舞HiME
武田×黎人

小説 吉野様
イラスト 見国かや



『隣のベッドは眠り姫〜side・T〜』






黎人はよく眠る。

いや、夜に弱いわけではない。

ただ、時々、電池が切れたように眠りに落ちる。

それは時と場合を選ばず。

いつだったか授業中にもそうなりかけて、皆を驚かせたものだ。

それでも何のお咎めもなかったとこあたり黎人らしい。

だが、自覚はあるらしく普段は割と早寝だ。

時折、俺が部活終わりで帰ると既に寝ていることがある。

最初こそ、物音に気を使っていたが黎人の眠りは深く、ちょっとやそっとじゃ起きないから今や何も気にしない。

夜はそれで良かった。問題は朝だ。



「黎人ぉ、起きろって!遅れるぞ!!」

朝、眠りの深い黎人を起こすのは一大事だ。

怒鳴ろうが、肩を揺さぶろうが、布団を剥ごうが黎人は起きない。

黎人を起こす方法は今のところ一つしかないが、それは至極単純でかつ俺にとってはそれこそ一大事だった。

その一大事を俺は毎日体験している。

「…やっぱ、駄目かよ…」

溜息がてら肩を落とすと自分に仕方ないと言い聞かせて、黎人のベッドに乗りかかり、俺は黎人にキスをした。

「…ん、ああ…おはよう、武田」

そう言って、普段の端正さとは程遠い、へにゃっとした笑顔を見せる黎人に俺は更に肩を落とす。

俺とのキスは黎人にとって怒鳴ったり、肩を揺さぶったりと同列の扱いなんだろう。

「………お、はよう…さっさと用意しないと遅れるぞ…」

とは言うものの、起きてしまえば黎人の行動は早い。

というか、抜かりはない。

そこも黎人らしいと言ってしまえばそれまでなのだが。



夜の8時近くに寮に戻ると部屋の電気は消えていた。

黎人は寝ているのだろうと思ったが、いつも通りに弱めの明かりを付けて、食事と風呂を済ます。

頭を拭きながら何げに眠る黎人の顔に目をやった。

黎人は男の俺でも見惚れるほど綺麗な顔をしている。老若男女問わず、その容貌には魅了されるだろう。

でも、その男の寝顔と寝起きをこんなにも近くで見ることが出来るのは俺だけだ。

そんな愚かな優越感。この寝顔をいつまでも見守っていたくなるのはそんな想いからだろうか。

それだけじゃない、かも知れない。

たまたま黎人の側にいた玖我を見て、好きなんだと思った。

自分は玖我のことが好きなんだと思った。

けれど、本当に俺が見ていたのは誰だったか。

黎人とのキスに言い訳を持ち出さなきゃいけない理由は何なのか。

「黎人…」

無意識の内に黎人の名が唇から漏れた。更に無意識の内に身体が動いて、黎人を起こすつもりではなくキスをした。

「…ん…武田…?」

「…夜なんだから起きるなよ」

「…ばか、夜にキスして…それだけで済むわけないだろう?」

黎人はとろけそうな顔でするりと伸ばしてきた腕を俺の首に絡ませる。

信じられない言葉が聞こえた。

「お前…っ?寝惚けてんのかっ?」

「僕が起きるのはお前のキスだけだって知ってるくせに。ちゃんと起きてるよ」

「じゃあ、何言いだしてんだよっ?そもそも、キ、キスなんて
好きな奴とするも…」

「僕はそうしてる」

「え…」

「武田は違うのか?」

「…ち、ちちちち違わない、けど…っ」

「なら、このまま引き寄せてもいい?」

「っ…ああ、もう、どうなっても知らないぞ…っお前が言わなきゃキスだけで我慢できたのにっ」

「…本当に?」

「…ちょっと嘘、かな」

苦笑いを浮かべた俺の唇にゆっくりと黎人の艶やかな唇が重なった。

そして、そのまま身体を重ねる。

見たことのない表情、聞いたことのない声、真っ白な身体に映える真っ黒な髪。

全てを余すことなく、逃すことなく、俺の全てで受け止めた。



「黎人」

朝になって、俺の腕の中で眠る黎人にキスをすると、珍しく黎人の寝起きが悪かった。

3回目のキスでやっと目を開けてくれた。

「黎人?」

「…ん…おはよ…」

いつもより幼い顔をして俺を見上げてくるその顔は犯罪に近いんじゃないかと思ってしまう。

