air plant





この頃マリモとセックスすんのが、すっかり習慣になった。
いや、ホントのマリモじゃねえ。ホントのマリモとセックスしたら獣姦だ。
いや、マリモは植物だから獣は違うか?
でもマリモは魔獣だから、まァ、獣みたいなもんだ。
何言ってるか分かんなくなってきた。
とにかくアレだ、そんなわけで、今も突然ラウンジに押しかけてきたマリモに襲われてるわけだ。マリモに襲われてるって……なんか凶悪な字面だなぁ……怪獣みたいだ、そう言うと。

とりとめの無いことを考えながら、オレは唇を吸ってきた怪獣マリモンに応えて、少し舌を差し出した。口ん中で、それが擽られる。はっきり言って、凄ェ、イイ。
ちゅってツラに似合わねェ可愛い音出して口角に唇をくっつけると、今度はぐいぐい頬を押し付けてくる。そうしながら、耳元で奴がハァハァ変態くせェ呼吸してんのが聞こえてくる。
シャツの前だけはだけられて、乳首とか執拗に弄られる。
そうなるともう駄目だ。
情けないくらい高ェ声が出ちまう。
「おい、声」
クソマリモにまで指摘される始末だが、駄目だ。こればっかりは駄目だ、我慢出来ねェ。
「先、イくか?」
立ったまま、背中を壁に預けた姿勢で膝を震わせ始めたオレを、マリモの腕が押さえつけ、しゃがみこまないように支える。
「ん……んん……ウん……」
どうにか頷くと、マリモは空いたほうの手でオレのズボンのジッパーを下げる。
じじ、じじって音がする。
もう駄目だ。それだけで
「あッあッ」
って情けない声が出る。
ベルトも外された。ボタンも。
「触んぞ」
「ん……うん……」
下着が腿の途中まで下ろされて、自分からも、すっかり勃起して、しかも濡れてる、凄ェ状態のチンコが見えた。うわぁ、情けねえ、今にもイきそうだ、オレ。いくらなんでも早ェ。
頑張って我慢する。
「…………ッ」
ゾロの手がソコを掴むのと、もう片ッポの手がオレの口を塞ぐのとは同時だった。
苦しい。
オレは頭を左右に振って嫌だッつーのをアピールするんだけど、しっかり押さえつけられて、どうにもならない。
ぐいぐいとそこを殆ど引っ張るみたいに扱いてた手が、今度は先端のとこを弄ってくる。ソコ、駄目だ。何か鼻から、犬がクンクン鳴くときみてえな変な声が漏れてくる。クソ、苦しいよ、なんとかならねえか、放せってば、放せ。
「鼻も塞ぐぞ、てめえ」
「…………ッ!……ッ!……ッ!」
このクソ野郎とか、そういうふうな文句を言ったつもりだったが、がっちり口塞がれてて声にならなかった。
ただクンクンと犬の鳴くみてえな声が出る。
クソ剣士、死ね、アホ。
ジタバタして奴の顎とか緑の髪とか引っ掴んで、引っ張ったり押したり引っ掻いたりしてやった。
「この……ッ」
口を塞ぐ手は、一瞬ぐいっと強くなって、あ、息出来ねえ、やべえって思ったそのとき、ゴシゴシ強くこすられて、イッた。
全身痺れるみてえな気持ち良さだった。
てか酸欠で実際痺れてた。
勢い良く飛んだ精液が床に落ちて、ばたばたって音がして、ようやく口塞いでた手が放される。
「ぷはっ……はー……はー……て、め、死んだらどうするっ?!」
「ヨすぎてか?手コキだけだぞ」
「アホか!窒息死だ、窒息死」
てめえがぴいぴい煩せえのが悪い、とクソマリモは面倒臭そうに言う。
そりゃ、そうかも知れないけどよ。
でももうちょっと優しさとかねえのか、優しさとか。

無いか。

そうだよな、もともとそういう関係じゃねえもんな。
けど抱かれるときってのは、どうしたって相手に優しくして欲しいような気分になるもんなんだよ。別にオレは女の子じゃないけどさ、けどさ、ちょっとくらい、こう、大事そうにしてくれたっていいじゃねえか。何もあんなぐいぐい口塞がなくったって。
そんな煩せえかよ。どうせルフィに知られたくねえんだろ。
不満だ。
すげえ不満だ。
でもとりあえず続きはしたいので、文句は後で言うことにした。
そしたら言うのすっかり忘れた。
アイツの絶対でけえよ。ケツが裂ける、ケツが。

