満月が空に煌く夜
紅虎は一人岩陰で息を切らせていた
「な・・・なんやねん・・アレ・・・・」
細い目を見開いて胸に手を当て、自分を落ち着かせようと必死になる
なぜなら、彼はついさっき『信じられないモノ』をその目で見てしまったから―――
旅の途中で泊まった旅籠
紅虎は風呂からあがり、冷たい廊下をペタペタと歩いていた
しばらく歩くと、足元に硬い何かがあたった
「あれ?これ、アキラの刀や」
紅虎は刀を拾い上げると、それを届ける為に、刀の持ち主の部屋へと向かう
部屋の前に来て、扉を開けようとしたが、何かに気づき思いとどまった。
中から物音が聞こえてくる、布の擦れる音、荒々しい呼吸の音、そして誰かをひたすら呼び続ける声
姿を見なくとも大体何をしているかは紅虎にも分かった
しかし声は一人分しか聞こえず、先程から小声でその男が呼び続けているのは
「紅虎・・・・・!」
自分の名を呼ばれ、紅虎は一瞬ギクリとする、そして、その扉を糸程に小さく開けると
唯々自分の名を呼びながらソレを手で上下に弄るアキラの姿があった
何度も聞き間違いではないかと耳を疑ったが、いくら聞いても呼び続けているのはやはり『紅虎』
予想も出来ない事態に紅虎は驚きを隠せず、その場を逃げ出した。
―――次の日の朝、早々に狂一行は旅籠を出発する。
ゆやが何かを取り出しながらアキラの方へ駆け寄った。
「アキラさん!はい、刀。昨日宿の庭に落ちてましたよ」
それを聞いてアキラは自分の刀が片方無い事に気がついた
礼をいいながらゆやから刀を受け取ると、首をかしげる
「おかしいですね、私あの宿の庭には行っていないんですが・・・」
昨日アキラは庭に行って居ない
紅虎が昨日のアキラの姿を見て逃げ出した時に、届ける筈の刀を庭に落としてしまったのだった
よほどショックだったのだろう、刀を落としたことには気づかなかったらしい。
ゆやのからアキラへ手渡される刀を見て、紅虎は昨日のことを思い出した
「(やっぱり昨日のアレは、夢じゃ無かったんや・・・)」
たちまち紅虎の顔は恐怖の色へと染まり、冷汗が出てくる
尋常でない紅虎の表情を見て、今度は紅虎の方へゆやが駆け寄って背中をさする
「トラ!?大丈夫?顔色悪いよ?」
「ゆやはん・・・だ、大丈夫、何でもあらへんよ・・・」
少し微笑んで歩き出す、しかしその顔は未だ恐怖の色のままだった
紅虎の異変に誰もが心配していたが、そのまま出発することにした。
いつものように刺客やら賞金稼ぎやらを蹴散らかしながら歩き続けていると、あっという間に太陽がその身を隠す
今日はいつも以上に敵が多く、手間取ってしまったため、宿を探す暇が無かった。
しかし運の良い事に、ちょうど寝床になりそうな大樹があったため、その木の根や枝を利用して寝ることにした。
問題なのは、見張り役を誰にするかだ。
「じゃあ、今日はわいが見張りするわ!」
昨日のことを警戒してなのか、紅虎がそう言った
先程まで顔を青くして、冷汗を滝のように流していた紅虎が見張りをする事に誰もが反対したが
その反対を押し切って、紅虎が見張りをする事になった。
皆が寝静まった頃、青墨色の空の中で輝く月を紅虎は見上げていた
其の姿は昨晩の満月よりは少し欠けていたが、眩しい程に存在を主張している
その上涼しくそよぐ風や静かな空気が肌に心地よく、思わず紅虎は月に向かい歩み始めた。
こんなに静かな夜はそう無い、それに月を見ていれば昨日の出来事など忘れてしまえそうと思ったから
そんな事を考えていると背後から草履の擦れる音がする
ふと我に返り振り返ると、其処に居たのは・・・アキラ。
「なッ・・・アキラ・・・!?」
「見張りをするとか言っておきながら、何をふらふらしているんですか?」
「あ・・・あぁ、すまん・・・」
さっきまで忘れかけていた事を、本人が現れることで、はっきりと思い出してしまった
それと同時に紅虎は恥ずかしさと驚きで思わず顔を伏せてしまう
せっかく忘れかけていたのに、彼は何故ここに来てしまったのだろう。
黙りこくってしまった紅虎にアキラが近づく
「・・・・・・・・見たのでしょう?」
紅虎は突然問いかけられて、伏せた顔を上げ目を丸くする
それと同時にアキラが気が付かないうちに自分のすぐ傍に来ていた事を知った
「な、何のコトや?」
「とぼけても無駄です、本当に貴方は嘘を吐くのが下手な人ですね」
アキラは紅虎の肩を強く掴みその場に押し倒した
そして、紅虎の顎を引きながら微笑する
「さぁ、嘘つきな覗き魔にどんな罰を与えましょうか?」
アキラが紅虎から一旦離れると、紅虎は自分の身体が少しずつ氷に侵食されていくのを感じた
