■被告準備書面■
・第1準備書面
・第2準備書面
■第1準備書面
次回期日 平成13年4月19日 午後4時15分
平成12年(ワ)第1192号 地位確認等請求事件
原 告 池 田 幸 司
被 告 国
第 1 準 備 書 面
平成13年3月19日
岡山地方裁判所第1民事部 御中
被告指定代理人 大 西 達 夫
前 納 祐喜和
中 野 裕 道
柏 木 孝 治
鳥 井 祐 典
樋 口 良 行
久 埜 彰
石 川 義 喜
近 藤 三 雄
胡 政 春
植 田 博 文
第1 請求の原因に対する認否
1 一について
認める。
ただし,郵政省は,中央省庁等改革基本法等により,平成13年1月6日,総務省の外局たる郵政事業庁として再頼成された。
2 二の1について
第1段落については認める。ただし,「10月末ころ」とあるのは「10月22日」が正しい。
第2段落については認める。ただし,「担当者(名前不明)」とあるのは「主任河合隆雅」が正しい。
第3段落については認める.ただし,「用紙」とあるのは「非常勤職員採用申込書」が正しい。
第4段落については認める。
第5段落中「連絡がなかなかなかった」,「担当の者が採用できる旨連絡るのを忘れていた」との点は否認し,その余は認める。
第6段落中「文書の類は何も原告に渡されていなかった。」との点は否認し,その余はおおむね認める。
3 二の2について
(三)のうち「昼休みがつぶれたときは超過勤務扱いにはならなかった。」との点は否認する。作業時間が昼休みに及んだ場合は,あらかじめ定められた休憩時間分を作業後に休憩させている。
その余はおおむね認める。
4 二の3について
(一)についてはおおむね認める。なお,「名簿のような冊子」は「非常勤職員任命事令簿」が正しい。
(二)のうち「例えば,新しい予定雇用期間が平成一二年五月二九日から二か月となっているのに,押印等の手続きが同年六月二日以降だったりする」との点は押印日の確認ができないため認否は留保し,その余は否認ないし争う。
5 二の4について
原告が,平成12年6月1日午前11時ころ,岡山市役所(以下「市役所」という。)に郵便物を配達するため市役所地下駐車場に郵便車を停車したこと,同所において原告と市役所公用車運転手が公用車の移動をめぐって口論となったこと,その後原告が次の配達先に向かったことは認める。
ただし,具体的な事実経過については,後記第2の1の(3)のAのとおりである。
6 二の5について
(一)については認める。
(ニ)については,岡山中央郵便局(以下「岡山局」という。)総務課長小林良宜(以下「小林総務課長」という,)が「六月二九日までに市役所側が君の態度が良くなったと言ったならば,七月二九日以降のことも考える」旨述べたとの点は否認し,その余はおおむね認める。
(三)については,「原告は,昨日長時間叱責を受け」との点は否認し,「苦しかった」との点は不知,その余はおおむね認める。
(四)については,遅刻してきた原告に,当時の岡山局第二集配営業課(平成11年7月16日から組織改正により第二集配課が第二集配営業課となった,以下,組織変更の前後を通じて「二集課」という,)課長安達洋昌(以下「安達二集課長」という,)が注意・指導したこと,その後同局総務課において,小林総務課長が原告に対し7月5日付けの退職予告通知を手交したこと,小林総務課長が原告に対し,「態度が改まっていない」「七月五日で辞めてもらう」旨言ったこと,それに対して原告が不満を述べたこと及び小林総務課長が「以上終わり」と言って席を立ったことは認め,その余は否認する。
(五)については認める。
(六)の第4段落中,小林総務課長が「延びたんだからいいんじゃないか」と発言したこと及び第5段落中,「『そんなことは言っていないよ。なんなら事情聴取をもう一回やり直して聴取書を作り直すこともできるんだぞ』とまで言われ」との点は否認し,その余はおおむね認める。ただし,第6段落中の「文章の表現」は「文章の形式」が正しい。
(七)ないし(九)については,おおむね認める。
(一〇)については,「団体交渉」との点については否認し,その余は認める。
なお,岡山局と岡山一般ワーカーズユニオン(以下「岡山ワーカーズ」という,)との間で行われたものは団体交渉ではなく,話合いである。
(一一)については,「原告の仕事が完全に終わっていない」,「執拗に迫り」及び「迫った」との点はそれぞれ否認し,その余はおおむね認める。
(一二)については認める。
(一三)については,「団体交渉」との点は否認し,その余はおおむね認める。
なお,岡山局と岡山ワーカーズとの間で行われたものは団体交渉ではなく,話合いである。
7 三ないし八について
否認ないし争う。
第2 被告の主張
1事実経過等について
(1)採用決定の経緯
原告は,平成9年10月22日に岡山局総務課を訪れ,アルバイトをしたい旨申し出た。同課主任河合隆雅は原告から希望職種等を聞き,「非常勤職員採用申込書」(乙第3号証)を提出させた。そして,二集課において,同諌課長代理友野国昭は原告を面接するとともに,二集課における一般的な業務内容及び外務作業であるバイクでの郵便物配達作業等の説明を行い,採用の可否については別途連絡する旨伝えた。
同月24日,二集課上席課長代理若林始(以下「若林上席課長代理」という,)は原告の非常勤職員としての採用伺を行い,同日,岡山中央郵便局長(以下「局長」という。)は,同月27日から岡山局非常勤職員として原告を採用することを決定した。そして,勤務時間を1日6時間,任期を1日,予定雇用期間を同年11月29日まで(発令日の属する会計年度の範朗内において,任命権者が定める期間内においては,任命権者が別段の意思表示を行わない限り,その任期が更新される。)とし二集課勤務を命じることとした。その後,原告から採用の可否について電話連絡があったため,当時の二集課長梶原正(以下「梶原二集課長」という。)は,同月27日午前8時から同課へ出勤するよう原告に告げた。
(2)採用後の経過
@ 同月27日,原告が第二集諌へ出勤してきたので,梶原二集課長は,指定する勤務日,勤務時間の範囲(勤務日において,配達すべき郵便物の増加により超過勤務を行う場合もある。),その他の勤務条件等を説明した。
そして,原告は「非常勤職員任免辞令薄」(乙第4号証)に押印し,所属,予定雇用期間,仕手の内容等を記載している採用通知書の交付を受けた。(乙第5号証の「総務課ユウメイト係 採用通知」欄)
その後,原告は軽四輪自動車(以下「郵便車」という。)により配達等をする作業に従事することとなった。
A 岡山局における非常勤職員の雇用については,予定雇用期間満了後も,2か月程度で予定雇用期間を明示し,同様の再採用を繰り返していた。再採用を行うに当たっては,その度に事前に非常勤職員を雇用するための文書伺を行い決裁を受けた上(乙第5,第6号証),非常勤職員任免辞令簿に各非常勤職員から押印を受け,採用通知書を交付している。原告についても同様の手続を行っていた。
