ぽかぽか陽気の昼下がり。
食事の後に窓際のいつもの場所に腰掛けてお昼寝するのが
最高に気持ち良い。
今日もそんなかんじで、あたしはすやすやテーブルに突っ伏して眠っていた。
「・・・おい」
頭の上から不機嫌そうな声。
無視無視。
こんな気持ちのいい事の邪魔しないでよね〜。
あたしは聞こえないふりをした。
ピキっと、聞いてはならないような音がしたと思った瞬間
「こんの、クソ猿!起きやがれ!!」
窓ガラスが割れるんじゃないかというくらいの怒鳴り声。
慌てて顔をあげると、眉間にシワをいくつもよせたサリオン(通称:さりー)が
仁王立ちしていた。
気のせいか、金髪で結った髪が逆立っているように見える。
「うぁ・・・。なにぃ?」
渋々起きあがるあたし。
さりーはあたしの横にドカっと座った。
「お前よ、なにやってんの?」
呆れと怒りが混ざった表情のさりー。
さりーはいっつも不機嫌そうな顔してるなぁ・・・と思いながら答えるあたし。
「何って、お昼寝!」
「・・・・」
しばし沈黙。
「・・・んで?ココは何処だ?」
ほぁ?
なんか、話が飛ぶなぁ・・・。
「何処って、GRDのGHでしょ?」
あたしが今いる場所は、ギルドGRDのGH。
最近のお気に入りの場所である。
「そう。ここはGRDだ。で、お前のギルドはどこだっけ?」
「EFC・・・」
「お前はそのEFCのなんだ?」
だんだん、さりーの口調が強くなっているのが解かる。
てか、怖い・・・。
「えと・・・ギルドマスター・・・」
さりーがくわっと目を見開いてあたしを怒鳴った。
「EFCのギルマスがここでなにやってんだ!!」
「うきゃああああああ」
あまりの形相にあたしは飛びあがり、慌ててにあの後ろに隠れた。
「にあーー、さりーが怖いよぉtt」
「あはは、さりちゃん厳しいから」
にあもGRDに所属しているおっとりしていて、赤毛がキュートな女の子。
あたしはにあとお茶をするのが好きだ。
お互い洋服が大好きで、洋服の話題になると話が止まらないんだ。
「まぁまぁ、さりさん。そんな怒らないで」
そう言って、さりーをなだめたのはGさん。
もちろん彼もGRDメンの一人。
頭にいつもバンダナ巻いてて、いちお戦士なんだけど。
あたしはいつも大工とか、なんでも屋とか、そういう風にしか見えない。
でもでも、とっても強いんだけどね。
実はにあの彼氏さん。
そのGさんの隣にいるのは、GRDのギルマスのあきさん。
「はっはっは、えな。俺が慰めてやる」
金髪の長身で、ぱっと見は美形なんだけどね・・・。
Gさんといっつも変態トークを繰り広げるつわもの。
口を開かなければすっごくいいのに・・・。
「あきしゃん・・・・」
豪快に笑う彼を見て、あたしはがっくり。
天はニ物を与えんって、ほんとかも・・・。
しかし、戦闘スキルの高さはピカイチ。
ここでこのギルドGRDについて少し。

<GRD>
対モンス戦でのエキスパートを目指す団体。
ギルメン全員黒装備であり、それがなんとも重圧感を出している。
普段の会話は変態ちっくなのだが、戦闘となると人が変わる。
ブリタニアの地で『三魔』と呼ばれる、黒閣下・骨龍・古代龍という
恐ろしいモンスターをも倒してしまう・・・。
特にギルマスのあきさんの戦闘能力はギルド内でずば抜けている。

さて、そんなGRDに、なぜまったりギルドEFCギルマスのあたしが居るか。
ひょんなきっかけで知り合ったGさんが、ここのギルドに所属していて、
あたしがひどく落ちこんでいる時に、ここに連れてきてくれたのがきっかけ。
・・・あたしでも落ちこむ事くらいあるんです。
今日はギルメンの些細な一言にむっときたから、ここでふてくされてたんだけど。
うちのギルメンは容赦なくあたしの事をけなす。
だって毎度毎度バカだのアホだの言われたら、あたしだって頭にくるでしょ?


