕方なんだか、夜なんだか解らない。
泥酔のおっさん2人は、爆睡。
機内で寝て体力回復の、西坂氏、海外初の藤井氏が心配そうに辺りを見回している。
市内に入って、目が覚めた。
頭もすっきりしている。
あっ、ホテル決めてなかった・・・・・。
酔いに任せて忘れていたが、思い出してしまった。
なあ、どうする?
まあ、全く当てがない。
まるで電波少年。
とりあえず、「ヒルトンに行ってみよう」
「なんで?」
「さあ、・・・。」
こんな珍問答をしていると、バスは台北駅へと着いた。

小雨がふっている。
少し肌寒い。
長い車線の道路には、おびただしいバイクが、けたたましい音を立てて、信号待ちしている。
とりあえず、ヒルトンへと向かう。
やはり高い。
というより、3泊もしたら飛行機代を越えてしまう・・・。
案の定、すぐに安宿なんか見つからない。
地図を見ると近くに「YMCA」ホテルがある。
いってみようぜ。
(どうせ高いだろうけど・・・・)
はっきり言って、僕と残り3人との旅の価値観はちょっと異なっていた。
僕は、安い旅。みんなは、快適な旅。
しかし、今回僕も薄々気がついていた。
絶対安いとこは、いやがるだろうな・・・。
YMCA
「有没有房間?(部屋はありますか?)」
「没有(有りません)」
やっぱりか。
次行くか・・。
フロントのおばちゃんが、帳簿を見ながらこういった。
「うぇいと、へやありました。」
に、日本語しゃべれるやん。
「スイートね。」
「すいーと?!」
「是(とぅぃ)」(はい)
「幾少銭(いくらですか?)」
「ツインベッドにエクストラベット2台入れて、・・・・」
「いくら?」
「一人840元程度ね。」(だいたい3000円程度)
「おっけいっ」
「でも、今日だけね。明日は予約有るね。」
「了解。もしあいてたら、延泊するある」
こうして、ひょんなことから、スイートという部屋に泊まることになってしまった。
部屋。

寝室とリビングに分かれる。
こんな広いの初めてだ。

トイレ、風呂は大理石張り。
しかも電話まである。
空調も、テレビも寝室のボタン一つで着いたり消えたり!!

宿はまず、おっけい。
神様ありがとう。日頃の行いが良いせいだな。
腹減ってきた。
とりあえず飯食おう。
西坂氏が、ガイドブックを見ながら、「台湾料理」にしようといった。
異議なし。
再び部屋を出ると、小雨の中歩き始めた。
道は、西坂君に任せっぱなし。
しばらく歩いていると、一人のおじさんが声をかけてきた。
「どこいくね?」
「めしだよ、じっちゃん」
「もう9時ね。」
「そうだね。」
「閉まるね。」
「そうなんか?」
「何食べるね。」
「おいしいものね。」 いかん、しゃべり方がうつってきた・・・。
「女の子はどうね。」
「うぉ、おんなのこ?」
「そうね。」
「いや、今はそれより食欲だね。」
「すぐそこ、見るだけただね」
そういえば、暇つぶしに見ていた「台湾夜の歩き方」の本にそんなことが書いてあった。
何でも、喫茶店にて、お茶を飲みながら女の子を選ぶらしい。
そういえば、どっかで見たことあるじっちゃんだな。などどおもいながら、
「不要(いりません)」
と断ると、再び我々は歩き始めた。
「まったく、ソウルの二の舞になったらどうするんだ」
と思いながら、台湾料理屋への道を急いだ。
あとで、解ったことだが、このじっちゃんこそ「歩き方」に載っていた「チンさん」だった。
この人についていけばまず狂いはないらしい。

見るだけ見てみても良かったかな、と誰かがつぶやいた・・・。
台湾料理屋。
ここでは、食材を選んで、調理してもらう。
食材もそれほど高くない、しかも新鮮だ。

アヒルの肉。
担担麺、蒸しエビ、揚げ出し豆腐、そして珍味カラスミ。
これらを注文するとビールをしこたま飲みながら、ゴチバトルスタートとなった。
ゴチバトルとは・・・。簡単にいって、お勘定を予想して近い人が勝ち。というものだ。
解っていたのは、ビール代、カラスミ代だけであった。
結果、総計3500円程度で西坂君が、ニヤピン、
フジタが、2000円も高くてビリという結果に終わった。
しこたま食べた我々は、気分が良かった。とても気分が良かった。
涼しい風が肌をなでていく。
いいとこだなぁ。飯もうまいし。
よし、「デスコにいこう」
「ディスコ?」
「そう、ガイドブック見てみてや」
誰かが出したガイドブックには、刺激的な店名のクラブが載っていた。
その名も「セックス・ア・ゴーゴー」
なっ、なんちゅーなまえや。
よし、ここに行ってみよう。
すぐさまタクシーを止めると、その近くにあった「台北大学」へ向かった。
「セックス、この辺だよ」
略すな!!!
酔った4人は、期待に胸を膨らませながら、ふらふらと探したが、見つからない。
まさか、こんな店の名前聞くわけにもいかんしなー。
地名と番地で、探すとそれらしいところには、何もない。
セックスないやん・・・
だから、略すな。
たまりかねて、近くのおっちゃんにきくと、隣だよといった。
さっ、更地じゃん・・・・。
どうやらつぶれたらしい。
時間よ、かぁむばぁーく!!!
もったいない。貴重な2時間をこんなセックスの跡地に使ってしまった。
結局、一気に酔いの醒めてしまった我々は、何も語ることなくホテルに戻ると、
悶々とする気力もないまま、誰からでも無く、泥のように眠ってしまった。