ネコちゃんの連続対談:vs.有馬稲子
典型的な時代劇スター中村錦之助さん対現代劇スター有馬稲子さんの一騎討!同い年の青春スターが語り明す一刻千金の夢の宵。さてどんな話が出るやら?

●錦ちゃん酒豪と訊いてネコちゃん吃驚り

有馬 (困って)ウーン、今
『獅子丸一平』拝見して来たんですよ。想像してた人と、映画の上のあなたと、今初めてお逢いした実物と全然印象が違うんで混乱しちゃった―どうしよう。

錦之助 じや、止めちゃいましょう。このへんで……(笑)

有馬 イエ、イエ、そうは問屋が。お父さまの舞台は好きで、よく拝見してるんですよ。お家何人?

錦之助 兄弟十人ですよ。

有馬 ウワーッ、大変!

錦之助 父と母でしょう。兄弟十人、内弟子なんかいますから、全部で十八人かな。

有馬 あなた何番目。

錦之肋 ぼくは四男、あいだに姉さんが二人るから六番目です。兄弟が多いと大変なんですよ。小さいときなんか丸いお盆をもってくるとガシャガシャと大騒ぎ。

有馬 すき焼の時なんか大変ね。

錦之肋 婆やが一人づつついてんだけど、その婆や同志が喧嘩しちゃうんですよ。ぼくが下の方だったから兄貴のお古がまわってくるでしょう。るでしょう。セーターなんかでも、そうするとぼくについてた婆やが錦之助さんにも買ってくれなければ公平じゃない、買ってくれということになるんですね。学生服でもお下りですから、そういうことでよく婆やさん同志でもめたということがありましたよ。

有馬 ソレデ、お母さまお元気。

錦之助 少し血圧が高いんですが…ぼくらが血圧を高くしちやっただろうな。とても金光(こんこう)様を信じていましてね。ぼくは金光様の申し子だというんです。ずっと年子で生んでいましたから、お袋さんが今度生んだらあなたの命は保障できないとお医者さんにいわれたんだそうです。それでぼくは危く流されちゃうところを岡山の金光様をお詣りしたら、あなたはなんのために信心しているのだとすごく怒られて帰ってきた。だから私は生みますといって病院の先生に言ったところが、あなたの命に責任は持たないといわれて生んだのがぽくなんだそうですよ。ところがお産はいちばん軽かったそうです。それで岡山にいっぺん行きなさいというので行ったことがあるんですよ。あっちへ行ったらざあっと雨が降ってきちやってね。雨が降ってきたら「いいおしめりだ」とお袋がいっているんです。「なにがいいおしめりだ」といって怒ったことがありますよ。

有馬 今や、金光サマサマですね。ところでお酒相当召上るんですってネ。

錦之助 ええ(当然という目付き)日本酒が主です。たまに洋酒もやりますけれども。

有馬 お座敷の方がいいの、普通の。

錦之助 お座敷は嫌ですよ。バーなんかでちょっと腰かけて飲むのが好きです。

有馬 じゃ、お小遣いの目的はやはりお酒がいちばん‥‥

錦之助 やはりそうだな。こうみえてもとても神経質なんですよ。会社にいていやなことがあるでしょう。いろいろありますね。それがたまらなくなります。考えちゃって。京都にいるときなんか一人だから、それで飲んじゃうんですよ。それにお酒はすきだし、飲んでいろんなことを忘れたいし…。

有馬 ナニ酒?

錦之助 ちょっと泣きが入るんですよ。(笑)

有馬 からみは?

