毎日新聞  96年07月06日
身障者の交流広がった…パソコン通信、身近な情報−−札幌の川島守さん、開設
          
 ◇健常者と付き合い、屋外活動も活発に
 札幌市内にキー局を置くパソコン通信「わがままネット」が、家に閉じこもり
がちだった身体障害者の交流の場になっている。パソコンを通して健常者とも友
達になり「オフミーティング」と称して一緒に屋外に繰り出すなど、活動範囲も
広がり、障害者の生きる喜びが増している。
 筋ジストロフィーの重度障害を持つ同市南区北ノ沢の無職、川島守さん(46)
が二年前に開設した。「大手のパソコンネットは、首都圏中心の情報が多い。
役に立つ身近な情報を提供したかった」と動機を語る。会費は無料で、会員約六
十人のうち半分近くは障害者。教師や佐官工、内装工など多種多様で、遠くは盛
岡市内にも会員がいる。

 午前五時過ぎ、ベッドの傍らにあるパソコンにメールが入る。一日平均二十通
。近況報告や最新の軽量電動車いすの販売が始まった話題、障害を持つ親からの
悩みなど。身近な問題は、各会員が意見を出し合って解決の糸口を探す。
 
「オフミーティング」では、札幌市内の散策や絵画の鑑賞にも出掛ける。健常者
の会員が移動用の車を用意し、階段があれば車いすを担ぐ。「人との付き合いが
広がり、生活にも張り合いが出てきた。一人でも多くの障害者にこの楽しさを伝
えたい」と川島さんは話す。

 会員の一人、同市白石区東札幌の小規模作業所「フルハウス」の代表、相馬正
明さん(25)は、昨年五月ごろ加入した。
 脳性まひで下肢が不自由なため、会員になる前は一人で外出する機会も少なか
った。「障害者であることに引け目を感じていた時期もありましたが、素直に相
談できる仲間が大勢できた」と喜ぶ。最近では、メールを交換している健常者の
女性と親しくなり、「もしかしたら生涯のパートナーになってくれるかも」と夢
も膨らむ。
 同ネットの問い合わせは()へ。
  = ◇ =
 全国障害者問題研究会(東京都新宿区)の事務局長でネットワーク・通信小委
員会の薗部英夫代表(38)は、「情報に接することができなかった人が、簡単
に接することができるようになった。パソコン通信は、情報を入手する手段であ
ると同時に、自分の意見を発言できる双方向の手段。とりわけ障害者がコミュニ
ケーションを図るうえで、画期的な手段。ますます活用されるだろう」と話して
いる。