B 平成12年5月29日の再採用では,任期を1日,予定雇用期間を同年7月29日までとして採用したものである。非常勤職員任免辞令簿には「予定雇用期間は平成12年7月29日までとする。ただし,予定雇用期間は自動更新しない」との記載があり,原告は,自ら同辞令簿に押印している。また,予定雇用期間を記載した採用通知書の交付を受けている。
そして,原告は,同予定雇用期間の満了をもって退職となり(乙第7号証),現在に至っている。
(3)原告の非違行為等
@ 1回目の市役所でのトラブルについて
平成10年7月7日午後2時ころ,原告は市役所に郵便物を配達するため,市役所地下1階の通路を通行しようとした。その時,市役所職員10人くらいが通路いっばいになって電話帳の仕分けを行っていたが,原告は強引にキャスター付きファイバー(郵便物運搬用かご付き台車)を引っ張って通り抜けようとした。そして,仕分けをしていた女性職員の足に同ファイバーがぶつかった。
原告が同女性職員に謝らなかったため,市役所守衝長森美喜男(以下「森守衛長」という。)は前記行為に対する注意をした。原告は森守衛長から注意されたことに腹を立て,森守衛長に暴言を浴びせ,居合わせた市役所庁舎管理係長後安某(以下「後安庁舎係長」という。)にも暴言を浴びせ口論となった。
口論の後,原告が郵便物の配達先に行こうとした際,後安庁舎係長から帰る際に守衛室に立ち寄るように言われたが,原告は同係長に「寄るか,ぼけ」と暴言を吐き,守衛室に立ち寄らなかった。
同日午後2時30分ころ,岡山局捻務課に森守衛長から苦情申告の電話があり,梶原二集課長及び原告は市役所を訪ねて森守衛長及び後安庁舎係長に陳謝した(乙第8号証)。
その後,原告から上記苦情申告について同月8日付けで始末書(乙第9号証)を徴するとともに,同月17日に事情聴取をし(乙第10号証),同年8月4日,原告を訓告に付した(乙第11号証)。
A 2回目の市役所でのトラブルについて
平成12年6月1日午前11時ころ,森守衛長から,2年前にトラブルを起こした郵便局職員が再度トラブルを起こしている旨の電話を二集課課長代理吉岡三浩が受け,若林上席課長代理に報告した。
同日午後0時40分ころ,岡山局二集課事務室において,若林上席課長代理が市役所でのトラブルについて原告に尋ねたところ,原告は「市役所の地下駐車場の市公用車が駐車する場所に駐車して,庁舎4階事務室へ郵便物を配達に行き地下駐車場に下りた。そこで,市公用車の運転手と口論になった。」旨答えた。
若林上席課長代理は,原告が以前にも市役所でトラブルを起こしていること,トラブルを起こすことのないよう十分配慮すること等を注意指導した(乙第12号証)。
同日午後1時30分ころ,森守衛長から,トラブルを起こした郵便局職員のことで来庁されたい旨の電話があり,午後2時ころ,若林上席課長代理が森守衛長を訪ねた。森守衛長は,原告が起こしたトラブルについて説明し,同じ郵便局職員が再度トラブルを起こしたこと,さらに市役所庁舎内で一般市民とエレベーター内において口論していたことから配達の担当を替えるよう抗議し,若林上席課長代理が陳謝した。
同日午後4時12分ころから,岡山局6階衝生室において,小林総務課長が,原告に対して同日の市役所でのトラブルについて事情聴取を行った。
その際には,立会者として若林上席課長代理と,記録者として総務課課長代理赤迫賢吾(以下「赤迫課長代理」という。)が同席した。
原告は,市役所の駐車場での駐車の可否をめぐって市公用車の運転手と口論になった旨説明した。小林総務課長が,相手に対してどんなことを言ったのかと開くと,原告は,「待てボケ,コラ,どけろ!」と実際に言った声量(大声)で表現した。小林総務課長は暴言に当たるとして注意した。
そして,小林総務課長が,1回目の市役所でのトラブルについて説明を求めると,原告は「済んだ事です。」と答え,再度説明を求めると大声で「済んだ事ですよ,何でですか。」と答え,応じなかった。
そこで,小林総務課長は,原告に対し「こんな調子では,雇用を続ける訳にはいかない。1か月前の雇用終了通告がいるから6月29日までに通告する。ただし,7月29日の満了までに何か問題があれば,途中であっても解雇する。」と通告した。
そして,原告は,小林総務課長の求めに応じて,同課長の指導に従い誓約書を書き始めたところ,途中で同課長が指導した誓約書の表現内容について抗議したが,同課長が別の表現に変更すると,納得して再度誓約書を書きはじめた。
午後5時15分ころ,原告が誓約書を数行書いたとき,衛生室のドアがノックされ,事情聴取内容を記録していた赤迫課長代理が「はい」と返事をすると,二集課主任東節雄(以下「東主任」という。)が入室した。そして,東主任は原告に「何しょうるん。帰りましょう。」と言い,原告に対する事情聴取を妨害したので,小林総務課長は東主任に対し退室を命じた。しかし,東主任は退室せず,原告が書いていた誓約書を取り上げたので,同課長はそれを東主任から取り上げ,原告が書いていた机の上に置いた。すると,東主任が原告を部屋から連れ出そうとしたので,同課長がそれを制止した。このころ,二集課職員山元剛(以下「山元」という。)が入室した。東主任が机の上に置いてあった誓約書を取り上げ,原告に対する事情聴取の時間を超過勤務とするよう要求するなどのやりとりの後,原告が同課長の制止にもかかわらず退室しようとしたので,同課長は「池田君,さっきの約束を覚えとるな。」と言うと,原告は「7月29日で終わりということでしょ。」と言って,東主任,山元とともに退室した(乙第13号証)。
B 原告の出勤状況について
原告は,平成9年度5回,平成10年度38回,平成11年度72回,平成12年度5月末までに18回と遅刻を繰り返しており,出動状況ははなはだ悪いものであった(乙第6号証)。
(4)原告が平成12年7月29日の退職に至るまでの経緯等
@ 6月2日付け退職予告通知について
同年6月2日午後3時15分ころ,安達二集課長が,前日の市役所でのトラブル及び衛生室での状況を直接原告から聞くため,同課長席横のソファーに座るように指示したが,原告はソファーの横に立ったままであった。
同課長は前日の件について原告に尋ねたが,原告は「昨日話しました。(若林上席課長代理から)聞いて下さい。いいです。」と話すことを拒否した。同課長は原告に話すよう再三催促したが,原告は,途中からソファーに座ったものの,なおも原告は前日の件を話すことを「僕一人ではやめて下さい。同席させて下さい。そうでないと話しません。」と拒否した。同課長は「あなた自身のことなんでしょう。他人は関係ないし,同席はさせない。話しなさい。」と再度原告に話すよう催促したが,なおも拒否した。
同課長は「君がこういう態度であれば,昨日の総務課長との話しの中で雇用は雇用期間満了で終る。この通知書を渡します。受け取りなさい。」と言って,原告に予定雇用期間満了の同年7月29日に退職となる旨の6月2日付け退職予告通知書(乙第14号証,以下「第1回通知書」という。)を手渡した。原告は第1回通知書の内容を見た後,テーブルの上に投げ捨てるようにして,ソファーから立ち上がり離れかけた。同課長は再度「雇用期間満了で終るという通知書だから受け取りなさい。」と言ったが,原告は無言でソファーを離れた。同課長は原告を追いかけて,原告の席上に置くなどして第1回通知書を受け取るよう促したが,原告は受け取らなかった(乙第15号証)。