「おはよう。大丈夫か?その、身体とか…」

「身体は大丈夫だけど…眠い…」

「ぅえっ?まさか電池切れそうなのか?」

「ん…やばいかな」

「頼むから俺のいない所で寝るなよ?」

「寝たら起こしに来てくれるんだろう?」

「そうじゃなくて…」

確信的に笑う黎人を抱きしめて、耳元で囁いた。

「お前の寝顔、他の奴に見せるのが嫌なんだよ…」

どうやら俺が抱いていたのは優越感ではなく、独占欲のようだ。

俺達は笑って、もう一度だけキスしてから支度を始めた。


END










『おまけ・隣のベッドは王子サマ〜side・R〜』






武田のキスは熱い。

とても、とても熱い。それは寝てなんかいられない程に。

それに気付いたのはいつだったかな。

最初のキスは少し痛かった。

何でも床に落ちていたプリントに武田が足を滑らせて、そのまま僕の上にダイブしたらしい。

あの時の武田の動揺ったらない。

目を覚ました僕に真っ赤な顔で必死に言い訳をしていた。

そんなもの、僕はいらなかったのに。

でも、まだ武田には必要そうだったから僕がそれを利用している振りをした。

いや、本当に利用していたのは僕の方だったかな。


『もう、いいよ。それより、こんなに簡単に僕を起こしてくれたのは初めてだな』

『え?ああ、そう言えば…でも、今までも似たようなことしても起きなかったけど』

『キスと似たこと?』

『っ違う!身体ごとダイブしたんだよ!』

『じゃあ、キスの方で起きたんだ。なら、これからもそれで起こしてくれるか?』

『は、はぁ!?何言ってんだよ、お前っ?』

『僕が起きないとお前も学校行けなくて困るだろう?武田は優しいから』

『う、お、お前…その台詞、ずるいぞ…っ』

『だめかな?』

『っその顔もずるいっての…っ』


そう言って、苦笑いをした武田にとても安心したのを覚えてる。

僕を仕方のない男にしてくれていい。どんな言い訳をしてくれてもいい。

ただ、キスして欲しかった。

僕が眠るのはお前のキスを待つ為。

けれど、本当は待っている。

僕を起こす為ではない、言い訳のないキスを。

必ず来る、いつの日かを。


END








きゃーーー(〃∇〃) 黎人さん受け小説っっ
初です!ありがとうございます〜(≧∇≦)
小悪魔で誘い受けな黎人さん色っぽ過ぎ〜!!
同室の武田は美味しいのですっっ//
純朴な彼がうろたえる様が萌えっっ
ちなみに、この小説、元ネタは吉野さんの夢なのですv↓吉野さんの見た夢!

『それというのも夢を見てしまいまして(笑)。
学校の教室で、何故だから黎人さんと楯くんや舞ちゃんが一緒に授業受けてるのです
何だか、黎人さんはくったりしてて(それがまた色っぽいんですが)
先生が(三木さんの役だったような)「神崎?すごく眠そうだけど大丈夫か?」と。
で、もう黎人さんは返事もできないほど、くったり眠そうなので保健室に行ってこいと(眠そうなだけで
保健室行きを許可してくれる先生は黎人さんに惚れてるようです)。
くったりしながら、黎人さんがふらふら
立ち上がって、目こすったりして(犯罪的に可愛いのです!)。
で、楯くんがお姫様抱っこしようかと腕をわたわたしてたのですが・・・
その辺で目が覚めてしまって。起きたらそんなんで何か書こー・・・と思いながら再び寝たのですが(笑)。
それで、何故か武田x黎人さんで、二人が寮で同室だったら、のお話です。おまけという名の補足説明付で。
いやー・・・ビデオがあったら録っておきたい夢でした(笑)。
残念なのは関さんが喋らなかったことでしょうか(苦笑)。』

うわあ素敵な夢です〜//
皆様は関さんキャラが出てくる夢って見たことありますか?
私はクルーゼ隊長とミロ様が夢に出てきたことが…
必死に一緒に戦ってました(笑)守らなきゃって//

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