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C-1

プレハブ住宅の問題点と将来

 ◆プレハブとは

 プレハブはプレファブリケーテッドの略で、前もって製作れた、組み立てられたという意味になる。建設業は現在でも基本的には現場における単品生産方式が一般的で生産性や企業としての収益性はロボット化が進んでいる製造業に比較すればどうしても低くなる。労働集約型の現場生産では品質管理も工場生産に比べ徹底できない。そういった建設業の抱える問題点を改善するために一部工場生産方式を導入したのがプレハブ工法である。生産性が一般工法に比較して良いので、その分ローコスト化がしやすい利点がある。また、材料なども規格化し大量生産ができれば単位当りの生産コストを引き下げることができるので同様な効果が得られる。設計もプランの段階からできるだけ共通化するようにして設計、工事の両方で合理化、作業の短縮が実現できるように配慮されている。

◇プレハブ工法の種類と特徴

 プレハブ工法は現在建設市場に複数存在するが全て国土交通大臣から安全上の認定を受けることにより受注建設の許可がなされている。この点が一般工法との大きな違いである。一般工法の場合は個々の建物ごとに設計の段階で構造計算、または安全上のチェックを義務づけられているが、プレハブ工法の場合はこれを省略することができる。工法の種類は大別すると木質パネル、集成材利用の規格化工法、軽量鉄骨パネル、軽量鉄骨ユニット、重量鉄骨利用の規格化工法、鉄筋コンクリートパネル(プレキャストパネル)などに分類できる。ツーバイフォー工法がプレハブに分類されることがあるがこれは間違いである。

 プレハブと一口に表現しても、それぞれ比較すると一般工法とプレハブ工法以上の違いがあるといっても良いほど多様である。しかし全てに共通して言えることは設計、工事を合理化、規格化し、併せて工期を短縮することにより、一定の品質を確保しローコスト化を実現することである。故に選択する立場にある建主としては特に工法の違いを深く考慮する必要はあまりないといえる。一般工法と同様にデザイン、使い勝手、品質、コストなどに注意をはらえば充分目的を達成できると考える。

 プレハブ工法選択のポイント

1・プレハブ以外の工法と比較して同一品質でありながらローコストである。

2・プレハブ以外の工法と比較すると必要工事費は同程度であるが品質は高く、設備機器もよりグレードの高い仕様になっている。

3・プレハブ以外の工法と比較して品質、仕様等にやや問題はあるが安全性や耐久性、室内保温性は保証されており、よりローコストにできる。

 いずれかの条件が満たされない場合は同じ工業化工法であるツーバイフォーも選択肢に入ってくる。

 プレハブ工法は規格化、標準化を特徴とするだけに工事価格が敷地条件や法規制の程度に左右されやすい性格がある。

構造別 プレハブ新設住宅構造別、構成比(平成17年) 前年度比較、戸数増減率
木造(=木質系) 13.4% -3.6%
鉄骨系 83.7% -2.3%
鉄筋コンクリート系 2.9% 11.7%
                  (以上は国土交通省発表資料より編集)

 ◆プレハブの歴史

 プレハブ住宅が広く社会で認知され普及しだしたのは1960年代頃からで当時の社会状況は高度経済成長の中、大都市周辺で人口の急激な増加が起き、核家族化と相まって量的に住宅が不足していた時期であった。ローコストで一人一部屋を実現した住宅の大量供給が急務な状況にあって、借家事情の劣悪さがそれに輪をかけた。そういった中で、プレハブメーカーは発展のきっかけをつかむことができたといえる。

 プレハブ住宅のコンセプトはあくまでもローコストである。しかも工期が短く安全で品質にもばらつきがない。建主の負担を少なくする工法として次第に受け入れられていった。プレハブ各メーカーはそれぞれ独自の新工法を開発し市場に参入した。初期トラブルが頻発したがそれも徐々に改善され社会にそれなりに定着していった。各メーカーはコストと技術で比較優位に立てば順調にシェアをのばせると信じていた。

 しかし次第に住宅事情が量から質が問われる時期に移ってゆくとプレハブ住宅は安物住宅あるいは仮設住宅的イメージと本格的な木造住宅、つまり本建築に比べて見劣りがするものだという評価が定まってゆく。その是非は別としても一つの分岐点にさしかかった各メーカーが選択した道は多様化と高級化である。メーカーみずからが収益維持のためにプレハブの本来の目的を放棄してしまったといえる。

 経営環境は厳しいとはいえプレハブメーカーは多少のリスクを承知でも技術本位の姿勢を保ち続けるべきであった。しかし、それには多額の技術開発投資と設備投資、新たな人材養成、市場開拓と時間も必要になったことであろう。

 ◆プレハブの現状の位置づけ

 現在ではプレハブを積極的に選択する理由は見つけるのは難しい。プレハブ工法と一般工法とを比較すると以前ほどには大きな違いがなくなってきているからだ。例えば一般の在来木造でもプレハブ化が進んでいて、木材はあらかじめプレカット工場でコンピュータ制御の工作機械で加工され現場に搬入される。大工はそれを組み立てるだけである。建材も工法も性能と安全性が向上し、省力化もかなり進んだ。工事期間も実質3ヶ月とプレハブと比較しても、それほど遜色のないものになっている。ローコスト化も同時並行的に進んでいる。バリエーションも本格和風建築から洋風建築、建築家による独特なデザイン、省エネ住宅など高付加価値機能を備えた住宅と選択の種類は多い。

 プレハブは地震に強いという報道が1995年の神戸震災時になされたが正確には正しくない。プレハブ工法は国土交通省の認定を受けなければ実用化はできない。認定時に構造計画規定という規制を受ける。正確にはこの規制が効をなしたということになる。一般の在来木造でもこの構造計画規定を採用して、かつ詳細な設計図、仕様書を備えていれば何等問題はないといえる。