A 6月5日付け退職予告通知書について
同月5日,原告が5分間遅刻をしたので,安達二集課長は原告に対し注意・指導をした(乙第16号証)。そして,安達二集課長より原告が遅刻した旨の連絡を受けた小林総務課長は,同日午前8時10分ころ,局長に対して,原告に予定雇用期間途中であっても雇用終了することがあり得る旨通告していること,それにもかかわらず原告の態度が改まらないことなどを理由として,原告を7月5日付けで雇用を終了する旨を口頭で伺った。
そして,局長の了承を得たので,上記同日限りをもって雇用を終了する旨の6月5日付け退職予告通知書(甲第1号証,以下「第2回通知書」という。)を作成した。
午前8時13分ころ,安達二集課長が原告を総務課に連れて行き,総務課のソファーにおいて,小林総務課長は原告に対し,同日の遅刻について注意したところ,原告は「はあー」と反抗的に応えた。同課長は,原告に対し,7月5日付けをもって雇用を終了する旨説明し,第2回通知書を手交した。同課長が面談を終了する旨言って席を立つと,原告は同通知書を持って総務課を退室した(乙第17号証)。
B 第2回通知書の返戻等があったことについて
同月8日午後3時43分ころ,原告及び東主任が安達二集課長席に来て,東主任が「池田君のことで局長にこれを渡してくれ」と言い,持参した封筒から第2回通知書及び「退職する意思はなく,退職理由を具体的に記載した文書を求める」旨の文書(以下「退職不同意書」という。)を取り出し,同課長へ提出した(甲第3号証の1)。同課長は,第2回通知書は6 月5日に総務課において原告が受領した旨を説明したが,東主任が再度局長に渡すように求めたので,同課長は,総務課長へ渡す旨を答え,同文書を封筒とともに受け取った。
C 6月13日付け退職予告通知書について
同月13日午前8時5分ころ,岡山局小会議室において,小林総務課長は原告に対し,「退職予告通知を行う。期間満了となる7月29日が退職となる。7月5日付け(で退職となる)の通知書は取り消す。」旨通告し,予定雇用期間満了の7月29日に退職となる旨の6月13日付け退職予告通知書(甲第2号証,以下「第3回通知書」という。)を手交した。原告が退職日が7月5日から同月29日に変更となった理由を質問したので,同課長は同月5日付け退職の件は審査中で間に合わなかった旨を説明した。
また,原告は退職理由を文書で回答するよう要求したが,同課長は法的に文書回答する義務はなく,口頭で足りる旨を説明し,市役所でのトラブルによる苦情申告と遅刻が理由である旨通告した(乙第18号証)。
同日8時17分ころから,6月1日に行った事情聴取の内容確認を行うため,原告に「6月1日付け聴取書」(乙第13号証)を見せ,原告・小林総務課長両者が了知した訂正・追加箇所には原告及び赤迫課長代理の押印をした。
なお,原告は,小林総務課長が「6月29日までに君へ退職する通告をしなければならない事になっているが,それまでに君の態度が改まったということを市役所側が認めたならば7月29日以降,その時考えようじゃないか」と言ったと主張し,双方の認識が相違したため,原告からこの旨申し出があったことを追記した。
その後,原告は「6月1日付け聴取書」(乙第13号証)に署名・押印した(乙第18号証)。
同日午前9時50分ころ,原告は総務課課長代理岡田和人(以下「岡田課長代理」という。)とともに6階衛生室に移動した。岡田課長代理は,原告に対して,始末書を書くよう求めた。その際,始末書は決して強制ではないことを理解するように十分説明し,いきさつを書くように具体的な記載方法を説明した。原告は自らの意思で始末書(乙第19号証)を書き,同課長代理に提出した。そして,原告は,返戻した第2回通知書と退職不同意書の返却を求めたので,同課長代理は,小林総務課長が原告に対し第2回通知書の取消し及びその理由を通告していることから,上記2文書を原告に返却した(乙第20号証)。
D 第3回通知書の返戻等があったことについて
同月19日午後5時38分ころ,二集課において,原告,東主任及び山元が,安達二集課長に対し,平成12年7月5日付け退職の取消しを認めないこと,退職処分の理由についての文書回答を平成12年6月20日中に回答するよう求める旨の文書(以下「退職取消不同意書」という。)の入った封筒を渡そうとしたところ,同課長からの連絡により同課に赤迫課長代理が来た。そこで,東主任は同課長代理に同封筒を渡そうとしたが,同課長代理が受取を拒否すると,東主任は封筒を小林総務課長に渡すと言い,原告とともに総務課に行った。
小林総務課長は,東主任に対して総務課から退室を命じ,東主任が退室した後,原告が第3回通知書と退職取消不同意書の入った封筒を提出してきた。同課長が第3回通知書は既に原告が受領したものであること,7月29日の期間満了で退職となることを説明すると,原告は,理由を文書で回答するよう求めた(甲第3号証の1)。同課長は,理由は既に説明したとして,原告へ同封筒を返そうとした。そこへ,退室を命じられていた東主任が再度総務課へ入室し,原告を連れ出そうとした際,原告は,応接セットのテーブル上に同封筒置いて退室した。
E 原告に対する訓告について
同月29日,局長室において,局長は,同月1日原告が市役所において市役所職員に対し暴言を浴びせたことを理由として,原告を訓告に付した(乙第23号証)。
F 配達証明付き内容証明郵便の送付について
同年7月14日,原告から局長あてに,予定雇用期間満了による退蔵の意思がないこと,平成12年7月29日以降引き続き雇用することをやめた理由等を7月17日までに文書で回答を求める旨の同月13日付け配達証明付き内容証明郵便(以下「内容証明郵便文書」という。)が送付された(甲第3号証の1,2)。
G 原告が退破日に給料の受取りを拒否したことについて
同月29日午前9時6分ころ,二集課長深井一志(平成12年7月11日付け人事異動により同局二集課長となった。以下「深井二集課長」という。)は原告に対し,今日で雇用期間が終了すること及び給料については勤務終了後支給する旨通告し,原告は「わかりました。」と答えた。午後2時35分ころ,原告が書留配達証を返納しすべての作業が終了したので,同課上席課長代理席前で同課長は給料を渡すので印盤を持ってくるように言ったが,原告は無言で立ち去った。同40分ころ,大口の住友生命ビルあて郵便物の区分台前で同課長は再度給料を受け取るように言ったが,原告は無言であったので,そばにいた岡田課長代理が「どのような方法ならいいんですか」と開いたところ,原告は「組合の方が,今,交渉中なのでそのような物を受け取るなと言われています」として受取を拒否し,勤務時間が終了となったため,原告は二集課を退室した。
H 同年8月1日から同月4日までの原告の行動について
同年8月1日午前7時56分ころ,岡山局南側玄関エレベーター付近に原告ほか1名が来て,赤迫課長代理及び岡田課長代理に対し,原告に就労の意思があることを伝えた。
