別にオレは、ずっと、とか永遠に、とか女みたいな夢を見てるわけじゃない。
だから、あれ以来何度か好きだと言われるうちに絆されて、キスを許して、うちに出入りすることを許して、カラダも許してしまった。
ダイナマイトの箱に腰掛けて、あいつは
「すげえな、この花火」
って笑って、オレにキスをする。
あいつと一緒にいると、オレのほうがどうかしてるんじゃないかと思えてくる。この箱には花火が入ってて、マフィアとか、何だよ、そんな話、子供の遊びじゃねえの。どの高校に行こう、どの大学に行こう、どんな仕事に就こう。
まあ、結局しばらくたってオレはイタリアに戻り、それまで通り、馬鹿馬鹿しいくらいマフィアっぽい生活をしている。だからってそれを辛いと思うわけでもないし、相変わらずどいつもこいつもアホだし。ちびだったあのウゼェ牛もでっかくなりやがった。
10年もの歳月の間には、山本以外の人間ともたくさんセックスをしたけれど、山本とは今でも続いている。
最初の頃からわりとそうなんだけど、あいつは、挿入するときにオレの膝を持って、開いたり、閉じたりする。
そういうふうにされるのはイヤなのに、オレは一度もそれをあいつに伝えたことはない。何で言えないのかは自分でも分からない。ただ、閉じていた目をあけて、あいつが真剣な顔してオレの膝の向こうで溜め息吐くのを見てるだけだ。
閉じた膝の向こう側のことは、オレには見えない。
言い方は悪いが、ああいうときには、あいつにとってのオレはただの穴みたいな気がして、下らないと思う。
でも何でそんなことがこんなにイヤなのかと考えたら、多分、オレは山本に分かって欲しいんだろう。
オレが住んでる世界のことや、セックスのとき膝を掴まないで欲しいってことを、分かって欲しいから、ムカついてるんだろう。
山本が、自分のことばっか考える奴じゃないって知ってるのに、オレがヨくなるように工夫してくれてることも分かってるのに、イタリアにだって来てくれたのに。
それでもオレは、あいつは何も分かっちゃいない、といつもいつも思ってしまうのだ。
10年の歳月の間に、あいつ以外の奴ともセックスしたけど、10年もセックスしてる相手は、あいつだけだ。
10年前、制服を着て、煙草を吸って、日本の中学であいつと出会ったことには不満は無い。
10年経った今もまだ、あいつと会えることにも不満は無い。
オレには分かってる。
もしあいつが、膝を持つ手をオレの背中にまわして、本当はこっちのほうがずっといい、本当はずっとこうしたかったんだと言ってくれたら、オレは満足するだろう。
もし最初からそんなふうにしてもらったら、オレは痛くても、イけなくても、これで良かったと思えただろうし、もしかしたら、他の奴とはセックスしなかったかも知れない。
でもそんなことを考える自分自身が、相当キモいので、やっぱりオレは、山本とのことを、不本意に思う。
fine 04/10/20
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