めまいめまいめまい

 めまいを訴えられる患者さんは多くおられますが、めまいについて少しでも知っていると
よけいな心配をせずにすむのに、あるいは、このめまいは大変な病気なのに患者さんが良く
理解してくれないということがあります。そこで、めまいについて簡単な基礎知識をまとめ
てみました。

めまいの種類
 めまいには大きく2種類あります。

  1. 回転性めまい(真性めまい)
  2. めまい感(仮性めまい)
      浮動感
      眼前暗黒感

 
 回転性めまいというのは、周囲がグルグルと回っているような状態で、患者さんは周囲の
ものが右あるいは左に流れように感じ、あるいは時計のように回転するように感じます。め
まい感というのは、実際には周囲は回っていないのだが、あたかも船に乗っているように揺
れる感じ、地面が揺れているような感じ(浮動感)、あるいは、目の前が突然暗くなる感じ
(眼前暗黒感)、いはゆる”立ち眩み”を言います。


どうしてめまいがおこるの
 人の平衡感覚の一部は、耳の奥(内耳)にある前庭と言われる部分から、刺激が脳の脳幹部
といわれる大脳のすぐ下で脊髄の上の部分に伝わります。、そしてさらに大脳へと伝わります。
小脳もこの経路と密接に関連しています。今述べてきた経路が直接障害されると、回転性めま
いが出現してくる可能性があります。めまい感はこの経路が関係することもあるかもしれませ
んが、もっと眼や頚部、脳全体の問題と関連していると考えられます。

どんな病気がめまいを起こすの
  表に、主なめまいをおこす病気を挙げてみました。
聞き慣れない難しい病名がありますが、特に赤い字の病気に注目して下さい。めまいを訴えて
来られる患者さんの中で比較的多い病気です。表をみるとおわかりになるかもしれませんが、
回転性めまいを起こす病気は重いものが多いのです。必ず医師に相談し必要に応じて検査をす
る必要があります。

 回転性めまいを起こす病気
めまい感を起こす病気
1、 脳血管障害
   椎骨脳底動脈循環不全
   椎骨脳底動脈血栓
   高血圧性脳出血
    (橋、小脳の出血)
2、 腫瘍あるいは膿瘍
   小脳・橋角部腫瘍
   橋腫瘍
   膿瘍
3、 多発性硬化症
4、 炎症
   ウイルス性髄膜脳炎(脳幹脳炎)
   神経ベーチェット病
5、 変性疾患
   脊髄小脳変性症
   延髄空洞症
6、脳底動脈片頭痛
7、 側頭葉てんかん
8、 前庭性(内耳性)めまい
   メニエル病
   前庭神経炎
   良性発作性頭位めまい症
   突発性難聴
   中耳炎
   お薬(ストレプトマイシンなど)
1、 心理的原因や精神病によるもの
   不安神経症
   ヒステリー
   神経症性抑うつ
   心気症
   そううつ病
   精神分裂病
2、 頚部の原因によるもの
   頭痛・肩こり
   むち打ち症
3、 視力など眼に関係するもの
   調節障害(焦点があわせにくい)
   外眼筋麻痺(眼を動かす筋肉の
         まひ)
   高所恐怖症

   表にあげた病気のいくつかを少し詳しく述べてみます。

脳血管性障害によるめまい
 脳を下からみた図がありますが、まん中に太い動脈があり下のほうで2本に別れています
が、その太い動脈が脳底動脈(赤い矢印)で、2本に別れている動脈が椎骨動脈(黄色い矢
印)です。このあたりの血管がつまったり(脳硬塞)、出血したり(脳出血)すると回転性
めまいが出現してくるわけです。また、つまったり、出血しなくても、血液の流れが悪くな
るだけでも回転性めまいが出てくる可能性があります。それが椎骨・脳底動脈循環不全と言
われるものです(図はCLINICAL SYMPOSIA, illustrated by Frank H. Netterより引用)。
         

前庭性めまい
 図は耳と耳の奥のほうを示したものですが、三半規管、前庭と書いてあるところが障害さ
れると、回転性めまいが出現してきます。
代表的な病気が皆さんよく御存知のメニエル病です。回転性のめまい、難聴、耳鳴りが突然
出現してくる病気で、これら3つの症状が関連しあっています。診断基準が定められていま
す。めまいがするとすぐにメニエル病と診断しがちですが、診断基準に従ってこの病名をつ
けるべきでしょう。前庭神経炎も回転性めまい、難聴あるいは耳鳴りが出現してきますが、
回転性めまいと直接関連のある難聴や耳鳴りはありません。
良性発作性頭位性めまい症というのは、特定の頭の位置をとると、回転性あるいは浮動性の
めまいが出現してくるもので、その頭の位置でいるとめまいはどんどん強くなりますが、そ
の後弱くなってきます。1度おこすと再びその頭の位置をとっても、めまいは弱いか、出現
しなくなります。難聴や耳鳴りはないことが多いです。

             
(図は、小松崎篤:めまいの鑑別。薬の知識、49巻9号より引用)

心理的原因(心因性)によるめまい感
 めまいを訴える患者さんの約1/3はこのめまいだと言われています。家庭、会社、学校
などでの人間関係のストレスや疲労などが原因であることが多いようです。過換気症候群を
伴っていることもあります。

肩こりや首のこりによるめまい感
 肩がこっていたり、首がこっていたりするとめまい感が出現することがあります。こりが
ひどくなると緊張型頭痛といわれる頭痛が出現してくることもあります。吐き気や嘔吐など
も伴うことがあります。極度の緊張、眼性疲労、精神的ストレスなどが原因となっているこ
とが多いようです。

治療について
 それぞれの病気で治療法が異なっています。特に、脳血管障害や脳腫瘍など、すぐに入院
して治療しなければならないめまいもあります。めまいが出現したら、まず、医師に相談し
て、正確な診断をしてもらうことが大切です。