◆ 3 ◆
二日後のこと。
「だーかーらー! 何度も言ってんだろ!! あそこで下手に防御をしたら、麻痺って次の攻撃でオダブツだって!」
傭兵所の奥にある救護室から騒々しく青年の声が響き渡り、控え室にいる傭兵達の耳に嫌でも入ってしまう。救護室のドアは閉まっており、ある程度は軽減されているものの、とても瀕死の重傷を負った者の出す声とは思えない。
そして、その者に負けず劣らずの声の大きさの者がもう一人。
「だったら、よけるなり何なりすれば良かったじゃないか! 魔法が間に合わなかったら、どうするつもりだったんだ!!」
こちらも、ケガ人に対して出す声の大きさとは思えない。
「バァカ!! いくら素早いオレ様だからって、間合いを詰められた剣士の攻撃がよけられるかあ!」
「君は、僕が回復魔法を使えないのを知っているだろ!!」
「ちったあ、体力が残って、後はテメーで回復できると思ってたんだよ!」
「僕の攻撃力と君の防御力を考慮した上でか!?」
「あーーっ!! お前、オレが弱いってことを言いてえのかよ! この前ダッシュ攻撃し損ねてスッ転んで……」
「一体、いつの話だ!!」
ドアを閉めても、やはり喧しく二人のギャアギャア声が入ってくる。
その声の大きさと内容に、控え室の女二人、ラウラとメルは互いに顔を見合わせてタメ息をつ
いた。
「……一件落着といいたいトコだけど、……どーにかなんないのかね、あの痴話ゲンカ。」
「どーにかしてどーにかなるような二人なら、とっくに収まっているわよ。」
そして、二人は再び声のする方向を見てもう一回タメ息をついた。
と。入り口から「傭兵所」に不相応な、床に付きそうなほど長い金色の髪を持った、育ちの良さそうな少年が入ってきた。少年に続いて、斧を持った金髪の角刈りの大男と、僧らしき老人も入ってくる。
彼らは控え室に入るや否や、その二人の青年の声の大きさとケンカ腰な話し方に思ったことをそれぞれ顔に出した。少年は持ってきた大きなメロンを見て困ったようにタメ息をつき、角刈りの男は顔に手を当て、老僧はニヤニヤ愉快そうに笑う。
少年はメロンを中央にあるテーブルに置くと、メルとラウラの二人を見て、
「ロビンさん……元気そうで……何よりですね……」
その言葉に女二人は何も言わず、苦く笑う。
この少年も、青年が重傷を負ったことを知って心配していたのだ。そして、見舞うためだけにメロンを買ってここの傭兵所を訪れたのだが……肝心の本人があまりに元気そうなので些か困惑してしまったのだ。確かに、「元気」に越した事はないのだが。
「元気にも、程があるように思いますが……」
角刈りの男がそう言うと、
「まあ、良いではないか。青春じゃよ、せ・い・しゅ・ん。」
と、老僧が老獪に笑い飛ばす。
そして、再び別の気配が控え室の中に入ってきた。
「ただいまー……って、あれ? ピエトロ来てたの? ……何か、ロビンも元気になっちゃったみたいだし。」
こう、雇い主に対して無遠慮に言ったのは、薄緑の蝶のような羽根を持った少年で、
「うわあ! ピエトロ、いいヤツじゃん! メロン持ってきてくれたの?」
同じく、薄紅の蝶のような羽根を持った石榴色の髪の少女である。
どうやら、この双子は今さっき探索を終えてきたばかりらしい。羽根や服に土埃が付着している。
「ねえねえ、早く食べようよ。」
ミルトがピエトロを急かす。
「うーん……でも、これはロビンさんのお見舞いで……」
少年が言葉を言い終える前に、ラウラが口を挟んだ。
「いーじゃないか。ヤツら、まだ終わりそうにも無いし、一人分残しておけばさ。」
何故、一人分なのか。それは、結局二人分残しても行き先の腹は同じだと確定しているためである。
その言葉に押されるような形で、ピエトロが「うん……」と言うと、双子は「やったあ」と喜び、ダイソンとメルは「一回シャワーを浴びてから」と言って、双子は「絶対取っといて」とドタバタ奥へ消えてしまった。その双子の様子を、ドグマは「ホッホッホッ。」と笑う。
気がつけば、あの喧しいまでの二人の話し声は消えていた。
救護室のドアを静かに開けると、ロビンとボリスは、仲良く手を握って眠っていた。
どちらの顔もあまりに穏やかで、起こすには可哀想なほど。
後には、ドアを静かに閉めた音が微かに響いた。
―fin―
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素敵な小説をありがとうございました(*^∇^*)//
痛々しいロビンの見せた包容力と暖かくも凛とした態度に
関さんキャラの醍醐味がv
ゲームでもボリスは攻撃系は最強でも、回復系の魔法が使えないキャラなので
とてもそこが萌えなのです〜///
ゲームでは薬や魔法で直ぐに回復してみせるキャラ達ですが、
実際はこんなに痛々しいのです(∋_∈)//
萌えv
Raiさんのタモタモ×ロビン小説も近日アップ予定ですv