ゾロが買って来てくれたシャンプーとリンスのお陰で、絡まりまくっていた髪も元に戻った。

風呂から出て、シャンプーと一緒に袋に入っていたボディローションを裏面の説明書に従って身体に薄く塗った。
でも、どうしても背中の中心部にうまく手が届かない。仕方がないので、ズボンを穿いた。

「ゾロ」
「何だよ」
なぜか反対側を向いたまま返事をしたゾロの前に回り込んで言った。
「背中、塗ってくれ。届かない」
ゾロは一瞬目を剥いたが、黙ってローションを受け取った。
「…あっち向け」
言われた通り、ゾロの目の前に座って背を向ける。
いきなりローションを背中に垂らされ、その冷たさにビクリと身体が動いた。
乱暴にゾロの手が背中を擦る。
「おい、ちゃんと薄く均一にのばさないと紫外線焼けでムラになるって、後ろの説明書に書いてあったぞ?」
振り返ると、ゾロがスゴイ顔で睨み返してきた。
目が血走っている。
「…わかったから、あっち向いてろ」
黙って元の姿勢に戻ると、ゾロの手がさっきより丁寧に背中を擦ってきた。
ゾロの手は温かいけど、皮が固くなってるところがあるのか変な感じがした。
怒った顔をしていたけど、手の動きは優しい。どうやら本気で怒っているわけではなさそうだ。

「…こんなもんでいいだろ」
ローションのボトルを肩ごしに渡された。
「サンキュ」
「おぅ」

「あ、そうだ。これ買った時のレシート貰ってきたか?」
シャツのボタンを留めながら言った。
「ああ?」
「家計簿付けるのに欲しい」
「…貰って来てない」
「…じゃあ、いくらだった?」
「忘れた」
「ふーん。まあ、いいや。ネットで調べるから」
ゾロがギョッと目を剥いた。
「何だよ?」
「あー…全部で2000ベリーくらいだった、かな」
歯切れの悪い物言いに引っかかりを感じた。
風呂に入る、とゾロが部屋から出て行ったのを確認し、ネットに接続した。
コンビニの自宅配達ページに行けば値段が分かるはずだ。
すぐに目当ての商品は見つかった。
「シャンプーが…1500ベリー、リンスが1500ベリー…ローションが2000ベリー…」
合計で5000ベリー。
他のパソコン用シャンプーより、かなり高い。

―――もしかして、おれのために奮発してくれたんだろうか?
ゾロの経済状況からして、5000ベリーの出費はかなり痛い。貯金だって殆どないのに。
胸の奥がキューっと痛くなった。

おれに半額以下の値段で言いやがって…照れてやがんだ。
畳の上にバッタリ倒れた。

嬉しい、嬉しい、嬉しい。
えへへと笑いが出た。

身体が発熱したように熱くなった。
何だかプログラムが暴走しそうだと思った。



***



「おい!!起きろ!」
頬を叩かれてる気配と、焦ったようなゾロの声がした。
「ゾロ?」
目を開けると、パジャマのズボンだけを穿いたゾロが上から覗き込んでいた。
状況が掴めず起き上がった。

「…なんだ、動けんじゃねーか」
少し呆れたようなゾロの声。

「あれ?もう風呂出たのか?」
「『もう』、じゃねーよ。いつも通りだろ?…ったく、またブッ壊れたのかと思ったぜ」
時間を確認すれば、記憶が10分位飛んでいた。
「おかしいな…」
嬉しくて畳に転がったとこまでは確かに記憶があるのに…。
チラリと振り返ると、ゾロが髪の毛を乱暴に拭いていた。

どうしてゾロは女の子じゃないんだろう。
女の子だったら、シャンプーありがとうって抱き締めて、思いきり甘えられるのに。

ゾロが玄関脇の洗濯機にタオルを投げ込んだ。
目があって、ドキリとする。

大股でゾロが戻ってきた。
「手、出せ」
差し出されたゾロの左手に、右手を載せた。
「おやすみ」
この間から復活したスリープの動作だ。

もっと話がしたいのに…と思いながら、ゾロの柔らかい唇を右手の甲に感じ目を閉じた。



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