ソウル マイ ラヴ

 

今回は、友人が推薦文を寄せてくれています。

すばらしい! 導入部分は頬をなでる静かな春風のような立ち上がりそれでいて確実に盛り上がりを予感させる期待感!

そして旅先での人の心の機微を心憎いほどさわやかに描きあげる臨場感!

読み進んでいくうちに徐々に引き込まれ最後には副長に怒鳴られながらも

目を離すことができずひとときも目を離せず一気に読み進んでしまうまさに息もつかせぬ

はらはらどきどきの大スペクタクル!

この読み終わったあとの爽快感はまさに天才の仕事!!!

この文章をひとたび目にすれば大江健三郎なら感涙にむせび

コナン・ドイルならストーリーの完成度にしたをまき

トルストイが生きていたならその才能に嫉妬したであろう!

まさに地上に訪れた恐怖の大王!!今世紀最後を飾るにふさわしい超話題作!!!

・・・すばらしい!!!


  **************************************

私はそのときソウルにいた。何故かソウルにいた。

焼き肉食っていた。

それが、あんな事になるとは。

 

先月のバンコクからまだ1ヶ月も経っていないというのに、また海外に来てしまっていた。

バンコク

男4人でなにしに行くか、多くは申しますまい。

一言付け加えるのであれば、「私は、やっていない」という、信用度ゼロのセリフである。

3月というせいもあってか、まわりは社会人に向けて引っ越しや旅行のラッシュとなり、

私も、残りわずかな学生生活を京都でただ、だらだらと過ごしていた。

そんな腐ったある日。

バンコクで一番はじけていた彼が、「ソウル夜の歩き方」なる本を片手に遊びに来た。

おい、ソウル行くぞ、ソウル。

はっ?

そういうと、彼は私に、チケット予約の紙を手渡した。

そこには、しっかり、"FUJITA MASAKAZU"と書かれていた。

なにー。」しかも、あさって出発やんけ。

急遽、「社会人になったら、なにかと入り用になった時のための隠し資金」から、

飛行機代を捻出すると、こたつの中に入ってあったパスポートを引っぱり出し、

(最初見つからず、パニくって、3時間ほど部屋引っかき回した。)

鞄に詰めた。

当日。

バンコクと同様「メイド・イン・オカモト」をいっぱい詰めた友人と、

整腸剤」を行商するほど詰めた私は、関西空港にいた。

外は、雪。

韓国も寒いんだろうななどと旅愁に浸っている横で、

連れは「夜の歩き方」の熟読に余念がなかった。

こんなに熱心な彼は、これまで見たことがなかった。

どうせ、ろくなんいないって、白浜の時の女子高生みたいにさぁ

参「エピソードU」】という私に、「いや、バンコク以上に期待できそうだ」と言い切った。

 

 

 

そんなおばか2人を乗せ、UA(UNITED AIRLINES)の飛行機は、関空を後にした。

 

 

 

ソウル・金浦空港。

はっきり言って、京都から高松行くより数段早い時間で到着。

そりゃみんな海外いくわな。

今回は初の「エアーチケット・ホテル予約付き」のパックツアーだったので、

現地の添乗員が待っているらしい。

「フヂタサンイマスカ?」

そう言われて、振り向くと華原朋美バリの(全盛期の)かわいい添乗員に、

友人は反射的に「世界のオカモト」を出そうとしていた。

そんな我々と、

えーソウルって、中国だよねぇー。」とインタビューで答えてしまいそうな、

買い物目的のバカOL。

やることで頭いっぱいの新婚さん。

そして、あの悪夢【参*「エピソードT」】を思い出せるようなへっぽこ女子大生3人組。

これが、我々のツアーメンバーである。

といっても、ホテルが一緒なだけだが・・・。

ホテル。

「ごらん、あれがソウルタワーさ。」

「なんてロマンティックなの」

(BGM*アンチェインドメロディ 「ゴースト」のテーマ)てなことはなく。

「おい、目の前、高速走ってるぞ」

「それより、お湯でんし、このライト電気つかんで。」という、

やっぱり安いだけのホテルであった。

既に、「歩き方」(くどいが夜の歩き方)を熟読した連れは

もうガマンできないのだろう、「行くぞ」と、私をせかした。

夜9時。

我々は東大門と言われる場所にいた。

軽く屋台で、飯を食うとぶらぶらと観光した。

「なんかつまらんなぁ。」

じゃ、いくか。」

「どこへ」

「決まってるがな、楽しいとこや」

そういうと、明洞(ミョンドン)と呼ばれるソウル一の繁華街へとやってきた。

が、ここは「」の繁華街だった。

ついたとき、あいていたのは、コンビニだけだった。

コンビニで、その手の本かおうや

おー、そうするか」(よくよく考えたら、ハングル語、よめへんやろ!!)