その後,同様に,同月2日午前7時56分ころに二集課に,同月3日午前7時54分ころに同局南側玄関自動ドアの外に,同月4日午前7時55分ころに同局南側玄関エレベーター付近に原告ほか1名が来て,原告に就労の意思があることを伝えた。
I 同月10日の原告の行動について
同月10日午後1時5分ころ,原告はかが岡山局を来訪し,原告は,健康保険証及び胸章を返納し,午後1時19分ころ退局した。
K その後原告から何ら連絡はなく,同年11月30日本件訴訟が提起された。
2 郵政事業について
(1)郵政事業の特質について
郵政省は,国の郵便事業,郵便貯金事業,郵便為替事業,郵便振替事業及び簡易生命保険事業を合理的,効率的に経営するとともに,電気通信に関する行政事務を能率的に遂行するため,平成11年法律第90号による改正前の国家行政組織法3条2項の規定に基づき,上記各事業及び行政事務を一体的に遂行する責任を負う行政横閑として設置されている〔郵政省設置法(平成13年1月6日廃止,以下「設置法」という。)1条,2条1項,3条1項〕。
そして,前記の各事業は,それぞれの役務をできるだけ安い料金で,あまねく,公平・確実に提供し,国民の経済生活の安定を図ること等によって,公共の福祉を増進することを目的(郵便法1条,郵便貯金法1条及び簡易生命保険法1条)として運営されており,いずれも国民生活全体の利益と密接な関連を有する極めて公共性の高い性格を有する事業であるところ,その経営に当たっては,企業的に経営し,その健全な発達に資するため,特別会計を設置し,国の一般会計と分けて経理するいわゆる独立採算制度により経営することとされている(郵政事業特別会計法1条)。
すなわち,郵政事業の経営については,公共の福祉の増進を目的とする公共性と,効率的経営が求められる企業性との両立が法定されているところである。
こうした基本認識に基づき,国は,全国津々浦々に2万4700余りの郵便局を設置し,直接国民に行政サービスを提供しているところである。
なお,郵政省は,中央省庁等改革基本法,平成11年法律第90号による改正後の国家行政組織法3条2項,4項等により,平成13年1月6日,総務省の外局として置かれる郵政事業庁として再縞成されているが,上記事情について変わりはない。
(2)岡山局の業務内容等について
岡山局は,郵便・為替貯金・簡易保険等の事業を一体的に運営している郵政省の一地方支分部局であるところの集配普通郵便局である。
原告が勤務していた同局二集課の主たる取扱業務は,同局及び同局区内で引き受けた同局区内あての郵便物あるいは他局から同局区内あてに差し出され同局に到着した郵便物のうち,二集課受持地域の配達を行う作業などである。
3 郵政事業に従事する職員の任用等について
(l)郵政職員の任用について
郵政事業に従事する職員(以下「郵政職員」という。)は,一般職に属する国家公務員たる身分を有する〔国営企業労働関係法(以下「国労法」という。)2条〕ところ,国家公務員法(以下「国公法」という。)2条4項は,一般職に属するすべての職に同法の規定を適用するとしている。他方,同法附則13条は,同法1条の趣旨に反しない限り,その職務と責任の特殊性に基づいて,この法律の特例を要する場合には,別に法律又は人事院規則(以下「規則」という。)をもって規定することができると定めており,郵政職員については,国労法40条により,国公法の規定のうち,一定範囲の適用が除外されているが,同法の各規定中,勤務関係の根幹をなす試験及び任免,分限,懲戒及び保障,服務に関する各規定の適用は除外されず,これらの規定に基づく規則8−12(職員の任免)等の規定も適用され,設置法8条も,郵政職員の任免等は国公法によるものと定めている。
(2)常勤の郵政職員の任用について
前記(1)のとおり,国家公務員たる郵政職員の任用は,国公法,規則等により規制された公法的規制の下に置かれている。
すなわち,常勤の郵政職員(以下「常勤職員」という。)の任用は,能力の実証に基づいて行われるところ(国公法33粂1項),採用は,競争試験によることとされ(国公法36条1項),試験についても,詳細に規定される〔規則8−12(職員の任免),29条ないし41条〕等,国公法,規則等により厳格に規制されているところである。
(3)非常勤職員の任用について
@ 一般職に属する国家公務員につき,国公法60条に定める臨時的任用以外に期限付任用を行うことは,同法が,国民に対して公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的とし(1条),職員の身分保障規定等を定めていることからすれば,公務の能率的運営を阻害し,身分保障の趣旨に反する場合には許されないというべきである。しかし,同法が職員の期限付任用を禁じていないこと,同法附則13条が同法の特例を設けることを許しており,規則8−12(職員の任免)は,一定の要件の下で常勤職員についても期限付任用を許容し(15条の2),日々雇い入れられる職員の任用の更新及び任期満了による当然退職(74条1項3号,2項)について定めていること.規則8−14(非常勤職員等の任用に関する特例),同15−15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)等において期限付任用を前提とする規定が設けられていること等からすれば,前記のような弊害がない場合には,期限付任用も一般的には禁止されていないものである(名古屋高裁金沢支部昭和63年10月19日判決・判例時報1289号148ページ)。
また,国公法2条4項は,一般職に属するすべての職に同法を適用すると定め,常勤職員にとどまらず,同法附則13条に基づき規則により任用される非常勤職員についても特に区別することなく,国公法を適用することとされ,設置法8条も常勤職員と非常勤職員を区別することなく,郵政職員の任免等につき国公法の規定によることを定めている。
したがって,非常勤職員の任用等についても,国公法,規則等の公法的規制が適用されるが,非常勤職員の任用について,規則8−14(非常勤職員等の任用に関する特例)1条は,「非常勤職員の採用は,競争試験又は選考のいずれかにもよらないで行うことができる。」と規定し,常勤職員の採用とは明らかに異なる取扱いが定められている。
A 郵政省における非常勤職員の任用に関しては,規則に基づき,郵政省非常勤職員任用規程〔乙第22号証の1,以下「任用規程」という。(ただし平成12年6月1日公達第27号により全部改正されている。乙第23号証の1,以下「新任用規程」という。)〕及び郵政省非常勤職員任用規程の運用について〔乙第22号証の2,以下「任用規程運用方針」という。(ただし,平成12年6月1日郵人人第3004号により全部改正されている。乙第23号証の2,以下「新任用規程運用方針」という。)〕により規定している。任用規程及び新任用規程2条は,非常勤の職員の官職の分類を,事務嘱託,技術嘱託及び非常勤職員と規定しているところ,原告が任用されていた官職は,任用規程及び新任用規程2条3号の「非常勤職員」であり,軽微な通常の事務を処理するために雇用する者である。
(4)非常勤職員の予定雇用期間の満了と当然退職について