錦之助 それもありますよ。道を歩いているでしょう。なんだ錦之助かとかいわれても、普段は平気なんですよ。それが酒を飲んでいると、「野郎」なんていってやりますね、このあいだもちょっとやっちゃったんだけど。
スミに置けぬ錦ちゃん

 中村錦之助サンという人の映画を観て、その色気のある、ハギレのよい芝居に何かあの爆発的人気がわかるような気がした。素の御本人も仲々熱血漢で仲々ハッキリして仲々スミにおけない人である。「世の中に何が無くなったら一番困りますか」という質問に対して「酒ですね」と太い声で答えてくれた時は思わずオドロキと微笑ましさで笑ってしまった。

               有馬 稲子

有馬 喧嘩早いほうね、そんな感じだわ。

錦之助 喧嘩はぼくにマカして下さい。(笑)

有馬 ウワー、うっかりからめないじやない。(笑)

錦之助 まだ、ここんところにあざが残っているんだけど。

有馬 マア殴られたの。

錦之助 ちょっとやっちゃいましてね。バーで飲んでいたんですよ、車でバックするのに三人うしろにいてどいてくれない。わざとどかないんだな。それから下ていってなんだというわけです。

有馬 殴られちゃったの。

錦之助 コノ野郎! というので殴ったり、殴られたりしましたね。おまわりさんがきて掴まっちゃったんだけど。‥‥(笑)

有馬 京都でよく行くところはどこですか。

錦之助 花見小路のポール。のん太郎という酒やの隣り、あそこは街に出たら一回ぐらいは必ずいきますよ。ぼくはあまり女性に襲撃されたりするのは嫌いだし、そこはおじいさんとおばあさんだけでやっているんですね、とてもいい雰囲気をもっていますよ。

有馬 今度行ったらいってみよう。錦ちゃんてどこまで大人でどこまで子供かわからないわね。

錦之助 全部子供だと思っていただければ。(笑)

有馬 うまいわね、そういうところがなかなか大人ね。

●同い年のお二人


有馬 失礼だけど、おいくつ。

錦之助 昭和七年生れ。

有馬 まあそう!あたしと同じじゃないの、若く見えるわね。

錦之助 そうですか、いつも前髪だから。

有馬 何月生れ。

錦之助 ぼくは十一月。

有馬 ああ安心した。あたし四月だもの。この前ね
『海の若人』の時だったかしら、あなたと共演するという噂が飛んだ時、私あなたのこと十六、七だと思っていたもんですからね。じゃ私の方が年上だから若いツバメみたいにみえるんじゃないって冗談云ってたんですよ。そしたらそれがいつのまにか中村「錦之助なんかと共演はイヤ!」と云ったということに(アーヤヤコシイ)なったらしいけど。

錦之助 京都新聞に出てましたネ、うちに切り抜いて貼ってありますよ。(笑)

有馬 イヤダア―。そういうこと一番つらいわね、よむ人は知らないし、今迄は
『海の若人』だけでしたけど現代劇はやりたいと思わない。

錦之助 たまにはいいと思うんですが、どうもぼくはダメですね。一本しかやらないけれども。

有馬 それじゃ、ダメかどうかわからないじゃないの、一本ぐらいじゃ。

錦之助 出たい気持はあるのですけど。

有馬 とても長谷川さんに似ているといわれるでしょう。今日の
『獅子丸一平』なんか見ていてもすごく似ているのね。

錦之助 そうですか。

有馬 次に、今やっていらっしゃるお仕事と、次にやるお仕事と、あなたの近況を少し話して下さらない。

錦之助 いま
『赤穂浪士』に入っていますけれど…

有馬 いつあがっていつ封切。

錦之助 お正月です。

有馬 天然色ははじめてでしょう。

錦之助 イーストマン・カラーははじめてです。

有馬 日本の監督さんではどういう人がお好き。

錦之助 いろいろな人にやってもらいたいですね。ぼくはまだ新しいから。

有馬 今まで何本、出演本数は?