 わが国の住宅建設市場(マンションや賃貸住宅などを含む)におけるプレハブ工法のシェア率は近年12%程度で推移している。これにはアパートなどの集合住宅も含まれる。プレハブ新設住宅の半分を超える戸数が集合住宅で占めらている。新設住宅全体の建設戸数は最盛期(1987年から1996年)に比較し平均3/4程度まで減少している。プレハブ工法においては2/3程度まで減少しているのでシェア率も減少していることになる。

. 17年度着工戸数 対前年比 新設住宅全体に占める割合
プレハブ工法 156,581 -2.1% 12.5%
ツーバイフォー工法 97,670 +6.9% 7.8%

  その内訳  
. 持家 貸家 給与住宅 分譲住宅
プレハブ工法 63,586 85,110 485 7,400
ツーバイフォー工法 31,898 44,134 187 21,451
参考 平成17年度持家新設戸数 352,577(以上は国土交通省発表資料より編集)

 ◆プレハブの問題点

 現在わが国の建設市場、特に住宅市場では工法の種類に乱立気味な観があるのは否めない。パソコンのソフトウェアーに例えればOSが乱立し相互に互換性がないのによく似ているのだ。工法の種類が多いことのデメリットは具体的にはコストのアップとなって建主に跳ね返ってくることだ。プレハブは本来コスト低減を主目的として市場に登場してきたわけだが社会的には逆効果を及ぼすことになってしまっている。

 またプレハブ工法は例外なくコストを含めて部外秘扱いとなっているので、そのプレハブメーカー以外の建築技術者にとってはブラックボックス的な存在である。通常、建築工法とはオープンな存在でなくてはならない。なぜならオープン化されることにより、その工法は一種の社会的知的財産として広く社会に普及する機会が与えられるだけでなく、大学の研究室、公共機関の研究所、ゼネコンの技術開発部門、設計事務所などの各レベルで研究開発や改良提案がなされることにより技術的進歩の機会が与えられるからだ。

 一社独占を特徴とするプレハブ工法にはこのような機会はほとんどない。故に個々のプレハブ工法の行く末はプレハブメーカーの経営状態によることになる。利潤を順当にあげているメーカーは工法の改良に充分な費用をかけることができるが、そうでなければ最悪の場合はメーカー倒産とともにこの世から消滅することも考えられる。技術的進歩の速度は一般工法の方が広く普及している分早いので最近開発された新工法を別にして、古くからあるものは改良がなされているとはいえ基本的部分はそのままなので見劣りがするのは否めないのが現実である。(時代のニーズに適合した、工法のスクラップアンドビルドが求められてくる)

 ◆プレハブが期待できる分野 

 プレハブのような工業化住宅の優れた特徴は既に説明したように一部工場生産方式を導入した規格化、量産化により品質、安全性の向上、ローコスト化の実現がしやすいことなどがあげられる。他の一般工法においても近年この様な傾向にあるのではあるが、むしろプレハブ工法の優れた特質を職人不足、職人の技能低下、人件費節約などのために取り入れているという面が強い。

 わが国の特に都市部においては狭小で複雑な形状をした宅地が多く見られるのであるが、法規制の厳しさとあいまって、このような.立地条件は工業化住宅には不向きであり工業化住宅のもつ優れた特徴をかなり減殺してしまう傾向が強いともいえる。特に戸建て注文住宅でその傾向が目立つ。

 しかし建て売り分譲のように同時並行的に複数戸を建設してゆく住宅や戸建て住宅に比べ建物規模の大きいアパートなどの集合住宅の場合はプレハブ工法をもっと積極的に採用することによりローコスト化だけでなく充分な品質と安全性を確保することができるはずである。事実、現在販売されている建て売り住宅(中古含む)には問題のあるものが少なくない。アパートなども住宅の質という点では問題が多いのは周知の事実である。これらの欠点はプレハブ工法が積極的に採用されることにより容易に克服することが期待できる。

 ◆プレハブの将来

 わが国のような高度に工業化された社会では住宅産業のプレハブ化は必然的な流れの一つといえる。プレハブ技術そのものはまだまだ発展途上にあり、これから更に改良された工法が登場することが十分期待できる分野でもある。今後、優れた工法が開発されたとしても普及には十分な資本力と人材が必要になってくる。技術的優位のみでは市場での優位性を確保するのは事実上困難であろう。住宅業界においてもITなどの新産業分野に見られるような何らかの公的支援策が望まれるところだ。事実、優れた工法を開発し広く技術公開しているにもかかわらず普及が思うにまかせないメーカーも存在する。こういうことは社会の側から見ても大きな損失といえる。本当の意味で住宅購入者のためになる市場競争がプレハブ住宅分野でも展開されるには技術に優れた新規メーカーに市場参入機会を与えることが重要になってくる。現在のような宣伝力にものを言わせた大手メーカーによる寡占化は公平な競争を妨げるだけでなくプレハブ住宅の質的向上にも悪影響を及ぼしているというのが現状といえるだろう。

 将来、プレハブ工法が住宅生産の主流を担う地位を得るには、このような課題の克服が速やかに行われるか否かにかかっている。今後少子高齢化により住宅市場が確実に縮小してゆく中で、工法の合理化とローコスト化、省エネなどの諸性能の向上は優先して取り組むべき課題であるが、国外から新しい工法が技術導入されたり、木造の一般工法やツーバイフォー工法でも逐次改良普及のための努力がなされている中で改めてプレハブ工法の存在意義を社会に広く認められるためには、この様な工法の市場価値を高める改善努力が継続されなければならない。

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