規則8−12(職員の任免)74条1項3号は,任期を定めて採用された場合において,その任用が満了した場合は,その任用が更新されない限り,職員は当然退職する旨規定し,同条2項は,前記期限付任用につき,「日日雇い入れられる職員が引き続き勤務していることを任命権者が知りながら別段の措置をしないときは,従前の任用は,同一の条件をもつて更新されたものとする。」と定めている。そして,任用規程及び新任用規程4条は,非常勤職員の任期は1日とし,予定雇用期間(発令日の属する会計年度の範囲内において任命権者が定める期間。以下同じ)内においては,任命権者が別段の意思表示を行わない限り,その任期は更新されるものとする旨規定している。
つまり,任命権者が非常勤職員の採用時に定める予定雇用期間は,日々雇用職員である非常勤職員が,引き続き勤務していることを任命権者が知りながら,別段の措置をしない予定の期間を定めたものであり,もって,採用時に別段の措置を講じたものであるから,予定雇用期間満了時には当然に退職するものである。この点,旧郵政省非常勤職員任用規程(昭和35年9月26日公達第52号,乙第24号証)5条について,前記名古屋高裁金沢支部昭和63年10月19日判決は,「任用規程5条は・・・任命権者が定める期間を予定雇用期間とし,当該期間内においては,任命権者が別段の意思表示を行わない限り,その任期は更新されるものとする旨規定しているところ,右規定は,予定雇用期間内においては,任命権者が更新拒絶(雇止め)をしない限り,当然更新されるが,右期間満了の場合は,当該職員は,任命権者の何らの行為を要せずに当然に退職することを予定し,右期間満了後は,再任用をする場合はともかく,当然には更新しないことを事前に宣言しているものと解される。」と判示しているところである。
4 本件任用について
(1)局長の任命権
局長は,岡山局における非常勤職員の任命権者である。同局における非常勤職員の採用については,関係諸規定によるほか,雇用の採否,1日の雇用時間や予定雇用期間,勤務日や勤務時間をどのように命じるかは,任命権者の裁量に任されているものである。
(2)原告の採用,再採用について
原告は,前記第2の1(2)で述べたとおり,平成9年10月27日の採用の際に明示された予定雇用期間の満了日以降,繰り返し再採用されたことから,引き続き非常勤職員として勤務していたものであるが,任用規程及び新任用規程4条は,「非常勤の職員の任期は,1日とする。この場合において,予定雇用期間内においては,任命権者が別段の意思表示を行わない限り,その任期は更新されるものとする」と規定し,さらに,任用規程運用方針4条関係3項(1)号及び新任用規程運用方針4条関係2項は,「非常勤の職員は,予定雇用期間の満了日においては,当然退職となるものとする。なお,予定雇用期間内においても,任命権者が任期(1日単位)を更新しない旨の意思表示を行った場合には,その勤務終了をもって,当然退職となるものとする(新任用規程運用方針のみ「おって,いずれの場合においても,第11条の規定に基づく通知の要否に留意すること」が追記されている。)」と定めていることから,原告は,上記各採用で明示された予定雇用期間の満了をもって当然に退職し,再採用により,新たな労働条件で新たに雇用されたものである。
(3)退職の予告について
原告に対する平成12年5月29日の再採用は「非常勤職員を命ずる。1時間950円を給する。岡山中央郵便局第二集配営業課勤務を命ずる。勤務日,勤務時間及び休日は別に指定する。任期は1日とする。予定雇用期間は平成12年7月29日までとする。ただし,予定雇用期間は自動更新しない。」というものである(乙第7号証)。したがって,同年7月29日をもって,当然退職となることは,前記(2)で主張したとおりであるが,新任用規程11条は「次の場合には,退職となる日の30日前までに1日単位の任期を更新しない旨又は再採用しない旨の書面を交付するものとする。」と規定し,さらに,同条2号において「予定雇用期間の満了の場合であって,予定雇用期間の延長又は再採用の結果,1年を超えて雇用した非常勤の職員を退職させる場合」と規定している。
すなわち,この規程の趣旨は,予定雇用期間満了後は任期を当然には更新しないこと,つまり,退職となることを事前に宣言しているものであるから,上記規定の退職の予告は本来必要ないものであるが,当該非常勤職員との無用な争いを避けることを目的として,労働基準法20条1項及び21条の要件を満たす内容を念のため規定し,同法20条に規定する解雇の予告に類した通知である退職の予告を行うこととしているのである。
(4)退職予定日の変更について
退職日を同年7月5日から同月29日へ変更したことについては,同年6月1日の市役所での暴言についての処分審査が終わっていないことから,6月5日付けの退職予告通知を取り消し,退職日は当初のとおり,雇用期間満了日である同年7月29日にすることとして,事前に局長の了解を得て変更し,同日小林総務課長が原告に対し改めて,退職予告通知をしたものである。
5 原告の主張に対する反論
(1)期限の定めのない任用等の主張について
原告は,請求の原因の三の1において,恒常的業務についての長期の任用を予定しながら,任期を1日等と定めることは許されないと解すべきであり,したがって,本件採用は国公法上に根拠を持たないものであり,原告と被告との間の法律関係は,私法上の雇用関係と解さざるを得ないと主張する。
また,同三の2で,仮に,本件採用が公法上の任用であるとすれば,原告の採用に任期の定めがあったにしても,それは任用に付された附款であって,この附款は国公法1条,同法附則13条による期限付で任用するためめ要件を満たさず,その附款が行政行為の重要な要素でない場合には,附款が無効となるだけで,附款のない行政行為として効力を生ずるといわなければならない,したがって,原告の本件採用は期限の定めのない任用となる旨主張する。
しかしながら,前記第2の3で述べたとおり,非常勤職員の任用等において,国公法,規則等の公法的規制が適用されており,それに基づき任用等を行っているところであって,そもそも原告は任用規程及び新任用規程4条に基づく予定雇用期間の範囲内という期限付の非常勤職員として採用されたものであり,恒常的業務についての長期の任用を予定したものではないし,その採用も上記公法的規制の適用のもとになされたものである。
また,国家公務員法が,国家公務員について給与,勤務時間その他の勤務条件が,法令によって定められる勤務条件法定主義を採っており,この点については非常勤職員にあっても何ら異なるところがない以上,原告と被告との間の法律関係を私法上の雇用関係と解することは何ら根拠がなく,原告の本件採用は公法上の任用としてなされたものである。のみならず,原告が主張する期限の定めのない非常勤職員という任用類型は,法律上存在しないものであり,公法的規制下にある非常勤職員の任用について,これに反する任用類型は存在し得ないものである。
(2)本件雇止めは無効であるとの主張について