錦之助 十七本です。

有馬 十七本じゃ、あたしとほとんどおんなじね。映画にはいつ入ったんでしたかしら。

錦之助 一昨年の十二月に入って去年の一月に一本封切りになりましたから、まだ一年とちょっとでしよう。

有馬 ずいぶん短いんですね。

錦之助 去年は十本ぐらいでしたよ。今年七本か八本。

有馬 もっと沢山かと思った。

錦之助 去年はシリーズ物が多かったですから。

有馬 あたしも十七本ぐらいでしたよ。東宝にいるときには寡作だったから、かけもつことなんかなかったんですよ。こんど初めて一度に二本やったらとてもつらかった―。

錦之助 前後編のときはだいたい一緒にとっちゃうけれども、普通は一本ですね。

有馬 映画界にお入りになってから一番愉しかったのは、ナアニ。

錦之助 一番うれしいと思ったのは、東映にいきなりはいったでしょう。だれも紹介してくれないんですよ。つき当ると、『はあ今日はって』頭下げてきた。そのときに頭を作っていたら月形龍之介先生が来て、いろいろ教えてくれたんです。ものすごくうれしかった。

有馬 苦しかったことは。

錦之助 苦しかったことはあまりないですね。

有馬 
『獅子丸一平』で滝にうたれているロング、あれご自分でやったの。

錦之助 そうです。

有馬 いつごろ。

錦之助 九月二十五日ごろ。

有馬 冷たかったでしょう。

錦之助 冷たいよりは痛いですね。

有馬 あの映画みていてつらいだろうなと思ったもの。

錦之助 あそこに行(ぎょう)をしていた人がいるんですよ。あなた初めてやるんですかと聞くんで初めてだといったら、必ずおなかが痛くなりますよと言われちゃった。それからやったんだけれども、三日ぐらいおなかが痛かったですね。

有馬 何時間くらいやっていたんですか

錦之助 一日くらい。一回は暗くなっちゃって、天気が悪かったので、もう一度行ったんです。滝の水は特別に冷くて痛いですから。

有馬 フキカエは使えないんですか。

錦之助 ぼくはフキカエは嫌いでなるべく使わないんですよ。

有馬 あの場面で山を走っていくところがあるでしょう。ずいぶん足が速そうね。

錦之助 速くないですよ。

有馬 びゅんびゅん走っているのが、とても速いと思ったわ。あたくしも「泉」のときに感じたんですけれども、山道は走れないですね。あれをみたらすごく速いので驚いちやった。チャンバラの殺陣というのかしら、あれは習うんでしょう。

錦之助 とんぼなんかぼくは芝居のときにやっていましたから。

有馬 体を訓練しなくちゃいけないでしよう。

錦之助 ぼくは前はできるけれども後返りができないですよ。

有馬 後返りはフキカエ。

錦之助 ええ。

有馬 信長とか義経とかシリーズものがあるでしょう。ああいうのでやりたいというのは、どんなのがありますか。

錦之助 考えていませんね。ぜんぜん考えないことはないけれども、それを言うと‥‥

有馬 先にやられちゃうから。

錦之助 そう、そういうこともあるし。

有馬 いままであなたが義経とか信長とかやって、性格的にどういうのが、お好きですか。

錦之助 信長の性格なんか好きですね。小説を読んだときから、なにか気持がよくって。

有馬 どういうところ、豪快さ?

錦之助 ええ。

有馬 『義経』とか『獅子丸一平』でも『信長』でも、今までスチールしかみていなかったんですけど映画をみたらとても強いところ、豪快さというのかしら、よく出てますね。もっとやさしい人かと思っていたわ。錦之助さんて‥‥

錦之助 そうですか。(笑)

有馬 もし、いまネ映画じゃなく戦争が起ったとしたらどうする。

錦之助 どうしましょうね。(笑)

有馬 志願するの。

錦之助 しないでしょうね。

有馬 志願しなかったらいけないんでしょう。あれ、どうなの。

錦之助 いまは徴兵制度じゃないから希望者だけでいいんでしょう。

有馬 それを希望しないということでね。

錦之助 そうゆう訳です。(笑)

