『ハタ迷惑な一コマ』
ボリス×ロビン←ムサシ


小説 Rai 様 


 
さてはさては、こちらは傭兵所の控え室。老若男女関係なく、腕に自信のある者どもが、いらっしゃいます。

さて、控え室の中央に置かれているテーブルに、向かい合って座っている青年が二人。一人は顔以外の頭部を青い布で覆った青年で、もう一人は、短いボサボサ髪を頭のてっぺんで縛っている青年です。両者睨み合っています。

そこだけは、周りと違って絶対零度の空気を漂わせています。そして、睨み合ってぶつかった視線は黄色い火花を放っています。その真下の部分が黒いのは元からでしょうか。

「いい加減、諦めたらどうだい? ムサシ。」
 青い布の青年が、ボサボサ髪の青年に言いました。
「そーゆーお前こそ、手を引いたらどうだ? ボリス。」
 一層冷え込んできました。バナナを放り投げたら釘が打てそうです。
「君にはユキがいるじゃないか。」
「側室として迎えれば、何の問題もない。そっちこそ、世継ぎの問題があるんじゃないのか?」
「元首制を取れば世継ぎの必要はない。それに、代々同じ血統が続いたら暴君が出るかもしれないしな。」
「つまりは、どうあっても譲らねえ気だな。」
「当然だ。」

 絶対零度よりも寒いことを何と言うのでしょうか。釘が打てるどころではありません。コナゴナになってしまいます。

 火花が黄色から白くなってしまいました。なにやら焦げ臭いです。あらら、テーブルの中心に火種が出来てきました。でも、あまりの寒さにすぐ消えてしまいますが。

 それでも両者は睨み合っています。このままではあまりの寒さに傭兵所が凍結しかねません。勇敢なるカウンターのオジさんが二人を止めるべく控え室へ入ってきました。

「おい、お前ら、やめな……」
 声をかけられたと同時に、二人が同時にオジさんを睨みつけました。途端にオジさんはフリーズしてしまいました。

 ――邪魔だ。
 目は口ほどにものを言う。先人は上手いことおっしゃいます。
 そして、二人は再び睨み合いに突入しました。
 え? オジさんはどうなったか? 油の切れたブリキ人形のごとく、カウンターへ戻っていきましたよ。……あー、ラウラさん。オジさんは死んでいませんから、合掌しなくて結構ですので。

「ただい……」
 おや、メルが入ってきました。が、場の、特に中央付近のただならぬ雰囲気を感じ取って、言葉を切ってしまいました。呆れたようにラウラの肩を叩きますと、彼女は投げ遣りな表情で頷きました。メルは疲れたようにタメ息をします。

「ただい……」
 続いてロビンが入ってましたが、メルと同じく言葉を切ってしまいました。
 そして、事を把握すべくラウラとメルの方を見ました。メルはボリスとムサシの方を見ました。ラウラも同じく、ボリス、ムサシと順に指を差して、最後に親指でクイっとロビンの方へ向けます。女性二人の動作を見て、ロビンは「あ」の口を開いて深く一回コックンと頷きました。そして、気配を殺してコッソリと抜け出しました。

「どうあっても、譲らない気だね」
 ボリスが立ち上がりました。
「泣きを見てもしらねえぞ。」
 続いて、ムサシも立ち上がりました。
 そして、二人仲良くなくピッタリと並んで出口へと歩き出しました。絶対零度よりも遥かに寒い空気も一緒に仲良く連れ出されました。

 嵐が去りました。
 しばらくして。気配が消えたのを察知したのか、ロビンがひょっこり戻ってきました。そして、ラウラとメルに盛大なタメ息をつかれたのです。


◆    ◆    ◆


「また決闘やってんのかよ。」
 毎度のことと、ロビンは気にした様子を見せない。
「ロビン。呑気なこと言わないの。後でちゃんと連れ戻してきてよね。」
 メルが杖で同僚を軽く小突いた。

「へーへー。頃合いを見計らって、ラストジャッジメントかませばいいんだろ?」
 この場合の「頃合い」とは、戦いの終盤で体力がギリギリの事を差す。ロビンに、あの二人を説得して連れ戻すなどという気は、毛頭ない。余計ややこしくなるだけなのだから。

「しっかし、アンタも隅に置けないねえ。たいそうな身分のヤツを、二人も惚れさせるなんてさ。で、どっちを取るんだい?」

 からかい半分で訊いたラウラだが、
「それなんだよなあ。ボリスもムサシも、生活が苦しくなるってことは無いだろうけどさ。ボリスは財はあっても国の再建が大変そうだし、かといってムサシは周りが礼儀にうるさそうだし。ユキなんか、もう『姑気分になれる』って喜んでいるんだぜ。」
「…………」

 女性二人は引きつってしまい、その返答に言葉が出なかった。
「金はどっちもあるだろうからな……後はどっちが気楽に暮らせるか、だ。甲乙付け難えよ。」

 生活重視。

 メルは引きつった顔のまま訊いた。
「どっちが好きだからじゃ……ないのね……。」
「そんなの、してからなりゃいいだろ。どっちも、根は悪くないだろうしな。」
 確かに、結婚は生活手段の一つ。
 確かに、世継ぎを残すべき身分が同性を娶るなどと誉められることではない。
 しかしそれでも、わかってはいるのだが、今現在一人の人物を巡って争い、後で想い人にとどめを刺されて街中を引きずられて戻ってくる彼らの運命を思うと、
「不憫……」
「報われないねえ。」
 同情せずにはいられない二人だった。


―fin―




ポポローグっぽく可愛い語りですが(笑)
ムサシとボリスの真剣なロビンの奪い合いが可笑しいです〜(^∇^)!
ロビンは大層なお家にヨメに行くのですね(笑)
ムサシはユキがネックだな〜とか思って使わなかったKなんですが(笑)
小説読ませていただいて、傭兵として雇ってみようと思いました(^∇^)///
ちなみに後半ずっと、ボリスとロビンばっかり使ってます//
/たまにメンバー入れ替えで、ロビンとボリス二人きりで冒険に出てもらったり///
やはりヨコシマな思惑が(汗)