原告は,請求の原因の四の1において,本件採用が法的性格として私法上の雇用契約と解される以上,本件雇止めは実質的には原告を解雇したということとなるが,右解雇には合理的な理由は全く存在せず,本件雇止め=解雇は解雇権濫用法理の類推適用により無効である旨主張し,同四の2で,仮に本件採用が期限の定めのない公法上の任用であるとすれば,私法上の雇用契約において解除ないし雇止めが許される場合と同等の社会通念上の相当性を要すると解され,本件雇止め=免職処分は違法であり,その瑕疵は重大かつ明白であるから無効である旨主張する。
しかしながら,前記(1),前記第2の3の(3)ないし(4)で詳述したとおり,本件採用は公法上の任用であり,予定雇用期間満了後は当然に退職するものであることから,私法上の雇用契約であるとか,期限の定めのない公法上の任用であると解する余地はなく,解雇権濫用法理が類推適用されるとか,私法上の雇用契約において解除ないし雇止めが許される場合と同等の社会通念上の相当性を要すると解される旨の原告の主張はその前提において失当である。
(3)原告の「期待権」の侵害等の主張について
原告は,請求の原因五の1において,「岡山中央郵便局は,予定雇用期間満了後も原告を雇用することを確約ないし保証するなどの期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと認められる行為をしており,原告に対する賠償責任を免れない。」と主張している。この主張は,「任命権者が,日々雇用職員に対して,任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には,職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき,国家賠償法に基づく賠併を認める余地があり得る」とする最高裁判所平成6年7月14日第1小法廷判決(判例時報1519号118ページ)を板拠とする主張と解されるが,以下に述べるとおり,上記判例にいう「特別な事情」は本件においては存在しないというべきである。
@ 原告は,同五の2の(一)において,「原告の採用時,原告が長期のアルバイトを希望する旨回答していたが,それに対し,第二集配課長らから否定的な言動は無かった。」と主張する。
しかしながら,請求の原因のこの1にあるとおり,平成9年10月22日に岡山局総務課において,担当者は「長期のアルバイトを希望するのか年末だけを希望するのか」と聞いているが,これは原告の予定雇用期間を定めるに当たっての参考として原告の意向を確認したものであって,かつ長期のことを特段指定して聞いているものではない。また,前記第2の1の(1)ないし(2)で述べたとおり,その後の面接及び同月27日の採用の際においても,梶原二集課長は指定した勤務日,勤務時間の範囲,予定雇用期間などの説明を行っているのであって,予定雇用期間満了後も原告を雇用することを確約ないし保証するなどの行為は何らしていない。
A また,原告は,同五の2の(二)において,「原告の採用時において,発令簿及び採用通知書を原告は受領していない。後日,平成九年一○月ニ七日付採用通知書が渡されていたにすぎない。」と主張する。
しかし,原告は,辞令内容を「非常勤職員を命ずる。1時間840円を給する。岡山中央郵便局第二集配課勤務を命ずる。勤務日,勤務時間及び休日は別に指定する。任期は1日とする。予定雇用期間は平成9年11月29日までとする。ただし,予定雇用期間は自動更新しない。」とする非常勤職員任免辞令簿に自ら押印している(なお,同辞令簿は原告に交付するものではない。乙第4号証)。また,原告には「予定雇用期間は平成9年11月29日までとする。ただし,予定雇用期間は自動更新しない。」旨記載した採用通知者を交付しているものであり(乙第5号証の「総務課ユウメイト係 採用通知」欄),原告の上記主張は理由がない。
B 原告は,同五の2の(三)において,「原告の非常勤職員の地位の更新の際,説明もなく形式的に辞令簿(?)に押印させている程度であり,このような杜撰なやり方(・・・)では,非常勤職員らは自分が任期の定めのある雇用であることを認識しえない。実際,原告は右押印や採用通知の交付がどういう意味をもつかを理解していなかった。」と主張する。
しかしながら,前記第2の1の(2)のAで述べたとおり,被告は原告の再採用における必要な事務処理を行っている。すなわち,事務担当者は,非常勤職員任免辞令簿に原告から押印を徴する際に,予定雇用期間を告げ,同期間及び予定雇用期間は自動更新しない旨を記載した採用通知書を交付している。したがって,原告の上記主張は失当である。
C 原告は,同五の2の(四)において,「小林総務課長は原告に対し,二4で前述したトラブルを本件雇止めの原因であるかのように前置きした上で,『でももし六月二九日までに市役所側が君の態度が良くなったと言ったならば,七月二九日以降のことも考える』旨伝えていた。」と主張する。
しかしながら,前記第2の1の(3)のAで詳述したとおり,小林総務課長は原告が市役所で起こしたトラブルについて事情聴取を行ったものであり,その中で,同課長は,7月29日の予定雇用期間の満了をもって雇用終了すること,それまでに何か問題があれば,予定雇用期間途中であっても雇用終了する場合もありうる旨を通告したものであって,上記主張のようなことは言っていない。
D 原告は,同五の2の(五)において,原告の岡山中央郵便局における職務内容は常勤職員と同じものであり,郵便局の運営にとって重要かつ恒常的なものであること,そのような内容の業務を何年間も担当させていたこと自体が,長期の雇用であることを保証し期待させる行為と評されるべきである旨主張する。
しかしながら,原告の職務内容は,常勤職員とは本質的な相違があり,あくまで補助的かつ軽微なものにすぎない。集配課外務職員の場合においては,非常勤職員も常勤職員も配達すべき郵便物を区分し,道順組立をし,配達するという作業に従事するので,その限りでは差異がないが,常勤職員は,混合(速達や小包郵便物の配達)区や通配(通常郵便物の配達)区を循環して担当するため,勤務時間もその仕事によって早出とか遅出の勤務に就く。
一方,原告は,同一時間帯(8:00〜15:00)の勤務に就き,その職務内容は住友生命ビルあての郵便物を会社別に区分し,さらに他の職員が区分をした配達先ビルあての郵便物及び書留・料金徴収の郵便物を受け取った上,配達するというものにすぎない。
また,何年間も担当していたという点については,再採用を繰り返した結果にすぎない。
さらに,原告は,「実際に非常勤職員の中には,勤続六,七年に及ぶ者さえいる。それらの事実が客観的に存し,また,主観的に原告に理解させていること自体が,形式的な期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為といわざるを得ない。」旨主張するが,勤続6,7年に及ぶ者がいたとの点については,原告と同様,再採用を繰り返した結果,勤続が長期に及んでいただけである。また,形式的な期間満了後も任用が継続されると期待するとの点については,原告に採用通知書を再採用の都度交付することによって予定雇用期間を理解させており,何ら「期待することが無理からぬものとみられる行為」などといわれるゆえんはないものである。
