「わがままねっとが私にもたらしたもの」
第5回札幌市リハビリテーション研究大会提言より
1・コンピューターを始めるまでの道のり

 ご紹介いただきました川島です。26歳の時に筋ジストロフイー症と診断され、今年 で48歳になります。今日は、私の主宰しているパソコン通信「わがままネット」にま つわるお話をさせていただきます。
 まず、わがままネット開設までの道のりからお話しします。はっきり覚えていませ んが23歳くらいから腰痛などの症状があり、ヘルニアか何かと思い整形外科に通院し ていました。しかし、一向に良くならないので大学病院を受診したところ、当時は神 経内科がなかったので整形外科と脳神経外科を受診したのですが、そこではじめて筋 ジストロフィー症の診断となりました。
 病名を知ったとき、やはり人並みの葛藤がなかったといばウソになるでしょう。何 せ珍しい病気というか難病ですから。その頃、普通にサラリーマンをしていて経理 関係の仕事に携わっていましたが、今後の進行に伴う体力面の不安、サラリーマンな ら転勤を避けて通れないことなどから、すぐに自己退職しました。ただ、私の場合、 これは今も同じですが「なるようになれ」という気持ちがあって、あまり精神的にま いってしまうようなことはなかったと思います。当時はまだまだ普通に外出できまし たし、将来の生活を考えて退職後すぐにスナックを始めました。後から考えると焦燥 心も手伝ったのだと思いますが、時間に比較的自由がきくこと、仕事上あまり体力を 使わないと考えていたこと、何よりお酒が好きですから。ところが、残念ながら経営 的な部分から2年くらいで店じまいという結果になりました。
 そこから43歳の時にネットを開設するまでが私にとって「空白の時間」になります 。暇になると本を読んだり、たまに友人のところに出かけたり、どちらかと言えば家 の内に籠もりがちな、生活でした。その頃から福祉情報に特別な興味があったかとい うとそうではありません。いわゆる障害者運動に積極的に関わっていこうという気持 ちも持っていませんでした。考えることがなかったというか、必要に迫られていなか ったということ。多くの人と同じく福祉情報にうとく、そういう情報に身近に接する 機会もありませんでした。これは、私のような中途障害の方の共通する部分だという ふうにも感じてます。  しばらくそんな感じで生活していましたが、30歳になった頃、だんだん進行してき たので親元に引っ越しました。そして、パソコンを始めたのは33〜34歳頃だったと思 います。時間を持て余すような感じで、新しい趣味として始めてみました。別に経理 事務などの仕事につなげようとか、そんな特別な理由があったわけではありません。 時代の流れというか、丁度その頃のはやりに自分も乗ってみたわけです。パソコンを 始める理由というのは大なり小なり皆さんも同じではないですか。強いてもっともら しい理由をあげるなら、ワープロで文章を書いたり、自分の本やビデオをデータベー スで整理するといった目的でしょうか。あくまでも趣味の一つにパソコンを選んでみ たわけです。当時は全くの独学です。近くに詳しい人間がいなかったのと、時間だけ はたっぷりありましたから。
 そしてパソコン通信を始めたのは40代に入ってからです。たまたま、パソコン通信 がブームになっていたのと、そのころから車椅子生活になったことがあげられます。 移動面をはじめ生活全般に転換期を迎えたわけです。そして、パソコン通信を使って 福祉情報を集め始めたのも、このころからでした。そして93年1月15日にプライ ベートネットである「わがままネット」を友人と二人で立ち上げたのです。
戻る次へ