REAL OR FAKE?
ボリス×ロビン
小説Rai様
イラスト見国かや



 往路と復路で違う姿を見せる道。一晩を待たずして天まで成長した豆の木。特定人
物を必要とする扉。

 あたかも、誰かのいじっている箱庭にいるようで。何が本物で、何が偽物なんてわ
からなくて。

 自身の存在すら疑ってしまう。





 ふと、昼寝から覚めちまってオレは目を開けた。そこで目に入るのは、青い空と白
い雲。

 そう、本物か偽物か区別がつけられないほど精巧にできたらしい。

「…………」

 この世界は、継ぎ接ぎであやふやな誰かの手によって創られた世界だと、王子さん
は言っていた。そして、親父さんを探し出すだけじゃなくて自分の国を取り戻すため
にも戦っていると。んでもって、こんなことも耳に挟んだ。このおかしいらしい世界
のせいで、かつての仲間の協力を得られなくて、オレら傭兵を頼っているってこと
を。そいつが、何が強ぇんだかわかんねえが……そんなこの世界で戦っているオレ
らって、一体何だ?

 オレは起き上がろうとした。けど、突然腕を掴まれていた。ふと横を見ると、そこ
にはまだ眠っているボリスがいる。どーやら、寝ぼけてオレの腕を掴んだみてえだ。

「ったく。」

 そしてオレも再び横になる。そのままコイツみてえに寝ちまっても良かったんだけ
ど……変に頭が冴えちまった。寝られそうにもねえや。

 んでもって、オレは栓のないことを再び考え始めた。

 箱庭でしかないこの世界。どれが本物でどれが偽物なんて区別がつかねえ。つけ方
すらわからないんだ。そんなことを考えることすらしないほど、目の前のものが当た
り前だと感じていたから。……王子さんの話を聞くまでは。

 この話を聞いてから、オレは時々物凄い怖くなる。オレは本当に実在しているの
か。

 ムサシとユキは、いつの間にか変な世界に来ていたって言って、ダイソンのオッサ
ンは、変なトコに来て生きるために仕事を探してた……だったかな。オレだけなのか
? 大して何も感じないのは。

 ……じゃあ、アイツらもコイツも単にこの箱庭の中に放り込まれただけなのか?
オレもそうなのか? もし……、もしオレがこの世界と同じで創られたものだった
ら……この世界が王子さんの言う「元に戻った」状態になっちまったら……オレはど
うなるんだ?

 不意にあたりが暗くなった。どうやら、太陽が雲に隠れちまったようだ。少しだけ
肌寒さを感じた。

 ……別に、イドに勝つ勝たないなんてオレにとっちゃ、こーいう言い方は酷いかも
しんねえけど、どーでもいいこと。オレは狩人をやめて傭兵になって食う分を稼げ
て、コイツと出会った。それだけでいいような気がする。

 けれど、傭兵やっている以上は王子さんに従うつもりだ。別に嫌いじゃねえし、結
構好きな方だ。

 けど……、もしオレがこの世界と同じで偽物だったら、オレは一体……

「ん……ロビン?」

 ボリスの目が覚めてみてえだ。

「ったく、よーやくお目覚めかよ。」

 オレは一回ボリスの青い目を見て、掴まれているオレの腕へと視線を移す。ボリス
はオレの言わずとしたことがわかったようで、その手を離す。

「すまない。寝ぼけてしまっていたようだ。」

 言って、起き上がったボリス。オレは顔をうずめるようにしてその身体に抱きつい
た。

「……ロビン?」

 ボリスは不思議そうにオレを呼んだけれど、その腕はオレの背へと回された。オレ
は顔を上げて間近にその顔を見る。

「なあ、ボリス。」

 もし、オレが偽物だったら、

「何だい?」

「キスしてくれ。」

 ……この想いも偽物なのかなあ。

「……全く。」

 でも、オレに向けられているこの笑顔も、唇の温もりも、舌の感触も、確かに本
物。

 暫くして、オレらは互いの唇を離した。

 まだ足りない。

 この不安をかき消すには。オレがここにいるって確証のためには。ボリスがオレの
隣にいるって刻み込むには。

「ボリス……」

「足りない……のか?」

 やけにボリスは確証めいた声で言った。オレはムクれてその唇に一回キスをする。

「わかってんなら早くしろ。時間もねえんだしよ。」

「君は本当にワガママだな。」

 そんな蕩けそうな顔で言っても、全然説得力ねえよ。

「でも、そこにも惚れているんだろ?」

 そのオレの言葉に、ボリスは苦く笑うとオレに再び口付けた。さっきよりも深く甘
く。





 オレは求めずにはいられない。心も身体も。

 この想いが本物だと信じたいから。感じる痛みと快楽は本物だと信じたいから。

 オレは怖い。

 この想いも存在も偽物だと突きつけられそうな日が、いつか来てしまいそうで。

 ああ、それでもオレは……

「ロビン……!」

「っ! ボリス……!」

 お前を愛している。







―end―


ポポローグの世界が受けた異変に思いを馳せるロビン///
造りモノの世界に存在するロビンの不安…
でも、小説を読ませていただいて、ふと、
ロビン達も、私達にとっては二次元の、…架空の存在なのだと…
けれど、彼等に注ぐ愛は本物で…命削るくらい愛してしまってる訳で…
その愛情が真実だから、彼等の存在もまた、真実と言えるんじゃないのかと…
そんな風に思ってみたりしました///
イラストはそんなイメージで描いてみたんですが///