E 原告は,同五の3において,「原告は,解雇の事由が発生したり,自ら退職の申し出をしたりしない限り,勤め続けられると期待していたにもかかわらず,岡山中央郵便局長により一方的に本件通知を受けた。」として,同五の4において,「原告が,本件雇止めによりその保護さるべき期待権を侵害され,被った精神的苦痛を慰謝する慰謝料は金一〇〇万円を下るものではない。」旨主張する。
しかしながら,前記(1)で述べたように,当初の原告採用時において,局長が期限の定めのない任用を原告に約束した事実はない。また,第2の4で述べたとおり,原告は,任用規程4条に基づき,非常勤職員,すなわち任期を1日とし,予定雇用期間内においては,任命権者が特段の意思表示をしない限り任期が更新される一方,予定雇用期間が経過すれば任期満了により当然退職するものとされる,いわゆる日々雇用職員として採用されたものであり,前記@ないしDで述べたところからすれば,原告のいう「予定雇用期間満了後も原告を雇用することを確約ないし保証するなどの期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと認められる行為」などは存在しないものである。ましてや,原告が請求の原因の三で述べるような期限の定めのない非常勤職員という任用類型が国家公務員法上存在しないことは,前記(1)で述べたところである。そして,非常勤職員の任用方法等が,法律によって厳格に規定されているものであり,任用権者及び人事担当者の合理的意思解釈によって決定し得るものではないものであることからすれば,前記最高裁平成6年7月14日判決にいう「特別な事情」があるというためには,任用権者が非常勤職員に対して,予定雇用期間満了後も任用を続けることの確約ないし保障等,同期間満了後も任用継続を期待することが無理からぬとみられる行為を明示的にしたことが必要であると解するのが相当である。
したがって,原告が主張するような再任期待権は存在しないものであり,たとえ原告が再任につき期待を抱いていたとしても,原告のこの期待は単なる主観的予測ないし希望であって法的に保護された権利とはいえないものである。この点について,前記最高裁判所平成6年7月14日判決は,「上告人が日々雇用職員として任用され,…任用予定期間が満了したことによって退職したことは前示のとおりであるところ,上告人が,任用予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできない」と判示しているところである。
F 以上のことから,原告の期待権侵害を請求原因とする慰謝料請求に理由のないことは明らかである。
(4)総務課長等の行為に対する慰謝料の請求について
原告は,請求の原因の六において,「原告は岡山中央郵便局総務課長らから不当に長時間に亘り(・・・)事情聴取なるものを受け,『誓約書』や『始末書』なる書面の作成を強要され,さらには退職の予定日を一方的に数回に亘って変更し,その理由を問うもきちんとした回答さえしてもらえなかった。右一連の行為は,労働者である原告に対する不誠実かつ違法な行為であり,右行為により原告の被った精神的苦痛を慰謝する,慰謝料は金三○万円を下るものではない。」と主張する。
しかしながら,国家陪償法1条1項に関する請求において,同条項にいう「違法性」の要件が認められるためには,同条の保護の対象となる権利又は法的利益に対する侵害のあることが必要であり,かつ侵害されたと主張されている権利又は法的利益が実定法上の根拠を欠く場合には,同条の保護の対象となる権利又は法的利益と認めることはできないと解すべきである(大阪高裁平成5年3月18日判決・判例時報1457号98ページ)ところ,原告の上記主張によっては,いかなる権利又は法的利益が侵害されたとするのか,被侵害権利ないし被侵害利益にいかなる実定法上の利益が存在するのかが全く明らかでないから,主張自体失当といわざるを得ない。のみならず,前記第2の1の(3)のAで述べたとおり,平成12年8月1日に,小林総務課長が衛生室において事情聴取を行ったのは,同日午後4時12分ころから5時29分までの77分間であり,しかも,原告が同意の上,「誓約書」を数行書いた時,東主任らが事情聴取をしている同室に入ってこれを妨害し,同課長が引き止めるにもかかわらず,原告は同室から退室している。また,同年6月13日午前8時5分からの小会議室での事情聴取は,前記第2の1の(4)のCで述べたとおり約105分間である。いずれも市役所でのトラブルについての事情聴取であり,不当に長時間とは到底いえない。
「誓約書」や「始末書」についても原告の同意を得て原告自らの意思により作成したものであるから強要した事実はない。
さらに,退職予定日の変更については,第2の1の(3)ないし(4)で述べたとおり,小林総務課長は,原告に対し,6月5日及び同13日にその説明を行い,回答している。したがって,原告から何ら非難を受けるものではなく,原告の主張は理由がない。
(5)本件雇止めについて
原告は,請求の原因の七において,平成12年6月1日の市役所でのトラブルは業務妨害状態を排除し,自らの業務を遂行しようとしたに過ぎず,「雇止め」=解雇に結びつくほど社会的非難を受ける行為ではないとして,本件のように第三者により理不尽な行為を受け,本人にはさはど責任が認められなくとも「雇止め」ができるのかと主張する。
この点については,地方公務員の非常勤職員についてではあるが,大阪高等裁判所平成3年3月15日判決(判例時報1395号155ページ)は,「日々雇用職員は,日々雇い入れられる職員であるから,その任用権者から改めて雇用(任用)する旨の更新の意思表示がなされない限り,その任用された日の終了により,当然日々雇用職員である身分を失うものと解すべきであり(但し,労働基準法21条但し書,20条の準用により予告期間中の予告手当を支払う義務があるか否かは暫く措く),また,右任用権者には,再任用する旨の更新の意思表示をすべき義務はなく,右更新の意思表示をするか否かは,任用権者の自由裁量に委ねられているものと解すべきである…」と判示している。
また,本件同様,郵便局の非常勤職員が,労働契約上の権利を有することの確認を求めた事件についても,「任用行為は,一定の要件等の下に一方的に行われる行政処分であって,予定雇用期間の満了によって当然退職した被控訴人において,再任用を要求する権利はなく,任命権者にこのような義務を認めることもできない。」(前記名古屋高裁金沢支部昭和63年10月19日判決)と判示されている。つまり,雇用期間満了をもって退職となった場合,非常勤職員が再採用を求める権利はなく,したがって,任命権者に再採用の義務もないものである。
なお,付け加えるならば,2度のトラブルを起こしていること,市役所からの苦情は6月1日のトラブルのみならず,原告の平素の態度にも言及していること,著しい遅刻回数を有することなど,原告の勤務状況ははなはだ悪いものであった。そして,事情聴取に対する態度にしても反省している様子が到底うかがえなかったことも考慮して,任命権者たる局長は,原告の再採用を行わなかったものである。
