diary
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2月16日 (水)  老欅荘

社会学者の平井太郎さんに、ある仕事の依頼をいただき、小田原へ。

だが、しかし僕の今回一番楽しみにしていたのは、松永安左エ門の晩年の住まい、老欅荘(ロウキョソウ)の訪問であった(写真左)。松永安左エ門に興味を持ったのは、まずは昭和の傑物としての茶人としてであり、10年ほど前に国立博物館での大規模な展覧会を観てからであった。

昨年、メタボリズムの研究会で、その後の日本の開発に決定的な影響を及ぼした、50年代に組織された産業計画会議の中心人物として、八束はじめさんから松永の名前が挙がった。松永は「電力の鬼」と言われ、「広告の鬼」と呼ばれた電通の当時の社長吉田秀雄とともに、彼らと当時の都市計画、国土計画との関連がその日の議論であった。(電通の吉田社長は、丹下健三の電通本社ビル計画のクライアントでもある。)

というわけで、国の行方を差配する財界人と、昭和最後の大茶人が、同一人物であるだけでも興味深く、その終の棲家が残っており、そして今日見ることができた。戦前の個性的な茶道具の好みからすれば、不思議なほどすっきりとした茶席。改修でどこまで手が加えられてしまったか不明であるし、晩年は野々村仁清などきれいなものを好んでいたから、かもしれないが。

今日は、肝心の仕事を超えて、こうしたことに大変詳しい平井さんに頼って、いろいろ案内いただいた。写真中は、旧黒田長成侯爵邸「清閑亭」。右は小田原文学館。今日まわれなかったものにも、現在割烹旅館となっている大倉喜八郎の別荘や、山縣有朋の別邸の庭園などが残っており、小田原はなかなかすごいことが分かった。山縣有朋の別邸そのものはすでに取り追わされているが、そこに建てられている保険会社の研修所は、国立能楽堂を設計した大江宏の手によるものです。

また、小田原には行かねばならない。こうしたものが、皆歩いてまわれる範囲に固まっている。

(イマム)

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2月15日 (火)  ヴェニス応募案作品集

芝浦工大に八束さんを訪ねる。メタボリ展のことなど。

ヴェニスビエンナーレの、日本館と台湾館の、代表選抜コンペの応募案の記録集(五十嵐太郎さんが台湾の方とまとめたもの)をいただく。八束チームとして参加して、惜しくも2等となった案が掲載されている。すでに懐かしい。

秋のモスクワ建築大学とのワークショップに参加していた学生のお父さんの建築作品集もいただく。モスクワでは、代々建築家ということが珍しくない。なかなか立派な作品集で、現代建築として、普通に欧米のものとそん色のないレベルのものを手掛けている。

その後、金子君とある企画の打合せ。誰も手掛けていない領域なので、ぜひ実現させようということで。

(イマム)


2月12日 (土)  東京理科大卒計講評会

東京理科大の卒業設計講評会。すでに選抜された11名の発表を聴いたが、講評する側は専任、非常勤合わせて何と26名。そのうち半数以上は建築雑誌の常連という豪華な顔触れ。小嶋一浩さんが春からYGSAに移られるため今年は最後ということもあったためであろう。

通常こういう場では、僕はさぼらない方だが(実際先日の工学院大学の卒業設計設計講評会では一番話していたと思う)、今日はさすがにほとんど発言の機会もまわってこないし、のんびりと成り行きを見守っていた感じであった。

それでも、図抜けて構想力も密度もあると最初から評を入れ続けていた藤代健介君の案が最優秀賞となった。例年のことは知らないが、今回はかなりもめた経緯があり、確かに彼の案にはいくつも大きな欠点があることは確かだが、大学生でこの規模のスケールの都市計画を完璧に出来ていたらそれこそおかしい(というか、それができたらそれだけで時代の寵児になれる。)扱おうとしている対象、試みている手法、その挑戦意欲と作業量からすれば、彼の一等は当然だと思う。

ちなみに、当日本人から言われて気づいたのだが、藤代君は数カ月末に審査を行った東芝エレベーターコンテストでも、最優秀賞をとっていた。つまり彼は僕が審査に関わったもので、数カ月の間に2回も最優秀賞をとったことになる。おめでとう。

写真は、左端の欠けている青の服が藤代君で、順に、藤村龍至さん、藤原徹平さん、川向正人さん、藤本壮介さん、小嶋一浩さん。

(イマム)

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2月11日 (金)  Diversified Solutions

a+u の今月号は、Diversified Solutions - A New Beggining in Architecture という、編集部の気合の感じられる特集となっている。21世紀は都市の時代とすでにうんざりするほど繰り返して言われ、でも日本ではそれについてどう話していいのか全く見えない状況が続く中で、世界の各地でこの問題が今いかにアクティブに議論されているかが紹介されていて、きわめて刺激的。

