産廃処分場建設反対運動その後

一　はじめに　
　1995年(平成7年)6月、私は水戸市全隈町一に予定されていた産廃処一分揚の、建設反対運動に参加したが、その運動は一現在もまだ続いている。
　この産廃処分場は、水戸市全隈町一の沢に建設が予定され、山間の休耕田と水田に接する傾斜地の山林ほぽ1万2000平方、ﾒｰﾄﾙの土地の一角に、高さ15ﾒｰﾄﾙの堰堤を築いて約13万立方ﾒｰﾄﾙの産業廃棄物を11年間で埋め立てるという計画であった。
俗に言う安定5品目の、産業廃棄物処分場の建設計画であった。
　この処分場の建設計画に対する反対運動について、1996年(平成8年)12月茨城県知事の処分揚建設不許可の決定にいたるまでの経過については、産業廃棄物最終処分揚建設に反対する連絡会が編集した『生命』の水をまもる』(自治体研究社)に詳しく記録されているが、拙著『水源を守る市民運動』(ぺりかん社)でも、その概要を報告した。
　私たちは、一年半にわたる激しい建設反対運動によって、やっと勝ちとった成果を心から喜ぶとともに、反対運動の経過について記録を残すことにして、その検討を始めていた。1997年(平成9年)1月26日には水戸市民会館で、産廃処分場建設反対運動勝利の報告と祝賀の集会を開催し、百人を超える参加者とともに、心から運動の勝利を祝った。この運動は、私自身にとって初めての市民運動への参加であり、一日一日がまことに苦しい日々の運続だっただけに、運動の勝刹でようやく難問から解放されて、自分の仕事に専念できることを、何よりも喜んでいた。
　1月26日の報告会のあとで開催された交流会で、建設反対運動に参加した仲問たちが、よくここまで運動を続けることが出来たものだと、お互いの健闘をたたえあったことが、ついきのうのことのように思い出される。参加者のほとんどは、これで反対運動から解放されるものと信じて、それぞれ新しい仕事へ胸を弾ませていた。
　そんなとき、赤塚設備工業が知事の建設不許可決定を不服として、前年12月24日厚生大臣に串し立て、建設不許司決定の蕃査を講求していたことを新聞報遺で知り、一同であわただしく情報を集め、新しい反対運動を進めることになった。

二　厚生省への陳情書提出
　素人の悲しさで、私たちは新闇報道で赤塚設備工業の厚生大臣に対する審査請求を知ったとき、あまり驚きもせず、重視もしなかった。もしなかった。業者は、あれだけ無茶な処分揚の建設計画を申請して、知事から建設不許司の決定が出されたのだから、審査請求はいずれ厚生大臣からも却下されるだろうと、たかをくくっていた。
しかし、私たちは業者の審査講求を無視するのはよくないということになり、2月19日事務局会議を関いて検討し、厚生大臣に業者の審査請求を、却下してくれるよう陳情し、併せて私たちの主張もしておくことになった。陳情書は、以下のとおりである。

　産廃処分場建設不許可について、審査講求の却下を求める陳情書
　1996年(平成8)12月13日茨城県知事は、水戸市全隈町に産業廃棄物最終処分場建設許を求める(株)赤塚設備工業(代表取締役大谷繁夫)の申請1996年10月21日受理)を、不許可と致しました。
　これに対し、赤塚設備工業が昨年12月24日県知事の不許司処分を不服とし、行政不服審査法に基づく審査請求を、貴職に提出した由を新聞報道で承知いたしました。私達は、茨城県知事の決定を全面的に支持し、赤塚設備工業の蕃査請求を直ちに却下されることを、心より強く陳情いたします。そもそも処分場予定地は、水戸市民の水源地の一つにあたる田野川の至近の位置にあり、万一処分場が建設されることになれは処分場の有奮な排水が田野川に流入し、水戸市民の水道水が汚染される危険性を、つよくもつております。ここに処分場が建設されることは、絶対反対です。
　すでに1995年(平成7)9月から11月にかけて、水戸市民を中心に2万3000余人が、この処分揚建設反対の意見を、水戸市長に陳情いたしました。つづいて翌96年(平成8)6月には水戸市在住の茨城大学名誉教授が、茨城県知事に水源地汚染の危険性を指摘して、処分場建設反対の陳情書を提出いたしました。同年8月には地元住民29人が赤塚設備工業に対して行った建設同意を撤回し、或は建設反対の意思の表明を県知事に行いましたが、これは地元住民の過半数に達しております。以上の諸事情をご検討のうえ、速やかに赤塚設備工業の審査請求を却下されるよう、強く陳情いたします。
　業者が、茨城県知事の処分場建設不許可の決定に納得せず、決定の審査を厚生大臣に訴えたことを知っても、私たちは事態をそれほど重大に考えなかった。水戸市民の水源地に産廃処分場を建設すれは、市民の飲料水の水源汚染は避けられないとして、その危険性が県知事によって確認されていた。また、県の要綱が定める処分場周辺の住民の同意について、周辺住民の過半数が建設に不同意なのだから、業者の審査請求は当然却下されるだろうと考えていた。ただ念のため、私たちの主張を厚生大臣まで届けておけば、大臣は茨城県知事と同様の決断をしてくれるだろうと、軽く考えていた。
　私たちは厚生大臣に対しても、処分場の建設が水戸市民の水源地を汚染する危険性の強いことを強調し、汚染に対する不安が私たちはかりでなく、多数の水戸市民も同様の不安を強く持ち、学識経験者も汚染の危険性を強く指摘していることを強調した。
　私自身、廃繋物処理法特に許可の条件にかかわる第一五条については、何回も読みなおしており、特に同法第一五5条三項で、「第一項の許司には、生活環境の保全上必要な条件を付することができる」という規定を重視し、県知事がどれほど条件をつけても、業者がこれに対応できない場台は、当然不許司になると考えていた。事実前年の茨城県知事の不許可決定は、この三項をよりどころにしているようにも読みとれたからである。