身体を離したあと、困惑顔の和谷の頭を撫でてやった。こんなに何度も彼の髪に触れたのは初めてではないだろうか。
そう思うと、伊角はそれなりに満足な気持ちになった。
「中に出すんだもんなあ……」
思わずぽつりともらすと、いけなかったの?と和谷が不安そうにする。
「うん……いや、でも、平気かな。多分」
「オレ、わかんなくて……駄目なのか?どうして?」
「平気だよ」
「ねえ、どうして?」
何度か聞いたが伊角は笑って教えてくれなかった。大丈夫だよ、妊娠したりはしないから、と変な冗談を言っていた。
伊角に擦り寄ると、抱きしめてくれた。
「ごめんな、伊角さん」
「どうした?」
「ごめん、なんか……」
「ハヤくてごめんって?」
思いきった軽口を叩く伊角に、和谷は「何だよ、もう!」と腹をたてた。それから二人で笑った。笑えて、良かった。
腕の中の和谷のたどたどしい輪郭。身体の底にはまだ甘く、置き火が忍んでいたけれど、その感覚を身の内で弄ぶのは必ずしも苦では無かった。


いつもは、一緒に居られない。
けれど、あなたが居るということが、全ての望みを生みだす根拠にすりかわる。

その意味で、全ての望みはあなたに寄り添う。ぴったりと、あなたの腕に収まる。
あなたが居るから、全ての欲望は甘いのだ。



「ねえ、伊角さん」
「何?」

決断の季節はまだ少し先にある。

「伊角さん……また……」

何も、変わらない。不安定な時間が決断しない怠慢を許してしまう。

「また、一緒にクリスマスの飾り、見に行こうぜ」

それでも、全ての願いはあなたに寄り添う。

「ああ、正月くらいまでやってるんじゃない?」
「え?でもサンタの飾りもあったじゃん」
「あれは外しちゃうかなあ。じゃあ、クリスマスが終わる前にまた行かないと」

身動ぎしたはずみで後ろから生暖かいものが流れる感覚があった。シーツを汚さないかとひやりとした。
眉を顰めた伊角に和谷が
「どうしたの?」
と聞く。
伊角は答えてくれなかったので先刻のように何度か訊ねたら、困った顔をされてしまった。
でもキスはしてくれた。
そのうち、眠たくなってしまった。
着衣は、明日で良い。体温で暖かいから。






あなたは世界の全てではないのに。







<end>

.....→戻る



うわー!自分で書いといてこんなことゆうのもなんですが、大失敗です!今回は間違い無く失敗しました。時間を見て、いつかリベンジしますわ!うひ〜!まずい!これはマズイ!!