聖闘士星矢・冥王ハーデス編
カミュ×ミロ

小説 吉野様

『金色の誓い』






どこまでも少年のような男。

馬鹿正直なほど真っ直ぐに生き、止まらずに走り続ける。

激しい喜怒哀楽。屈託のない笑顔、烈火のような怒り、人の為に流す涙、幸せをふりまく笑い声。

それは残酷なほど、無意識に。

走るお前の背に向かって伸ばした手が届かなくて焦る。

殺されそうな緊張感はお前を失うのかと、恐れてのこと。

けれど足が動かない。声も出ない。心だけが叫んでいる。

もう、お前の姿も見えない。





「ミ…ロ…」

「何だ?カミュ」

自分の声は掠れたが、その分ミロの声は鮮やかに響いた。

ふと気付けば、そこは自分のベッドの上で。

ミロはベッドの横に立って、天に伸びた俺の手を握っていた。

ああ、夢だったのか。

本当に…夢だったか?

ぼうっとミロを見上げていると、ミロは小さく笑って、隣りにその身を滑り込ませてきた。

「恐い夢でも見たか?ベッド抜け出す時は泣いてなんかいなかったのに」

言いながら、ミロは綺麗な指で私の頬をつたう涙をなぞるように拭い去る。

それが恥ずかしいとは思わなかった。思う暇など無く、ミロを抱きしめた。

「カミュ…?痛いぞ、そんなに恐かったのか?」

痛いと言いながら、ミロが抵抗しないことをいいことに更に強く抱きしめる。

この腕の中に閉じこめたいみたいに。

「…抜け出した罰だ」

「水飲んできただけだ。誰かさんのせいで喉がカラカラだったから」

「ああ、良い声だったな」

「言うな、バカ」

「何度、私の名を呼んだだろうな」

「言うなと言うのに」

「なのに、私の声は届かなかった」

ミロを抱く腕に更なる力を込める。壊しそうだ。壊れそうだ。

けれど、ミロは顔を歪めることすらなく。

「届いたさ。だから、ここにいる」

「今はな…いつかは離れるのだろう?」

「今の俺以外に何が欲しい?未来の俺が欲しい?未来の俺は未来のカミュが愛してくれる。お前は今の俺だけ愛していればいいだろ?」

どうして。

どうして、そんなにも真っ直ぐに私を見据えて、そんなことを言える?

どうして、そんなことを言ってくれるんだ?当たり前かのように。

どうして、こんなにも幸せをくれるのだ?

「…ふっ、勝手に私の未来まで決めてしまうのだな、お前は…」

「嫌か?」

「…嫌なものか」

私から口付けると、次第にミロも応える。力を込めていた腕を緩め、ゆっくり身体を撫でるとミロはビクッと身体を震わせる。

「っあ…カミュ…?また、するのか?」

そう聞いてくる間に横向きで向き合っていた身体をベッドに押さえつけて、その上に乗りかかる。

「…嫌か?」

「バカ…嫌なものか、だ」

そう言って、ミロは腕を伸ばして抱きしめてきた。私も笑って、それに応えた。



「なぁ、カミュ。もし、俺とアテナが崖から落ちそうだったらどっちを先に助ける?」

朝方、気怠げに寝転がりながらミロが問う。

その意図を図りかねて、難しい顔をしてしまうとミロは苦笑した。

「バカ。即答しろよ、アテナだろ」

「なら何故そんなことを聞く?」

「俺もムウに聞かれたんだ。カミュとアテナならどっちを助けるかって」

「ムウめ、余計なことを…それで?ミロは即答したのか」

「それはそうだろ。アテナの聖闘士だぞ?俺達は。だいたい聖闘士なら崖くらい自分で何とかしろ」

「それはそうだが…」

また当たり前みたいにそんなことも言う。

分かってはいるが、少し胸が痛む。これは私の弱さ故か、それとも。

「それでも何とかならなかったら、アテナを助けた後で俺が助ける」

「ムウは何と言った?」

「それでは遅いと。だから、俺は死んでも助けるって言ったんだ」

「どうやって?」

「どうやってでも。お前を助けられない自分なんて絶対嫌いになる。カミュは俺にそんな想いさせないだろ?」

何て我が儘で、自分勝手で、愛おしい。

死よりも恐いもの、そんなものを手に入れることが出来るとは思わなかった。

そして、それがこんなに嬉しいなんて。

「そうだな…お互いにな」

「…俺の命はアテナに捧げてる。だが、それ以外は全部お前にくれてやる。カミュが持っていてくれ」

「ミロ…」

「俺が死ぬのはきっとアテナの為だろうが、俺が生きるのはカミュの為だ。多分ずっと」

「…私もだ、ミロ」

「秘密だぞ。シュラなんかに知られたら、きっと怒られる。アテナの為に生きろって」

ミロは口元に人さし指を持ってきて、いたずらを企む子供のように笑う。

愛おしくて、嬉しくて、堪らずに抱きしめた。すると耳元に囁かれた。

「不安になるのはお前だけではないんだぞ?」

ああ、お前はやはり見抜くのか。

やはり、あれは夢ではないのだな。

私達はいつの日か、やはり離れてしまうだろう。

だが。

「愛している、ミロ」

私はミロに深く深く口づけた。

今の私達に出来ることは愛し合うこと。

いつの日か、そんなことは知らない。

けれど、その時もきっとお前のことを想う。

誓おう、願わくば少しでも遠き未来に。


END








可愛いミロたんをありがとうございます〜(≧∇≦)
吉野さん曰く
「アテナエクスクラメーションまでご覧になったとのことで・・
・個人的にそれより前がカノミロでそれ以降がカミュミロで(笑)。
本当に格好良くて可愛いヒトです〜っ、ミロ関さん!!」
とのことで、次回はカノン×ミロもお届けですっっ//
深い言葉に言い尽くせない深い真の優しさが溶け込んでる…
そんな関さんキャラの魅力たっぷりな小説が嬉しいのです〜//

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