『 夏だ! 海だ!! 戦闘だ!!!』
ボリス→ロビン←ムサシ
小説 Rai様
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そう。全ては、
「夏は何グループかに分けてそれぞれ長期休暇を与える。グループはクジで決めるが、期日まで
に戻れば個人行動も良し。」
傭兵所のオジさんのこの言葉と、
「ねえ! アタシ、海行きたい!!」
ミルトのこの言葉から始まりました。
◆ ◆ ◆
夏です。海です。砂浜です。
おかしな世界に飛ばされてからは他国間との行商が殆ど絶えてしまったにもかかわらず、活気
のある港町トンクウ。元来この町は輸出中心ためでしょうか、却って町の中ではお金回りや物回
りが良いそうです。ああ、これは違うお話ですね。
さて、白い砂浜にはシーズン到来のせいか、たくさんの人が来ていました。サーフボードを
持ってあからさまなナンパしている人、ラムネを抱えて売りまわっている人、オイルを塗っての
んびり日焼けしている人など様々です。どーやら、この町の現状にあまり興味が無いようです
ね、皆様。
と、白い砂浜に双子らしき少年少女が踊り出ました。少年は、淡い緑色の蝶のような羽根に黒
い水泳パンツをはき、少女は薄紅の蝶のような羽根にフリルのついた赤い水着を着ています。
「ねー、クルト! 向こうの潮溜まりに行ってみよーよ!! お魚とかいっぱいいるって!!」
「うん、行く行く!! ねえ、真珠ってあるかなあ? 探してみようよ! あったらミルトにあげ
る!」
「本当に!? ありがとう、クルト!」
「早く行こう! 誰かに取られちゃうかもしれないし!」
微笑ましい双子の会話です。
そして、双子は保護者的存在である青年の方に顔を向けて手を振ると、遠くの方へと二人仲良
く砂浜を走っていきました。
「迷子になるなよー!」
保護者的存在の青年、ロビンは双子にそう言いました。どうやら、彼も結構楽しみにしていた
ようで、その格好にはかなり気合いが入っています。頭には金色のサ―クレットの代わりにゴー
グルで、口元にはシュノーケル、髪と同じ若葉色のトランクスタイプの水泳パンツに、その左手
には弓の代わりに若葉色の浮き輪。
そして、ロビンは浮き輪を付けますと「ひゃっほーーー!!」と叫びながら海へ走っていきま
した。
一体、何歳のすることでしょうか。まあ、本人が気持ち良さそうに海面を漂っているので良し
としますか。
……あら。白い砂浜で一人感涙に咽んでいる青年がいます。短いボサボサ頭をてっぺんで結ん
でいて、履いているのは海パンではなくて黒いふんどしです。
「……良かった。……今まで生きててマジ良かった。」
……あのー、ムサシさん? 気に留めていないでしょうが、あなた物凄い異様な目で周囲から
見られていますよ。だって、黒ふんどしで太陽をバックに、仁王立ちして拳を握り締めながら大
の男が涙を流している姿って……ねえ。
「いつもいつも、あの袖のある邪魔な服で隠されてしまっているというのに……。だが、今、そ
の白い肢体が惜しみなくさらけ出されているではないか!! ああ、今までの生はこのために
あったのか! 青と若竹色の素晴らしいハーモニー!!」
……太陽の熱に頭がヤラレているようです。彼こそ海に入るべきなのでしょう。
そして、周囲から冷淡な視線で壁を作られているムサシに、何の遠慮も無く近づく一つの気配
が。
「……君。変な目で君が見られるのは、僕としては一向に構わないが、ロビンをイヤらしい目で
見るのはよしてくれないか?」
その、好意の「こ」の字も入っていない嫌なまでに聞き慣れた声が耳に入って、ムサシは目を
擦るとゆっくりと顔を向けました。
「……そーいや、お前も同じグループだったな。」
あからさまに苦々しげな表情を浮かべて、ムサシは相手の青年を見ました。こんな時でさえ
も、頭に青い布をつけていますが、履いているのは紺色のブリーフタイプの海パンです。どうや
らボリス、こんな時まであの服を着ないようです。……その格好も、どーかと思いますけどね。
「ロビンは君のものじゃないだろ。」
気温が五度ばかり下がりました。
「かと言って、お前のモンでもないだろう?」
あらら。十度も下がってしまいました。
無意識に温度を下げながら、二人は真っ向から睨み合いました。
あ、季節が夏にもかかわらずブリザードが発生してしました。そして、瞬く間にその勢力は拡
大していきます。砂浜に打ち上げられた海藻は瞬間冷凍されてしまい、売り子のラムネなんか保
冷剤替わりの氷水ごとカチンカチン、ヤキソバの湯気なんか瞬く間に細かい氷と化してしまいま
す。
段々、段々と人々は去って……もとい逃げていきますが、ブリザードの勢力は衰えることを知
りません。何が悲しくて、真夏のリゾート地でブリザードを味わなければならないのでしょう
か。やはり、これもイドの陰謀でしょうか。
あぁ。こうしている間にも被害は増えるばかり。人には逃げられる足がありますが、海の家に
そんな代物はありません。せっかく苦労して集めたお客さんも逃げ出してしまいました。売上げ
金を持って逃げる店員さんまでいます。
ああっ。取り敢えずの原因であろうロビンは「我関せず」といった涼しい表情でぱちゃぱちゃ
バタ足をしながら沖の方へ泳いでいってしまいました。では、双子はどうでしょうか。……ダメ
です。こんな不毛な争いに純真な双子を巻き込むなんて。
ああああっ! いつの間にかムサシはグローブを手にはめ、ボリスは杖を持っています。剣で
は錆びてしまうという考えは賢明ですが、この場合はあまり誉められたことではありません。
「唱えている最中にノックダウンさせてやる。」
「力が全てだと思うな。」
どちらも静かな口調かつ、気迫に満ちています。
天界では澄み切った青空と白く輝く太陽、下界では青い海と白い砂浜に……ブリザードを巻き
起こす二人の青年。太陽の熱とブリザードの冷気がぶつかり合い、更に海から蒸発している水も
加わって雲行きが怪しくなっていきました。何やら雲が大きくなって暗色を帯びていき、ゴロゴ
ロと不吉な音を立て始めました。
このままでは真夏のリゾートが台無しです。
神は見捨ててしまわれたのでしょうか。
「「…………」」
二人はこーちゃく状態に入りました。
技の発動した時がこのリゾートの最期。
「「!!」」
動き出しました。
ムサシは白い砂浜を駆け出し、ボリスは詠唱を始めます。
互いの技が互いに及ぶ、正にその時!
