筋ジストロフィーの
 日常生活の注意点

 はじめに
  筋ジストロフィーはひとつの病気ではなく、多くの同じような病気を総称しています。
そして、だんだんと遺伝子の変化(異常という言葉は適当でないように思えます)が病気を
おこしていることが解ってきました。

 遺伝子についてどう考える?
  遺伝子のことがいろいろと解ってきました。正常とは何なのかと疑問がでるくらい全く
正常といわれる遺伝子だけを持っているいるヒトはいないことも解ってきました。多くの病
気が遺伝子に関係していることも解ってきました。遺伝子のために、目に見えるような病気
の方もおられれば、外からは全くわからない病気の方もおられます。また、一生の内に遺伝
子が変化することも解ってきました。
  さて、私たちは遺伝子とどう向き合ったらいいのでしょうか? ヒトそれぞれに受け止め
方がちがうのでしょう。これもまた遺伝子の仕業かもしれません。何百万年も経て現在のヒ
トの遺伝子が今あるわけです。遺伝子はこれからも環境の変化によって変化していくことで
しょう。
  重要なことは、遺伝子のために病気のあるヒトが社会の中で差別されたり、住みにくい
社会であってはなりません。遺伝子のこのようなヒトとの関係をみると、差別される根拠が
ないということがよくわかります。皆が遺伝子のために問題をかかえているのだから、特定
の遺伝子による病気をもつヒトも皆と同様に生活できる社会が必要なのだと私は思います。

筋肉の萎縮はどういう時におこってくるの?
  筋肉が萎縮する場合、大きく二つの場合があります。
   1、神経(得に末梢神経の中の運動神経)に問題がある場合
   2、筋肉自身の問題による場合 

  神経に問題があって筋肉が萎縮する病気には、神経の外傷や圧迫、神経の腫瘍などでも
おこりますが、少々聞き慣れない病名ですが、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症などの
病気でもおこります。

  筋肉自身に問題があって筋肉が萎縮する病気の一つが筋ジストロフィーで、その他に多
発筋炎、内分泌や糖や脂肪の代謝異常によっておこる病気などもあります。

筋ジストロフィーにはどんな病気があるの?
  下の図は筋肉の膜の部分を図式化したものですが、上の方が筋肉の外、下の方が筋肉の
中になります。

 

   わけのわからないような名前がありますが、この図にある筋肉のどの構造物が障害
されるかによって病気の名前が異なってくるわけです。以下に主な病気を挙げてみます。

 

遺伝形式/疾患名 問題となる遺伝子の場所  問題となる構造物
性染色体性劣性    
 デュシェンヌ型  Xp21.2 ジストロフィン欠損
 ベッカー型  Xp21.2 ジストロフィン著減/異常
 エメリー 
  ドレフィス型
 Xp28
 STA遺伝子
エメリン
常染色体性劣性    
 肢帯型    
 2A中等・軽症
 エルブ・ライデン
 .メービウス
 15q15.1-q21.1 カルパイン3
 2B中等・軽症
  (三好)
 2p13-p16 ジスフェリン
 2G  17q11-12 εサルコグリカン
 2C重症  13q12 γサルコグリカン
 2D重症  17q12-q21, 33 αサルコグリカン
 (アダリン)
 2E重症  4q12 βサルコグリカン
 2F重症  5q33-34 δサルコグリカン
 先天型    
 福山型  9q31 フクチン
 非福山型
 メロシン陽性型
 6q2 メロシン欠損
 非福山型
 メロシン陰性型
 9q31 メロシン部分欠損
メロシン正常
 遠位型    
 三好型  2p13  
 空砲型  9  
常染色体優性    
 肢帯型    
 1A軽症  5q31-33  
 1B  1q11-21  
 1C中等症軽症  3q25 カベオリン3
 顔面肩甲上腕型     
 1A  4q35  
 1B    
 遠位型    
 ウェランダー型  14q  
 筋強直性  19q13.3
 CTG反復延長
ミオトニン プロテインキナーゼ
 眼咽頭型  14q11.3-13  
 眼咽頭遠位型    
 肩甲下腿型    
 下に9番目の染色体の図が示してありますが(上の表でまん中の列の最初に書いてある
数字が何番目の染色体かを示します)、遺伝子が入っている染色体は短い楕円形のもの
(短腕といい記号でpで表わします)と長い楕円形のもの(長腕といい記号でqで表わしま
す)とがくっついているような形をしています。そしてそれぞれに番地がつけてあります
(図では11とか、21.1などと書かれているものです)。
         

  病気の分類の表では、まず、遺伝型式で大きく分けて(赤)、その中で今度は障害さ
れる部位や先天性などの観点から分類して(青)、それにあてはまる病気が黒い字で書か
れています。
  さて、筋ジストロフィーにはいろいろな病気があることが解ります。まだ、問題とな
る遺伝子の場所が解っていない病気もたくさんあります。

  筋強直性ジストロフイーでは、表に”CTG反復延長”と書いてあります。これは下の
図にあるように、染色体にはタンパク質のもとになるアミノ酸を形作っているシトシン、
チミン、グアニンなどと呼ばれる物質がありますが、これが反復して並んでいるところが
あります。通常の反復が下の図の赤線の範囲であるのが、黄緑の線の範囲まで反復がのび
ていると病気が出現してくると考えられています。

       

 

 どんな症状がでるの?
 どのように治療するの?

の表におおよその障害とその原因や治療について表にまとめてみました。

        筋力低下と障害・病態

  心(筋)障害 呼吸筋障害 嚥下障害 頸部・四肢・体幹障害
原因となる筋や障害 拡大型心筋症
心伝導障害
肋間筋
横隔膜
呼吸補助筋
嚥下筋 頸筋 四肢筋
体幹筋 傍脊柱筋
骨盤筋
出現してくる症状 不整脈
心不全
易感染性
喀痰排出困難
低酸素
高二酸化炭素
呼吸困難
易感染性
肺炎
誤嚥
脊椎変形による気管圧迫
気道閉塞
気管大動脈圧迫
大動脈穿孔
脊椎変形
胸郭変形
関節拘縮
関節痛
廃用性筋萎縮
骨そしょう症
病的骨折
治療 薬物療法
ペースメーカー
リハビリテーション
カフマシーン
酸素療法
NIPPV
人工呼吸器
経鼻胃管
胃ろう
中心静脈栄養
リハビリテーション
装具
外科的手術

 日常生活での注意点は?

  栄養    バランスのとれた食事をとる。
        体重増加に気をつけること。
  感染    風邪をひかないように注意すること
        痰をよく排出すること。
        誤嚥に気をつけること。
  水分接取  特に夏などは脱水に気をつけること。
        水分を一時に多くとらないこと。ビールなど。
  リハビリテーション 
        毎日可動域訓練も含めリハビリテーションを忘れ
        ないこと
        無理なリハビリテーションは行わないこと
  医師との相談   
        異変に気付いたときは早めに主治医に相談するこ
        と。

  そして、社会の一員であることの自覚をもち自立心を育て、
  何にでも積極的な姿勢で望むこと。いつも笑顔を忘れずに。

筋ジストロフィーの患者さんや家族の方々が集まって、情報の収集や伝達、公的支援の方法、精神的支援などさまざまな活動をなさっています。まだご存知ない方は、どうぞ筋ジストロフィー協会に一度連絡してみて下さい。

162-0051 東京都新宿区西早稲田2ー2ー8
     全国心身障害児福祉財団ビル内
  日本筋ジストロフィー協会
   電話 03-5273-2930