取り上げられているメンバーと話題が充実している。サスキア・サッセン、リッキー・バーデット、ビルバオ市長、クリチバ前市長などなど。また、昨年 Ecological Urbanism をハーバードGSDでまとめた、モーセン・モスタファヴィのインタビューも掲載されており、読みたかったと言えるものがたくさん盛り込まれている。

いくつかのインタヴューは、短いためもあって、概略的な紹介にとどまっており、十分議論に踏み込んでいないのが残念ではある。とはいうものの、このページ数でこれだけ情報が詰まっていれば、それは贅沢な要望か。とはいうものの、ぼくの限られた情報からしても、ここから漏れている重要な話題はあるし、編集部としていても、今回は泣く泣く見送ったものもあるだろう。つまり、世界中でこの領域では非常に活発に議論が行われており、その一部なりともいま日本で紹介されたことの意義は大きい。

中でも、冒頭のサッセンの論考は、3ページと短いながらも、サッセンのグローバル・シティに関する最新の関心をコンパクトに述べており興味深い。建築に直接関わる話しとしては、グローバル・シティにおいて「今日では、建物はインフラストラクチャーであって、それ以上でも以下でもない」という指摘だろう。20世紀の建築を呪縛した均質空間論とはパラレルの議論とも言えるが、議論の位相は異なる点に注意してこの問題を考えるべきであろう。

通常は、建築作品の紹介を主に行っているa+uがこのような特集を組みことは、ある種の英断であろう、今後も一年に一回とか、定期的に続けて欲しいものだ。

(イマム)

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2月10日 (木)  船田玉樹

アートフロント・ギャラリーにて、「船田玉樹 現代日本画の精髄」展を見る。北川フラムさんが、強い思いを込めた紹介文を書かれており、それで興味を持って出かけた。10点程度の展示かと思って行ったところ、3つの会場を使いおそらく30を超す作品が展示されていたと思う。未見であった、この画家の作品をまとめてみることができた。

日本画といっても、わかりやすく強いといったいわゆる日本画らしい構図ではなく、画面全体を埋め尽くす桜や枝が、微妙な濃淡を生み出している。

この船田玉樹さんは、今国立近代美術館で開催中の、とても評価の高い展覧会「日本画の前衛展 1938-1949」でも何点か出品され、カタログの表紙ともなっている。「日本画の前衛展」は今週末までで、その他にも見てみたい作品がいくつも出いるが、出かける時間はなさそう。

この船田玉樹の展覧会も、本日からはじまりわずか一週間の会期です。

「船田玉樹 現代日本画の精髄」展 http://artfrontgallery.com/exhibition/archive/2011_02/579.html
「日本画の前衛展 http://www.momat.go.jp/Honkan/Avantgarde_of_Nihonga/index.html#advice

(イマム)


2月9日 (水)  広島、北九州イベントほか

今月の19日〜20日、および25日〜26日に、広島と北九州で、下記の建築ツアーおよびイベントが開催されます。
みなさん良かったらお越し下さい。

http://architectural-radio.net/archives/110118-4601.html

http://architectural-radio.net/archives/110114-4594.html

また、国士舘大学南研究室の、2007年から2011年の研究活動記録をまとめた本である「presents#1」が、南洋堂書店およびジュンク堂書店にて発売中です。下記。

http://www.nanyodo.co.jp/php/detail_n.php?book_id=N0080481

http://www.xknowledge.co.jp/book/detail/N0080481

(みなみ)


2月7日 (月)  展覧会3日目

昨日に引き続き、他の方の出品作。左の写真は、皆川明さんの作品です。

3日間でだいたい500名ほどの方が来廊されたでしょうか。ありがとうございます。(山本君も来てくれてありがとう。)その、半分以上は、明らかに皆川ファンと分かるたたずまい。さすがは皆川さん人気です。

本日最終日の最後の方に時間帯に、なんと鈴木恂先生が来てくださいました。お願いをして、一緒に記念撮影。

(イマム)

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2月6日 (日)  展覧会二日目

他の方々の作品です。左から作者は、西森陸雄さん、橋本夕紀夫さん、松下計さんです。

(イマム)

