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S-8

住宅工事に必要な設計図の解説

設計図は何のためにあるのか

 建築物に限らず、橋梁、トンネル、道路などの土木構造物から自動車、航空機、家電製品などの工業製品にわたるまでほとんどのものが設計図をもとに造られている。建設現場や生産現場で仕事に従事している技術者や技能者、職人が自分達がこれから造るもの、今製作を手がけているものの完成状態を頭の中で隅から隅まで理解しているのであれば設計図の必要性はあまりないのだが、そうもゆかないので工事や生産作業の前に設計図の作成が必要になってくる。

設計図の具体的な効用

 建築工事において設計図が整っていることの利点まとめると

 1・建築主の要望や要求、つまり注文内容が具体的に明示されているので、行き違いや誤解に起因する工事業者とのトラブルを未然に防ぐことができる。

 2・設計図は工事に関わる契約書類の重要な添付書類として扱われる。手抜き工事などの契約不履行が発生した際に建築主の正当な権利を保証する証文として役立つ。

 3・工事完成後も建物の適正な維持管理や修繕、リフォームなどの参考書類として必要になってくる。設計図は財産管理のための必須書類でもある。

 4・工事金額算定のための見積書は設計図をもとに作成されるのが正しい。そうでない見積書を俗にドンブリ勘定と言うが、残念ながら建設業界ではいまだこの類が横行している。 信頼のおける見積書を手にするためにも内容のしっかりした設計図が必要になってくる。

 5・工事業者は内容の細かく記載された設計図を手にすることができれば手戻りなどの工事の無駄を極力省くことができるようになり、結果として工事現場の効率向上、経費節減にもつながり正当な利潤を手にすることができるようになる。建築主の立場から見れば、その分、ローコストの恩恵を受けやすくなるともいえる。

 6・設計図が丁寧に作成されていて枚数もそろっている住宅の方が耐久性、安全性の点で格段に優れていると判断して差し支えない。

 7・設計図が充分整った状態で工事がなされた住宅とそうでない住宅との間には品質、機能、使い勝手にも大きな差が見られる。

 8・設計図はその住宅の資産内容を証明する書類としての役割を持つ。資産の詳細が具体的に分かることは適切な資産評価の際の必須条件といえる。

住宅工事に必要な設計図の種類

 ここでは木造二階建て程度の住宅を基準に解説する。ツーバイフォー木造もこれに準ずる。設計図の枚数や種類は同じ構造や階数であっても床面積が大きいほど増えると理解して良い。木造三階建て、鉄骨造、鉄筋コンクリート造になると必要設計図の枚数、種類は更に多くなる。

 ◇設計図書(せっけいとしょ)

 設計図のまとまりを設計図書と呼ぶ。表紙がついていて◯◯邸新築工事設計図などと表示されているのが一般的である。

 設計図書は仕様書と設計図により構成されている。仕様書と設計図は相互補完関係にあり、設計図で表示しきれない部分は仕様書で事細かに説明されている。例えばタイルの貼り方の工法、使用する具体的なタイルの品番、工事の際の注意事項などは図面である設計図では表示しきれないので、仕様書に記載されることになる。

仕様書

仕様書は工事の仕方を説明しているので仕方書とも言う。

全国共通の標準仕様書(共通仕様書とも呼ぶ)は書籍として出版されていて各設計事務所、工事会社に備え付けられている。一般に建築主が目にすることはない。

設計図書の仕様書は特記仕様書と呼び、その住宅のオリジナルな仕様書と理解すればよいだろう。特記仕様書が図表入りで事細かに作成されていて枚数も多い場合はかなり丁寧な設計がなされていると理解できるが、一般住宅のレベルでは簡易なもので間に合わされているのが通常である。

 ◇設計図の種類

 住宅工事に必要な設計図の種類を区分すると一般図、詳細図、構造図、設備工事図の4種類になる。一般図、詳細図はまとめて意匠図と呼ばれている。

 1・一般図

 縮尺1/100で作成されているので内容は大まかで設計図というよりは計画図的なものとして扱われている。建築確認申請や公庫融資申請の添付図面としても使われる。

仕上げ表

屋根、外壁など住宅の外側と各部屋の床、壁、天井の仕上げの種類が表形式で記載されている。
面積図・面積表 求積図、求積表とも呼ぶが敷地面積や床面積の算定の根拠が計算式とともに表示されている。小住宅のレベルでは省略されている場合が多い。

配置図

建物の配置状況が寸法入りで示されている。隣地や道路境界線からどの程度離れているとか、上から見た建物の形や方位などがよく分かるようになっている。

平面図

間取り図のことである。一階、二階と階別になっている。地下室があれば地階平面図が作られる。

立面図(りつめんず)

