ホームゴッホの考えた「三幅対」とは?消費の道しるべ

『消費の道しるべ』に掲載


 
 私の投稿した文章が、消費科学連合会が発行する『消費の道しるべ』の10月号である、第470号(2003年10月25日)に掲載されました。



 
 内容文章は、下記です。

「三幅対」て本当?

尾道市 前谷 悟   

「ともちゃん、この女の人の、右と左の絵、同じものだと思う?」子供は、首を横に振りました。「そうだ、やっぱり、同じはずはない。」私の疑問は確信に変わりました。九歳の娘でも判ることを曲げた形で今展示されています。

 それは、損保ジャパン東郷青児美術館の「ゴッホと花」展のことです。パンフレットには、『ゴッホが夢見た「三幅対」日本で実現。』と書いてあります。「三幅対」というのは、三枚の絵からなる祭壇画のことです。ゴッホは、生前にこの「三幅対」を実現しています。それは、弟テオに宛てた手紙の中にこう記載されているから明らかです「月曜日にルーランにあった。・・・・ルーランがやって来た時、ぼく(ゴッホ)はちょうど向日葵の絵のコピーを描き終えたところだった。そこで、この四点の花束の絵の間に二点の《ラベルスーズ》をおいて、彼(ルーラン)に見せた」(ゴッホ書簡五百七十五)。

 よって、夢見た「三幅対」というのは、虚偽です。

《ラベルスーズ》とは、子供を揺すって寝かせる女性の意で、モデルは、友人ルーランの奥さんです。実は、ゴッホは生前に5枚の《ラベルスーズ》を描いています。さらに、黄色い壷にヒマワリを生けた絵は、書簡に登場するだけで四点あります。そのうち、二点は背景が青緑のものでヒマワリは十二本描かれてます。残り二点は背景が黄色で、十四本ヒマワリが描かれています。実は、損保ジャパン東郷青児美術館のヒマワリの絵は、書簡の中には登場しません

また、《ラベルスーズ》を中央に、左右に異なるひまわりの絵を配置するのが、ゴッホの考えた「三幅対」です。このことは、前に述べました書簡五百九十二に、スケッチが描かれているので確かです。このことは、同美術館のゴッホ「ひまわり」解説図録にも掲載されてました。

今回展示されている「三幅対」は、真ん中にシカゴ美術館の《ラベルスーズ》の絵が飾られていて、左右に背景が黄色で壷に十四本のヒマワリが生けられた絵が二枚飾られています。明らかに同じ構図の絵で、《ラベルスーズ》の絵の向かって左側に損保ジャパン東郷青児美術館のものが、右側にアムステルダムのゴッホ美術館のものが展示されています。

 つまり、ゴッホが考えた「三幅対」ではないと思います。

さらに、展覧会には、8分からなるビデオも上映されていますが、ビデオの終りかけに、「三幅対」について説明があった後に、前述のスケッチが出てきて、《ラベルスーズ》の左右ヒマワリの絵の部分が、今回展示されているヒマワリに置き換わる画面があります。つまり、この黄色の背景のヒマワリの絵が来るのが まさに正しい、と暗示していますが、これも当然違う可能性があります。

これらのことは、パンフレットが配付された時に、私は気づき、「ゴッホと花」展が開催される二十日程前から、美術館に連絡してしかるべき訂正や説明をするべきと、訴えて来ました。美術館の関係者の方も大筋では、そのことを認めていらっしゃられました。しかし、現実に九月二十八日に観にいった限りでは、そのことは全く反映されていませんでした。

このままでは、間違ったものを正しいとして認識されてしまうのではと思い投稿しました。




消費科学連合会は、消費者に役立つ情報を提供されているみたいです。ホームページもあります(⇒消費科学連合会ホームページ)。今回取上げて頂き有難うございました。

55・フィンセント