「誰か〜〜!!」
沖から、一番聞いていたい声が助けを呼んでいます。
ボリスとムサシが半瞬戦いを忘れて、そちらの方へ「まさか」という風に見ました。
そこには、若葉色の浮き輪でバタ足をして、後ろから追ってくる大ダコの魔物から逃げようと
する、愛しい愛しいロビンがいるではありませんか。
「「ロビン!!」」
いけません。ロビンは丸腰です。いえ、それ以前に、例え武装していようが愛しい人が魔物に
襲われそうになっているのです。そんなのは耐えられるものではありません。
大ダコの魔の手が徐々にロビンへ近づいていきます。そして、距離が間一髪まで迫ったその
時。
「トルネード!!」
その声が高らかに上がったのと同時に、大ダコの身体が突然ぐるぐる激しく回転し始めまし
た。そして、グローブを填めた手がヒラリと舞って大ダコの脳天を叩き割ります。大ダコは悲鳴
を上げて絶命します。そのスキに、ロビンは浜に上がって何処かに消えました。しかし、新手が
続々とやってきました。ロビンは一体、何をしでかしたのでしょうか。
ですけど、そんなことを考える暇もなく、ムサシとボリスは次々にやって来る新手に取り掛か
ります。その数の果てしないこと。あたかも、海の魔物を全て集めてきたようで。
「ボリース!! 後衛は頼んだ!」
「任せてくれ!!」
呉越同舟。今のこの二人に一番相応しい言葉です。
◆ ◆ ◆
空が晴れました。
青い空に白い雲、青い海に白いしぶき。
何事もなかったかのように、人々は泳いだり、肌を焼いたり、ナンパしたりと、ようやく平和
なリゾート地に戻りました。
そして、人の戻った海の家の一つに、蝶のような羽根のある双子が若葉色の青年に潮溜まりで
のことを報告していました。その身振り手振りの大きさから、どのくらい楽しかったのかが窺わ
れます。なので、聞く側もつい嬉しくなるようです。
「でさあ、ミルトと行ったらさ、キレーな魚とかヤドカリとかいっぱいいたんだよ。けど、フナ
ムシもいっぱいいて、気持ち悪くなって、ついゴッドブレスやっちゃった。」
……子供は無邪気で残酷です。「つい」で聖の最強魔法を虫にするなんて。
「でね、真珠はなかったけどキレーな貝殻たくさん拾ったんだ。ロビンにコレあげるね。」
ミルトがロビンに真っ白な可愛らしい貝殻を渡しました。ロビンは受け取ると、ニンマリ笑っ
て双子の頭を撫でて「ありがとな」と言いました。
「んじゃ、報告料と貝のお礼にヤキソバ買ってくるから、ちょっと待っててな。」
その言葉に、双子は喜びました。ちょうど、おなかも減っていたのです。
そして、サイフを持って出かけようとするロビンに、
「ねえ。そういえば、ムサシとボリスは?」
クルトの言葉でした。どーやら、先程までの騒ぎを知らないようです。
「ん? あいつらなら、ハシャギすぎちまってどっかで休んでいるみてえだけど。」
……ロビン。あなたは何を……。だって、平和のためといえ、あの魔物はあなたがワザと……
「ふーん。何か、ハシャギすぎて疲れるなんてコドモだね、ミルト。」
「そーよねー、クルト。もうちょっと、大人にならなきゃね。」
笑い合う双子に、ロビンは「んじゃ、行ってくる」と言って買いに出かけました。
まだまだ、お休みは充分残っています。この双子にとっても、この青年にとっても、きっと良
い休暇になることでしょう。
◆ ◆ ◆
時は過ぎて夕方のこと。海は夕焼け空に染まって、紅く美しくその姿を変えます。正に恋人同
士が愛を語らうには絶好の場所。逆光でよく見えませんが、恋人が一組、腕を組みながら仲良く
砂浜を歩いていました。青春です。
そして、そこからイロイロな意味で遠く離れた砂浜の一角で、累々横たわる魔物の屍と、その
横で夕焼けに染まった砂浜の上で突っ伏している青年が二人。近くに転がっているグローブはボ
ロボロ、杖は真っ二つ。
「……いい…か……次こそだ……」
「のぞ…む……ところ……だ……」
群からはぐれたのか、フナムシが呑気に一匹、二人の頭上を通り過ぎていきました。
―fin―
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フナムシにゴッドブレス!!(笑)最強魔法が〜///
大ダコに絡まれるロビンについ萌えてしまいました(-▽-u(照)
ポポローグは戦うRPGなので、ロビンを得たければ
全力で戦うしかないのですv
ウチのメモリーカードではロビンが最強なんですが(笑)