●錦ちゃんの理想の女性は

有馬 戦争の話なんて厭だから話題をかえて女の人のいちばん嫌いなところは。

錦之助 “ぶっている人”ですね、もうたまらないな。男性の場合はまだ罪が軽いんですよ。女性の場合はたまらないな。そばに行って蹴っ飛してやりたくなっちゃう。

有馬 こわいわね。

錦之助 ほんとうにイヤな気持ですよ。

有馬 じゃあ、どういう趣味なのかしら、モダンな人、日本的な人、どっちが好き。

錦之助 だいたい日本的な人が好きですね。

有馬 日本髪の似合う人。

錦之助 ウン、でもね和服が似合いすぎちゃっても、あまり好きじゃないんです。なにか和服を着ていて、ぎこちないようなそういう感じが好き。

有馬 複雑微妙なトコネ、恋人はいますか。

錦之助 いませんツ!

有馬 イヤにあっさり答えられちゃったわね。突っ込めないじゃない、好きな理想の女性のタイプは。

錦之助 そうですね・・・・・。

有馬 じゃア、理想的に年がいくつ違った方がいい。

錦之助 ぼくはむしろ年上の人が好きですね。

有馬 フーン、そうぉ、へーエーいまはそれでもいいでしょうね、そのうち考え方が違ってくるわよ。きっと。でも錦之助さんが結婚するということみんな想像もつかないと思うんだけれども…。

錦之助 それはしますよ。僕だって結婚を‥‥もっともきてがないかな。

有馬 そんなことありませんよ。きてが多すぎて困るんじゃない。あなたが結婚するなんて想像できないけど、又、錦之助さんがお父さんになるというのも想像つかないなア。

錦之助 そうですかねえ。(笑声)

有馬 もちろん好きな人が出来れば結婚したくなると思うでしようけど‥‥コレハ全く愚問でした。お子さん何人くらい欲しい。

錦之助 三人くらい、男二人かな。

有馬 子供は好き。

錦之助 大好きですよ。特に小さい子は好きだな。

有馬 あなたあまりおしゃれじゃないようね。

錦之助 おしゃれじゃありませんよ。ぼくは不精ですからね。背広を着てネクタイしているなんて何年ぶりだな。今日は有馬さんに会うというので、わざわざネクタイを買ってきたんですよ、途中で。(笑)

有馬 まあ、それはどうもありがとう。(笑)

錦之助 ほんとうなんですよ。いつもジャンパーを着て髪の毛はもじゃもじゃにしていますからね。

有馬 ファン気質みたいなものを、差障りのない程度に、お話になって下さらない。

綿之助 いま京都の小田屋という旅館にいるんですけれども、普通の場合はいいけれどもこの間、盲腸で寝ていたときがあったんですよ。ガヤガヤして出られないでしょう。うちの人に帰ってくれといってもらったんだけど、ここへ出て来い、顔を見せてくれというんですよ。

有馬 絶対安静ですからね。

錦之助 それどころじゃないですね。ぜんぜん帰ってくれなかったんですけれども、そういうのはちょっと困りますね。

有馬 このまえ病院に入院してらしたとき錦ちゃん花に埋もれていたんですってね、錦ちゃん死んだのかと思ったって云った人があったわ。

錦之助 いちおう病院に入れられて切るんだけど、ぼくの盲腸はいっぺん散らしちゃってなんともないですよ。痛くもなんともないのに切られるのだから逃げようかと思った泣ですよ。

有馬 映画で刃物のなかを潜ぐっていながら刃物が嫌いなんですね。(笑)

錦之助 病院に行ったら担当の先生が胃潰瘍かなんかを手術したあとで、手術着の白い服に生々しい血がパッと散っているんですよ。それをみたらファーときちゃった。(笑)

