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S-6

騒音振動対応住宅

  建築で音の問題を扱う場合は騒音制御(遮音)と室内音響の二種類に分けることができる。ここでは騒音制御を具体的に建物に応用するノウハウについて解説する。

◆騒音問題の現況

 騒音は生活の快適性を著しく損なうばかりでなく不眠、神経症など健康問題も引き起こす原因にもなっている。具体的には航空機、鉄道、自動車などの交通騒音、工場などの操業騒音、学校騒音、隣近所の生活騒音などに分類できる。交通、操業騒音にはしばしば振動がともなうことも多い。住宅などは騒音のおそれのない地域に建設するのが理想なのだが密集市街地においてはそうもいかないので自衛的対策を取らざるおえないのが現実である。

◆騒音制御(遮音)に有効な構造

 ここではまず音の性質について理解したい。音には高いと低いがある。たいがいの騒音は高い音と低い音が混合していて騒音対策を実際に施す場合は両方に対応できないと有効な結果を得ることはできない。高い周波数の音は柔らかいものに吸収される性質があるので密度の高い断熱材(吸音材)を使うと有効に遮ることができる。低い周波数の音は比重の重たい材料、例えば石材やコンクリート、セメント系の厚みのあるもの、石膏ボード(できるだけ厚いか重ね合わせしたもの)などで遮蔽することで良い結果が得られる。通常、建物の騒音対策では両方の材料を同じ場所に併用することで対処している。

 建物本体の構造(柱、屋根、壁、床など)としては鉄筋コンクリートが最も優れている。コンクリートを使って隙間なく一体的に造られた構造なので遮蔽性が極めて高く、しかも比重が重たいので騒音だけでなく振動に対しても有効である。振動は通常発生源から地表面を伝わってくるので地下室付の鉄筋コンクリート建物などは振動対策の方法として理想に近い。

◆窓はどうする?

 騒音対策で一番ネックになるのが窓である。屋根や壁に充分対策を施しても窓が不十分であれば効果はほとんど期待できない。騒音の程度にもよるが基本的には二重窓にしないと充分な結果は期待できないであろう。二重窓とはアルミサッシを一ヶ所に二つ取り付けることである。二重ガラス(ペアガラス)のことではない。既製品として最初から二重窓になっているものが用意されているので設計上差し支えなければそれを採用するのも良い。

 また、断熱サッシや気密サッシを使用して一重窓で対応する方法もあるが少なくとも遮音効果は二割以上落ちるし価格も高くなるので一考を要する。但し一重窓の方が生活上の使い勝手は格段に良い。騒音の程度によってはこれで充分な場合も多く窓を少なめにするとかはめ殺し窓(ガラスのはめ込み窓)を併用すればコストダウンもできる。玄関、勝手口などは二重にできないので断熱タイプのものを最初から採用することになる。洗面所、浴室などの窓は小さいので開きタイプの普通サッシにすれば実質的には差し支えない。

 ◇窓のタイプ

 わが国では一般的に引戸タイプのアルミサッシが多用されているが、この形式は遮音を考えると隙間が多くなる構造であるので不利である。一般に遮音や気密性を優先するのであれば値段は高くなるが開きタイプの窓を採用する方が有利である。前述のようにはめ殺し窓と併用すればコスト調整はそれほど難しいというわけではない。二重窓にするケースでは外側に開き窓とはめ殺し窓、部屋側は引戸とすると使い勝手は改善できる。

◆騒音対策をどの部分に施せばよいか?

 外部からの騒音を有効に遮るには建物の外側の部分、つまり屋根、外壁などに施すことになる。できれば騒音が発生する側だけでなく迂回音対策のためにも全面に対策を施した方が有利である。騒音対策住宅はプランの段階から省エネ住宅として進めてゆくことができれば割り増しの公的融資の恩恵も受けられるので資金的にも有利である。但し全体工事費は省エネ住宅よりも割高になる。遮音のための単独の融資は存在しない。

◆換気をどうするか?

 基本的には省エネ住宅と変わるところはない。(講座b-8参照)理想的には自然換気がよい。空気の流通経路を住宅内部にきちっと確保できれば簡易な換気装置でも間に合う。但し暖房器具などは室内の空気を汚染するようなものは使ってはならない。喫煙の習慣のある人は換気扇内部に熱交換器を内蔵した空調換気扇を使用することを奨める。リビングやダイニングなど人が多数集まるところにもかならず空調換気扇を設置した方が安全である。鉄筋コンクリート住宅では築後しばらくはコンクリート内部から湿気を放出するので他の構造よりは除湿に気を使うことになる。

◆遮音効果はどの程度期待できるか?

 騒音対策を施していない一般の住宅、建物(木造)の遮音性能は15デシベル(=ホン)程度とみてよい。二重窓の騒音対策を施した住宅では40デシベルを少し下回る程度、一重窓のレベルではそれより10デシベルは性能が落ちる。一般に人の耳には騒音が10デシベル落ちると半分程度に聞こえるので、大まかには二重窓の騒音対策は四分の一に騒音を下げる効果があるといってよい。住宅内部での騒音の許容値は40デシベル以下とされているので80デシベル(=ホン)程度の騒音までは騒音対策で対応できることになる。実際、規制基準、環境基準(強制力はない)では騒音の上限値を75〜80デシベルとしているがあまり守れていないのが実状でもある。

 ◇睡眠障害にならない室内騒音レベル

 安眠のためのWHOが定める室内騒音レベルは30から35デシベルである。理想的には25デシベルを目標にしたい。故に遮音性能が40デシベルの住宅では夜間騒音の許容値は65から75デシベルとなる。

◆騒音対策の費用対効果

 手持ちの予算にもよるが鉄骨造ないし鉄筋コンクリート造を奨める。比較的簡易な設計と工事で良い結果が期待できるからだ。木造で実施するケースではピアノ室やオーディオルームのように主要居室を一部屋ごとに区画して遮音した方が建物全体を行うよりは効果も期待でき費用も節減できる。

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