建物の外観デザインが分かる設計図。南、西、北、東と各方位から見た内容となっている。(縮尺1/50で作成されることもある)

屋根伏図(やねぶせず)

屋根の設計図。屋根を真上から見下ろした形で描かれている。屋根材の種類、葺き方(張り方)、雨水の流れる方向、樋の位置関係などが分かるようになっている。(縮尺1/50で作成されることもある)

断面図

建物を横から切断した図面。建物の高さ、室内の天井の高さ、窓の高さ、日照権などの法規制にどう対処しているかなどが分かるようになっている。

 2・詳細図

 設計図の中核を占める重要図面といえる。展開図、天井伏図、建具表は詳細図ではないが便宜上分類しておく。 

矩計図(かなばかりず)

矩計は古くから大工職が用いている言葉であるが、この場合は断面詳細図を意味する。先に説明した断面図よりかなり詳細な表示がなされていて壁や天井の内部構造や骨組みも分かるようになっている。縮尺は1/20が一般的。

平面詳細図

やはり先に説明した平面図よりかなり詳細な表示がなされていて流し台、蛇口や排水口、浴槽、便器の位置関係なども分かるようになっている。縮尺1/50

展開図

各部屋の壁内観の図面。南、西、北、東と順番に展開表示されている。部屋の内部の状況が分かる図面。併せて仕上げの種類も表示されている。縮尺1/50
天井伏図(てんじょうぶせず) 天井の仕上げや材料の張り方を表示している図面。天井埋め込みの照明器具の位置関係なども分かるようになっている。縮尺1/100から1/50

建具表(たてぐひょう)

建具とはアルミサッシ、ドア、襖、障子全ての総称である。表形式になっていて建具の寸法、ガラスや仕上げの種類、金具の種類などが事細かに記載されている。縮尺1/100から1/50

各部詳細図

部分詳細図、雑詳細図とも呼ばれる。矩計図や平面詳細図で表示しきれない部分、その他詳細表示を必要とする箇所を示している。枚数が多いほど丁寧に設計がなされていることの証になる。縮尺1/20から1/1

外構図

外構とは外の構え、すなわち門や塀、フェンス、通路、排水溝、造園など外回りを示す。敷地が広いなどで外回りの規模が大きいと図面の枚数もかなり多くなる。縮尺は1/50から1/20

 3・構造図

 構造図とは基礎と骨組みの設計図のことである。安全上最も重要な図面といえる。構造図が必要枚数そろっているかいないかで、その住宅の耐久性や安全性に大きな違いがでてくる。

基礎伏図(きそぶせず)

コンクリート基礎の図面、建物が完成してしまうと隠れて分からなくなってしまう基礎全体が具体的に表示されている。縮尺1/100

基礎詳細図

コンクリート基礎の詳細設計図。基礎各部の細かい寸法の他、鉄筋の並べ方なども丁寧に表示されている。縮尺1/50から1/20 

床伏図(ゆかぶせず)

一階床と二階床の下地の骨組みや、梁などの構造上重要な水平材の位置関係や使用木材の樹種、大きさが表示されている。縮尺1/100

小屋伏図(こやぶせず)

屋根下地の骨組みや屋根を直接支える梁を詳しく表示した図面。内容は床伏図に準ずる。屋根が複雑な形をしていると小屋伏図も複雑になる。縮尺1/100

軸組図(じくぐみず)

壁の骨組みの図面。梁と柱の位置関係が明確に分かるようになっている。耐震上重要な筋交い(斜め材)の位置関係も具体的に表示されている。 縮尺1/100

 4・設備工事(設計)図

 ◇建築物の設備の種類による区分

 下記に示す内容は木造二階建て小住宅を基準にしているが、住宅のグレードが高い場合や工事規模が大きい場合は専門の設備設計事務所が設計作業に参加することになる。当然、設備工事図の内容も高度で詳細なものになってくる。

電気設備工事図

木造住宅レベルでは照明器具、コンセント、スイッチ類の配置図、照明器具表は建築設計者により作成される。分電盤、メーターの位置関係も同様である。電線の配線図については問題ない限り工事業者に一任される。

給排水衛生設備工事図(給湯設備含む)

水栓、排水口、設備機器の機種、品番、位置関係は意匠図に全て記載される。配管工事図は問題ない限り工事業者に一任される。

空調設備工事図

木造住宅レベルでは展開図等にエアコン換気扇の位置を図示する他、必要とされる記載事項は意匠図ですべて代用されるので特に作成されることはない。

ガス設備工事図

木造住宅レベルではガス設備の機種、位置関係については意匠図に記載される。配管工事類は小規模なものに属するので工事店が工事用に簡易な図面を作成することで間に合わせている。

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