有馬 気はやさしくて力持ちの方ね、喧嘩に強いとかなんとか仰有ってたくせに。

錦之助 看護婦さんに抑えられちゃってね、ぼくしがみついちやったんだけど、ぼくの場合は麻酔が効かなかったらしいんですよ、痛くてね。

有馬 それはお酒を飲むからよ、絶対そうよ、だから麻酔が効かなかったんですよ。

錦之助 みんな聞えるんだ、いろんなことをいっているのが。痛みどめ十五本ぐらい打ったんですけどね。

有馬 思ったより丈夫そうね。

錦之助 太りたくってしょうがない、食べるのはすごいですよ。みんなびっくりしちゃう。昼飯は二人前、焼飯が好きで焼飯を食べておいて、それからもう一回白い御飯で、魚が好きだからフライとかなんかにして食べる。それも朝御飯食べて行って、会社に行って御飯を食べる、また昼食べる。

有馬 まあそんなに。

●ファンからタラコの贈り物

有馬 ファンのかたからなにか贈物がくるでしょう。変ったものでなにかビックリしたものありますか。

錦之助 あったんですよ。タラコが好きだと、なんかの雑誌に書いたら、それが封筒に入ってきたんです、びっくりしちゃってね。なんだかベショベショしているんで。開けてみたらタラコが入っていた。(笑)

有馬 封筒に入ってきたの、まあ‥‥それ食べた。

錦之助 食べちゃった。(笑)

有馬 一番なにが多いですか、やはりお人形。

錦之助 やっぱり日本人形ですね。この前こけしが好きだといったら、こけしばかり送ってくるし、北海道のマリモを送ってきたのがいますからね、困っちゃった。

有馬 なんに入れてきたの。

錦之助 缶に水を入れてきましたよ。北海道へ送り返しましたがね。

有馬 タラコはケッ作ね。(笑) 一番ほしいものは。

錦之助 なんだろう、やはりいつでも酒ですよ。

有馬 なアーんて云ったって似合わない、嫌いなのは。

錦之助 蛇、たいへんあれがいイヤなんですよ。

有馬 チエミちゃんと同じね。

錦之助 ロケーションなんかに行くとすごい神経ですよ、いやしないかと。(キョロキョロあたりを見まわす)ちょっとでもみたらもうダメですよ。

有馬 蛇だけ、いなくなってほしいのは。

錦之助 蛇とやもり。

有馬 あれは好きな人いないわね。

錦之助 ぼくは熱が出ちゃうんだ。あれをみたらもうカァーときちゃって総毛立っちやいます。このまえ小田屋の屋根にいたんですがね。さあ、それが自分の部屋にきそうな気がしてどうしても寝つかれない。とうとう夜中にみんな起きてくれと云って、起こして退治してもらって、それからやっと安心して寝たんですが。(笑)