第3 結語
以上のとおり,原告は,平成12年7月29日までの予定雇用期間の満了をもって岡山局を退職となっているものであるから,非常勤職員たる地位になく,そもそも,労働契約上の従業員たる地位を有していないことは明白である。さらに,精神的苦痛を慰謝する慰謝料請求についても理由がなく,あるいは主張自体失当である。
よって,原告の請求に理由のないことは明らかであって,速やかに棄却されるべきである。

■第2準備書面
次回期日 平成13年6月12日 午後4時15分
平成12年(ワ)第1192号 地位確認等請求事件
原 告 池 田 幸 司
被 告 国
第 2 準備書面
平成13年5月31日
岡山地方裁判所第1民事部 御中
被告指定代理人 大 西 達 夫
前 納 祐喜和
鈴 木 雅 彦
清 原 久 男
鳥 井 祐 典
樋 口 良 行
久 埜 彰
石 川 義 喜
近 藤 三 雄
胡 政 春
植 田 博 文
被告は,平成13年4月17日付け原告準備書面(以下「原告準備書面」という。)に対して,必要な範囲において整理・補足して主張する。
なお,略号の使用に関しては特に断らない限り従前の例によるものとする。
1 非常勤職員の任期と予定雇用期間について
非常勤職員の任用については,既に平成13年3月19日付け被告第1準備書面(以下「被告第1準備書面」という。)の第2の3で詳述したとおり,国公法,規則等の規定が適用されており,それに基づき非常勤職員の任用等を行っているところである。
そもそも,昭和22年10月21日,国公法が制定され,同23年7月1日,同法附則・13条が施行され,同30年8月23日,規則8−14「二箇月以内の任期を限られた職員等の任用に関する特例」が,また,同35年9月26日,旧郵政省非常勤職員任用規程(乙第24号証,以下「旧任用規程」という。)が定められた。
この間,国家公務員の定員は,昭和24年以降行政機関職員定員法によって厳格に規制されることになり,これは郵政省においても同様であった。しかしながら,郵政省においては,年末年始や夏期の事務繁忙期などがあり,一時的に定員内の職員で事務を処理しえない状況が生ずるだけでなく,年々増加する事務量に伴った定員が十分配置されていない状態が続いたため,定員外の非常勤職員としての臨時雇が多数任用され,同非常勤職員の本務化を要求する闘争が提起されるなどの事情が存在した。
このような状況の下で,昭和36年2月28日,政府は,日々雇い入れることを予定する職員の雇用について,その常勤化を防止するため,「定員外職員の常勤化の防止について」の閣議決定(乙第25号証の1)を行った。同閣議決定の3項1号では,「継続して日日雇い入れることを予定する職員については,必ず発令日の属する会計年度の範囲内で任用予定期間を定めること。」とされている。
そして,昭和36年6月2日,規則8−14は「非常勤職員等の任用に関する特例」(乙第25号証の2)と改正され,その後,旧任用規程及び任用規程運用方針は,同62年6月1日(任用規程,乙第22号証の1及び2)に全部改正,平成2年6月1日(乙第26号証の1及び2)に一部改正,同12年6月1日(新任用規程,乙第23号証の1及び2)に全部改正され,現在に至っている。
つまり,国公法,規則を受けて上記任用規程が定められ,その第4条には,「非常勤の職員の任期は,1日とする。この場合において,予定雇用期間(発令日の属する会計年度の範囲内において任命権者が定める期間。)内においては,任命権者が別段の意思表示を行わない限り,その任期は更新されるものとする。」と規定されているものである。すなわち,予定雇用期間内の任期の更新については,任命権者による特段の意思表示を要しないこととされたものである。
このことは,「非常勤職員を期限付で任用することは,その期限が1日であっても許されるものであり,郵政省において,任用規程により任用される臨時雇は,適法な任用類型と認められる。」(名古屋高裁金沢支部昭和63年10月19日判決・判例時報1289号148ページ)とされ,また,「‥・期限付任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職員,すなわち,任期を1日と定め,任用予定期間内は任命権者が別段の措置をしない限り任用を日々更新し,任用予定期間が経過したときは任期満了により当然に退職する職員として任用されたものである…」と最高裁判所平成6年7月14日第1小法廷判決(判例時報1519号118ページ)において,非常勤職員の任期と予定雇用期間について肯定されているところでもある。
したがって,任期の定めのない非常勤職員は存在せず,かつ,非常勤職員の任期は自動更新されたとしても予定雇用期間を超えることはないものである。そして,予定雇用期間内においても,非常勤職員の任期は1日であり,ただ任期の更新について,任命権者による別段の意思表示がない限り,個別具体的な更新行為がなくても1日ごとに更新されるという内部的取扱いが前記任用規程により定められているに過ぎず,これは予定雇用期間終了時の再任用についてはもちろん,予定雇用期間内の任期の更新についても法的にこれを保証するものではない。
2 原告の任用等について
原告の任用等については,被告第1準備書面の第2の1の(1)及び(2)で述べたとおり,平成9年10月27日,当時の梶原二集課長は原告に対して,指定する勤務日,勤務時間の範囲,その他の勤務条件等を説明し,原告は「非常勤職員任免辞令簿」(乙第4号証)に押印し,また,採用通知書(甲第5号証の1)の交付を受けているものである。その後も,2か月程度の予定雇用期間で非常勤職員として再採用を繰り返し(乙第6号証),その都度,非常勤職員任免辞令簿に発令事項を記載し,原告本人に確認させた上,押印させ,かつ採用通知書を交付していたものである。
ただし,被告第1準備書面の第2の5の(3)のA及びBにおいて,採用通知書に「予定雇用期間は自動更新しない」と記載していたとの点については,甲第5号証の1及び2のとおり,この文言は記載していないのでこれを訂正をする。
しかしながら,採用通知書には予定雇用期間を明示しており,人事異動通知書に代わる非常勤職員任免辞令簿(乙第4号証)には,必要な発令事項とともに予定雇用期間は「自動更新しない」と記載しているところであって,採用及び再採用の都度,非常勤職員任免辞令簿へ原告自ら押印していること及び採用通知書の交付を受けていることは,上記のとおりであり,原告もこの点については,原告準備書面において認めている。なお,人事異動通知書の交付に代えて非常勤職員任免辞令簿による非常勤職員の発令方法は,規則8−12(職員の任免)77条により認められ,任用規程運用方針(乙第26号証の2)第4条関係の3の(2)に規定されているものである。
また,甲第5号証の1の採用通知書中,3の仕事の内容において「郵便局の(内務)業務」と記載しているが,「郵便局の(外務)業務」が正しく,原告に対しては,郵便外務に従事する旨説明しており,単なる誤記であり,その後は正しく記載(甲第5号証の2)したものを交付している。