ここのみんなは陽気で、あたしもすぐに打ち解ける事ができた。
あたしがGRDのGHにいても、何も言わないし、とにかく居心地が良い。
ただ、一人だけはすっごく怒るけど。
「えなごろ」
先ほどより幾分怒りもおさまったような口調のさりー。
「なんだよぉ」
あたしはぷーっと頬をふくらませて返事をした。
「別にここに来るのはいいんだけどよ。ギルマスとしてのだなぁ・・・」
と、お決まりのお説教タイム。
もう耳にタコだよ・・・。
こいうのはさらっと流すのが吉。
適当に「ハイハイ」っと返事をしていると、またしてもさりーの怒り爆発。
「聞いてんのか!!!」
「き、聞いてるよ!あんま怒るとシワ増えるんだから!」
「ったくよぉ」
さりーは、今度こそ本当に呆れてしまったらしく「ふん」と言って、新聞を読み始めた。
「ギルマスだってねぇ、それなりに大変だし、悩みもあるんだから!ねー、あきしゃん!」
あたしは慌ててあきしゃんに助けを求めた。
「ん?まぁ、そうだなぁ」
「例えばどんな悩みある??」
「みんながオレの事を変態呼ばわりする事かなぁ」
真顔で答えるあきさん。
「そ、それはしょうがないんじゃ・・・」
だって、普段の会話を聞いてたらとてもじゃないけど・・・。
「あとは、そうだな。めんどくさいな!」
その場にいた全員がイスからずり落ちた。
それを見てあきしゃんは得意げに笑う。
「でもそれがGRDだからね」
にあがにっこり微笑んで言った。
「あきさんはギルマスとしての器があるしね」
にあの台詞に頷きながらGさんも言った。
「さてと・・・」
さりーが読んでいた新聞をテーブルに置いて立ちあがった。
「あきさん、オレ行くけどどうする?」
どうやら日課の狩りに行くようだ。
「行く行く」
「Gさんとにあは?」
「もちろん一緒に行くよ」
ありゃりゃ、みんな行っちゃうのか。
「えなちゃんはどうする?」
にあがあたしに気を使って声をかけてくれたが、あたしは丁重にお断りした。
はっきり言って、あたしの戦闘スキルは恐ろしいほど低い。
冒険者になって一年も経つのに、その腕はあがらない。
まったりするのが性に合っているせいもあるんだけど。
「あたしはいいや。足ひっぱるだけだし」
「そっか」
みんなは狩りの為に漆黒のアーマーを装備した。
やっぱり、はたから見るとものすごくかっこいい集団だ。
「んじゃ、行ってくるわ。えなごろは気ぃ済んだらちゃんと帰れよ」
そう言ってみんなはGHを出た。
「いってらっしゃ〜い」
GHにポツンと残されたあたし。
さて、これからどうしようかなぁ・・・。
と、その時。
あたしの持っているコミュニケーションクリスタル(遠くにいる相手と連絡を取るアイテム)に連絡が入った。
「えなーーー!ノブがブリの裁縫屋で布買いすぎて動けなくなってるっていうから
一緒に笑いにいこうぜ!」
と、それはうちの可愛くて憎たらしいギルメンのホツマだった。
あたしは軽くため息をついて答えた。
「わかった、今行く〜」
「早くこいよ!絶対笑えるって!」
ホツマはそう言って通信を切った。
「やれやれ。やっぱうちのギルドって騒がしいなぁ」
そう言いながらも、自分の顔がにやけてるのがわかる。
「Kal Ort Por」
リコールの魔法を使って、あたしもGRDのGHを後にした。

ブリテンの裁縫屋に行くと、すでに到着していたホツマと布に押しつぶされている、ギルド最年少のノブがいた。
「なにやってんのぉ?」
その光景を見てあたしは呆れた。
「お、えな。見ろよ、ノブ。動けねーでやんの」
ホツはぎゃははとお腹を抱えて笑っている。
「ほつたん、笑うなぁ!!」
今にも泣き出しそうなノブ。
なんだかそれを見ていたらあたしもおかしくなっちゃって、笑わずにはいられなかった。
「あっはっは!はー、ノブってほんとおかしいね」
「うぅ・・・」
ちょっと涙目のノブ。
「ほら、布持ってあげるから」
あたしは裁縫屋の床に散らばった布を持てるだけ持った。
ホツもヒーヒー笑いながら、用意したパックラマに布を積んだ。
「ありがとう、やっと裁縫のスキル上げができるよ」
ほっとした表情のノブ。
「じゃ、がんばってね!」
「がんばれよ!」
あたしとホツは布を運び終え、GHに戻った。

お茶を入れて、雑談でも・・・と思ったとき。
クリスタルに連絡が入った。
「ほつたああああああん!裁縫ツールなくなったああああああ!!」
またしてもノブだった。
「またかよ!しゃーねぇなあ!」
「ノブって天然だねぇ」
「えなほどじゃねーけどな」
ホツはいたずらっぽくあたしを見て笑った。
「なにぃ?!」
あたしはホツを打とうとしたけど、ホツはそれをヒョイっとかわした。
「おら、えな早く行くぞ!」
そう言ってホツはゲートを出して、さっさと先に行ってしまった。
「まってよぉ〜!!」
あたしも慌ててホツの後を追った。
なんだかんだ言っても、やっぱりあたしはEFCが好きなんだな〜って思っちゃったり。昼間の苛立ちもどこへやら。
あたしって単純・・・。


続くかも続かないかもw