有馬 ところでお休みの日は、なにをしていらっしゃるの。

錦之助 映画をみたり、芝居にいったり、そんな程度ですね。

有馬 釣りが好きとかなにかありますか。

錦之助 釣りは大好きですよ。

有馬 どこへ行くの。

錦之助 京都なんかじゃあ‥‥まあ池ですね。

有馬 あんがい気が短くないのね。

錦之助 気が短いくせに、釣だけは長いな。

有馬 映画でもお乗りになるんだから馬なんか、おやりになるでしょう。

錦之助 やります。

有馬 そういう趣味は。

錦之助 スポーツなら野球が好きだな。柔道なんかもやったんでよ。

有馬 部に入って。

錦之助 なんとなく、柔道着を持って歩きたかったんですね。

有馬 何段もらったの。

錦之助 もらわなかったけど、黒帯なんかつけちゃってね。

有馬 レスリングお好き。

錦之助 好きですよ。拳闘も好きだし、競馬も好き。

有馬 買うの。

錦之助 もちろん買いますよ。芝居にいた時分からみんな好きでよく行きましたよ、府中へ。

有馬 競輪は。

錦之助 競輪も行ったけれども、あまり柄が悪すぎますからね。

有馬 力道山さんなんかにお会いになったことあるでしょう。

錦之助 あります。

有馬 雑誌のお仕事で。

錦之助 いいえ、暇になると時々行きますよ。このあいだのボクシング金子の試合、いい試合だったな。それから、自動車をやってみたいな。

有馬 自動車はおやめなさいよ、危ないですよ。ジェームス・ディーンみたいになったら大変じゃないの。アカデミー候補になったのに、自動車競争に黙って出て、プロで一位かなんかになったでしょう。それがカアーときちゃったんですね。新しい自動車でスピードを出しちゃって死んじゃった―。「エデンの東」をみたらすばらしいですよ、死ぬような運命にあったのかとも思うわ。

●錦ちゃんは長所も短所も短気

有馬 では話題を変えまして自分の性格で好きなところとか、直さなければならないところは。

錦之助 短気は直さなければならないとおもうんだけれども。

有馬 じゃいいところは。

錦之助 いいところも短気だと思う。

有馬 私もそうですよ。とても短気なの。短気でもいいところがあると思うわよ、あっさりしているし、いつまでクシャクシャいわないもの。喧嘩早くて手が出ちゃうの。

錦之助 へえ、手を出すんですか、どうやって。

有馬 ロがまわらなくなっちゃうのよ。ピシャッとやっちゃうの。

錦之助 こわいなあ。(笑)

有馬 でも私泣き上戸じゃないわよ。

錦之助 ぼくだって泣きはたまにですよ。(笑) なぐり返されたことはある。

有馬 いま一つ橋大学に従兄弟がいるんだけど、小さいときは弱虫でよく殴られて帰ってくるの。私が飛び出していって、だれにやられた、どこ、パッと飛んでいってやってきちやう。

錦之助 男の子。

有馬 うん、男の子。

錦之助 すごいなあ、ぼくも学校のときにはずいぶんやったな、喧嘩は。

有馬 じゃね、月並みな質問だけどお好きなスターは。

錦之助 カーク・ダグラス。ダグラスの『チャンピオン』なんかすごく好きだ。

有馬 『探偵物語』は。

錦之助 そう感心しなかったけれども。

有馬 女の人は。

錦之助 べつに好きな女優さんていないな。

有馬 女の人というと逃げるのね。

錦之助 いや。(ちょっとてれる)

有馬 いま尊敬する人がいますか。

錦之助 吉右衛門の伯父さんを尊敬しましたね。

有馬 こういう人になりたいという人は。

錦之助 映画の吉右衛門みたいになりたいと思いますよ。

●お風呂場でセリフをおぼえる錦ちゃん

有馬 それじゃなにか癖はありますか。

錦之助 自分じゃ気がつかないけれども、貧乏ぶるいをするらしいんですよ、よくふっと止められることがあるんです。それからこれはたいへん迷惑らしいんだけれども、映画をみていて、ウン、ウンとうなっちゃうらしいけど自分じゃわかんないんですよ。

有馬 洋画でも。

錦之助 洋画でもそうです。

有馬 お腹が痛いのかと思われたりしてね。(笑)

錦之助 感心するんでもないんだけど‥‥。

有馬 一緒に芝居しちゃっているからじゃないの。

錦之助 そんな感じですね。

有馬 芝居でもそう。

錦之助 芝居でもそうらしいですよ。

有馬 そういうところは、なにか生れついた俳優の素質というものをもっているのじゃないかしら、すぐすっとのっていけるんでしょう。話は、また変るけど今度のあなたのお部屋って洋式。

錦之助 いまは狭くって自分の部屋はないけど、今度は日本間と洋間と一緒になっています。

有馬 あなたの設計。

錦之助 そうです。

有馬 ベッド。

錦之助 そうです。

有馬 ベッドのほうが休まるでしょうね。

錦之助 ぼくは酒を飲んだらどこでも寝ちゃうから。

有馬 たまには畳の上のほうがいいわね。

錦之助 表で寝るのもいいもんですよ、このあいだ寝たけど。(笑)

