毎日の生活 (午前)

朝起きる
朝起きる

AM 5:00

 酒蔵の朝は早く、朝5:00に目覚まし時計が鳴る。肌を突き刺すような寒さの中、服を着て外に出て麹室へ向かうと、空には無数の星が辺りを照らしている。

 布団で温まった体は瞬く間に冷えてしまうが、それに追い討ちを掛けるのが、麹室入口に置いてある消毒液入りのポリバケツ。雑菌による汚染を防ぐ為、麹室に入る前には消毒液に手を浸けなければならない。一晩寒さにさらされた消毒液の中に手を突っ込めば、目をこすっていた眠気もブレーキクリーナーの様に揮発してしまう。
麹室で「出麹」の作業
麹室で「出麹」の作業

AM 5:30

 だが、重く厚い麹室の扉を空けた瞬間、眼鏡が曇るのと同時にそこには天国が広がる。麹室の中はこの時間、麹菌の生育の為に約28℃に保温されているので、外気にさらされた体を早く温めるには丁度良い。朝一番の作業は、この麹室での「出麹」から始まる。約45時間をかけて麹菌を増殖させ完成した麹を均一に混ぜ、室の外へ出して麻布に包み保温する。を仕込む場合はその分の麹を酒母室へ運び、酒母タンクへと投入する。

 出麹が終わると、今度はもう1つの麹床で「盛り」の作業を行う。前日の朝に麹室へ入れた蒸米を、破精具合(菌糸の増殖具合)が均一になる様に全体をほぐす。その後、蒸米を先ほど出麹で空いたもう1つの床に移し、表面を平らに均して麻布,木綿布で覆い、恒温装置を35℃にセットして終了。これで、朝1番の仕事は丁度6:30頃に終わる。
蒸米を蒸す釜とこしき
蒸米を蒸す釜とこしき

AM 8:00

 7:00からの朝食を食べ終え、一服すると8:00から本格的な作業が始まる。まず、朝食を食べている間の蒸しあがった蒸米をこしきから放冷機に放り込み、ベルトコンベア上を移動する間の冷却され、同時に親方さんがもやしを振りかけて行く。もやしが種付けされ放冷された蒸米は、広げた麻布の上に堆積し、頃合の重さになると担いで麹室へと運ばれる。

初心者は餃子持ち
初心者は餃子持ち

 麹室へ蒸米を引き込むには、長方形に編まれた麻布の中心に蒸米を寄せ、布の両端を持って肩から担いで運ぶ方法が、腰を痛めず負担がかからない。だが、蒸米の入った麻布を担ぐ際、気を付けないと隙間から蒸米がポロポロと床にこぼれ落ちてしまう。

 少量とはいえ積もり積もれば、予め計算された仕込分量から外れ、結果として一定の品質の製品を造る事が出来なくなる。よって、初心者は担がずに背筋で支える「餃子持ち」を実践するのも手である。ただ、この持ち方は腰に負担が大きいのが欠点。

 麹米の引き込みが終わると、続いて酒母用,仕込用の蒸米を運ぶ。酒母用のものは麻布で酒母タンクへ、添仕込の場合も麻布で仕込タンクへ、仲,留仕込の場合はとばし(エアーシューター)によって仕込タンクへと運ばれる。仕込を行う場合は、朝出麹した麹も仕込タンクへ投入される。

仲,留仕込の櫂入れ
仲,留仕込の櫂入れ

 仲,留仕込の場合、蒸米は量が多いのでとばし(エアーシューター)によってタンク迄運ばれるのだが、量の多い蒸米をどんどんタンクへ投入すると、もろみ中に山を築いて固まってしまうので、均一にダマにならない様に櫂入れをしなければならない。これが結構重労働で、結構長い時間タンクの上に立ち、腰を使って櫂棒でかき混ぜる。初めてこの仕事をすると、絶対に腰が悲鳴をあげてしまう恐ろしい作業。
このたらいで洗い物
このたらいで洗い物
AM 8:40

 蒸米関連の作業が終わると、後は当分蒸しにつかった布や麻布を、井戸水で洗う作業が待っている。井戸水は水道水に比べれば暖かいものの、2週間近く続けていたら手にあかぎれが少し出来てしまった。こしきの底や内周の側面を覆っていた布は、とくにべたついた米粒がなかなか落ちない。最初は熱湯でもみ洗いしてから冷水ですすぐのだが、熱いか冷たいかの差が極端で中々大変である。

 布類を洗う他に、作業で使われた器具も洗浄しなければならない。これは、竹を細く裂いて束ねた「ささら」という、たわしの様な働きをする道具でこする。相変わらず米粒がびっしり付いているので、ここでも熱湯と冷水との戦いが繰り広げられる。
AM 10:00 おやつ
培養した酵母
培養した酵母
AM 10:30

 10:00から30分間の休憩を挟み、10:30からは掃除や作業の準備,雑務が中心となる。時には、大きな三角フラスコにを濾過し、蒸熱殺菌を行った培地を入れ、酵母を接種して酵母の純粋培養を行ったりもした。フラスコの底部に白く沈殿しているのが酵母であり、実際のの発酵と同様に、発酵時には泡を形成する。

 お昼近くになると蔵も大分落ち着きを取り戻し、正午に有線のサイレンが鳴るとお昼休みになって、午前中の仕事が一段落する。

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