11◆◇◆わだつみの楊貴妃…中編(重要な巻なので、読まれる事をおお薦めします)
前巻で海に投げ出された高耶さんと直江は、瀬戸内海のとある小島に打ち上げられていた。都合よく無人島な上、色々できちゃう洞窟まで(〃◇〃)。直江のために出来たような島!!
だが、直江は《力》を完全に無くし、その上目まで見えなくなってしまっていた(何故…)
一応二人きりではなく、小姑小太郎の監視ありです。
でもヤケっぱち直江には障害にはならず。
懲りずに高耶さんに“かぶりつくような獰猛なキス”やら“上唇も下唇もかまわずかみつく激しさが暴力じみて”る、高耶さんに嫌悪感を催させる“悪意に満ちた”キスを…(それもテクなのか直江。)
「下手な同情なんてすると、犯してしまいますよ」やら
「犯罪を決行するには良い場所だ。明るい方があなたは興奮するでしょう?…俺が勝ったら抱かれてやるってあなたは言いましたね。でもこの男は卑怯者だから、あなたの同意も合意も待たない。俺はずるいから、あなたを犯すことで、あなたに勝つ…。もうこんなやり口しか、俺には残されていない。いいんでしょう、ほら。あなただって本当は犯されたいんでしょう。ごまかしたって知ってる。強姦するほど欲しがらなきゃ、本物の愛じゃないなんて考えてる」
とまたもや楽しい人です。…直江。しかもこうまで言っておきながら、また未遂。なほへ…。
一方、復活した織田信長(姿は成田譲)は、高耶のことを思い出しながら「あの小憎らしい美獣めが」とつぶやいて、家臣達を凍りつかせていた(笑)。
小島から、北条サイドの小太郎の策略によって、山口県の萩へと連れてこられた高耶と直江は、そこで毛利に組するよう説得される。
ここで出会った吉川元春に、高耶は、
「謙信は、あなたを捨て石にして、新たな総大将を立てようとしている。おのれの意のままに動いてくれる、新たな総大将を」
と、謙信が既に、北条の息子である高耶を裏で切り捨てているという情報を伝えられる。
ここでも、成田譲は、キーパーソンです。譲の魂は実は…。
吉川元春は、毛利の下僕。そして同じ下僕である直江に深く同情し、高耶の配下から逃れて毛利に入るように薦める。直江を人質にとられた高耶は、毛利と同盟を結ぶ。
ところが、元春が「直江信綱は解放しない。毛利の家臣になると言っている。…私の側近になりたいと言っている。主人をかえ、死ぬまで私につかえたいと言っている」
と言うや、直江は俺のものだと高耶は激怒!!焼き餅大爆発で、毛利は火の海に!!!(ものすごい焼き餅っぷりです高耶さん!!)
炎の中で、二人、直江と高耶は見つめ合う。
そして、CDドラマでも聞ける、あの悲しいシーンに…。(ここはもう、是非読んで下さいませ)
ところで、この巻で、洞窟の中の直江の台詞がとても好きです。
「この男はね、あなたに絶対勝てないことを、今頃になってようやくわかってきたらしい。やっと人並にわかったらしい。なぜ多くの人間がカリスマに抵抗しないのか、理由が解けたんですよ…。無駄だからです。勝てないものに勝負を挑むのは、無駄でバカらしいことだから。…カリスマの挑発にむきになって、慌てふためいて踊り出すのは、浅はかで馬鹿な連中だけだ…。結局、俺はあなたに踊らされた馬鹿のうちの、ひとりだったらしい」
直江のカリスマへの抵抗者としての、あまりにも苦しい生き方に共感する部分がある人には、胸にツンとくる台詞ではないでしょうか。ミラを読んでから感じたことなんですが、世の中には色々なタイプの人がいて、この直江みたいな抵抗者としての生き方に、全く共感しない幸せな人達もたくさんいらっしゃるんですよね〜。
千秋とか、高坂とか、譲とか、そういうタイプの人に共感できる方が、人間としては大人だし、立派なんだと思うのです。
(高耶さん(景虎様)はかなり特殊で孤高の人ですが〜。とにかく孤独。そして気高い。寂しがりで貪欲なのに、魂の本質が曲がることを許してくれなくて、狭間で自我が苦しみ続けるという、救われないカリスマ。)
でもこの直江のもがき苦しみっぷりが、やはりミラージュの醍醐味だと思うのです。友達としては付き合い辛いかもしれないですけど(笑)ていうか、実際いたら、かなりウザいんでしょうね(笑)
12◆◇◆わだつみの楊貴妃…後編
直江が大変なことになってしまいました。
『ーーーーー高耶さん…。
ーーーーーー景虎さま…。
ーーーーーーここにいますよ。
ーーーーーー大丈夫。……怖くない。
ーーーーーーあなたを、置き去りにはしない。
ーーーーーずっと、ここにいますよ』
ついつい、直江の優しいところばかり思い出してしまう高耶さん。
《誓いをオレは忘れていない。死にはしないと誓った。死には……しないと。》
直江の言うことは信じちゃ駄目だ!高耶さん!(涙)
そして、楊貴妃やら信長に戦艦大和に色々な敵や味方が戦い(略し過ぎ。)
「オレは死なない…ーーーーー夢の中でなんか死なない」
決死の対決も、信長には全然歯が立たないものの、隠し球で高耶さんの勝ち(あまり自力で勝った事が無いような…)。
《もうすぐ悪い夢は終わる。…直江…早くお前の声が聞きたい…。体が寒くて仕方がない。傷が痛む。痛くて怖くて不安で凍えそうになるから、早く。憎しみでもいいから…そばにいてほしい…。》
目が覚めた自分の枕元に、彼はきっといるだろう。そしていつものあの優しい微笑みで、声をかけるのだ。
ーーーーーーー怖い夢でも……見たんですか。
そして目が覚めると、高耶さんは病院のベッドの上。
事実を受け入れられず…目が覚めて真っ先に見た小太郎を、直江だと思いこんでしまう(刷り込み。←そしてヒヨコ高耶さんの誕生)。