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2月5日 (土)  music model

foro08企画の「音のかたち」展初日です。写真は僕の作品。以下長くて恐縮ですが、会場で配布した作品解説です。

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 建築に図面があるように、音楽には楽譜があります。それぞれ、実際の建物、音楽を紙の上に書き写したもので、それら図面や楽譜をもとに、建設や演奏が行われるわけです。図面や楽譜には、その記述法のルールがあり(音楽では特に記譜法といいます)、それに従って書かれることで、専門的知識がある誰が読んでも、同じような建物、演奏を想像し実現することが可能です。ただ、そこには一定の共通の規範はありますが、現場での職人の技量や演奏家の感情などによって、その時ごとに違った形で実現されることとなります。
 こうした図面や音符は、専門外の人からすれば、その意味するところを理解することは困難です。一方、一流の建築家や演奏家であれば、図面や音符から、実際の空間や演奏をとてもリアルに頭の中に思い描くことができます。
 今回は、このような建築/図面、音楽/楽譜のもつ、類似性に関心を持ってこのプロジェクトを始めました。実際、建築と音楽を関係づける試みは、これまでにとてもたくさん行われています。西洋には、「建築とは凍れる音楽である」といういい方があるように、その多くは比喩的なものが多いのですが、ローマ期やルネサンス期などには、比例の概念を用いて、建築と音楽の関係を実証的に検証する試みもなされています。
 そうしたことから、ある音楽を選び、その楽譜を建築の模型のようにして表現することはできないかと考えました。楽譜から演奏を想像するように、その模型から音楽を想像し、またその音の連なりが都市のように見えたら面白いのではないか。
 実際に音楽を探す段となると、かなり構築性のある音楽が相応しいことが分かってきました。ある規則性がその表現から読み取れないと、それは全くのでたらめなパターンにしか見えません。今回は、模型から、音楽的感覚を読み取れなければいけない。そうした中で、最終的に選んだ曲は、

 ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
「平均律クラヴィーア曲集 第一巻 第一番 ハ長調 BWV846 前奏曲」(1722年)

です。この曲は先に書いたように今回のプロジェクトの意図に沿うものとして選んだのですが、実際のところさまざまな賞賛を得ている名品です。

「ピアニストにとって、平均律クラヴィィーア曲集の前奏曲とフーガは旧約聖書、ベートーヴェンのソナタは新約聖書である。」 ハンス・フォン・ビューロー

「平均律クラヴィーア曲集は、楽しみを与えるのではなく、宗教的な感化を与える。喜び、悲しみ、涙、嘆き、笑い。全てが聞く者に向かって響き寄せてくる。」 シュバイツアー

 また、五十嵐太郎+菅野裕子著『建築と音楽』という、まさに今回の私の興味に沿った本があるのですが、その中にも、

 「H・アーベストは、平均律クラヴィーア曲集に「圧倒的な建築的構造」を見出した。彼の場合、その数学的な確実さと統一性ゆえに、建築芸術の傑作と比すべきものとしている。」という記述があります。

今回製作した music modelでは、バッハのこの前奏曲に出てくる、全ての音519を、その長さと高低にしたがって、時間に沿って配置しました。バッハ自身がこの楽譜の巻頭に、「平均律、クラヴィーア曲集、すなわちすべての前音と半音の超、もしくはド、レ、ミによる長3度とレ、ミ、ファによる短3度によるプレリュード(前奏曲)とフーガ。」と書き込んだように、この前奏曲では、あるシンプルな音の組合せが様々なヴァリエーションで展開されます。それを、模型から読み取っていただければ幸いです。

また、今回会場で聴いていただく演奏は、グレン・グールドによって1962年に録音されたものですが、グールドによる輪郭の際立った演奏は、今回の建築/音楽の構成力を感じていただくのに、相応しいものではないかと思います。

(イマム)

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2月3日 (木)  10000 world architects exhibition

フェイスブックを見ていると、ツイッターとリンクさせて、毎日頻繁に書きこんでいる人が何人かいる。僕は、ツイッターをやっていないので、なるほど、こういうことかとわかるが、やはり僕の好みではないな。まだ許容範囲だけれども、これ以上書きこみが増えてきたらコントロールが必要だ。

わざわざ情報を探しに行かなくても、どんどん送られてくるのは便利のようだが、やはり内容と程度による。いずれにせよ、自分でその環境に合わせて、うまくコントロールするしかないのだろう。

ほとんど全てのつぶやきは、たわいもないものだが(失礼!)、時々興味深いものが混じっている。ジョージ国広さんが、UIA東京大会に合わせた企画、10000 world architects exhibitionについて書かれていた。これは、世界中の1万人の建築家の展覧会をウエブ上で行おうという企画で、誰でも無料で参加できます(もちろん建築家であればだが。)僕も、早速自身の情報を掲載しました。まさに世界中の建築家の作品が並んでいるのは、壮観です。

10000 world architects exhibition http://www.10000architects.com/

さて、1万人に達して登録が締め切られるのは、いつでしょうか。

(イマム)


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