ここはグリーンウッド
光流×忍

小説 なゆり様

 愛煙家









 炬燵に包まり更には胸にクッションまで抱え込み、光流は窓際で涼しげに煙草をふかす同居人に苦言した。

「忍、寒い」
「お前は今、どこにいるんだ?それでもまだ寒いというのか?」
「すっげー寒い。隙間風が顔にあたる」

 煙草を吸う間の換気のために細く開けた窓から入り込む風は、冬の冷気を運んで光流の顔を直撃する。

「そこから移動すれば当たらないんじゃないか?」

 ニヤリ、と笑って忍が提案する。

「うっせぇ」

 どうして光流がそこにいるかなど、当然理解しているにも関わらず、忍はそう切り返す。
 それが光流にも分かるため、光流はただ顔を背けて視線だけを忍にやる。


 白く細い指。
 煙草をくわえた薄い唇。

 指先が煙草を捉え、唇の間から紫煙がふうと光流の方に流れた。

 とんとん、と窓枠に置いた缶に灰を落として、もう一度唇が煙草をくわえる。

 頃合を計ったように、併せて伏せられる瞳が凶悪なんだよ、光流はこっそり呟いた。
 流石に同居生活が長くなればそれには慣れるが、それでもまだこんなとき光流は鼓動が早鐘を打つことを抑えられない。

「なぁ、忍?」

 あまりにも絵となってはまり過ぎる光景に耐え切れず、光流は忍に声をかけた。

「ん?」

 煙草をくわえたまま、忍は瞳だけ動かして光流を見た。

「ゃ・・・・・・、その・・・・・・・」

 咄嗟に口走ったことゆえに、質問を考えていたわけではなかった光流は、慌てて思考をフル回転させた。
 そして、一つの事に思い当たった。

「煙草、吸わして」
「?」
「ちょっと、吸ってみたいかなぁ〜って、思って」

 頭をかきながら照れ笑いをするのは、光流が困っているときの癖だな。
 そう思いながらひとしきり光流の様子を眺めた忍は、窓際の壁にもたれていた背を離して、ちょいちょい、と光流を手招きした。

 片手で煙草を新たに1本取り出し、それを光流に差し出す。
 だが光流はそれをきょとんとした目で見つめ、それから忍をじっとみた。

 正しくは、その口元の煙草を。

「はぁ・・・・・・」

 大袈裟に溜め息をついて、忍は煙草をくわえたまま顎を上げた。

「さんきゅ」

 短く答えて、光流が煙草に手を伸ばす。
 吸い始めてそれほど経ってないため、まださほどそれは短くない。

 緊張したのか少し震える指で煙草をつまみ、口へ運ぶ。

 一息、大きく吸って・・・・・・・。

「げほっ・・・・・・・ごほ、ごほっ」
「大きく吸いすぎだ」

 すぐに噎せ返った光流の指から煙草を奪い、忍が再び吸い始める。
 少し涙目で依然として噎せながら、光流は尋ねた。

「何でそんなに美味そうに吸うんだよ?」
「慣れだな」

 手馴れた手つきで灰皿代わりの空き缶に吸殻を押し付けて、忍は光流に言った。

「お前、中学時代に不良してた割に煙草を吸った事がないのか?」

 光流の過去の噂話を考えれば、それは至極当然の疑問なのだが、光流は不本意といった面持ちで反論する。

「あのなぁ、あれは勝手に尾ひれはひれ、話が作られて、だなぁ」
「意外、でもないな」
「・・・・・・そうか?」

 短いとは言い切れない付き合いのなかで、忍なりに光流の事を理解してきたつもりだ。
 彼が噂されるほど悪童でないことは、既に承知している。
 くすりと微笑みを浮かべながら、忍は言った。

「そんなに吸ってみたいか?」
「うーん。だってさ、やっぱり忍がそんなに美味そうに吸うから、いい味かなって・・・・・・っ?」


 光流の顎を細い指が捉え、唇が重ねられる。
 唇の隙間から進入した舌が、口腔内で光流のそれを絡めとった。



 苦くて、煙草の味がする。
 けれど甘い、口づけ。



 重ねた唇を、まだ触れ合いそうな距離だけ離して、忍は再度尋ねた。

「これなら、どうだ?」
「ん、やめられないかも・・・・・・・」

 今度は光流からキスをする。
 忍の煙草の味を全部味わってやるとでも言うように、熱く、濃厚に。






 唇を離して、忍はしかめ面をした。

「お前から煙草の匂いや味がするのは、どうだかな」
「移り香だろう?仕方ないじゃん」
「だが・・・・・・」

 言外に光流を吸って欲しくないとでもいうのであろうか。
 忍は言葉を濁す。

 そんな忍が光流にはいとおしく映ってたまらない。
 別段内緒話をする状況でないにも関わらず、光流は忍の耳元に口を寄せて言った。

「俺、これから愛煙家になるから。よろしくな」

 光流の言葉に慌てて彼を凝視した忍が、その意味を理解するまでそう時間はかからなかった。







うわ〜vvv
雰囲気たっぷりの色っぽいお話を!ありがとうございます(〃∇〃)
あまりの忍様の色っぽさに、光流のクラクラ度がそのまま伝わってまいりました//
女王様で誘い受け!(照)!
そして光流の見事な切り返し技に、惚れ惚れいたしました〜v
リンクさせていただいたなゆりさんのサイトには、色っぽいクルーゼ愛小説がいっぱいですv
隊長好き〜さんは、隊長大好きリンクから飛んでくださいませ♪

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