最初の頃はヤるだけヤると、さっさとどっかへ消えてたマリモが、最近はオレが落ち着いて服着るまで傍に居たりするようになった。
まあ、それも優しさかも知れない。
両足を投げ出して床に座って、胸ポケットから煙草の箱を取り出して火をつける。
ケムリを吸い込むと普段のペースに戻れる感じがする。
「オマエ、先にズボンはけよ」
「ああ?じゃ、何か拭くモン取ってくれよ、このままじゃ気持ちわりいんだよ、クソ剣士」
もぁーってケムリを吐いた。
ケムリでドーナツのワッかとか作ってみた。
ゾロは無言で自分の黒てぬぐいを差し出してきた。
「アホ、余計汚れるわ!」
そんないつ洗ったか分かんねえもんで、オレの股が拭けるか。
でもなんかちょっと微妙に嬉しかった。
やっぱ何度もこういうことすると、情が移るもんだよなあ。気心が知れあうってゆうかさ。
ひょっとしてそろそろオレのこと割と好きなんじゃねえの、とか。
ま、どっちにせよ特別な仲だ。オトナのな、オトナの。

ラウンジのドアが開いて、ルフィが飛び込んで来た。
オレはもうきちんと服を着て、お疲れのナミさんに午後のお茶を出して差し上げてるところだった。
「おう、ナミ……!」
ナミさんに何か用事でもあったのか。
オレンジ色の髪が視界に入った途端そっちへ向けて突進するルフィは、外と船内の明暗の差のせいもあって、入り口付近にボケっと突っ立ってたゾロに気づかなかった。
「おあッ!」
「んぶッ!」
ガチッて盛大な音がして、明らかに口と口がぶつかった。
「ってえ!歯ァ折れるだろうがッ」
「お、悪ィ」
がなる剣士に片手を上げて謝ると、船長は船長らしく、「おいナミ、島が見えてきた」と航海士に告げる。
「どっちの方角?」
「船の右」
「あー……それは別の島ね。寄り道しないで、ログポースの指してる方角に進みましょう、多分もうすぐ着くわ」
「分かった」
何でもないふうに、ルフィはまたラウンジから出てった。
でもその顔は、誰が見ても分かるくらいに真っ赤になっていたのだった。
や……やだなー。
今の、ガチッって口がぶつかっただけだぜ?
ふふふって、ナミさんが笑った。
「さて、私もそろそろお仕事に戻らないとなあ」
サンジ君、お茶ありがとって言って伸びをするナミさんは、相変わらず綺麗だ。
剣士は憮然としてラウンジの外を眺めてる。
あんなの、キスにもならねえだろ。
何でこんな微妙な空気になるんだよ。
「アハハ……初めてだったりしてなあ、あの船長は」
いたたまれなくて、そんな軽口を叩いたら、ナミさんがちらってこっちを見た。微妙な笑顔だった。人の悪そうなというか……
「あらぁ、じゃ、ゾロ、責任とらなきゃあね」
ゾロは、肩を竦めただけだった。
「下らねえ」
って言ってラウンジから出て行こうとした。
なんだよ、ひょっとして、ルフィのフォローに行くんだろ。
クソ、オレにはもっとすげえのしといて、さっさと置いてけぼりに出てくくせにさ。
思わず「あんなの数に入んねえだろ!」って口走った。
「数?」
剣士は立ち止まり、ニヤッて笑いやがった。
「数なんか、数えてんのかよ、てめえ」
な、何だよ!
何だよ何だよ!
オレのほうがたくさんキスしたじゃねえか、オレのほうが先にキスしたじゃねえか。それは数に入らねえってのかよ。そうか……そうかよ……そうだよな。

そんで結局。

バタンと無情に扉は閉じて、クソ剣士は多分船長を探しに甲板に出て行った。
平常心平常心って思いながら振り返ったら、ナミさんがティーカップをシンクに入れながらオレを見て、アイター!て顔してた。
平常心もなにも、これは、むしろバレてる。
前略
振られました。
草々

あまりにも痛々しい展開に、思わず鼻水が垂れた午後だった。






end
03/08/19


前半のエロの必要性が分からない・・・(泣)
サンジさん失恋。
そんなのヤだあ!って思って次の a seed・・・を書いたんでした。ヤだあって、ほんと、アホか私。




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