有馬 マアどこで。

錦之助 八坂神社で寝ちゃったんですよ。

有馬 神社のなかで。

錦之助 ええ、石畳の上で。

有馬 残念ね、前以て知らせて下されば行ったのに。見たかったわ。(笑)

錦之助 三人でいたんですけれど、そのまま寝ちゃった。実にいい気持ですね。なんであんなところに寝てるんだろうと歩いてる人は思うでしょう。ところが寝ているほうは、なんであいつは歩いてんだろうと思うから。(笑)

有馬 今度の家は和洋折衷、とくに気をつけたところは。

錦之助 ありますよ。きたない話だけどぼくは便所でよく考えるんですよ、いろんなことを、だから本をおくところとか、そういうことを考えちゃってさ。(笑)

有馬 あらいやだ。(笑) お風呂は長いほう。

錦之助 お風呂でもよく考える。

有馬 私もよくお風呂で考えるわ。

錦之助 お風呂に入って台詞を覚えようというので台詞がはってあるんですよ。風呂場に。いろいろ研究した結果、筆でもダメ、なんでも流れちゃう。いまマジックインクを使って書いてあるんですがね。でかい字で書いてあるんですよ。それでお風呂につかりながら覚えるんです。

有馬 それには熱いお風呂ではダメでしょう。

錦之助 絶対ダメ、だからぼくの後は入れないといってプープーいわれますよ。

有馬 私も同じね。お風呂でよくインスピレーションがわいちゃう…原稿だって、仕事のことだけって…トイレとお風呂の芸術ね。(笑)

錦之助 僕が質問しちゃ変だけど時代劇は出たくないですか。

有馬 そんなことはないんですよ。このまえ長谷川先生との話があったとき、ちょうど眼が悪くて出られなくなったんですが、それからなんとなく話がこないんですよ、私が出ないと思って。

錦之助 あまり好きじゃありませんか。

有馬 面白いものがあったらやってもいいと思うけど。

錦之助 時代劇映画とかチャンバラ映画というものに対してどうお考えですか。

有馬 変ね、逆になつちゃった。悪いけどあまり見たことなかったんですよ。

錦之助 くだらないから・・・・・

有馬 でもないけど、これから見に行きますよ。今日見て感激しちゃったから。久我さんはよくなんでも見ていますよ。

錦之助 「にんじんくらぶ」というのはいい名前ですよ。ぼくはとても感心しているんだけど。

有馬 よくそういわれます。私も自分のくらぶながらいい名前だと思っているんですが。

錦之助 ぼくはまずいからダイコンクラブでもつくろうかな。(笑) レンコンクラブじゃあまり先が見えすぎちゃっていかんというのでね、いいところをつけましたね。

有馬 なんとなくできちやったのね。結局、恵子ちゃんと久我ちゃんの案じゃないの。このまえ青果組合の組合長からにんじんをこんな大きな束にしてもらったんだけど、あれはおいしそうだったわ。京都へ一人で長いこと行っていて淋しくない。

錦之助 やっと馴れましたね、でもね、なんて云っても東京の家はいいですね、夜なんかバーでも飲み歩いて遅く家へ帰って来ると、まだ妹なんかちゃんと起きていてくれるんですよ、迎えに出てくれて玄関の戸をあけると、ポンと肩を叩いて、「錦兄ちゃん遅いわね、不良よ」なんて云われると、やっぱり肉親っていいなあってつくづく思いますね。

有馬 わかるわ。

錦之助 結局、淋しがり屋なのかも知れませんね。

有馬 ではこの辺で、長い間いろいろどうも有難う御座いました。

錦之助 いいえ、どういたしまして、是非京都へもいらして下さいよ、僕の知っている範囲で御案内しますから。

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