コンビニで、しゃべっていると、矢崎滋似の韓国人が、声をかけてきた。

アナタタチハ、ニホンノカタデチカ?

このおっさんに、聞いてみよう。

そうです、いま、飲めるところ探しています。

アー、ココラニハナイネェ、江南ニイクデス。

江南?

ヨルノマチデス。

夜の街?!

連れはこの言葉で、浜崎あゆみばりの目の大きさになった。

ワタチシッテル、アナタタチオモシロイ、ワタシツレテク。イッシヨニノムデス

どうする?

やばくなったら逃げたらいいやろ、このおっさん弱そうなデブやし

とりあえず、カーナンバー覚えとこ

そう打ち合わせすると、おっさんのセダンに乗り込んだ。

”シャ乱Q””X”など、ガンガンかかる、滋のセダンは

ソウルの夜のハイウェーを突っ走った。

すっかりフレンドリーになった我々は、車の中で「ずるい女」を大合唱であった。

なんか起こりそうだ」そんな予感を胸に、滋カーは江南の地区へと着いた。

が、どうみても、なにもありそうにない。

確かに、「スナック」や、焼き肉屋はあるが、肝心のちょっとお姉さんと遊びながら・・というところはない。

ねぇキムさん、ないやん、カラオケのあるようなとこ。

アレーオカチイネェー」滋は、困った顔をしたが、

我々は、こりゃやばいなと思い始めていた。

まさに、「何か起こりそう」なのである。

キムさん、ありがと。かむさはむにた、あにょはせよー

そういうと、我々は、歩き始めた。

滋は、それを見てすっとんきょーのような声を上げた。

ダメダメ、アブナイネー。ココラハまふぃあトカイッパイネ。、コロサレルアル。

私は、またそんなこといって、と思いながら前を見ると

*@+?¥!”#$%’

なにやら怒鳴り声が聞こえ、人が飛び出してきた。

やばいかも

そう思った我々は、滋の忠告に従うことにした。

タイジョウブ。イイトコ オモイダチタ、ヤスイ。タノシイ

そう滋は言うと、携帯でどこかに電話をかけ始めた。

そして、滋カーは、また来た道を戻るのだった。

結局、最初のコンビニの近くまで帰ってきた。

ココネ、ココ

見るとジョッキの絵を描いてあるネオンの店だった。「BAR」ってかいてある。

びーるヤスイノネ」「タクサンノムネ

そう言うと滋は、階段を下り、地下の店へ入っていった。

どうする。

まあ、1杯だけ飲むか。それで帰ろう」我々も中に入った。

薄暗い店内は、客が10人も入ればいっぱいになる。

そして、何故か、カラオケボックスのような部屋が2部屋。その一室に入った。

サア、ウタウ。ワタシ、ナガブチスキネ。

そう言うと、滋は「乾杯」をセットした。

字幕も日本語で、連れもマイクを持って歌い始めた。

ウェーターが来たので、日本円にして、250円ぐらいの生中を頼むと、

私もなにを歌おうかと本を開いていた。

突然「コンニチハー」といって、明らかにホステスとおぼしき、神田うの風の女の子と、

千秋風の女子大生が、お酌をしにはいって来た。

わたしは、カラオケ屋なのに「なんでやろ」と、いぶかしながら

連れを見ると、「世界のオカモト」がやっと、やっと・・・と連れは感無量のご様子。

ネエ、ワタシモノンデイイ?」手を触れながら、私の膝の上に、うのが乗ってきた。

まさに、バンコクを彷彿とさせるシチュエーションである。

(くどいが、私はなにもしていない)