氷を振り払おうと足掻いたが、時は既に遅く、紅虎は氷に手足の自由を奪われてしまった。
巨大な氷の柱に拘束されてしまった紅虎に、アキラはもう一度近づく
「ではまず、悪事を働いたその細い眼に、己の血を見せ付けてあげましょう」
服を剥ぎ、剥き出しになった腹に思い切り爪を立て、勢い良く引いた
腹に赤い筋と雫が現れ、紅虎の口からは悲鳴が漏れた
「うわあああああッッッ!!!」
「クス・・・いくら叫んでも助けなんか来ませんよ、ココは皆が寝ている所から随分離れていますからね」
腹に刻まれた傷に更に痛みを重ねるように殴りつける
アキラが殴る度に傷は深くなってゆき、鮮血が飛び散った
それでもまだ足りないと言わんばかりに足、腕、顔と次々に別の部位を責める。
「もう・・・許し・・・てや・・・っ・・」
「嫌です、楽しいのはこれからなんですから・・・
次は、嘘を吐いた口に罰を与えましょうか」
今度は袴を奪い去り、雄を激しく弄り出す
それほど時間が掛かる事無く紅虎の雄は大きく膨張した
そしてアキラは膨張したソレを今度は口に咥え、舌を使い優しく愛撫すると、先端から熱い液が溢れて来る
その液を舌で器用に舐め取ってそのまま紅虎の口へと運んだ
「んッ!んんっっ!!」
必死で振り払おうとするが、アキラは紅虎の舌を逃がさないようにと自分の舌と絡ませる。
苦い味が口内に広がった、自分の、淫らな液の味
数秒後アキラが口を離すと紅虎の唇を伝って液がこぼれた
「勿体無い、ほら・・・残さず飲みなさい・・・自分のですよ?」
そう言うと、こぼれた液を指で拭い、強引に紅虎の口へ入れた
アキラが指を喉に届く程深く入れたため、紅虎は咳き込んでしまった。
息を荒くして力無く氷に吊るされる紅虎の姿を月明かりが照らす
そんな姿がアキラにとって何よりも愛らしくて、可笑しくて、美しく見えて・・・
彼を、尚更痛めつけたくなってしまう
「そんなに自分のが嫌なら、私のを飲んでくれますか、どっちが美味か比べてみて下さいよ」
紅虎の自由を奪っていた氷を解き、地面に下ろすと自分の雄を紅虎の前につきつけた
既に彼を束縛する物は無かったが、もう紅虎には動く気力が残っていなかった為、アキラのなすがままにソレを咥えた
残された力でドクドクと脈打つ雄を舐め続ける。
「へえ、なかなか上手じゃないですか」
「う・・・ぅ・・・・・・」
しばらく奉仕すると、アキラの雄から白濁した液が飛び出す
「どうですか?私の味は・・・」
紅虎が液を飲み干した事を確認するとアキラは紅虎の口から雄を離し、今度は紅虎の後ろへ回った
そしてそのままイリグチへ挿入した。
その衝撃が、薄れていた紅虎の意識を戻す
身体が一瞬跳ねて、再び悲鳴を上げた
「私のココはどうやら、あれだけでは満足しないようなので」
「いや・・・っ・・いややぁああああああ!!」
「私は貴方の事を想い、ずっと独りでシてきたんですよ?今の貴方なんかよりずっとずっと辛かったんです」
叫ぶ事は出来ても抵抗することは出来ないのか、紅虎は相変わらずアキラのなすがままになっている。
体力がとっくに限界を迎えている彼にお構い無しに己を抜き差しした
力を込めるとその度に紅虎が声を上げる事にアキラは興奮を覚え
激しく、激しく紅虎を突いた
身体のぶつかり合う乾いた音と泣き声が響き渡る。
「フフッ・・・ほら、もっと声を上げろよ!泣け!泣き叫べ!!」
もはやアキラの方も、周りが見えなくなっているようだ
激しく紅虎を突き、その声を聴く為に先程つけた傷を更に刺激した。
紅虎も与えられる痛みと快感に唯々声を上げる
「ヤぁあッ!!うぁああああぁああぁあッ!!!」
「そうだ、そうやって叫べ、紅虎!俺の為に叫ぶんだ!!」
遂にアキラが絶頂に達すると、紅虎の中に精を放った
白い粘液と涙が風に流され、地へ消える。
紅虎は、もう声にならない声と鮮血を口から迸らせ、そのまま意識を失った。
アキラは皆が寝ている所へ向かった
其処へ着くと、ゆやがアキラの方へ来た
「アキラさんどこに行ってたんですか!?トラまで居なくなってたし・・・」
「少し散歩をしてきたんですよ、あまりにも素敵な夜だったので」
「そうなの?・・・・あれ、アキラさん、トラの事おぶって来たの?」
クスッ
「ええ・・・紅虎なら、今夢の中ですよ、きっと良い夢を見ていることでしょうね」
「ふーん、何だかよく分からないけど、変なアキラさん!」
・・・ずっと欲してきたモノを、手にすることが出来た
今宵、この欠けた月の下で
これからは・・・ずっと・・・
私という悪夢に、怯えなさい。