どうする?」と私は「乾杯」を滋と熱唱している連れに問うた。

ええんちゃう」「楽しそうやん

そうやなええい、もうしらーん。のめやうたえや。

アリガト・かむさはむにだ」そう言うと、うのは、部屋を出ていった。

私は、「浪漫飛行」をセットすると、「乾杯」をハモりにくわわった。

ガチャ、ドアが開いた。

うのは、「リポビタンD」大のウイスキー小瓶を2本、

水割り用のペットボトル3本、

コーラ3本

そして清酒2本を机の上に、ガンと置くと、

「キリキリキリ」と、ウイスキーの小瓶を目にも留まらぬ早さで、開け始めた。

ちょっ、ちょっとまって、ウェイトォー!!」我々2人は、ほぼ同時に叫んだ。

た、たのんでないで

そう言っているさなか、バラエティに富んだピーナッツ、

トロピカルなフルーツの盛り合わせと、そしてするめが一枚、

高級そうな皿に入って運ばれてきた。

おーい」頼んでないって。

キムさん、なんか言ったって、頼んでないって。

滋は、びっくりした顔をしながら、うのに、ぶつぶつというと、私に対してこういった。

まさかす、アナタノンデモイイヨイッタカ?

あー、ビールをね。

チガウモン、ウイスキーイイイッモン」と、

うのは、そう言いながら、さらに清酒も開けようとする。

「こらー、ばかちんがー、あけんな」

我々は関西弁で怒鳴ると、うのは、てでいった。

キムさんどうしたらいいの?

ワタチモワカラナイ、コンナノハジメテ」と頭を抱え始めた。

おいおい、おっさん。・・・・・

連れは、とりあえず、メニュー表を開いた。そして、黙り込んだ。

どした?」私もメニュー見た。

ういすきー1本120000ウォン (12000円)

冷酒   1本100000ウォン (10000円)

水    1本 20000ウォン (2000円)

こーら1本 50000ウォン (5000円)

ピーナッツ盛り 80000ウォン (8000円) 

フルーツ盛り 100000ウォン (10000円)

スルメ     80000ウォン (8000円)

トータル910000ウォン(91000円)

というとんでもないものであった。

こりゃ、浪漫飛行どころじゃねえな。

滋は、だんまりでへこんでいる。

これは、間違いなくぼったくりだ。しかも請求させられるだろう。

連れは、放心状態である。

しゃーない、あの手で行くか。

私は、滋にこういった。

ちょっと、ATM行って来ます。

そう言って、部屋を出ようと連れに、目配せした。

連れも分かったらしく、

キムさんまってて、すぐ、現金作って、迎えにくるからさ

それはまるで、「戻ってきたら結婚しよう」といって戦地で必ず死んでしまう兵隊以上に、帰ってくる可能性は低いものであった。

よし、出るぞ

私は、勢いよく、ボックスのドアを開けると、出入り口には、4人ほどのチンピラが、

ヤンキー座りをして、たむろっていた。

「でっ、でられん」

まるで、「バイオハザート」のゾンビの世界である。

それ以前に、目の前には、安岡力也が3人ほど立っている事に気づくのに、

時間はかからなかった。

そして、一言こういった。

どこいくんや

実にうまい日本語である。が、感心しとる場合ではない。

それはなにを言っても、店から出してあげませんという語調でもあり、

でるんやったら、かねはらいや。」というサインでもあった。

いや、金がたりんので、おろちてこようと思いまして・・・

なーにーぃ、ふざけたことぬかすなぁ、そうやって出ていこうたって、いかすかぁ

そう言うと、軍隊上がりの太い二の腕で、襟首捕まれて、部屋にずるずると戻された。

あっあのー、わたちたち学生で、お金無いアル。

こ、今回海外初めてアル。やっと働いて貯めて、ソウルきたアル。

大将男前!!、日本人、韓国大好き。

we love そうる、イヤー、ほんと。マジで。

もう、出川哲朗並の負け犬を演じ始める私に、連れもあきれ気味であった。

かくして、力也3人衆は、私の生い立ちから、食中毒の話まで、聞かされることとなり、

軟禁3時間後、一人3千円という事で、解放されたのだった。

その間、友人はやりとりを見ているだけ、滋は、ピーナッツをむさぼり食っていた。

結局、滋もグルだったのかと思いながら滋カーに蹴りを入れて我々は、明洞を逃げ去った。

ホテルにて「地球の歩き方」を見ると、寸分違わない詐欺事件が、そのまま載ってあった。

こうして、ビール1本3000円のソウルツアーの夜は、

となりの新婚の楽しそうな声を聞きながら、更けていくのであった。

*************************************

また、感想お待ちしています。